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2015
12.18

恋の予感は突然に 6

強烈な一撃だった。


ああ。もう最悪・・・。
こんなにゴージャスな男達に取り囲まれてこんな失態を演じるなんて・・
しまったと思ったときには遅かった。


花沢類さんにすればよかった・・・
でもバカっぽいのはやっぱりこの男だもんね。
こんなに喧嘩っ早いと子供に悪影響を及ぼしそうだけど、あたしが育てるんだし。


ああ、でもどうしたらいいの?
せっかく二人っきりになったと言うのに・・
目当ての男はベッドルームの大きなベッドのうえで寝ていた。

悪友たちに抱えられ横たえられた男につくしはため息をついていた。
ダメだ・・使い物になりそうにない・・
酔いも手伝ったのか彼は目を覚ましそうになかった。
そう言えば、滋さんがスペシャルドリンクを飲ませるとかなんとか言ってたっけ。
ゴージャスな男3人はあとは月子ちゃんが責任を持って介抱してやってくれと言ってドアの外へと消えて行った。


最高!!

これであたしの子供も夢と消えるわけね・・
でもこんな状況に陥ったのはすべてあたしのせいだ・・・
つい手が出てしまった。
だ、だってこの男が失礼なことばかり言うから、つい。
流れに身をまかせるとかそんな状況ではなかった。

こうなったら・・実力行使するしかないの?
だって選択肢はないでしょ?
今日を逃すわけにいかないじゃない?
今夜を逃せば次は・・う~ん・・あたしの周期からいけば・・


滋さん言ったわよね?またがったらいいって。

ん? でも酔ってても出来るの?
ちがう、ちがう!そんなことじゃない!
寝込みを襲うなんて出来るわけないじゃない!!
無理よ。無理に決まってるじゃない!
だってあたしはそんなことした事がないのに!


つくしは正体もなくベッドで眠りこけている男を見つめた。

・・・いつまでもここでこうして立ち尽くしているわけにはいかない。


つくしはバスルームを覗いていた。
へぇ~。このクルクルパーマはここに住んでるんだ。
つくしは洗面カウンターに並べられている瓶や缶を眺めていた。
アフターシェイブローションに整髪剤。
ふ~ん、歯磨きはミントフレイバーか・・・
つくしはその中にあるひとつの瓶を手に取ってみた。
そして蓋を開けるとクンクンと臭いをかいでみた。
いい香りがする・・・これってこの男のつけているコロン?

そして興味本位ついでに鏡のついた扉を開いてみた。
コンドームだ!
滋さんの言ったとおりこの男は用意している。
それも大きな箱で!
えっ? 
コンドームってサイズとかあるの?
ま、そうよね、ゴム手袋にだってサイズがあるんだもん。
つくしはその中からひとつを取り出すとしげしげと見つめた。
滋さんが用意してくれたものと何も変わりがないように思えたけど、こっちは使えない。


あ、あたしなにやってるんだろ!
コンドームを手にしてまじまじと見てるなんて、どうかしちゃった?
うんうん。この計画をたてた時点でどうかしてるんだ!


つくしは音をたてないよう、そっとベッドルームに戻った。
そして改めて男を眺めていた。

ゴージャスだと思った。
友人たちに服を脱がされベッドに横臥して顔をこちらに向けた姿勢だ。
クルクルパーマの髪の毛は乱れ、上掛けを掛けられた状態でもその身体のラインははっきりと見て取れた。
その寝姿に見惚れてしまう。
男のくせに長いまつ毛、眉だってきれいな柳眉だし鼻筋だってきれいだ。
そんな高い鼻筋してたら視界が遮られるんじゃない?
窪んだ眼窩なんて日本人離れしてるし、唇のカーブだってきれいな弧を描いている。


・・・でも神様は公平だ。
この男は容姿は完璧だが頭は鈍い・・・


男の呼吸は深くゆっくりと繰り返されていた。
身じろぎひとつすることがない。
こんな状態では男が目を覚ますなんてことは期待できそうに無かった。
男性と二人っきりの密室・・
あたしにはもうこんなチャンスが巡ってくるなんてことは二度と無いに違いない。


少しくらいなら・・・

つくしはおもむろに着ている服を脱いだ。
そして上掛の下にそっともぐりこんだ。







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2015
12.20

恋の予感は突然に 7

いい香りがする。
それはあのコロンと同じ香りがした。


ほんの少しのあいだだけでいい。
少しだけこうしていさせて欲しいと思った。
だってあたしにはこんな・・・
こんな経験をすることなんて二度とないだろうから。
滋さん今夜は多分失敗よ・・・



こんなふうに男性の傍、それも裸の男性の胸を間近に見るなんてどんな気分になるか想像したことがなかったけど自分の心臓の鼓動の音が聞こえるくらいドキドキしている。
もう少しだけこのまま・・・
どうせこの男が目を覚ますなんてことは無さそうだもの。





司は自分の胸元に暖かい吐息を感じ、女の匂いを感じていた。
そして胸に感じられた小さくやわらかな手の感触。
夢か?


つき合っていた女と別れた理由は子供が欲しいとほのめかして来たことでもあるがその女の匂いが嫌いだったから。
その女はいつもきつい香水をつけていた。
まるで自分の匂いをマーキングする動物のような女の行動に、いい加減にしてくれと言う気持ちがあったのも事実だった。
『この男は自分のもの』
そんな思い上がりにうんざりもしていた。
自分の香りを男に纏わせようなんて自惚れも甚だしい。
だからいつも長めのシャワーを浴び、女の匂いを消していた。

だが、いま自分が感じている匂いはふんわりとした石けんの香りだった。
なんの嫌味もない石けんだけの香りが嗅ぎ取れた。
セクシーさもなく、実用的な石けんの匂い。
今までつき合って来た女の中にそんな女はいなかった。
司は夢が薄れてくると、現実を認識しはじめていた。



つくしはまさか自分が性的な誘惑をしているとは夢にも思っていなかった。
だが、こうして男性の裸を目の前にして触れてみたいと言う衝動を抑えることが出来なかった。
つくしは理性を失ったかのような自分の行動に頭が朦朧としてきた。
この男がどんな立場の男であるか、よく知らないが女性が自ら身を投げ出してくることに慣れているはずだ。
そうでなければ、あんなものを用意しているとは思えない。


この男がもし目を覚ましたらどうする?
訴えられる?
セックスなんて経験したことがないんだから、この男が何を考えているかなんてわからないけど、病気と避妊だけは注意していることに感謝しよう。
そうでなければ、この男を相手になんか選ばなかった。

私だけの子供の為に海外の精子バンクを利用することも考えてみたが、往々にしてそんな所に登録をしているのは、大学の医学部で医学を学ぶ学生や、知能指数の高い人間に決まっている。
医学生の場合は学術目的として登録している場合が多い。
そして自分の遺伝子をバンクで残そうなんて考える人間は自惚れが強い人間だ。
あたしの子供に高い知能指数なんて必要ない!
あたしの子供は平凡な人間で、平凡な人生を歩ませるの!
頭の良すぎる人間なんて社会生活を送るうえで煙たがられるだけだ。
そんなのあたしだけで充分よ!
だからバカで鈍そうなこの男を選んだ。




司はぱっと目を開いた。

目覚めた司は声を出せるようになるまで一瞬の間があった。
その間に自分がどこにいて、いま、自分と一緒にベッドにいる女が誰なのかを思い出そうとしていた。

自分の胸元に顔を寄せるようにしている女の黒髪を見ていた。
暖かい吐息が彼の胸に吹きかけられている。
そしてその感覚に思わず声をあげそうになっていた。
司は思わず開いていた目を閉じた。
興奮が脳を駆け巡った。
やっぱりまだ夢を見ているのか?
だが、閉じていた目を再び開いてみれば、女は司の胸に触れようか触れまいか迷うような仕草で小さな手を躊躇させていた。
どんな女も自分の胸に触れることに躊躇するようなことは無かった。

そしてついに女の手を胸に感じた瞬間、司が女の手をつかんだ。

「何をしてるんだ?」
困惑と言うよりも怒りを含んでいた。
手をつかまれて女は顔を上げた。



そんな!
もうこの時間が終わってしまったの?

「いったいここで何をしてるんだ?」
つくしを見下ろした彼の目には怒りを含んでいる以外の感情は見られなかった。

「えっと・・・あ・・あの・・」
つくしは自分の行動に責任を取ろうと思った。

司はつかんだ女の手を離すと上掛けを跳ね除けた。

そこには裸の女がきゃっと言って『ヴィーナスの誕生』の絵のような姿勢で横たわっていた。






『ヴィーナスの誕生』 サンドロ・ボッティチェリ作 フィレンツェ・ウフィッツィ美術館蔵

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Comment:4
2015
12.21

恋の予感は突然に 8

ばかげていた。
つくしは目を閉じて大きく息を吸った。
なんであたしはこんな所にいて、バカ男に説教をされなきゃいけないの?


つくしは男が投げてよこしたドレスを着て椅子に座らされていた。
目の前にはバスローブに身を包み、怒りをみなぎらせた男が両手を腰にあて、つくしを睨んでいた。


「おまえ牧田月子だったよな?」
「ご、ごめんなさい・・」
「おまえは何がしたいんだ?」
「えっと・・そ・・の・」
「・・ったく・・おまえみたいなにチビに殴られてぶっ倒れたなんて情けねぇ」
下から見事に決まったアッパーカット。
司はつくしに殴られた顎に手をあてながらも力強く立っていた。

チビといわれて思わず拳を握りしめそうになっていた。
「そ、その・・殴ったお詫びをと思って・・」
「おまえは殴り倒した相手に対していつもこんなことしてんのか?」
司はクルクルの髪をかきあげていた。
「ご、ごめんなさい・・な、殴ったことは・・その・・」
つくしは罪悪感に頬を染めた。
「男のベッドに入り込んできてなに言ってんだ?おまえ本当は俺になにをするつもりだったんだ?」



恐ろしい目で睨まれてつくしは深く息を吸い込んだ。
「あ、あの・・介抱しようかなぁ・・なんて思って・・」
今度は羞恥心に頬を染めた。
「おまえ滋のダチだって言ってるみてぇだけど、ほんとは何者だ?」
「写真でも撮らせて俺を脅すつもりか?」
司は椅子に座らせた女の周りをゆっくりとまわりはじめた。
「だ、、だから滋さんの友人です・・」
つくしはうつむき加減で答えた。
胃がキリキリしてきた。
お、お願いだからじっとしてよ!動きまわらないで!
これじゃあまるで裁判で尋問を受けているみたいじゃない!
「もう一度聞くがおまえは何者だ?」

「えーっと、よく意味がわからないんだけど・・?」
男に自分の周りをゆっくりとまわられて目が回りそうになっていた。

「しらばっくれるのもいい加減にしろよ?牧田月子さんよ?」
「おまえ、どっかの商売女だろ?どうせあきら達から頼まれた滋がおまえに頼んだんだろ?」
「牧田月子なんて変な源氏名つけやがって」
低い声で嘲るように言われた。

「あ、あたしは・・」
本当のことがこの男にばれて滋さんに迷惑が掛かったら大変だ!

「そ、その・・」
つくしはこの場をどうやって切り抜けようかと考えてみたが思いつかなかったので
この男の勘違いをそのまま利用することにした。

「俺はなぁ、商売女とはやんねぇ」

「あ、あたしはそのへんの商売女とは違うんだから!あ、あたしは高級な・・えっと・・」

つくしはネットや映画から得た知識をフル活用しようとしていた。
「あ、あたしは高級な・・疑似的恋愛労働者よ!」

「疑似的恋愛労働者だぁ?」
「そ、そうよ!」
「あ、あんた知らないの?感情労働のひとつで、世界で一番古い職業なんだから!」
司はつくしの顔を初めて見たかのようにじっと見た。

「おまえ、俺をバカにするのもいい加減にしろよ?」
「な、なによ?」
「おまえみたいな商売女がいるわけねぇ・・・」
「こんな素人くせぇ商売女がどこにいるんだよ?おまえ・・本当は何者だ?産業スパイか?
どこの企業に幾ら金もらってこんなことやってんだ?それに28だなんて嘘だな」

「おまえ・・やってることと言ってることが矛盾してるし、嘘くせぇんだよ」

「そ、そんなことないわよ!ほ、ほら」
つくしは小さなバッグのなかから取り出したコンドームをいくつか見せた。
「ち、ちゃんと仕事の準備はしてるわよ!」

「へぇ~おまえチビのくせして、この俺とやることやろうって?」
司はつくしの目の前で歩みを止めると椅子のうえで身を縮めるようにしている女の前に屈みこんだ。
そして視線をつくしの目線の高さに合わせてきた。
真正面で自分を見据えるきれいな顔につくしは圧倒された。


「おまえ、さっき俺の胸に触ろうとしてたよな?それも俺の意思とは関係なしに」
「もし仮にだ、おまえが眠っているところに男がきて勝手に胸を触ったりしたらどうする?」

「そ、それは・・ど、どう言う意味?」
「つまりだ。相手の意思に反して行われる行為はなんて言うかしってっか?」
「セクシャルハラスメントだな」
「・・なっ!」
「いや、違うな。セクハラってのは一定の社会的関係があって行われる行為のことを言うからな」
「おまえの場合は・・・・俺に対する暴行未遂か?」
と顎に手をあて、少し考えるような素振りを見せたあと問いかけるように言った。
「ぼ、暴行未遂っ?」
「そうだな。俺は全くしらねぇ女に暴行されそうになったってことか?」
「いい方を変えれば・・・俺はおまえにレイプされそうになったってことか?」
つくしは切り返す言葉が出てこなかった。


「あ、おまえ弁護士を用意しとけよ?」
司は薄い笑みを浮かべた。

「レイ・・。ば、バカなことを言わないでよ!そんなの・・どう考えたって・・ムリに決まってるじゃない!あんたみたいな大きな男にそんな・・」

「いいや。俺は酒を飲んでたら一方的に殴られた。これだけでも立派な暴行事件だぞ?
んで気を失って倒れた俺におまえが・・」
司の目つきが険しくなった。
「ちょっと!なにってんのよ!冗談じゃないわよ!あ、あたしがあんたをれ・・レイ・・プなんてどう考えても無理に決まってる!」
つくしはそこまで言ったもののそれ以上は言葉を返すことができなかった。
司は嫌悪に満ちた表情でつくしを見据えていた。

つくしは内心の動揺を隠せなくなってきた。
ああ、どうしよう・・どうしたらいい?
もしこの男に訴えられたりしたらどうしたいいの?
せっかく子供と二人で生きて行くために貯金したお金も裁判費用や賠償金として支払うはめになるかもしれない。
つくしの背筋に冷たい汗が流れたような気がした。

「ご・・ごめんなさい・・」
つくしはどうしたいいのかわからなくなって泣きそうになっていた。







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2015
12.22

恋の予感は突然に 9

司は次の瞬間笑い出した。
チビ女をからかうのはこのくらいでいいか。
徹底的にいじめてやろうかと思ったが今にも泣きそうな顔をしていやがる。
あほか、この女は。

こんなチビ女に何が出来るって言うんだ?
俺を襲うとかそんなことが出来るわけがねぇだろ?
第一にそんなことさせっかよ!
身体の大きさからして考えてみろよ!
殴り倒されたのはこんなチビに何が出来るかと油断したからで、逆に男に襲われたらこんなチビ女、簡単に組み敷かれるぞ?
商売女じゃないことくらい最初に見たときからわかってた。
バカな女は顔を見りゃわかる。
デカい目を見開いてわけのわかんねぇ講釈を必死になって垂れながら何かを隠してるってのもわかった。

だがこの女は嘘つきだが人に害を与えるような女には見えなかった。
滋が連れて来たってことはどこかの金持ちの娘だろうと思っていたがそうでもないらしいな。
どっちかと言えば貧乏くせぇか?
けど、どうせ俺と知り合いたいとかいう輩のひとりだろ?
が、この女が何かよからぬことを企んでいるのではないかと言う思いも捨てられずにいた。
企みと言っても滋が連れてくる女なんだし、俺を騙せるような度胸のある女がいるとは思えなかった。

司はくつくつと笑っていた。
つくしは男の態度が理解できずにうろたえていた。


司はあたらめて女に聞いた。
「おまえは誰だ?」
「質問に答えろ」
その声はもう笑ってはいなかった。





つくしは小さなバッグを握りしめ椅子のうえで身体をこわばらせていた。
身元がバレないうちに急いでこの部屋から出なければならない。
相手はバスローブ一枚だ。
なんとか部屋の外へ出ることができれば逃げることも出来る。
つくしは部屋に視線をさまよわせた。

「あ、あの、だから・・」
「あ、あなたには興味のない人間だと思うわ!」
つくしは口ごもった。
「だ、だから、か、帰ります・・」


司は口元をゆがめた。
「俺が興味があるかどうかは、俺が決める」
「なんならこれから滋を呼びつけるか?」


「あ、あの・・」
どうしよう!なるべく理にかなったような答えをしなきゃ。

「なんなら、そのベッドに押し倒しておまえが何をしにここに来たのか聞いてやろうか?」


つくしは思わず呻いた。
願った展開になりそうだ!
ぜひそうしたい! でもこの男は本気だろうか?
服を脱いで? 
あたしは最後まで出来るだろうか?
でも、あたしには目的がある!
あたしだけの子供が欲しいの!
それを授けてくれるのなら、このチャンスにかけるしかない。



「しかし、おまえ・・男の妄想を煽るような女には見えねぇんだよなぁ」
司はつくしの身体に視線をはわせながら考え込んだ。
「ハニートラップにしちゃあお粗末な身体だしよ?」
「いったい何が目的なんだ?」

・・それを口にできたら楽なんだけど・・・
つくしは心の中で呟いていた。
つくしは自分なりにセクシーと思われるような恰好で来たつもりだったけどこの男の反応から判断して失敗だったんだと思わずにはいられなかった。



「ま、おまえがゲームをしたいんならルールはわかってるよな?」

つくしは男が言った言葉を理解しようとしていた。
・・・ゲームのルールって?
そ、それって一夜限りの付き合いってこと?
うんうん!願ったり叶ったりだ。

あたしに殴り倒されたことでプライドが傷ついたなら、あたしを抱くことでそのプライドを癒してもらってかまわないわ!

つくしは答えなかった。
頭のなかを駆け巡るのは将来の自分の姿。
それは子供と自分が平凡に暮らしている姿だった。
人生で一度も道を外れるようなことはしたことは無かったけど頭のなかに映し出されたまだ見ぬ子供の姿を思えばこの試練は必要だ。


つくしは身を固くしたままで椅子に腰かけていたが、意を決して立ち上がると男の胸へと飛び込んでいた。


そして気づいたときには、ウエストにまわされた腕が自分を抱き上げ、ベッドへと降ろされ、たくましい裸の胸の下につくしを置いていた。








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2015
12.23

恋の予感は突然に 10

「おまえは誰だ?」

両手で肩を押さえつけられ、身動きがとれなかった。
つくしは男の胸の下でその重みに押し潰されてしまいそうだと思った。
相手は滋さんの知り合いとはいえ、見知らぬ男性だ。
バスローブを羽織っただけの見知らぬ男性にのしかかられているなんて信じられなかった。
今のあたしが置かれた状況が違うならこんな状態で大人しく横たわっているなんてあり得ない事態だ。
それなのにあたしは・・・この男の黒髪に指を差し入れて引き寄せたい衝動に駆られていた。
下から見上げるかたちで見る男の顔には思いやりなど感じられるわけもなく、鋭い視線でつくしの顔を見つめていた。

喉がカラカラに乾いていた。
つくしは唇をひらくと下唇に舌を走らせた。

「だ、だから・・」
「さ、産業スパイとかじゃなくて・・」



・・・スパイじゃなくて泥棒なんだけど・・・
それも・・精子泥棒・・
ああ、でも泥棒なんてしたらもう天国には行けないかもしれない・・
そ、そうだ!


「あの、あ、あたし・・も、もうすぐ出家するのっ!」
つくしは咄嗟の思いつきで言った。
「あ、尼寺には、入るから・・その・・ぞ、俗世間でのさ、最後の思い出に・・」
声がひっくり返りながらつくしは言葉を継いだ。
「し、滋さんがね、あたしの最後の望みを叶えてあげるって言ってくれて・・」
「じゃあ、その・・あの・・」




「なに?それで俺が選ばれたって?」
司はいびつな笑みを浮かべた。
「俗世間での思い出にってか?」
司はアホくせぇと言う表情で自分が組み敷いた女を見た。
よく次から次へと嘘ばかり並べられるものだ。

「牧田月子、おまえ俺をバカにするのもいい加減にしろよ?」
「おまえ、どうしても俺に本当のことを喋る気なんてなさそうだな?」


本当のことよ!
つくしは心の中で叫んでいた。
だってあたしはこのチャンスを逃すときっと普通の子供を育てることなんてない!
あたしの最後の望みなんだもの、このバカ男は!
あたしなんていつか、どこかの頭のいい男性とお見合いなんてさせられて結婚させられちゃうはめになるわ。
そうなったら子供に平凡な人生なんて望めない!
本当は俗世間に留まりたいからこのバカ男が必要なのよ!


「ほ、本当のことよ!」
つくしは男の目を見つめるとちからを込めて言った。

滋さんは男にとって一番重要なのは最終結果、つまり放出するときだけだと言っていた。
だったらその前の項目は省略してもらって構わない。
手順なんて気にしてないから!
何をするのか知らないけど、あたしは省略してもらって全然構わないから!


「おまえの言ってることを信じるほど俺はバカじゃねぇぞ?」
そう言いながらも男はつくしのうえから動こうとはしなかった。
「やっぱりこの身体に聞いてみるか?」
司はつくしのうえに跨ったままでゆっくりと顔を近づけてきた。
ええ、ぜひお願い!
「・・やっぱ、やめた 」
司は掴んでいたつくしの肩から手を離すとベッドのうえから降りた。

ど、どうして!
困るのよ、今日じゃないと!
「俺はそのへんの女を適当に漁るほどの女好きじゃねぇ。あきらや滋がどういうつもりでおまえを連れて来たか知らねぇけど、俺は盛りのついた雄犬じゃねぇからな」
「まったくあいつらの考えることはガキのときから進歩してねぇな」
司はテーブルに置かれた煙草に手を伸ばしながらぞんざいな態度で言った。
「もういい。おまえ帰れ、牧田月子!」



ここまで来て帰れるわけないじゃない!!

つくしはベッドのうえに起き上ると震える手でドレスのジッパーをおろし、頭から脱いだ。
もうこうなったら・・本気で体当たりするしかなかった。

つくしは司へと近づくと彼の腰に緩く巻かれていたバスローブの紐を思いっきり引っ張った。
はらりと開いたバスローブの下に男は何も身につけてはいなかった。







ブラとパンティだけの姿で立つ自分がどう見えるかなんて考えたことがないけど
少なくともこの男を反応させるだけのことはあったようだ。
なによ!さっきはあたしの裸を見たくせに!
司を誘惑するならこれくらやらないと!と言って滋さんが勧めてくれた黒のレースで出来たハーフカップのブラジャーとTバック。

『つくし、男にはね視覚効果も重要なのよ?チラリとかポロリとか・・?
だからエロい雑誌とかDVDとかが売れるんだからね!全部丸見えじゃ面白くないみたいよ?』

こんな紐みたいなものに実用性なんて感じられないけど、こんなもので役に立つなら実用云々なんて言ってられないわ。

「おまえ、本気か? そんなんで俺を誘ってんのか?」
「な、なによ。あんただって・・あたしのことほ、欲しいんじゃないの?」

言った!言えたわ滋さん!
こんな台詞が言えるなんて信じられない。
まるで悪い女みたいだ!

「あ、あんたには何も求めないから心配しないで」
お願い、ボランティアでもいいからあたしを抱いて!

「げ、ゲームのルールは理解してる・・だから・・」
もし何かを心配しているならそんな心配はないから!
二度とあんたには会うつもりなんてないから!







バスルームにあるコンドームは古すぎて使い物にはならない。
あれは悪友たちが置いていったものだった。
あんなもん大量に置いていきやがってどいつもこいつも・・俺は色情狂かよ!
床に散らばっていたコンドームのひとつを取り上げると司は女の腕を引いていた。


司は女の首を引き寄せるとキスをした。
優しさとは違う、かと言って強引とも違う、力強いキスだった。

レースの下着は優しく脱がされていく。
小さな布きれなんて男に見せる為だけのものだった。
力をいれてしまえば簡単に裂けてしまいそうだ。
女の脚をゆっくりとなであげていけば、震えが感じられる。
いまは女のすべてが司のまえにさらけ出された状態だった。


この女がいくら口達者なことを言ったとしてもこれからの行為に不安と恐れを感じているのは確かだ。
まさか経験がない?
経験のない女を最後に抱いたのはいつだったか?

悪友どもが何を考えて俺にこの女を連れて来たのかは薄々わかってた。
女で憂さを紛らわせろということだろうが、やりたい放題のバカ男じゃあるまいし、昔の俺と今の俺を一緒にすんじゃねぇよ!
クソッ!
この女をびびらせて逃げ帰らせるために軽く脅してみたが、泣きそうな顔してごめんなさいと言われたときは、その弱々しさに自分がカエルの大将になっちまったみてぇに感じた。
ああ、目が覚めてこの女がベッドで俺に寄り添っているのを見たとき、あのときは息が止まりそうになった。
ちいさな手が俺の胸におかれたときは、その手で心臓をもぎ取られるかと思った。



女のなかに進入する行為はすんなりとはいかなかった。
局部が潤うための行為を繰り返した。
はじめは抵抗を示していた身体もそのうち柔らかく溶けてきた。

胸元で「おねがい・・はやくして」と言われ一気に貫いていた。


押し広げられ貫かれ、圧迫感を感じつくしは叫び声をあげそうになっていたが我慢した。
そしてはじめての痛みに、経験に涙が流れていた。
男が短く悪態をついた。
何を言っているのかわからなかったが、引き抜こうとしているのはわかった。
「お、おねがい・・や、やめないで・・」
だめよ、いま止めたら・・・あたしの赤ちゃんが出来ない!
「おねがい・・」
最後までちゃんとして!
自分の身体のなかに、別の人間の一部が入り込んでいるなんて信じられなかった・・
大きな男の大きな手にお尻を掴まれて、あたしの脚はその男の腰へとまわされていて繋がっていた。
知らない男に何度も何度も突かれる行為が続き、容赦なく奪われながらも身体のどこかが
熱くなってきているのが感じられた。
そして出し入れされるたびに卑猥な音がした。
はじめに感じた痛みも薄れてくると身体のなかに変化がおきた。
ただの生殖行為に何も感じることなんてないと思っていたが、乳房の先を男のくちに含まれて転がされてときには「あ・・あん」と声が出た。

男のつけたコロンの香りが五感を刺激する。
多分、この香りは一生忘れることはないだろう。


つくしの上に覆いかぶさってきた男にキスをされたとき、口いっぱいに煙草とお酒の味が広がった。
そして倒れこんできたとき、重い身体を受け止めながらも余韻に脚が震えていたが男の腰にまわしたままにした。
少しでも確実に妊娠するチャンスのためにはこのままの姿勢でおとなしくしている方がいいと書いてあったから。




司はバスルームでコンドームを外すとゴミ箱に捨てた。
女が身悶えをして絶頂に達した瞬間を感じとっていた。
やはりこの女は経験がなかった。
ゴミ箱に捨てらてたそれには証拠がはっきりと残っていた。
なのに何故?
女が初めての男に選ぶのは好きな男のはずだ。
どうして俺を選んだ?
いくら嘘や誤魔化しを並べたところですぐに真実はわかるだろう。
まずはあきらにでも聞いてみるか。


司はベッドに戻るとうつ伏せの姿勢で横たわっている女の隣に身をすべらせた。
暫くは女の姿を眺めていたが心地よい疲れに身をまかせるように眠りの世界に落ちていった。









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