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2018
09.21

想い出の向こう側 1

どの子供にも大切にしているおもちゃがあるはずだ。
だが少年にはそういったおもちゃが無かった。
いや無かったのではない。沢山ありすぎてたったひとつの大切な物を見つけることが出来なかったという方が正しいはずだ。

少年は裕福すぎるほど裕福な家に生まれ、誰もが羨む生活を送っていた。
我儘は我儘とは言われず、当たり前の行動として受け止められ、欲しいものがあれば直ぐに手に入れること出来た。だがその生活は決して楽しいとは言えず、家庭教師が何人もいる生活に自由は無かった。


「あなたはこの家の跡取りよ。将来は会社の社長になるの。そのためには今から学ぶべきことが沢山あるわ」

そう言った母親は忙しい人で傍にいることはなかった。
鉄の女と呼ばれている自分の母親はビジネス優先で、子供のことなどどうでもいいと思っているのか。彼の誕生日だろうと、高熱で苦しもうと傍にいることはなかった。

そんなあるとき少年は沢山のおもちゃの中から、ふわふわとした手触りの白いウサギのぬいぐるみを見つけた。
それは初めて見るぬいぐるみで、白いウサギにはプラスチックで出来た赤い小さな目がついていて、まっすぐ少年を見つめていた。

少年は思った。
おかしいな。こんなぬいぐるみ見た事ないぞ。いったい誰がここに置いたんだ?
それに少年は初等部2年生で、ぬいぐるみで遊ぶような年齢ではない。
ましてやウサギのぬいぐるみなど男の子が持つものではないと思っている。それなら彼の仲間の誰かが持ち込んだものなのか?だが彼の仲間たちの中には、ぬいぐるみで遊ぶような人間はいない。いやかつて類がクマのぬいぐるみを大切にしていたが、今はもう違う。
だとすれば、このぬいぐるみは一体誰のものなのか?だが少年はピンときた。

「そうか!これはねーちゃんのものだ!」

少年には姉がいて、こういったぬいぐるみを幾つか持っていたことを思い出した。
だが何故そのぬいぐるみがこの部屋にあるのか。ここは少年の部屋の奥にあるおもちゃが沢山置かれている小部屋。棚には超合金で出来た変形するロボットや航空機のミニチュア。そしてミニカーが数多く飾られている男の子らしい部屋だ。そんな金属やプラスチックのおもちゃの中にポツンと置かれていたウサギのぬいぐるみは、まったく雰囲気にそぐわない異質の存在で、ウサギも異空間に迷い込んだと感じているはずだ。

「ねーちゃん、なんでこのウサギ。こんなところに置いてったんだ?」

そう呟いた少年は、白いウサギを手に部屋を出た。






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コメント
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dot 2018.09.21 07:18 | 編集
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dot 2018.09.21 08:15 | 編集
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dot 2018.09.21 08:18 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
こちらのお話のタイトルとウサギから想像出来るのは母の気持。
さて、少年はこれからどうするのでしょう。
お気に入り情報ありがとうございます!
遠い昔のアカシアはパンダ。それも巨大なパンダがいました(笑)
そして実物は長時間行列をした後、立ち止まるなと言われて見ましたが、人を見に行ったのか。パンダを見に行ったのか。子供ながらよく分かりませんでした(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.09.21 22:12 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
ウサギのぬいぐるみが出てきました。
こちらのお話がどのように展開するのか。
それはですね、短編ですから殆ど書き上がっています。
何しろ仰るとおり今月は9月。ただの月末ではありません。忙しい月です。
そういう訳で今月は短編月間です。
それにしても暑かったり涼しかったり忙しいですね。
身体がついていかないのはアカシアも同じです!(笑)
司*****E様もお身体ご自愛下さいませ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.09.21 22:24 | 編集
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