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2018
09.11

凶暴な純愛 2

土砂降りの雨の夜、傘をさした女がアパートへ帰る道を歩いていた。
学校を出た時は、これほど酷い雨ではなかったが今では風も出ていて、傘を差しても横から吹き付けてくる雨は服を濡らし手にした鞄も濡らしていた。

だが自宅まであと少しだ。
いつもなら7時半頃には帰っていたが、今日はテストの採点で遅くなり、時計は9時前を指していた。
そんなこともあり人通りのあるはずの道も人影はなかった。


つくしが英徳学園の数学教師として赴任したのは今年の春。
それまでは都内の別の私立高校に勤務していたが、英徳の数学教師でありつくしの学生時代の先輩である女性が体調を崩し、教師の職を辞することになった。そしてその先輩から英徳で働いてみないかといった声がかかり、彼女からの推薦もあり英徳で働くことになった。

英徳学園と言えば、幼稚舎から大学までエスカレーター式に進んでいける私立の名門。
そしてその学園は、金持ちの親を持つ特権階級の子弟が通う学園として有名であり、入学するにあたり重要視されるのは、子供の成績よりも家柄と親の職業と経済状態と言われていた。だがそんな学園でも頭のいい子もいて、教えがいというものがあった。

かつてつくしは英徳の高等部に通わないかと両親から言われたことがあった。だがやはり英徳というブランドは敷居が高く、都立高校へと進学したが、一度は進学を考えたこともあり全く知らない学園ではなかった。

そして英徳で働くことに決めたには、もう一つ理由があった。

3月まで勤めていた私立高校には別居中で離婚調停中の夫が勤務していたからだ。
約1年の交際を経て結婚し、2年の間夫婦として同じ屋根の下に暮らして来たが、ある日突然愛人がいると言われ離婚して欲しいと言われた。

相手は添乗員。
知り合ったきっかけは修学旅行の添乗を務めたその女性からのアプローチだったという。
だがその女性は夫のことをそれほど好きではなかったのか。遊びだったのか。色々と考えているうちに相手の女性から別に私はあなたのご主人と結婚したい訳ではありません。それに家庭を壊す気なんてありません。面倒な付き合いをしたいとは思いませんと言われ彼女は夫と別れた。
すると夫は、あれは一時の気の迷いだ。間違いだった。もう一度やり直そうと言った。だがつくしにはそのつもりはなかった。思えば結婚してから夫との仲は単なる同居人のような関係で、考えてみれば自分でも何故結婚したのか分からなかった。
だから調停を申し立てた。



夜、女性がひとり歩きするのは危険だと言われおり、もしどうしてもそういった状況になるのなら、携帯電話を片手にすぐに警察に通報出来る態勢で歩くことが犯罪防止に繋がると聞いた。けれど今夜は傘をさしており、もう片方は鞄を持ち塞がっているため携帯を持つことは出来なかった。

やがて曲がり角を曲がった所で目の前が突然明るくなり、思わず目をしばたたき、足を止めた。それは停車していた車のヘッドライトが上向きで照らされ、二つの白い眼玉が真っ直ぐ飛んで来たからだ。そして余りの眩しさに思わず傘を持った手で光りを遮るようにして前を見た。
だが逆光の中、運転席の人間の顔は見えず、低いエンジンの音だけが聞こえた。
そしていったい誰が?といった思いと共に、背中に恐怖が甦った。
それは丁度一週間前。今日よりももっと遅い時間のことだった。

駅から自宅まで、後をつけて来る足音を聞いた。
はじめは気のせいだと思った。駅からアパートまでの道は同じ方向へ帰る人がいてもおかしくはないからだ。だが路面に響く足音は、彼女が走れば同じように走っていた。そして止れば足音も止まる。後ろを忠実についてくる足音に、誰かが背後にいることだけは確実に感じられる。もしかすると夫ではないか。だが調停中に相手に接触することは弁護士から禁止されているはずだ。それなら誰が?だから振り返って見たいといった気になった。けれど、怖くて振り返ることを躊躇った。そして足を早め、アパートに辿り着くと階段を駆け上がり部屋に飛び込んだ。

だが今はあの時とは状況が違う。なぜならアパートは車の向うにあり、その道を通らない限りアパートへ帰ることは出来なかった。
そして道の左右は高い塀に囲まれた家が建ち、通行人は誰もおらず、激しく降る雨はアスファルトの上で跳ねているが、足元を気遣う余裕はなく、一週間前、後ろをついてくる足音に恐怖を感じて以来、今はどうすれば目の前のヘッドライトから逃げることが出来るかを考えた。

だがそのとき逆光の中に人影が見えた。
もちろん顔は分かるはずもなく、その姿に恐怖を感じた。
そして正面から歩いて来るのは傘をさした男性だと分かった。それもかなりの長身であることが分かると足が後ずさりをした。
だが男はヘッドライトの光りを背にどんどん近づいて来る。
次の瞬間、つくしは背を向け走り出そうとしたが、男の手が彼女の腕を掴んだ。





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コメント
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dot 2018.09.11 06:45 | 編集
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dot 2018.09.11 11:58 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
離婚調停中の女。
彼女の後をつけていたのは誰?
そして目の前に現れた男は誰?
二人の出会いは?短いお話です。
結果はすぐそこです^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.09.11 22:13 | 編集
さ***ん様
さて、後をつけて来た男と傘をさして近づいて来た男は誰なのか?
ふたりはどうやって知り合ったのか?
ウエットティッシュの出番は?
えー。こちら短編ですので結果は早いと思います!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.09.11 22:14 | 編集
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