別荘管理の仕事は毎日が坦々としたものだった。
水がちゃんと出るか。湯が出るか。コンロは使えるか。冷暖房設備は使えるか。
窓や扉の破損はないか。各部屋にある時計はちゃんと時を刻んでいるか。
広い別荘の部屋をひとつひとつ異常がないかを見て回り、広大な敷地も見て回るのがジョージの仕事だった。
だが山がまるごと別荘の敷地ともなれば、かなりの広さだが、車窓から見える景色はこの国の雄大さと美しさを感じさせてくれ、子供の頃から慣れ親しんだ風景と同じだと思うと、やはり自分はこういった自然の中で暮らすことが好きなのだと感じていた。
そして秋から始まった仕事は、雪が降るまでは週に一度は山から下り生活に必要な物を買いそろえる。それは食料だったり、日用品だったりした。そして誰も住んでいない別荘なのだから届くはずがないのだが、郵便局へ行き私書箱の郵便物を確認した。
そして山を下りた日は、管理会社のオフィスへ行き異常がないことの報告を済ませると、会社が用意した自宅アパートでコーヒーを飲みながらぼんやりと過ごす。それが彼の休日の過ごし方だった。
ジョージは特段話し相手が欲しいとは思わなかった。
元々ひとりでいることが好きだから、ひとりで過ごすことを苦痛だと感じることはなかった。
そして山の中の別荘はただでさえ静かだが、夜になれば尚更のこと静かだった。
だが心細さは感じなかった。何しろ大学へ通うまでの生活は、ここと同じで夜は満天の星を眺めて過ごすのが当たり前だったから。
そんな環境で好きな音楽を聴きながら、読書をすることに飽きることはなく、静けさを楽しむことが出来た。都会暮らしよりも田舎でこうして暮らす方が自分に向いている。そう思っていた。
そしてここは、何もない場所で自分と向き合うことが出来る場所でもあった。
ジョージは大学時代恋人がいたが、卒業する前に別れた。些細な喧嘩だった。だからやり直しが出来ると思っていた。だが関係が修復されることはなかった。
そんなことを思い出したのも、やはりここが何も無い場所だからなのか。
それとも今の自分には他に考えることがないからなのか。だが二人は別れたのだ。考えたところでどうにもならないはずだ。
やがて時が流れ、涼やかな風が木々の葉を落とし、初冬の空気が感じられ雪が降る季節が来たが、山の中の別荘はいつもと変わらず静かな時が流れていた。
そして雪が降る前に準備した薪は倉庫に積まれていて、暖炉の火はいつでも起こせる状態にしてあった。
それでもジョージは、長年の雪山暮らしの経験から、今年の冬は例年になく寒いはずだ。薪はもっとあった方がいいと感じていた。
だから、準備されていた薪とは別に、自らの手で薪割り作業をすると倉庫へ運んでいた。
そしてその日は風のない穏やかな午後だった。
倉庫から出ると、別荘へ続く道を白い大きな四輪駆動車が走っているのが見えた。
やがて近づいてくると、エンジンの唸る音が聞え、スピードが落ちた。
そして車は建物の正面に止まり、ひとりの男性が降りて来るのが見えた。

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水がちゃんと出るか。湯が出るか。コンロは使えるか。冷暖房設備は使えるか。
窓や扉の破損はないか。各部屋にある時計はちゃんと時を刻んでいるか。
広い別荘の部屋をひとつひとつ異常がないかを見て回り、広大な敷地も見て回るのがジョージの仕事だった。
だが山がまるごと別荘の敷地ともなれば、かなりの広さだが、車窓から見える景色はこの国の雄大さと美しさを感じさせてくれ、子供の頃から慣れ親しんだ風景と同じだと思うと、やはり自分はこういった自然の中で暮らすことが好きなのだと感じていた。
そして秋から始まった仕事は、雪が降るまでは週に一度は山から下り生活に必要な物を買いそろえる。それは食料だったり、日用品だったりした。そして誰も住んでいない別荘なのだから届くはずがないのだが、郵便局へ行き私書箱の郵便物を確認した。
そして山を下りた日は、管理会社のオフィスへ行き異常がないことの報告を済ませると、会社が用意した自宅アパートでコーヒーを飲みながらぼんやりと過ごす。それが彼の休日の過ごし方だった。
ジョージは特段話し相手が欲しいとは思わなかった。
元々ひとりでいることが好きだから、ひとりで過ごすことを苦痛だと感じることはなかった。
そして山の中の別荘はただでさえ静かだが、夜になれば尚更のこと静かだった。
だが心細さは感じなかった。何しろ大学へ通うまでの生活は、ここと同じで夜は満天の星を眺めて過ごすのが当たり前だったから。
そんな環境で好きな音楽を聴きながら、読書をすることに飽きることはなく、静けさを楽しむことが出来た。都会暮らしよりも田舎でこうして暮らす方が自分に向いている。そう思っていた。
そしてここは、何もない場所で自分と向き合うことが出来る場所でもあった。
ジョージは大学時代恋人がいたが、卒業する前に別れた。些細な喧嘩だった。だからやり直しが出来ると思っていた。だが関係が修復されることはなかった。
そんなことを思い出したのも、やはりここが何も無い場所だからなのか。
それとも今の自分には他に考えることがないからなのか。だが二人は別れたのだ。考えたところでどうにもならないはずだ。
やがて時が流れ、涼やかな風が木々の葉を落とし、初冬の空気が感じられ雪が降る季節が来たが、山の中の別荘はいつもと変わらず静かな時が流れていた。
そして雪が降る前に準備した薪は倉庫に積まれていて、暖炉の火はいつでも起こせる状態にしてあった。
それでもジョージは、長年の雪山暮らしの経験から、今年の冬は例年になく寒いはずだ。薪はもっとあった方がいいと感じていた。
だから、準備されていた薪とは別に、自らの手で薪割り作業をすると倉庫へ運んでいた。
そしてその日は風のない穏やかな午後だった。
倉庫から出ると、別荘へ続く道を白い大きな四輪駆動車が走っているのが見えた。
やがて近づいてくると、エンジンの唸る音が聞え、スピードが落ちた。
そして車は建物の正面に止まり、ひとりの男性が降りて来るのが見えた。

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Comment:2
コメント
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司*****E様
おはようございます^^
豪華な別荘の管理人ジョージ。
主がいつ来てもいいようにメンテナンスは欠かせません。
そして季節は移ろいましたが、ジョージの前に現れた男性は誰?
あの人でしょうか?(笑)こちら短編ですからあの人でしょう!(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
豪華な別荘の管理人ジョージ。
主がいつ来てもいいようにメンテナンスは欠かせません。
そして季節は移ろいましたが、ジョージの前に現れた男性は誰?
あの人でしょうか?(笑)こちら短編ですからあの人でしょう!(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.09.04 23:23 | 編集
