かつてF4と呼ばれ、つるんでいることが多かった4人の男たちも、大人になると全員揃うことは滅多になく、中でも司と類と総二郎の3人が一同に顔を揃えるのは1年振りで、こうして集まったのは、司の婚約を祝うためで、相手の女性を紹介してもらうためだった。
「よう。司!お前いつの間に結婚することに決めたんだよ?俺には一言も相談なしじゃ寂しいだろ?」
「寂しいも何もお前に相談する必要があるか?」
司にしてみれば誰と結婚しようが相談するもなにもないのだが、総二郎は我が身のことはさておき、この日の主役に訊いた。
「いや。あるとは言えねぇが、いきなりってのはどうなんだ?それにあきらが知ってて俺が後になるってのが不平等を感じる。俺らは仲間だろ?幼馴染みだろ?色んなものを分け合ってきた仲だ。もっと早く知らせてくれての良かったんじゃねぇの?でもまあ仕方ねぇか。俺は殆ど日本に居なかったんだし、今の俺たちはそれぞれに置かれた立場が違う。昔のようにいかねぇのは理解してるつもりだ。それに仲間の中で俺だけが一般的な社会とは違う立ち位置にいるってことは分かってるつもりだ」
総二郎はそう言ってから司の隣に腰を下ろしたつくしに挨拶をした。
「はじめまして。俺は西門総二郎。茶道西門流の次期家元。つまり只今家元修行中の身。趣味はお茶を点てる事と言いたいが、女性と旨い酒を飲むこと。それからたまにだが野生動物の観察。司とは物心ついた頃からずっと一緒にいたから兄弟みたいなモンかな?ま、そんなことでよろしく」
と楽しそうに喋った。
そして次に口を開いた類は、「君が牧野さん?」と、司の隣にいるのだから改めて問いかける必要もないはずだが、そう言ってつくしをじっと見つめ、「俺たちどこかで会ったことがある?」とまるで知り合いのような口を利くのだから司がムッとした顔をしたのは言うまでもない。
「類。いい加減にしろ。司の顔を見ろ。青筋立ってんぞ。彼女は司が遊びで付き合ってる女じゃない。婚約者だ。そんな口を利くな。失礼だろ」
あきらは、ほら見ろ。類は司の事となるといつもこの調子だ。といった表情を浮かべ総二郎を見た。
そしてムッとした表情を浮かべた司は、つくしの肩に腕を回し警戒心丸出した。
「だってさ、アフリカから戻ったばっかりなのに呼び出されてさ。おまけに訊けば俺が日本を離れる半年前。司の会社と争ってた入札の件。取られてるしさ。そのうえ司にはもったいないようなかわいい人が婚約者だなんて不公平だよ」
もったいないようなかわいい人。
35歳の女に対しそんな言葉を平気で口にすることが出来る類は、限りなく天然なところがあるが、話す言葉が率直な分だけ嘘がない男だと言われていた。
だからあきらも総二郎も類の言葉には一目を置いていたが、まさか自分達と同世代の女に対しそんな言葉が使えるとは思わなかった。何しろ二人が知る類は女に対しストイックな考えを持ち、そんじょそこらの女に気持ちが動かされることはなく好みが煩い。
それが司の婚約者に対して、やけに親しげに接する様子は今までの類には見られなかった態度だ。
そして、親友だからこそそれに気づいた司は、類の顔を見据えた。
「類。言っとくがな。つくしは俺のものだ。こいつは俺が見つけた女だ。お前、人のものを欲しがる前に悔しかったらつくしのようなかわいい女を手に入れてみろ」
司は類に言葉を返したが、その言い方は幼い子どもの「悔しかったらここまでおいで」と言わんばかりの言い方だ。
そして「人のものを欲しがる」のパターンになると必ず持ち出される昔ばなしがあった。
「司。言わせてもらうけど幼稚舎の頃。お前俺のテディベア隠したろ。あれはお前が俺のものを取ったんだぞ?あの時俺がどれだけ悲しかったかお前分かってんのか?」
あきらも総二郎も知るその事件。
類の熊が姿を消したのは、随分と昔の話だ。
「そんなもん知らねぇよ!だいたい男のくせに熊のぬいぐるみを友達にしてる方がおかしいんだよ!友達なら俺らがいただろうが。それなのにお前は熊の__なんて名前だが忘れたがその熊に話しかけてたろうが。熊に話す前に俺らに話せばいいだろうが!」
「テディだよ。あの熊の名前はテディ」
類は小さな声で熊の名前を呟くと、ここで言わなくていつ言えばいいんだとばかりに口を開いた。
「司。お前がそこまで言うなら言わせてもらうよ。お前だってウサギのぬいぐるみ持ってたよな?白いウサギのぬいぐるみ。あれはなんだよ?俺知ってるよ。いつだったがお前の家に遊びに行ったとき、ベッドの上。枕元に置かれてたのを見たからね。司だってあのウサギに名前付けてたんだろ?話しかけてたんだろ?」
「あ、あれは姉ちゃんのだ。姉ちゃんが俺の部屋に忘れてったんだ!」
実は司も母親からもらったウサギのぬいぐるみを大切にしていた事があった。
類はそれを見たのだ。
「ふぅん。あのウサギ姉ちゃんのウサギ?それなら俺これから姉ちゃんに電話して聞いてやるよ。司の部屋のベッドの上に白いウサギを忘れましたかって。姉ちゃんは記憶力がいいから絶対に覚えてるはずだ。それに大体姉ちゃんは白いウサギのぬいぐるみを持つようなタイプじゃないし、アレは絶対に司のだよ」
「うるせぇな….違うって言ってんだろうが!」
「何そんなにムキになってんだよ。違うなら俺が姉ちゃんに電話しても問題ないよな?」
類はそう言うと携帯電話を取り出しおもむろに電話をかけようとした。
「おい。お前らいい加減にしろ!遠い昔の話を蒸し返すのは止めろ。だいたい類もしつこいぞ。熊のぬいぐるみの件はとっくの昔に話しがついてるだろ?司も謝ったんだし類も許しただろ?それを今更何大人げないことやってんだよ。ごめんな。つくしちゃん。こいつら本当はすげぇ仲がいいんだが、ちょっとした弾みで時にこんな状況に陥ることがあるが気にしないでくれ。兄弟喧嘩だと思ってくれ。こいつら仲がいいほど喧嘩するってパターンだ」
あきらは、やっぱり仲介役は俺だといった思いと、この役回りは総二郎では無理だといった思いを持っていたが、いい年をした大人の男のどうでもいい喧嘩を見ることになった女はこれから先もずっとこの状況に付き合うことになるとは思いもしないはずだ。
だがそれは別として、牧野つくしが類から好意を持たれた状況を確認出来たことは好ましいことだと感じていた。
何故なら類の洞察力と直感力の鋭さは誰もが知ることで、類が認めた女なら悪い女じゃない。
それにあきらも認めた。そして総二郎も認めているのが分かった。
そして当のつくしは、この状況に「子供の喧嘩みたい」と呟いたがまさしくそうだ。
「あの皆さん。今日は私たちのためにお忙しいところを集まって下さってありがとうございます。花沢さんアフリカから帰国したばかりでお疲れですよね。それなにありがとうございます」
と、つくしが頭を下げると、
「いいんだ。俺は君に会う前から気が合いそうな気がしてた。本当楽しみにしてたんだ。だから気にしないで。ただこの日を選んだ司に文句が言いたいけどね」
「類!止めろって。司を煽るな!」
あきらの言葉に類は何食わぬ顔をしているが、司は明らかに怒りを抑えている表情をしていた。
そしてそんな男を尻目に言葉を継いだのはつくしだ。
「皆さんが仲がいいことは分かりました。子供の頃から今まで仲がいいということは、とても貴重なことだと思います。友情は短い期間で成り立つものではありません。皆さんのように率直な言葉が言える関係は大切だと思います」
「そうだよな。つくしちゃん。俺もそう思う。だから今後も俺ら4人のこと、よろしく頼むわな。こう見えて俺ら結構子供だからな」
「総二郎!それにあきらもお前らどさくさに紛れてこいつのことつくしちゃんって呼んだよな?いいか?人の嫁を軽々しく名前で呼ぶんじゃねぇよ!」
「いいじゃん。名前を呼ぶくらい。それにまだ結婚してないんだから嫁じゃないよね?全く司はひと前では大人ぶってるけど、そういったところは子供だよ。クールで通ってる男も好きな女の前じゃ簡単に子供に戻るんだからその姿を世間に見せてやりたいよ」
そんな類の言葉に笑ったのはつくしだ。
4人の男たちは、予想外の彼女の反応に驚いた。
なぜなら大抵の女は男どもが揉めることを嫌がる。止めてと言う。
だが彼女は笑っていた。
そして彼女の笑いにつられたのは、あきら。そして総二郎。
二人は道明寺司という男が愛する女のために自分のライフスタイルを変えた理由を知った。
それは牧野つくしと一緒にいる司が、まだ彼らがF4と呼ばれる前の少年の心を持つ男に戻るからだ。
負けず嫌いで、意地っ張りで、それでいてひとりでいることが厭だった子供に。
そしてそれは、誰にも見せたことがない心の奥を彼女に見せているということだが、そこに行き着くまでの一歩を踏み出すまでは、何かがあったはずだが、それは他人が知る必要はない。
そして牧野つくしの笑いはやがて類の顔に笑みを浮かべさせ、司の頬が緩むのを許していた。
「つくし。類は冗談がキツイ男だが、言ってることは正しい。人とは違った観点で物事を見る男だ。だから信頼していいぞ」
「そうだ。俺たちのことも信頼してくれ。それに俺たちの友情ってのは硬い絆で結ばれてる。絶対に切れることはねぇな。そうだろ総二郎」
「そうだ。俺たちの絆は鋼の絆って感じだ」
「でも俺」類がいたずらっぽく笑った。
「どうせなら司と出会う前の牧野つくしと赤い絆で結ばれたかった」
あれからつくしは、司の親友たちから訊かれるままに、自分のことを語っていたような気がしていた。
そして楽しかった時間はあっという間に過ぎたが、つくしが彼女への興味を隠そうとしない花沢類と話し始めると、司の機嫌が悪くなるのは、これからもきっとそうだと分かった。
つまりそれはつくしが花沢類に取れるかもしれないと考えているからだ。
「何笑ってんだ?」
「え?」
「だから何をひとりで笑ってる?」
「別に」
「いや。絶対何か考えてる。それも俺以外のことを」
車の中で隣に座った男は、そう言ってつくしの考えていることを読もうとしていた。
そして司の熱い眼差しは、じっと彼女を見つめるが、つくしはほほ笑みでその視線を受け止めた。
そんな女の手を取って引き寄せながら、司は言った。
「愛してる。つくし」
そして熱いキスをした。

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「よう。司!お前いつの間に結婚することに決めたんだよ?俺には一言も相談なしじゃ寂しいだろ?」
「寂しいも何もお前に相談する必要があるか?」
司にしてみれば誰と結婚しようが相談するもなにもないのだが、総二郎は我が身のことはさておき、この日の主役に訊いた。
「いや。あるとは言えねぇが、いきなりってのはどうなんだ?それにあきらが知ってて俺が後になるってのが不平等を感じる。俺らは仲間だろ?幼馴染みだろ?色んなものを分け合ってきた仲だ。もっと早く知らせてくれての良かったんじゃねぇの?でもまあ仕方ねぇか。俺は殆ど日本に居なかったんだし、今の俺たちはそれぞれに置かれた立場が違う。昔のようにいかねぇのは理解してるつもりだ。それに仲間の中で俺だけが一般的な社会とは違う立ち位置にいるってことは分かってるつもりだ」
総二郎はそう言ってから司の隣に腰を下ろしたつくしに挨拶をした。
「はじめまして。俺は西門総二郎。茶道西門流の次期家元。つまり只今家元修行中の身。趣味はお茶を点てる事と言いたいが、女性と旨い酒を飲むこと。それからたまにだが野生動物の観察。司とは物心ついた頃からずっと一緒にいたから兄弟みたいなモンかな?ま、そんなことでよろしく」
と楽しそうに喋った。
そして次に口を開いた類は、「君が牧野さん?」と、司の隣にいるのだから改めて問いかける必要もないはずだが、そう言ってつくしをじっと見つめ、「俺たちどこかで会ったことがある?」とまるで知り合いのような口を利くのだから司がムッとした顔をしたのは言うまでもない。
「類。いい加減にしろ。司の顔を見ろ。青筋立ってんぞ。彼女は司が遊びで付き合ってる女じゃない。婚約者だ。そんな口を利くな。失礼だろ」
あきらは、ほら見ろ。類は司の事となるといつもこの調子だ。といった表情を浮かべ総二郎を見た。
そしてムッとした表情を浮かべた司は、つくしの肩に腕を回し警戒心丸出した。
「だってさ、アフリカから戻ったばっかりなのに呼び出されてさ。おまけに訊けば俺が日本を離れる半年前。司の会社と争ってた入札の件。取られてるしさ。そのうえ司にはもったいないようなかわいい人が婚約者だなんて不公平だよ」
もったいないようなかわいい人。
35歳の女に対しそんな言葉を平気で口にすることが出来る類は、限りなく天然なところがあるが、話す言葉が率直な分だけ嘘がない男だと言われていた。
だからあきらも総二郎も類の言葉には一目を置いていたが、まさか自分達と同世代の女に対しそんな言葉が使えるとは思わなかった。何しろ二人が知る類は女に対しストイックな考えを持ち、そんじょそこらの女に気持ちが動かされることはなく好みが煩い。
それが司の婚約者に対して、やけに親しげに接する様子は今までの類には見られなかった態度だ。
そして、親友だからこそそれに気づいた司は、類の顔を見据えた。
「類。言っとくがな。つくしは俺のものだ。こいつは俺が見つけた女だ。お前、人のものを欲しがる前に悔しかったらつくしのようなかわいい女を手に入れてみろ」
司は類に言葉を返したが、その言い方は幼い子どもの「悔しかったらここまでおいで」と言わんばかりの言い方だ。
そして「人のものを欲しがる」のパターンになると必ず持ち出される昔ばなしがあった。
「司。言わせてもらうけど幼稚舎の頃。お前俺のテディベア隠したろ。あれはお前が俺のものを取ったんだぞ?あの時俺がどれだけ悲しかったかお前分かってんのか?」
あきらも総二郎も知るその事件。
類の熊が姿を消したのは、随分と昔の話だ。
「そんなもん知らねぇよ!だいたい男のくせに熊のぬいぐるみを友達にしてる方がおかしいんだよ!友達なら俺らがいただろうが。それなのにお前は熊の__なんて名前だが忘れたがその熊に話しかけてたろうが。熊に話す前に俺らに話せばいいだろうが!」
「テディだよ。あの熊の名前はテディ」
類は小さな声で熊の名前を呟くと、ここで言わなくていつ言えばいいんだとばかりに口を開いた。
「司。お前がそこまで言うなら言わせてもらうよ。お前だってウサギのぬいぐるみ持ってたよな?白いウサギのぬいぐるみ。あれはなんだよ?俺知ってるよ。いつだったがお前の家に遊びに行ったとき、ベッドの上。枕元に置かれてたのを見たからね。司だってあのウサギに名前付けてたんだろ?話しかけてたんだろ?」
「あ、あれは姉ちゃんのだ。姉ちゃんが俺の部屋に忘れてったんだ!」
実は司も母親からもらったウサギのぬいぐるみを大切にしていた事があった。
類はそれを見たのだ。
「ふぅん。あのウサギ姉ちゃんのウサギ?それなら俺これから姉ちゃんに電話して聞いてやるよ。司の部屋のベッドの上に白いウサギを忘れましたかって。姉ちゃんは記憶力がいいから絶対に覚えてるはずだ。それに大体姉ちゃんは白いウサギのぬいぐるみを持つようなタイプじゃないし、アレは絶対に司のだよ」
「うるせぇな….違うって言ってんだろうが!」
「何そんなにムキになってんだよ。違うなら俺が姉ちゃんに電話しても問題ないよな?」
類はそう言うと携帯電話を取り出しおもむろに電話をかけようとした。
「おい。お前らいい加減にしろ!遠い昔の話を蒸し返すのは止めろ。だいたい類もしつこいぞ。熊のぬいぐるみの件はとっくの昔に話しがついてるだろ?司も謝ったんだし類も許しただろ?それを今更何大人げないことやってんだよ。ごめんな。つくしちゃん。こいつら本当はすげぇ仲がいいんだが、ちょっとした弾みで時にこんな状況に陥ることがあるが気にしないでくれ。兄弟喧嘩だと思ってくれ。こいつら仲がいいほど喧嘩するってパターンだ」
あきらは、やっぱり仲介役は俺だといった思いと、この役回りは総二郎では無理だといった思いを持っていたが、いい年をした大人の男のどうでもいい喧嘩を見ることになった女はこれから先もずっとこの状況に付き合うことになるとは思いもしないはずだ。
だがそれは別として、牧野つくしが類から好意を持たれた状況を確認出来たことは好ましいことだと感じていた。
何故なら類の洞察力と直感力の鋭さは誰もが知ることで、類が認めた女なら悪い女じゃない。
それにあきらも認めた。そして総二郎も認めているのが分かった。
そして当のつくしは、この状況に「子供の喧嘩みたい」と呟いたがまさしくそうだ。
「あの皆さん。今日は私たちのためにお忙しいところを集まって下さってありがとうございます。花沢さんアフリカから帰国したばかりでお疲れですよね。それなにありがとうございます」
と、つくしが頭を下げると、
「いいんだ。俺は君に会う前から気が合いそうな気がしてた。本当楽しみにしてたんだ。だから気にしないで。ただこの日を選んだ司に文句が言いたいけどね」
「類!止めろって。司を煽るな!」
あきらの言葉に類は何食わぬ顔をしているが、司は明らかに怒りを抑えている表情をしていた。
そしてそんな男を尻目に言葉を継いだのはつくしだ。
「皆さんが仲がいいことは分かりました。子供の頃から今まで仲がいいということは、とても貴重なことだと思います。友情は短い期間で成り立つものではありません。皆さんのように率直な言葉が言える関係は大切だと思います」
「そうだよな。つくしちゃん。俺もそう思う。だから今後も俺ら4人のこと、よろしく頼むわな。こう見えて俺ら結構子供だからな」
「総二郎!それにあきらもお前らどさくさに紛れてこいつのことつくしちゃんって呼んだよな?いいか?人の嫁を軽々しく名前で呼ぶんじゃねぇよ!」
「いいじゃん。名前を呼ぶくらい。それにまだ結婚してないんだから嫁じゃないよね?全く司はひと前では大人ぶってるけど、そういったところは子供だよ。クールで通ってる男も好きな女の前じゃ簡単に子供に戻るんだからその姿を世間に見せてやりたいよ」
そんな類の言葉に笑ったのはつくしだ。
4人の男たちは、予想外の彼女の反応に驚いた。
なぜなら大抵の女は男どもが揉めることを嫌がる。止めてと言う。
だが彼女は笑っていた。
そして彼女の笑いにつられたのは、あきら。そして総二郎。
二人は道明寺司という男が愛する女のために自分のライフスタイルを変えた理由を知った。
それは牧野つくしと一緒にいる司が、まだ彼らがF4と呼ばれる前の少年の心を持つ男に戻るからだ。
負けず嫌いで、意地っ張りで、それでいてひとりでいることが厭だった子供に。
そしてそれは、誰にも見せたことがない心の奥を彼女に見せているということだが、そこに行き着くまでの一歩を踏み出すまでは、何かがあったはずだが、それは他人が知る必要はない。
そして牧野つくしの笑いはやがて類の顔に笑みを浮かべさせ、司の頬が緩むのを許していた。
「つくし。類は冗談がキツイ男だが、言ってることは正しい。人とは違った観点で物事を見る男だ。だから信頼していいぞ」
「そうだ。俺たちのことも信頼してくれ。それに俺たちの友情ってのは硬い絆で結ばれてる。絶対に切れることはねぇな。そうだろ総二郎」
「そうだ。俺たちの絆は鋼の絆って感じだ」
「でも俺」類がいたずらっぽく笑った。
「どうせなら司と出会う前の牧野つくしと赤い絆で結ばれたかった」
あれからつくしは、司の親友たちから訊かれるままに、自分のことを語っていたような気がしていた。
そして楽しかった時間はあっという間に過ぎたが、つくしが彼女への興味を隠そうとしない花沢類と話し始めると、司の機嫌が悪くなるのは、これからもきっとそうだと分かった。
つまりそれはつくしが花沢類に取れるかもしれないと考えているからだ。
「何笑ってんだ?」
「え?」
「だから何をひとりで笑ってる?」
「別に」
「いや。絶対何か考えてる。それも俺以外のことを」
車の中で隣に座った男は、そう言ってつくしの考えていることを読もうとしていた。
そして司の熱い眼差しは、じっと彼女を見つめるが、つくしはほほ笑みでその視線を受け止めた。
そんな女の手を取って引き寄せながら、司は言った。
「愛してる。つくし」
そして熱いキスをした。

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司*****E様
おはようございます^^
やはり類はつくしのことが気に入った。
そして昔の話を持ち立ち口喧嘩を始めた男ふたり。
あきらはヒヤヒヤ。総二郎はニヤニヤしながら見ているのでしょう。
大人になっても4人が揃えば昔に戻る。
それを微笑ましく思える女は、思わず笑ってしましました。
司はこれから先、つくしのことをネタに類にいじられていくのは間違いありませんね?
それに類だけが司をいじってもいいんです(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
やはり類はつくしのことが気に入った。
そして昔の話を持ち立ち口喧嘩を始めた男ふたり。
あきらはヒヤヒヤ。総二郎はニヤニヤしながら見ているのでしょう。
大人になっても4人が揃えば昔に戻る。
それを微笑ましく思える女は、思わず笑ってしましました。
司はこれから先、つくしのことをネタに類にいじられていくのは間違いありませんね?
それに類だけが司をいじってもいいんです(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.28 22:52 | 編集

さ***ん様
ウサギとクマの話になると子供に戻る司と類(笑)
勝負はあきらが間に入ったことで引き分けです。
仲間の誰かが結婚を決めれば祝うのは彼らの中では当たり前ですが、司の相手がつくしとなると素直に祝えない類。
司と類の好みは一緒なんですから仕方がありません。
類の発言はいつも爆弾発言ですから、この先もそんな発言が出そうな気もします。
コメント有難うございました^^
ウサギとクマの話になると子供に戻る司と類(笑)
勝負はあきらが間に入ったことで引き分けです。
仲間の誰かが結婚を決めれば祝うのは彼らの中では当たり前ですが、司の相手がつくしとなると素直に祝えない類。
司と類の好みは一緒なんですから仕方がありません。
類の発言はいつも爆弾発言ですから、この先もそんな発言が出そうな気もします。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.28 22:54 | 編集

ま***ん様
こんにちは^^
本当に猛暑続きですね。おかげ様でなんとかという状況です(笑)
炎天下に出歩くのは危険と言われていますが、それでも出なければ!
そして先日倒れそうになる暑さに、建物の中に入った途端、ぜいぜいと息を吐きました。
水分の持ち歩きは勿論なのですが、本当に今年の暑さは異常です。
大人になったF4。
そのF4が炎天下の中、歩くことはないと思いますが、一度歩かせてみたいものです。
それにしてもいい年をした大人が大人げない喧嘩をする様子に、つくしは笑う以外ありませんよね。
そしてその微笑みがみんなを虜にしたようです。
コメント有難うございました^^
こんにちは^^
本当に猛暑続きですね。おかげ様でなんとかという状況です(笑)
炎天下に出歩くのは危険と言われていますが、それでも出なければ!
そして先日倒れそうになる暑さに、建物の中に入った途端、ぜいぜいと息を吐きました。
水分の持ち歩きは勿論なのですが、本当に今年の暑さは異常です。
大人になったF4。
そのF4が炎天下の中、歩くことはないと思いますが、一度歩かせてみたいものです。
それにしてもいい年をした大人が大人げない喧嘩をする様子に、つくしは笑う以外ありませんよね。
そしてその微笑みがみんなを虜にしたようです。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.28 22:56 | 編集
