気配を感じ振り返ったそこにいたのは黒いドーベルマン犬。
ドイツ生まれで警備犬、軍用犬として活躍している犬は護衛能力が高い犬で飼い主を守るには最適の犬だと言われているが、そのドーベルマンがつくしの前にしゃがみこんだ姿でいて身動きせずにじっとこちらを見つめていた。
犬が迷い犬ではない事は一目瞭然だ。
強固なセキュリティ対策が施されたこの邸に人であれ動物であれ侵入することは先ず出来ないからだ。それに犬には首輪が嵌められていた。そう考えればその犬が道明寺邸の警備犬であることが分かるが、ここでは警備のため犬が放し飼いにされているのだろうか。
だがそうなら注意を受けるはずだが、そんな話は訊かなかったが、もしかすると入ってはいけない場所に迷い込んでしまったのだろうか。
もしそうだとすれば、早々にこの場から立ち去らなければと思った。
何故ならこのドーベルマンが警備犬なら間違いなく見知らぬ人物を、つまりつくしを侵入者と見なし襲い掛かる可能性があるからだ。
だが犬はうなり声も吠え声もあげることなく、ただその場でじっとつくしを見て動こうとはしなかった。
つくしは犬には慣れている。
隣の岡村恵子の家にチワワのレオンがいるからだ。とは言えドーベルマンとチワワでは同じイヌ科だとしても、あまりにも違い過ぎる。もしチワワのレオンがここにいたとすれば、ドーベルマンを見て何を思うだろう。自分の身体よりも数倍大きな犬と、鼻と鼻をつけるようにして匂いを嗅ぎあったり、お尻を嗅ぎあう犬同士の挨拶をすることが出来るだろうか。
そしてドーベルマンはレオンを見て何を思うだろうか。なんだ。ネズミか?そんなことを思うような気がしたが、そんなことを考えている場合ではないはずだ。とにかくここを立ち去らなければならない。
だがどうやって立ち去ろう。
いきなり走れば追いかけて来ることは分かる。それなら少しずつ遠ざかればいいだろうか。
熊に出会ったら後ろ向きでゆっくりと下がるといいと言われるが、犬の場合はどうすればいいのだろう。それにしも、まさかここでドーベルマンと視線を合わせるとは思いもしなかった。
そして黒い犬は耳をピンと立て、周囲の音を訊いているようだが、つくしが見つめていると口を開け笑っているような顔をした。
「動くなよ。牧野。走って逃げるな。その犬は知らない人間が急な動きをすれば飛びかかるように訓練されている。だからじっとしてろ」
犬と対峙していて気付かなかったが、後ろから男の声がしてびっくりしてしまった。
そして動くなと言われた女は前を向いたまま微動だにしなかった。
「副社長?」
「ゼウス。伏せだ」
男はつくしの隣に並ぶと犬に向かって言った。
すると犬は命令された通り伏せをした。そして司の顔をじっと見ている。
「ゼウス?」
「そうだ。こいつの名前はゼウス。ギリシャの神々の中で一番偉い神の名前がこいつの名前だ。ゼウスはうちの警備犬だ。主人を守る為に訓練されている。とても賢い犬で飼い主の言葉に忠実だ」
ゼウスは自分が褒められたことが分かるのか。短い尻尾を振った。
「こいつは俺が日本へ帰国してから飼い始めた犬だ。多少気難しいところがある犬で面倒を見ている人間と俺以外には懐かない。それにこいつから走って逃げようとしても無駄だ。絶対に逃げることは出来ない」
司は牧野つくしが庭に向かって走り出してから、自分が追いかけると同時に犬の管理小屋に赴き、彼女が椅子に掛けていたカーディガンをゼウスに嗅がせ追わせた。そして命令された犬は建物の角を曲がり、庭木が生い茂っている場所を抜け、彼女が立ち止まっている所を見つけると静かに後ろに付け主が現れるのを待っていた。
「それにしても、お前は足が速いな。まあお前がそんな風に走ってくれるならゼウスが喜んで付き合ってくれるはずだ。こいつは走るのが好きだ。遊んでくれる人間は大歓迎だ。何しろこいつはまだ若い。人間の年齢に置き換えれば二十歳過ぎだ。遊びたい盛りの年頃だ。なあゼウス?」
そう言って手を動かした男の動作にゼウスはお座りの姿勢を取った。
ドーベルマンはその姿勢であがめるように主をじっと見つめ何かを期待している顔をしていたが、男が近づき頭を撫で始めると気持ちよさそうに目を閉じた。それは信頼関係があるから出来る行為で、主がひと言命令すれば鋭い牙を剥き敵とみなした人間を攻撃するはずだ。
つくしは逃げて来た。
道明寺司の傍から。それなのに、直ぐに見つけられた。犬まで使って見つけられた。
まさか犬が追いかけて来ていたとは知らなかったが、せっかく一生懸命走ったのにすぐに見つけられたことが悔しかった。
そして逃げた理由は明らかだ。嘘をついたことを許して欲しいなら結婚して下さいと言ったが、それに対し喜んでお前と結婚しよう。結婚してくれと言った男にレモネードをぶっかけたからだ。
だが何故そんなことをしたのか。桜子の声が自分の言葉に責任を持つのが大人だと言っているのが聞えたが、もしその通りにするならつくしは道明寺司と結婚しなければいけない。
何しろ相手もその意思があるのだから。
だがつくしは今の自分がいったい何がしたいのか分からなかった。
はっきり言って頭が混乱していた。飲んだのはレモネードであってアルコールではないのだから、酔っているはずもないのだが、何故こんな事態に立ち至ってしまったのか。
それにしても、つくしがこんなに思考を巡らせているというのに、目の前の男は優雅に犬の頭を撫でている姿に優越感が感じられ、ムカついてきた。だが道明寺司という男とドーベルマンはいかにも相応しい犬だ。そして犬のしなやかな体躯は黒い矢のように獲物に向かっていくはずだ。
つくしは犬が目を閉じていることと、男が犬の頭に手を乗せている姿を見ながら、静かに足を一歩後ろへと引いた。そしてもう片方の足も引いた。犬の片目が一瞬開いたように見えたが、すぐに閉じた。
つくしは男が犬に気を取られている隙に背を向けると、再び走り出していた。
その途端犬が吠えた。そして男が振り返ったと同時にドーベルマンがすぐにつくしに追いつき隣に並んで走っていたが、同じペースで走る犬は襲うつもりはないらしい。
そして犬の顔を見たが、口を開けて笑っているように見えた。
そんな犬に気を取られ前を見ていなかったせいか。何かに躓き身体が前のめりになり、転びそうになったその瞬間、後ろからウエストに腕を回され、抱きしめられたまま地面に倒れたが、つくしは上を向いていて青い空が見えた。そして彼女の下にいたのは男だ。
「大丈夫か?どこか打ったか?それにしてもお前は走ってどこに行く気だ?邸の中でマラソン大会がしたいならすればいいが、何もこんな暑い中で走る必要があるか?」
つくしは全力疾走で走り、息をあえがせていたが、犬もだが主も走ったという意識がないのか。下から聞こえる息遣いは全く乱れていなかった。
そこで体力の差を感じたが、と同時に頭を過ったのは、いくら芝の上とはいえ、自分の下にいる男は怪我をしたのではないかということだ。それに気づくとその思いをすぐに口にした。
「あの大丈夫ですか?」
つくしは恐る恐る言った。
「ああ。大丈夫だ。俺は普段から鍛える。それに受身の姿勢を取った。しかし突然走り出すのは止めてもらいたい。ゼウスは走ることが出来て楽しそうだがな。あいつは俺以外には懐かないと思ったがお前が走り回るのは好きなようだ」
下から聞こえてくる声は耳元で言われ、くすぐったさを感じたが、すぐ傍に座ったドーベルマンは自分の名前を呼ばれたことで唾液まみれの大きな舌でつくしの顔を舐め始めた。
それはチワワのレオンの小さな舌とは違い大きな赤い舌で、その舌に舐められべちょべちょにされながら抱きしめられたままでいた。
「ゼウス。お座りだ。舐めるのは止めろ。今は俺がこいつと話してるんだ。お前は後にしろ」
司がゼウスに言うとドーベルマンはお座りをした。
「牧野。ゼウスはお前のことが気に入ったようだが、俺もお前が好きだ。俺はお前と結婚したい。本気でお前のことが好きだ。騙したことは悪かった。それからさっきお前が言った結婚してくれは本心だと思ってる」
率直な言葉を口にするのは慣れている男は、何度でも同じことを伝えるつもりだ。
愛してる。好きだ。結婚してくれ。好きになったからには全てを自分のものにしたいと思うのが司だ。だから気持ちを誤魔化すことはしなかった。そして下から抱きしめたこの状態は顔を見ることは出来ず、声だけが己の感情を伝える手段だが、だからこそ誠心誠意自分の思いを伝えるため司は話し続けた。
「もし本当に俺に興味がないなら言ってくれ。
俺は無理だと言われたビジネスに於いてはじっくり責めた。責めて欲しいものを手に入れてきた。だがお前に対してはじっくり時間をかけなかった。俺たちはそういった関係になるのが早かったが、それは美奈のことがあったからじゃない。今思えば俺たちの間には目に見えない引力が働いていたはずだ。二人の間には何かがあったはずだ。だがこれから先もしどうしてもと言うならゆっくり時間をかけてもいい。始めて出会った男と女のようにまず話をすることから始めよう。そこからひとつずつ進めよう。食事をしてドライブに出かけよう。映画を見よう。普通の恋人同士のはじまりを始めよう」
司は息継ぎもせずに言った。
抱きしめた女は何も言わず青空を見上げているが、身体の強張りを感じた。
それはこうしていることへの抵抗なのか。だが離して欲しいなら離してと言うはずだが言葉はなかった。だがそれは無言の抵抗なのか。もしそうなら諦めなければならないのか。
「牧野、頼む何か言ってくれ」

にほんブログ村
ドイツ生まれで警備犬、軍用犬として活躍している犬は護衛能力が高い犬で飼い主を守るには最適の犬だと言われているが、そのドーベルマンがつくしの前にしゃがみこんだ姿でいて身動きせずにじっとこちらを見つめていた。
犬が迷い犬ではない事は一目瞭然だ。
強固なセキュリティ対策が施されたこの邸に人であれ動物であれ侵入することは先ず出来ないからだ。それに犬には首輪が嵌められていた。そう考えればその犬が道明寺邸の警備犬であることが分かるが、ここでは警備のため犬が放し飼いにされているのだろうか。
だがそうなら注意を受けるはずだが、そんな話は訊かなかったが、もしかすると入ってはいけない場所に迷い込んでしまったのだろうか。
もしそうだとすれば、早々にこの場から立ち去らなければと思った。
何故ならこのドーベルマンが警備犬なら間違いなく見知らぬ人物を、つまりつくしを侵入者と見なし襲い掛かる可能性があるからだ。
だが犬はうなり声も吠え声もあげることなく、ただその場でじっとつくしを見て動こうとはしなかった。
つくしは犬には慣れている。
隣の岡村恵子の家にチワワのレオンがいるからだ。とは言えドーベルマンとチワワでは同じイヌ科だとしても、あまりにも違い過ぎる。もしチワワのレオンがここにいたとすれば、ドーベルマンを見て何を思うだろう。自分の身体よりも数倍大きな犬と、鼻と鼻をつけるようにして匂いを嗅ぎあったり、お尻を嗅ぎあう犬同士の挨拶をすることが出来るだろうか。
そしてドーベルマンはレオンを見て何を思うだろうか。なんだ。ネズミか?そんなことを思うような気がしたが、そんなことを考えている場合ではないはずだ。とにかくここを立ち去らなければならない。
だがどうやって立ち去ろう。
いきなり走れば追いかけて来ることは分かる。それなら少しずつ遠ざかればいいだろうか。
熊に出会ったら後ろ向きでゆっくりと下がるといいと言われるが、犬の場合はどうすればいいのだろう。それにしも、まさかここでドーベルマンと視線を合わせるとは思いもしなかった。
そして黒い犬は耳をピンと立て、周囲の音を訊いているようだが、つくしが見つめていると口を開け笑っているような顔をした。
「動くなよ。牧野。走って逃げるな。その犬は知らない人間が急な動きをすれば飛びかかるように訓練されている。だからじっとしてろ」
犬と対峙していて気付かなかったが、後ろから男の声がしてびっくりしてしまった。
そして動くなと言われた女は前を向いたまま微動だにしなかった。
「副社長?」
「ゼウス。伏せだ」
男はつくしの隣に並ぶと犬に向かって言った。
すると犬は命令された通り伏せをした。そして司の顔をじっと見ている。
「ゼウス?」
「そうだ。こいつの名前はゼウス。ギリシャの神々の中で一番偉い神の名前がこいつの名前だ。ゼウスはうちの警備犬だ。主人を守る為に訓練されている。とても賢い犬で飼い主の言葉に忠実だ」
ゼウスは自分が褒められたことが分かるのか。短い尻尾を振った。
「こいつは俺が日本へ帰国してから飼い始めた犬だ。多少気難しいところがある犬で面倒を見ている人間と俺以外には懐かない。それにこいつから走って逃げようとしても無駄だ。絶対に逃げることは出来ない」
司は牧野つくしが庭に向かって走り出してから、自分が追いかけると同時に犬の管理小屋に赴き、彼女が椅子に掛けていたカーディガンをゼウスに嗅がせ追わせた。そして命令された犬は建物の角を曲がり、庭木が生い茂っている場所を抜け、彼女が立ち止まっている所を見つけると静かに後ろに付け主が現れるのを待っていた。
「それにしても、お前は足が速いな。まあお前がそんな風に走ってくれるならゼウスが喜んで付き合ってくれるはずだ。こいつは走るのが好きだ。遊んでくれる人間は大歓迎だ。何しろこいつはまだ若い。人間の年齢に置き換えれば二十歳過ぎだ。遊びたい盛りの年頃だ。なあゼウス?」
そう言って手を動かした男の動作にゼウスはお座りの姿勢を取った。
ドーベルマンはその姿勢であがめるように主をじっと見つめ何かを期待している顔をしていたが、男が近づき頭を撫で始めると気持ちよさそうに目を閉じた。それは信頼関係があるから出来る行為で、主がひと言命令すれば鋭い牙を剥き敵とみなした人間を攻撃するはずだ。
つくしは逃げて来た。
道明寺司の傍から。それなのに、直ぐに見つけられた。犬まで使って見つけられた。
まさか犬が追いかけて来ていたとは知らなかったが、せっかく一生懸命走ったのにすぐに見つけられたことが悔しかった。
そして逃げた理由は明らかだ。嘘をついたことを許して欲しいなら結婚して下さいと言ったが、それに対し喜んでお前と結婚しよう。結婚してくれと言った男にレモネードをぶっかけたからだ。
だが何故そんなことをしたのか。桜子の声が自分の言葉に責任を持つのが大人だと言っているのが聞えたが、もしその通りにするならつくしは道明寺司と結婚しなければいけない。
何しろ相手もその意思があるのだから。
だがつくしは今の自分がいったい何がしたいのか分からなかった。
はっきり言って頭が混乱していた。飲んだのはレモネードであってアルコールではないのだから、酔っているはずもないのだが、何故こんな事態に立ち至ってしまったのか。
それにしても、つくしがこんなに思考を巡らせているというのに、目の前の男は優雅に犬の頭を撫でている姿に優越感が感じられ、ムカついてきた。だが道明寺司という男とドーベルマンはいかにも相応しい犬だ。そして犬のしなやかな体躯は黒い矢のように獲物に向かっていくはずだ。
つくしは犬が目を閉じていることと、男が犬の頭に手を乗せている姿を見ながら、静かに足を一歩後ろへと引いた。そしてもう片方の足も引いた。犬の片目が一瞬開いたように見えたが、すぐに閉じた。
つくしは男が犬に気を取られている隙に背を向けると、再び走り出していた。
その途端犬が吠えた。そして男が振り返ったと同時にドーベルマンがすぐにつくしに追いつき隣に並んで走っていたが、同じペースで走る犬は襲うつもりはないらしい。
そして犬の顔を見たが、口を開けて笑っているように見えた。
そんな犬に気を取られ前を見ていなかったせいか。何かに躓き身体が前のめりになり、転びそうになったその瞬間、後ろからウエストに腕を回され、抱きしめられたまま地面に倒れたが、つくしは上を向いていて青い空が見えた。そして彼女の下にいたのは男だ。
「大丈夫か?どこか打ったか?それにしてもお前は走ってどこに行く気だ?邸の中でマラソン大会がしたいならすればいいが、何もこんな暑い中で走る必要があるか?」
つくしは全力疾走で走り、息をあえがせていたが、犬もだが主も走ったという意識がないのか。下から聞こえる息遣いは全く乱れていなかった。
そこで体力の差を感じたが、と同時に頭を過ったのは、いくら芝の上とはいえ、自分の下にいる男は怪我をしたのではないかということだ。それに気づくとその思いをすぐに口にした。
「あの大丈夫ですか?」
つくしは恐る恐る言った。
「ああ。大丈夫だ。俺は普段から鍛える。それに受身の姿勢を取った。しかし突然走り出すのは止めてもらいたい。ゼウスは走ることが出来て楽しそうだがな。あいつは俺以外には懐かないと思ったがお前が走り回るのは好きなようだ」
下から聞こえてくる声は耳元で言われ、くすぐったさを感じたが、すぐ傍に座ったドーベルマンは自分の名前を呼ばれたことで唾液まみれの大きな舌でつくしの顔を舐め始めた。
それはチワワのレオンの小さな舌とは違い大きな赤い舌で、その舌に舐められべちょべちょにされながら抱きしめられたままでいた。
「ゼウス。お座りだ。舐めるのは止めろ。今は俺がこいつと話してるんだ。お前は後にしろ」
司がゼウスに言うとドーベルマンはお座りをした。
「牧野。ゼウスはお前のことが気に入ったようだが、俺もお前が好きだ。俺はお前と結婚したい。本気でお前のことが好きだ。騙したことは悪かった。それからさっきお前が言った結婚してくれは本心だと思ってる」
率直な言葉を口にするのは慣れている男は、何度でも同じことを伝えるつもりだ。
愛してる。好きだ。結婚してくれ。好きになったからには全てを自分のものにしたいと思うのが司だ。だから気持ちを誤魔化すことはしなかった。そして下から抱きしめたこの状態は顔を見ることは出来ず、声だけが己の感情を伝える手段だが、だからこそ誠心誠意自分の思いを伝えるため司は話し続けた。
「もし本当に俺に興味がないなら言ってくれ。
俺は無理だと言われたビジネスに於いてはじっくり責めた。責めて欲しいものを手に入れてきた。だがお前に対してはじっくり時間をかけなかった。俺たちはそういった関係になるのが早かったが、それは美奈のことがあったからじゃない。今思えば俺たちの間には目に見えない引力が働いていたはずだ。二人の間には何かがあったはずだ。だがこれから先もしどうしてもと言うならゆっくり時間をかけてもいい。始めて出会った男と女のようにまず話をすることから始めよう。そこからひとつずつ進めよう。食事をしてドライブに出かけよう。映画を見よう。普通の恋人同士のはじまりを始めよう」
司は息継ぎもせずに言った。
抱きしめた女は何も言わず青空を見上げているが、身体の強張りを感じた。
それはこうしていることへの抵抗なのか。だが離して欲しいなら離してと言うはずだが言葉はなかった。だがそれは無言の抵抗なのか。もしそうなら諦めなければならないのか。
「牧野、頼む何か言ってくれ」

にほんブログ村
- 関連記事
-
- 出逢いは嵐のように 90
- 出逢いは嵐のように 89
- 出逢いは嵐のように 88
スポンサーサイト
Comment:6
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

司*****E様
おはようございます^^
ドーベルマン・ゼウスに追われた女。
逃げることは出来ませんでしたが、それは司から逃げることは出来ないということでしょうね(笑)
そして司は胸の裡を伝えました。身体は既に結ばれていますが心はまだといった面もあり、これから普通の恋人のように付き合おうと言った男ですが、つくしは何も答えてはくれません。
「何か言ってくれ」
何と答えるのでしょうかねぇ。
今年は台風の進路が例年とは異なるようですが、被害が出ないことを祈りたいと思います。
司*****E様もお気をつけてお過ごし下さいませ。
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
ドーベルマン・ゼウスに追われた女。
逃げることは出来ませんでしたが、それは司から逃げることは出来ないということでしょうね(笑)
そして司は胸の裡を伝えました。身体は既に結ばれていますが心はまだといった面もあり、これから普通の恋人のように付き合おうと言った男ですが、つくしは何も答えてはくれません。
「何か言ってくれ」
何と答えるのでしょうかねぇ。
今年は台風の進路が例年とは異なるようですが、被害が出ないことを祈りたいと思います。
司*****E様もお気をつけてお過ごし下さいませ。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.08 22:43 | 編集

と*****ン様
愛の告白をした司。
つくしは黙って訊いているけど、もしかして寝てる?(≧▽≦)
いやぁ。どうなんでしょうねぇ。
ちゃんと聞くように伝えておきます!(笑)
コメント有難うございました^^
愛の告白をした司。
つくしは黙って訊いているけど、もしかして寝てる?(≧▽≦)
いやぁ。どうなんでしょうねぇ。
ちゃんと聞くように伝えておきます!(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.08 22:48 | 編集

さ***ん様
それにしてもつくしは隣の家の犬のチワワにも気に入られ、ドーベルマンにも気に入られ、そして俺様犬にも気に入られた!(≧▽≦)
俺様犬は自分の思いを伝えましたが返事はない。
返事をしなかった理由。
手堅く③番!夢の世界へ旅立つ...
さあ答えは何番なのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
それにしてもつくしは隣の家の犬のチワワにも気に入られ、ドーベルマンにも気に入られ、そして俺様犬にも気に入られた!(≧▽≦)
俺様犬は自分の思いを伝えましたが返事はない。
返事をしなかった理由。
手堅く③番!夢の世界へ旅立つ...
さあ答えは何番なのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.08 23:00 | 編集
