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2018
08.06

出逢いは嵐のように 88

「俺は喜んでお前と結婚しよう。いや結婚してくれ。俺の方が先にそれを言いたかった。俺はお前が好きだ。お前が許してくれるならどんなことでもするつもりでいた。だからお前が結婚を望むならすぐにでも結婚しよう」

司は自分が言った言葉に呆然としている女をじっと見つめていたが、向けられた眼差しは真剣でまっすぐだった。
牧野つくしの口から思ってもみなかったセリフが飛び出した時、自分の気持が伝わったのだと感じた。そして司は、自分が口にした結婚しようの言葉は、彼女を好きだと認識した時から心のどこかにあった思いだったと分かった。だから彼女の口から出た言葉がまだそこにあるうちに早々に同意した。
そして彼女の結婚したいという意志があるこの瞬間、力づくでもこの場に繋ぎ止めておくことを考えていたが、それほど彼女が欲しかった。

「それで?俺たちはいつ結婚する?俺は今直ぐでも構わないがいつ入籍する?なんなら今から区役所に行ってもいい。証人ならここにいる人間になってもらえばいい」

と言うと、あきらと姉の椿を見たが、あきらは頷いた。そして椿も一瞬驚いた顔をしたが、あきらと同じ動作をした。

「じょ、冗談は止めて下さい。どうして私があなたと結婚しなきゃならないんですか?バカバカしいにも程があります」

と言った女は司の目を厳しく睨んだ。

「どうしてってお前が今言っただろ?俺に結婚しろって。だから俺はお前と結婚する」

「そ、そんなの…..無理に決まってるじゃないですか!さ、さっきの言葉は….あれは嘘です!いえ嘘ではなくて、ええっと….」

司は口ごもり必死に言葉を探している女を前に構わず口を開いた。

「俺は自分の心に真っ正直になった。お前と出会った頃はそうじゃなかったが今は違う。今は可能だろうが不可能だろうが、望むことが叶おうが叶うまいが、どちらにしても自分の思いを伝えることに躊躇いはない。それに嘘偽りのない気持ちを伝えることが悪いとは思わない。それに俺はお前の思いを受け止める。心配するな。俺が必ずお前を幸せにしてみせる」

向かいに座った女は、その言葉に押し黙ったが暫くすると立ち上がった。そしてつい先ほどまで自分が飲んでいたグラスを掴み、まだ残っていた中身を司に向かってぶっかけた。

「ま、牧野先輩!?」

桜子はギョッとした表情を浮かべつくしの顔を仰ぎ見た。
と同時に斜め前に座る男の顔を見たが、その顔は平然としていて、顔に滴るレモネードをそのままにしていた。

「おい。司。いいか落ち着け。彼女にレモネードをぶっかけられたとしても怒るな。お前の顔にかけられたそれはただのレモネードだ」

飲み物を顔にぶっかけられる光景は、盛り場ではよくあることだが、あきらは親友が顔に飲み物をぶっかけられた姿を見たことはなかった。
それに、プライドの高い男が姉や姪の前でこうした姿を見られることに腹を立てるのではないかと思った。

「別に怒っちゃいねぇよ。ただえらく甘い物をかけられたと感じてるだけだ」

司の口元に笑みが浮かんですぐに消えた。
そして目の前の女の勇ましい行為を心の中で笑っていた。

「……何が俺が必ずお前を幸せにしてみせるよ。お酒に酔った人の言葉が信じられると思うんですか?」

司が飲み干したグラスにはビールが入っていたが、それは彼にとって酒とは言えない。
それに司の胃袋は酒に酔う感覚を備えてはおらず、どれだけ飲もうとアルコールが身体に残ることはなかった。

「信じていい。信じてくれ。信じて欲しい。これは嘘偽りのない気持ちだ。誠意を見せろというなら結婚してくれ。今まで出会ったどんな女よりも、いや、言い方が悪かった。今まで出会った女は俺にとって本物の女じゃなかった。俺にとって本物の女はお前だけだ」

誰もが息を詰め二人の会話を訊いていたが、立ち上がったままでいた女が今度は突然回れ右をするといきなり庭に向かって歩き出したことに一体何が起こったのかと誰もがあ然とした顔をした。

「ちょっと先輩!?どこに行くんですか?お手洗いですか?」

「つくしさん?化粧室なら向うです。向うから入れば近いですから」

桜子と美奈は声をかけたが、言われた本人はどんどん歩いて行き、やがて駆け出していた。

「牧野先輩?どこに行くんですか?ちょっと待って下さい!やだもう先輩!何考えてるんですか!ちょっと待って下さい!あれ絶対お手洗いじゃないです。もうあの人何考えてるんでしょうね?大人なんですから自分の言葉に責任を持つことくらい分ってるはずなのに、何考えてるんでしょうね?」

桜子はそう言って後を追いかけようとした。
だが俺が行くと言ったのは司だった。

「あいつのレモネード。アルコールが入ってる。これはレモネードじゃなくてウォッカが入ったレモネードカクテルだ。顔にかけられたとき分かった。運んで来たメイドが誰かの注文と間違えたんだろ?」

「あ。それ俺のだ。俺頼んだぞ。そう言えばまだだったが間違って彼女の所へ運ばれたってことか。もしかして彼女、君と違ってアルコールに弱い?」

あきらは真向かいの桜子に訊いたが、ええそうですけど。と怒ったように言った女は、ああもうっ、と呟いた。

「じゃあ、先輩酔ってたってことですか?でも半分しか飲んでませんでしたよね?」

「いや、俺はウォッカ多めにしてくれって頼んだからな。酒に弱い人間なら半分でも酔いも回りやすかったかもしれないな」

あきらのその言葉に桜子は、つくしの言動に合点が行った様子で息を吐いていた。











つくしは自分でも何を言い出したのか分からなくなっていた。
そして何故か急にあの場にいることが怖くなっていた。
何が怖いのか。それは心の奥に押さえ込んでいた気持が、鍵をかけていたはずの扉を勝手に開けて出て来たからだ。

だから副社長に背を向けると思わず走り出していたが、自分でもこの行動は全く理解出来ない行動だった。
ただ、広い庭はどこに何があるのかも分からず建物の角を曲がり、闇雲に走っていたから迷子になった。
だが幸いにもカジュアルな服装は走りに適していたが、それにしても人様の邸の庭を走ってどこに行こうというのか?そして食事をしていた最中に急に走ったからなのか。気持ち悪く感じていた。

「ああもう最悪。なんで副社長に結婚してくれなんて言ったんだろ」

その時だった。
背後に気配を感じ振り返った。





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コメント
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dot 2018.08.06 06:09 | 編集
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dot 2018.08.06 10:34 | 編集
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dot 2018.08.06 10:52 | 編集
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dot 2018.08.07 07:14 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
結婚して下さい。実は酔った勢いで言ったんですねぇ。
それに対し喜んでと言った男に酔った人の言葉は信じられないと言った女。
でも酔っていたのはつくし。しかし本人は酔っているとは思っていません。
そしてレモネードをぶっかけて逃げた!(≧▽≦)
なんてことをするんでしょうね!
そして追いかけたのは司ですが背後に感じた気配は誰?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.07 22:13 | 編集
と*****ン様
ウォッカの入った甘いレモネードが飲みたいですか?
キンキンに冷えたやつ。いいですねぇ(笑)
しかしアカシア最近夏バテ防止に甘酒を飲んでます!
え?背後の気配?あの人?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.07 22:20 | 編集
さ***ん様
逆プロポーズをした男にレモネードをぶっかけて逃げた女!
牧野つくし。凄いですね?
でもウォッカが入っていたんですねぇ(笑)
そして逃亡した女の背後に現れたのは.....
⑤のまさかの木村!(≧▽≦)
山荘が暇なので道明寺邸の庭の手入れに駆り出された。
いやぁ。あの木村さんがこんな所に!
アカシア⑤番でお願いします!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.07 22:29 | 編集
す**様
そうですよね。お酒が入ると自分でも思いもよらないことを口にすることがありますが、このつくしはまさにそうでした。
でも自分は酔っていると思っていない女は、酔った男の言うことは信じられないと言います。
そして逃亡しましたが、そんな女の背後にいるのは?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.07 22:36 | 編集
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