親兄弟というのは、血の繋がりがある分どんなことをしたとしても許せるといった面を持つ。そして姉は男だからと弱いところを見せない弟の気持を年上の余裕をもって理解してやることが長子の務めだと分かっている。それはどの姉弟にも同じはずだ。
つくしにも弟がいる。両親を亡くした今では、たった二人の身内だ。その弟が困っているなら助けてやりたいと思う。
だから椿の気持も理解できる。姉は例え弟が幾つになっても可愛いのだろう。
そんな姉の口から弟のことをどう思うかと訊かれ答えを探していた。
そして美奈の頭の中にある安易な光景を想像することもできた。
美奈は、自分の人生の於いて離婚というある意味でのマイナス要素をプラスに変えるだけの力があるのだろう。離婚については既に考えが纏まっているからか。いい男は他に沢山いますから。と実に前向きな言葉を口にしていた。
そして自分が駄目にしてしまった二人の関係を修復したい。
叔父と叔父が好きになった女性をくっつけて、めでたし、めでたし。という考えが浮かんでいるのだろう。
それにしても、美奈もその母親の椿にしても、道明寺司を理解してもらおうと懸命に言葉を尽くす姿はやはり血の繋がりがあるからなのだろうか。そして、しつこく根気強い様もやはり血筋なのだろうか。そんな二人を前に、再びこうして本人から許してくれないかと言われ、答えに窮したが、自分の気持を直視した上で言える言葉を口にした。
「副社長にお伺いします。嘘をついたことを許して欲しいとおっしゃいますけど何を許せばいいんですか?嘘のどの部分を許せばいいんですか?」
子供じみていることを言ったと思う。
これまでなら、すでに謝った人間に対しそれ以上深く追求することがなかったはずだ。
現に美奈に対しては非を認め謝った時点で許していた。だが副社長に対しては、何故か謝罪を受け入れることが出来ずにいた。
例えばだが、もう一度やり直そう。
男が女にそう言ったとき、女はなんと答えるのか。
それは長い間の付き合いがある男女なら言える言葉だ。
だが二人は関係を再構築するには短すぎる付き合いだ。だから相手のことがどれほど分かっているのかと考えたとき、まだ何も分っていないと言える。
だから仮に許しを請う男を許し、再び付き合うなら何をするのかと問われれば、相手のことをもっとよく知ろうと思うはずだ。
そして頭から離れて行こうとしない男に対し自分は何をどうしたいのか。
その思いは何度も頭を過った。今こうして目の前に座る男との短い付き合いの中での思い出は多くはない。それでも付き合い始めた頃の男の会話が嘘ではなく本当だったとすれば、そして今もその思いは変わらないというなら_。
「牧野_」
「副社長」
つくしは口を開こうとした男の言葉を遮るように言った。
「副社長。私と結婚して下さい。もし許して欲しいというなら、私と結婚して下さい。そうすれば許します。副社長は二人の付き合いは結婚を前提とするものではないとおっしゃいました。そして私も同じ気持ちでした。恋を楽しめばいいと思っていました。でも気が変わりました。許して欲しいと思うなら、本当に私のことが好きなら結婚して下さい」
誰もが息を殺し二人の会話を訊いていたその場所は、更にとでもいうのか水を打ったような静けさが広がった。
そんな中で一番初めに口を開いたのは桜子だ。
「あの…牧野先輩?」
そして次に口を開いたのは美奈だ。
「つくしさん?本当ですか?叔父様と結婚してくれるんですか?そうなると牧野さんはお姉さんから叔母様になるのね!やった嬉しい!」
「牧野さん?あなたその言葉本気なの?そうなら私も嬉しいわ」
美奈と同じタイミングで嬉しそうに言ったのは椿だ。
「おっ!女からの逆プロポーズか?なかなかやるな彼女」
ビールを片手にした男はニヤニヤと笑いながら言った。
「もう!美作さん茶化さないで下さい!それよりも先輩今自分で何を言ったか分かってるんですか?牧野先輩?先輩?ボーッとしないで先輩戻って来て下さい!まさかレモネードで酔ったわけじゃないですよね?牧野先輩ってば!」
桜子の声が聞え続け、何度も名前を呼ばれたつくしはそこでハッとした。
「え?何?」
「何じゃありませんから!今ご自分が何を言ったか分かってますか?先輩は道明寺副社長に結婚して下さいって言ったんですよ!それ本気ですか?」
桜子の言葉が耳から脳に伝わるまで数秒間時間を要したが、伝わった途端に脳が急激な早さで回転を始めたのが分かった。そしてその言葉を頭の中で反芻すると何を言ったのか明確に理解した。
言うつもりなどなかった言葉が口を突いた。
それにそもそも付き合うと決めた時も、結婚を前提に付き合い始めた訳ではなかった。
それは相手から言われたこともあったが、自分自身も言ったことであり、その気などなかった。それなのに結婚すれば許すという言葉が口を突いたのは何故なのか。
そんな女は暑さで頭がどうかしたと思われても可笑しくない。実際もしかするとそうなのかもしれない。暑さで思考能力が落ちた。きっとそうだ。頭の中の回路がショートしたのだ。
つくしは頭の中がパニックに襲われ自問自答を繰り返していたが、目の前の男はそんな様子の女をじっと見つめ言った。
「分かった。俺は喜んでお前と結婚しよう」

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つくしにも弟がいる。両親を亡くした今では、たった二人の身内だ。その弟が困っているなら助けてやりたいと思う。
だから椿の気持も理解できる。姉は例え弟が幾つになっても可愛いのだろう。
そんな姉の口から弟のことをどう思うかと訊かれ答えを探していた。
そして美奈の頭の中にある安易な光景を想像することもできた。
美奈は、自分の人生の於いて離婚というある意味でのマイナス要素をプラスに変えるだけの力があるのだろう。離婚については既に考えが纏まっているからか。いい男は他に沢山いますから。と実に前向きな言葉を口にしていた。
そして自分が駄目にしてしまった二人の関係を修復したい。
叔父と叔父が好きになった女性をくっつけて、めでたし、めでたし。という考えが浮かんでいるのだろう。
それにしても、美奈もその母親の椿にしても、道明寺司を理解してもらおうと懸命に言葉を尽くす姿はやはり血の繋がりがあるからなのだろうか。そして、しつこく根気強い様もやはり血筋なのだろうか。そんな二人を前に、再びこうして本人から許してくれないかと言われ、答えに窮したが、自分の気持を直視した上で言える言葉を口にした。
「副社長にお伺いします。嘘をついたことを許して欲しいとおっしゃいますけど何を許せばいいんですか?嘘のどの部分を許せばいいんですか?」
子供じみていることを言ったと思う。
これまでなら、すでに謝った人間に対しそれ以上深く追求することがなかったはずだ。
現に美奈に対しては非を認め謝った時点で許していた。だが副社長に対しては、何故か謝罪を受け入れることが出来ずにいた。
例えばだが、もう一度やり直そう。
男が女にそう言ったとき、女はなんと答えるのか。
それは長い間の付き合いがある男女なら言える言葉だ。
だが二人は関係を再構築するには短すぎる付き合いだ。だから相手のことがどれほど分かっているのかと考えたとき、まだ何も分っていないと言える。
だから仮に許しを請う男を許し、再び付き合うなら何をするのかと問われれば、相手のことをもっとよく知ろうと思うはずだ。
そして頭から離れて行こうとしない男に対し自分は何をどうしたいのか。
その思いは何度も頭を過った。今こうして目の前に座る男との短い付き合いの中での思い出は多くはない。それでも付き合い始めた頃の男の会話が嘘ではなく本当だったとすれば、そして今もその思いは変わらないというなら_。
「牧野_」
「副社長」
つくしは口を開こうとした男の言葉を遮るように言った。
「副社長。私と結婚して下さい。もし許して欲しいというなら、私と結婚して下さい。そうすれば許します。副社長は二人の付き合いは結婚を前提とするものではないとおっしゃいました。そして私も同じ気持ちでした。恋を楽しめばいいと思っていました。でも気が変わりました。許して欲しいと思うなら、本当に私のことが好きなら結婚して下さい」
誰もが息を殺し二人の会話を訊いていたその場所は、更にとでもいうのか水を打ったような静けさが広がった。
そんな中で一番初めに口を開いたのは桜子だ。
「あの…牧野先輩?」
そして次に口を開いたのは美奈だ。
「つくしさん?本当ですか?叔父様と結婚してくれるんですか?そうなると牧野さんはお姉さんから叔母様になるのね!やった嬉しい!」
「牧野さん?あなたその言葉本気なの?そうなら私も嬉しいわ」
美奈と同じタイミングで嬉しそうに言ったのは椿だ。
「おっ!女からの逆プロポーズか?なかなかやるな彼女」
ビールを片手にした男はニヤニヤと笑いながら言った。
「もう!美作さん茶化さないで下さい!それよりも先輩今自分で何を言ったか分かってるんですか?牧野先輩?先輩?ボーッとしないで先輩戻って来て下さい!まさかレモネードで酔ったわけじゃないですよね?牧野先輩ってば!」
桜子の声が聞え続け、何度も名前を呼ばれたつくしはそこでハッとした。
「え?何?」
「何じゃありませんから!今ご自分が何を言ったか分かってますか?先輩は道明寺副社長に結婚して下さいって言ったんですよ!それ本気ですか?」
桜子の言葉が耳から脳に伝わるまで数秒間時間を要したが、伝わった途端に脳が急激な早さで回転を始めたのが分かった。そしてその言葉を頭の中で反芻すると何を言ったのか明確に理解した。
言うつもりなどなかった言葉が口を突いた。
それにそもそも付き合うと決めた時も、結婚を前提に付き合い始めた訳ではなかった。
それは相手から言われたこともあったが、自分自身も言ったことであり、その気などなかった。それなのに結婚すれば許すという言葉が口を突いたのは何故なのか。
そんな女は暑さで頭がどうかしたと思われても可笑しくない。実際もしかするとそうなのかもしれない。暑さで思考能力が落ちた。きっとそうだ。頭の中の回路がショートしたのだ。
つくしは頭の中がパニックに襲われ自問自答を繰り返していたが、目の前の男はそんな様子の女をじっと見つめ言った。
「分かった。俺は喜んでお前と結婚しよう」

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ふ*******マ様
おはようございます^^
まさかの展開(笑)
つくし、言っちゃいました。
そうです。結婚は出来ないと言われることが大前提だったはずです。それなのに....。
司にとっては願ったり叶ったり。勿論YES!
さて、このまま流れに乗るのでしょうか?
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
まさかの展開(笑)
つくし、言っちゃいました。
そうです。結婚は出来ないと言われることが大前提だったはずです。それなのに....。
司にとっては願ったり叶ったり。勿論YES!
さて、このまま流れに乗るのでしょうか?
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.05 21:19 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
美奈の謝罪は受け入れることは出来ましたが、司の謝罪を素直に受け入れることが出来ない女。
あなたの嘘の何を許せばいいの?そんな言葉を言ったつくしでした。
そして、つくしの口から放たれた思いもしなかった言葉。
確かにいつものつくしではありませんね?(笑)
そして我に返った女はパニック(笑)どうしちゃったんでしょうね?
司は喜んで結婚すると言いました。
さてこの後どんな話し合いになるのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
美奈の謝罪は受け入れることは出来ましたが、司の謝罪を素直に受け入れることが出来ない女。
あなたの嘘の何を許せばいいの?そんな言葉を言ったつくしでした。
そして、つくしの口から放たれた思いもしなかった言葉。
確かにいつものつくしではありませんね?(笑)
そして我に返った女はパニック(笑)どうしちゃったんでしょうね?
司は喜んで結婚すると言いました。
さてこの後どんな話し合いになるのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.05 21:31 | 編集

さ***ん様
いやぁつくし。言いましたねぇ(笑)
まさかの公開逆プロポーズ。
そして「喜んで結婚しよう」と言った副社長。
周りの人間は度肝を抜かれたことは間違いありませんが、佐々木純子と仲間たち!見逃しました!(≧▽≦)残念!
つくしの飲んだレモネード気になりますか?愛のレモネードとなるのでしょうか。
そしてアカシアがご馳走になったレモネード。レモン風味ですが甘かったんです!ご家庭の味があるようですので、そのご家庭は甘さが際立っていたんだと思います^^
コメント有難うございました^^
いやぁつくし。言いましたねぇ(笑)
まさかの公開逆プロポーズ。
そして「喜んで結婚しよう」と言った副社長。
周りの人間は度肝を抜かれたことは間違いありませんが、佐々木純子と仲間たち!見逃しました!(≧▽≦)残念!
つくしの飲んだレモネード気になりますか?愛のレモネードとなるのでしょうか。
そしてアカシアがご馳走になったレモネード。レモン風味ですが甘かったんです!ご家庭の味があるようですので、そのご家庭は甘さが際立っていたんだと思います^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.05 21:49 | 編集

ぶ***ん様
「俺は喜んでお前と結婚しよう」
アカシアも同じく言ってもらいたいです!
拍手コメント有難うございました^^
「俺は喜んでお前と結婚しよう」
アカシアも同じく言ってもらいたいです!
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2018.08.05 21:57 | 編集
