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2018
08.03

出逢いは嵐のように 85

「皆さん。今日は集まって下さってありがとうございます。いつも皆さんにお世話になっている弟ですが、人として至らぬ点も多いかもしれませんが、これからも支えてやって下さいね。今日は最高級のお肉を用意しましたので沢山食べて暑気払いをして下さいね。それからあの子、少し遅れて来るみたいだけど気にしないではじめましょう」

バーベキューに招待されていたのは、エネルギー事業部、石油・ガス開発部別室のメンバー4人とつくし。そしてつくしの同伴者として三条桜子だった。
ホスト側は美奈と彼女の母親。そしてまだここにはいないが、副社長の道明寺司とその友人の美作あきらの4人。
気軽な服装で来て下さいと言われていただけに、誰もが言葉通りでジーンズやTシャツ姿といったラフなスタイルだった。


美奈はつくしに駆け寄ると、「つくしさん。来てくれてありがとう!」と嬉しそうに言ってつくしの手を取った。そして隣に立つ桜子に、「はじめまして。美奈です。まだ白石ですけどもうすぐ離婚します。だから美奈と呼んで下さい」と明るく離婚について喋り頭を下げた。

そして桜子は白石美奈の行動に腹を立てていたから、辛辣な言葉を放つかと思えば、初めこそ不審な目で美奈を見ていたが、「桜子さんってスタイルいいですね。それに肌も綺麗だし色っぽいし大人の女って感じです。その口紅の色いいですね。どこのブランドですか?」と言われ自分を慕うような若い娘の姿に正直さを感じたのか。
それとも、もしかすると自分と似たところがあるとでも感じたのか。口を開くと言った。

「離婚したからって女の価値が下がるわけじゃないわ。失敗したり間違ったりするのは若い頃にあるのは当たり前。人生これらからよ」

美奈は桜子の力強い言葉に何かを感じたのか。
はい、と元気な声で答えていた。


それにしても、パーティーと名が付けばもっと大人数を予想していたが、総勢10名という人数の少なさではパーティーとは言えないはずだ。つくしの頭の中にあったパーティーと言えば、結婚式の二次会のように少なくとも20人は集まるといったイメージがあった。ましてやバーベキューと言えば、河原や公園で食べる賑やかな集まりのはずだと思っていたがその考えは間違っていた。


それは紙コップに入ったビールを飲みながら焼けた肉を摘まむといったスタイルではなく、広大な庭の一角、綺麗に刈り込まれた芝の上には真夏の暑い陽射しを遮るためのテントが張られ、そこにテーブルが用意され、花が飾られセッティングがされていたことだ。
そしてテーブルの傍にはアメリカの夏には欠かせないと言われるレモネードのスタンドやビールのディスペンサーが置かれていた。
そうだ。これは気軽なバーベキューではなく、本格的なアメリカンスタイルのバーべキューであり、パーティーと呼ばれても可笑しくないスタイルだった。

そしてつくしと同じことを考えていた20代半ばの沢田が大きな肉の塊に目を見張って驚いた様子で声を上げていた。

「凄い!この肉の塊。もしかして朝から焼いてたんですか?」

庭に設置された大型のガス式のグリルの蓋が開けられると、そこには焼けた肉の塊がありいい香りがしていた。

「そうよ。時には半日以上かけて焼くこともあるわ。それが本格的なバーベキューよ。これは昨日の夜からじっくりと焼いたものよ」

椿はグリルの中でこんがりと焼き色のついた肉の塊に目を落とした。

「え?昨日の夜からですか?」

「ええ。そうよ。日本じゃバーベキューと言えば、外で食べる焼肉スタイルでグリルに直接箸を伸ばして食べるけど、アメリカではホストが肉を焼いて、それを切り分けてお皿に盛ってゲストに食べて頂くの。つまりもてなす側ともてなされる側とに別れてるのよ。だから日本式のバーベキューとは違うかもしれないわね?それに日本では焼いた肉にタレを付けて食べるのが一般的だけど、向うでは下味をつけたお肉を焼くの。たとえばワインに漬け込むとか蜂蜜に漬け込むとか色々だけど焼き上がったお肉には独特の匂いと味がするのよ」

「へぇ。そうだったんですね?僕は河原でのバーベキューしか経験ないけどあれは外で食べる焼肉だったってことですね?」

沢田は興味津々で椿の話を訊いていた。
そして別室の他のメンバーもグリルを取り囲み、「なるほどね、そうだったんですね。僕らが食べてたバーベキューは外での焼肉だったってことですね?」と頷いていた。

「そうね。日本だとそれが多いのが実情ね。それからバーベキューは食べることが目的じゃなくてコミュニケーションを図るための手段でもあるわ。それに家族でバーベキューをする目的は大切な人との時間を過ごす手段なの。だからその家の主が肉を切り分けてサーブするの。子供たちの前で誇らしげに肉を切り分けるのが父親の役目よ。ほら、感謝祭で七面鳥を食べるときも切るのはその家の主。バーベキューもそれと同じよ」

椿はそう言ってアワビや伊勢海老も用意してあるわ。それから食べたいものがあれば何でも言ってちょうだいね。すぐに用意させるからと言って傍に立つメイドを見やった。

「なるほど。アメリカのバーベキューは父親の威厳を見せるいい機会ってことか」

そう言ったのは技術の田中だ。

「でも今の日本に父親の威厳を見せる機会があるのかと考えてみれば見つかりそうにないな」

田中の言葉に答えたのは別室の中で一番年上の財務の小島で、彼には中学生の息子がいた。

「あら。小島さん。日本なら鍋よ。鍋があるじゃない。日本では鍋奉行がそれじゃない?」

佐々木純子が小島に言ったが、小島は、「鍋奉行か?それ煮えてないとか、これ食べろってやつだろ?鍋じゃあバーベキューのようなダイナミックさはないよな。それに鍋奉行は細かい男のイメージがあるが、日本じゃそんなものか。日本の父親の威厳の持ち方は難しいよな」と言って笑っていた。

その時だった。グリルから視線を庭に巡らせた先に二人の男性の姿が見えた。
この邸の主のブラックデニムに半袖の柄物のオープンカラーシャツを着た姿は、会社では考えられないほどワイルドに見えたが、それでも粗野ではなく上品さを感じるのは育ちのせいなのか。
どんな服装であれ一流に見えるのは、その人の持つカリスマ性がそうさせるのか。

つくしは、こちらを見つめるその男と目があった。
それは今までも時おり見たことがある口角を引き結んだ真剣な顔。
暫くその顔を見つめじっとしていた。





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コメント
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dot 2018.08.03 06:10 | 編集
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dot 2018.08.03 07:17 | 編集
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dot 2018.08.04 14:26 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
いよいよバーベキューの日。
焼きながら食べるのが焼肉で焼いてから食べるのがバーベキューだと言われています。
桜子。美奈に会うのを楽しみにしていましたが、話をしてみると二十歳の女子大生でした(笑)
そして司の登場!
これからどんな会話が繰り広げられるのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.04 21:26 | 編集
ふ*******マ様
肉の塊に首ったけ(笑)
ビール飲むとお腹いっぱいになるから、取り敢えずレモネードで喉を潤しお肉を食べる(≧▽≦)!
いいですねぇ~。道明寺邸のバーベキューは高級食材が沢山用意されているはずです。
そして腹8分になったらサラダに移りラストは甘い物で締める。最高ですね!
え?それであの二人はどうしたんでしょうね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.04 21:36 | 編集
さ***ん様
ブラックジーンズに柄物の半袖シャツ。
ワイルド司の登場となるのでしょうか?
肉に食いつかず、逞しい腕にかぶりつきたい!(≧▽≦)
そうなんです。日本のあれはバーべーキューじゃない。外で食べる焼肉だと言われたことがあります。
はい。肉の塊を24時間くらいかけて焼くそうです。
食べることが目的ではなく、コミュニケーションが目的。
そんなバーべーキューパーティーを催した椿。姉は二人が会話する機会を持とうとしたようです。
そして別室のメンバーたちの会話は父親の威厳の話が出たりして和気あいあい。そこに現れた男です。
どんな話しをするのか?上手く話しが出来るのか?
星一徹は登場しませんが、熱い男はいます!(笑)
アメリカ人の夏はレモネードとアイスティーが定番と言いますが、アカシアが飲んだレモネードは甘かったです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.04 22:22 | 編集
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