FC2ブログ
2018
08.01

出逢いは嵐のように 83

「日本の夏ってテキサスの夏に似てると思わないか?」

その問い掛けは誰に向けて放たれたものなのか?

「そう思わないか?この暑さ。間違いなくテキサスと同じだ」

再び放たれたその言葉は自分の周りにいる誰かに向かって言われていると思っていた。
だから桜子は無視していたが、それでも周囲に目を配ってみると、半径3メートル以内には声の主と自分意外誰もいなかった。


深夜営業のスーパーは普通のスーパーに比べれば物は少ないが、一人暮らしの働く人間にとっては便利で、真夜中近くになっても大勢の買い物客がいる。だが何故か今夜は客が少なかった。そんな状況の中、声を掛けてくる男に新手のナンパかと思った女は無視をした。
そして目当ての物を探すべく棚に目を凝らしていた。

「ねえ。なんのサプリメントを探してるの?君みたいに美人でもサプリメントを飲むんだな?でもさ。これ以上美人になっても困るんじゃないか?あ、そう言えば俺も最近目の疲れを感じるな。そうだ!俺も目に効く何か買って帰ろうかな。ねぇ君、何かお勧めある?」

ペラペラとよく喋る男だと思った。
もしかすると酔っ払いではないかと思った。仕事帰りのサラリーマンが酒を飲み、ちょっとスーパーでも寄って帰ろうかと思った男が1人でいる女に声をかけた。そんな風にも感じられた。

まともに顔は見なかったが、視界の端に入るのは、ブルーベリーのエキスが配合されていると書かれたプラスチックのボトルに伸ばされた手。
白いシャツの袖口から覗くその手は綺麗な手だと思った。そして手首にはひと目見て高級品だと分かる時計が嵌められていた。
と、いうことは、稼ぎのいい仕事についているということか。とそんなことを考えていたとき、「ねえ君。三条さんだろ?三条桜子さん」といきなり名前を呼ばれ、その時はじめて隣に立つ男の顔をまともに見た。

「お。やっとこっちを見てくれた。俺無視されるのは慣れてないからさ。君の態度にちょっと傷付いていたところ。え?なんで俺が君の名前を知っているのか?でも君は俺が誰だか分かってないって顔だな。まあ俺の顔はアイツほど知られてないから分んないか。自己紹介させてもらうよ。俺、美作あきら。美作商事の専務で道明寺司の近しい友人」
と、そこまで言った男は、「ここまで言ったら分かるよね?君も」と言って笑ってみせた。





あきらは、初めて恋をした男の切実な思いを実らせるため手を貸してやると言った。
そして牧野つくしに惚れた親友に誠意を見せろと言って蹴散らした女に会いたいと思った。
何しろあの道明寺司を足蹴にするような女だ。勇気がある気の強い女だとは思ったが、こうして実際に会えば、思った通りの女だと感じていた。
整った顔に派手とは言わないが、だからと言って地味とも言えない巧な化粧が施され、瞳も唇も魅力的に見せていた。服装も産業機械専門商社のOLにしては、華やかさが感じられる装いをしていた。

そしてちょっといいか。話したいことがあると言ったあきらに、
「名刺。お持ちですか?名前を名乗っただけではあなたが本当に美作あきらさんだと信じることは出来ません。それから身分証。お持ちでしたら見せて下さい」と言って名刺を要求した女は、次に免許証で本人確認をする念の入れようだった。
そして、「じゃあ一杯ご馳走して下さい」と言った女は、よく磨かれたハイヒールを響かせ洒落た作りのバーのカウンター席に座りギムレットを注文していた。






「それで?お話って何ですか?先輩と道明寺副社長との仲を取り持ってくれってお話ならお断りしますけど?」

ギムレットと一緒に注文したドライフルーツの中から、いちじくを摘まんだ女は、あきらが考えていることはお見通しだといった風で答えた。
そして、あきらも桜子も、それぞれに親友の状況は理解しているといった態度で話し始めていた。

「随分とはっきりと言うが考える余地はなし?君は司のことを嫌ってるようだが、あいつは恋をしたことがない男だ。その男が真剣に女のことを考えているんだ。なんとかしてやろうって思うのが友人の俺の立場だが、君にしてみれば駄目か?」

あきらはシングルモルトのオンザロックを口に運び喉を潤していた。

「美作さん。あなたが道明寺副社長の友人なら私は牧野つくしの友人です。
それに別に私は道明寺副社長を嫌っているのではありません。ただ道明寺副社長がしたことが許せないだけです。副社長が何をしたかご存知ですよね?女の騙して弄んで捨てようとしたことは許せることじゃありませんから。それにもしそのことがバレなかったらそのままのつもりだったんでしょうけど、バレたんですから悪いことは隠せませんよね?それに先輩はそのことに酷く傷ついたんです。いくら今の思いは違うからといっても先輩を抱くまでは、悪いことをしているとは思わなかったはずです。それに恋を仕掛けて陥れるようなことをすること自体女をバカにしてます。そうすることを望んだのは姪だったとしても、それを実行した副社長を見損ないました」

桜子はギムレットの入ったグラスを空けると、次はキールロワイヤルを頼みバーテンににっこりとほほ笑んだ。

「確かに君が怒るのは無理もない話だと思う。悪いのはあいつだ。俺も司から計画を訊いたとき、姪の頼みだとしても、まさか本気でやるとは思わなかった。やっていい事と悪い事の区別はつくはずだがあの男は姪には甘かった。あいつは姉の娘の美奈ちゃんに対しては、身贔屓が過ぎたとしか言えないな」

あきらはそこまで言って桜子がフルート型のシャンパングラスを傾ける様子を見ていた。そして少し間を置き自らもグラスを口に運ぶと言葉を継いだ。

「俺は司とは子供の頃からの付き合いだからよく分かる。同じ年だが気持ち的にはあいつの兄貴のように思っていた。だからあいつがどんな男か知っている。あいつは他人との距離を簡単に縮めることが出来る男じゃない。どちらかと言えば他人とは距離を置きたがる人間だ。
君も知ってると思うが道明寺家のような格式があり金のある家に生まれれば、将来は決まってる。大切な一人息子として育てられた。だがそれは普通の家庭とは違う。成長して自分の置かれた環境が他とは違うことに気付けば、誰もが自分に対して優しいのは家や金に対してであり自分に対してじゃないことに気付いた。それからだ。あいつは自分の心を開け放つことをしなくなった。だから自分の感情に気付くのが遅れた。一度でも本気の恋をしたことがあるなら、自分がどんな気持ちでいるか分かるはずだが女を抱いても恋をしたことがなかった男はそれに気づかなかった。多分、司は牧野つくしと出会った時はじめて自分の心の奥にあった恋をするという気持ちに気付いた。やがてそれがつむじ風のように巻き上がったはずだ。そしてそれがどんどん大きくなっていったはずだ。今のあいつにとってはそのつむじ風は嵐になったってことだ」

と言ったあきらは、女がつまみにドライフルーツを頼んだのと同じで、ミックスナッツを注文していたが、そこからアーモンドを摘まんでいた。

「だから何ですか?女の扱いには長けていても、恋に対しては不器用な男のために協力をしろと言うんですか?」

「ああ。そうしてくれると助かる」

「男って…..。本当に勝手ですよね?いえ。勝手というよりも自分の本能に気付くのが遅いっていうのか……」

桜子は呆れたように言い、あきらの方を向き、いいの。もう済んだことだから、と言った友人の表情を思い出しながら言った。

「美作さん私副社長に言いました。本気なら誠意を見せて下さいって」

「ああ。司から訊いた。牧野つくしに対して行動で示せってことだろ?」

「ええ。そうです。本当に牧野つくしのことが好きなら誠意を見せて下さいって。それにしても男は動物ですから本能で分るはずですよね?会えば瞬間的にその人が好きか嫌いか。興味があるかないか。分かりますよね?」

桜子は半ば怒りながら訊いたが、あきらはもっともだといった顔で頷いた。

「まあな。大概の男はそうだ。だけどあいつの本能は眠ってる状態だった。だから気付かなかったってことだが、今はそうじゃない。あいつは本気で牧野つくしが好きだと言った。気づくのが遅かったのは仕方がないと思ってくれ。恋を知らない哀れな男が可哀想だと思って_」

「道明寺司のどこが哀れなんですか?あれだけすごいルックスを持つゴージャスな男のどこが哀れなんですか?」

あきらの言葉を遮った女はムッとした表情だが、友人の恋についてどうしたものかといった思いも感じられた。そしてあきらはウィスキーをグイっと飲むと三条桜子に言った。

「それにしても、君はタフな女だな」

「タフ?」と語尾を上げおうむ返しに訊いた女はどういう意味ですか?と訊いた。

「1杯目はギムレット。2杯目はキールロワイヤル。どっちも辛口だ。三条桜子って女はドライで辛口。まるでどこかのビールのキャッチコピーみたいだが友情には厚い女。そうだろ?君の牧野つくしに対しての思いは俺が司に感じているのと同じだろ?」

あきらはそう言って女が言葉を返すのを待った。
そして「同じで悪い?」と言った女は、ほんの少し首を傾けてあきらを見て、少し間を置いて微笑みを浮かべたが、あきらはその微笑みを好ましいと感じていた。

「いいや。俺はタフな女が好きだ。それに友情に厚い女はもっと好きだ」





にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.08.01 05:51 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.08.01 07:40 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.08.01 14:34 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.08.01 16:43 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
深夜営業のスーパーでの声掛けが新手のナンパかと思った(笑)
そして何故テキサスの夏なのか。あきら仕事でテキサスに行ったことがあったんでしょうねぇ。^^
あきらと桜子。気が合いそうな雰囲気があります。二人がタッグを組んだら最強!確かにそんな気がします。
誠意をもって謝った美奈を受け入れたつくし。しかし司に対してはそうすんなりとはいかないでしょうねぇ。
色々な意味で二人の背中をの押してくれるのは誰なのでしょう。
コメント有難うございました。
アカシアdot 2018.08.01 22:21 | 編集
み***ん様
おはようございます^^
司への援護射撃。あきらは桜子に接触!
周りから固める。あきららしいでしょうか?(笑)
そして背伸びしていた美奈は、やっと年相応のお嬢さんらしくなりました。
あきらめも思い切りもいい(≧▽≦)
さすが椿の娘!
そして椿さんの出番は....。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.01 22:27 | 編集
ま**様
ありがとうございます!
そうなんです。今日は3周年記念日でした。
ひっそりと迎えましたが、お祝いの言葉をいただき嬉しいです。ありがとうございます。
こちらのブログ。時々可笑しな坊ちゃんもいますが、楽しんでいただけて何よりです。

そしてこちらのあきらは、え?アカシアの代弁者なのか?(≧▽≦)司甘やかし隊隊長!(≧▽≦)
最後はつかつく&あき桜になるのか?あきらと桜子。大人の二人はどうなるのでしょうか。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.01 22:45 | 編集
司*****E様
こんにちは^^
再びお立ち寄り下さりありがとうございます!
そうなんです。今日はブログの誕生日でしたが、ひっそりと過ごしております。
気付けば3年経ってしまいました。
司*****E様には、いつもお付き合いを頂いて本当にありがとうございます。
時々可笑しな坊ちゃんや、ドシリアスに走ることもあるブログですが楽しんでいただき幸いです。
いえいえ。コメント楽しみにしています。なるほど、と思いながら楽しく読ませていただいています!
いつもありがとうございます^^そしてお祝いをありがとうございました。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.01 23:00 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.08.01 23:31 | 編集
さ***ん様
お祝いどうもありがとうございます!
いつの間にか3年が経ちました。
そしていつも沢山のご感想を寄せて下さってありがとうございます。
いつも楽しませていただいてます!^^
当ブログ。御曹司のようなお話からシリアスまで色々とご用意させて頂いております。
時に大人過ぎてあちらの世界へ行ってみたりもしますが、楽しんでいただけて幸いです。

さてこちらのお話のあきらと桜子。気が合うようです。
イイ感じです。そしてつむじ風が嵐になった男はこれからどう対処していくのか?
嵐を起すのか。それとも?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.08.02 23:04 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top