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2018
07.29

出逢いは嵐のように 81

梅雨明けの発表と共に、長野の農協に勤める弟から野菜が送られてきたのは、土曜の午後だった。
届いた箱の中には、レタスや青いトマトと共に沢山のゴーヤが詰められていた。
そしてゴーヤの間に挟まれていた手紙には、「今年はゴーヤが豊作だ。夏バテ予防にどうぞ」と書かれていた。

いつもなら隣の岡村恵子にお裾分けをするのだが、実家に帰るといった恵子はまだ戻って来てはいなかった。だがどの野菜も比較的日持ちがするもので、数日間なら冷蔵庫の中で寝かせていたとしても問題はないはずだ。戻って来たら渡そうと思い新聞紙に包み冷蔵庫へ収めた。

ゴーヤといって思い浮かぶのは、チャンプルーだ。
だから土曜の夜はゴーヤチャンプルーを作り食べた。そして日曜は何の予定もない日曜だった。
病み上がりの週末ということもあり、ゆっくりと過ごそうと思いながら、回復すると途端に動きたくなり午前中に掃除や洗濯といった日常の生活を済ませた。
だが午後からは本でも読もうと思い一冊手にとるとソファに座りページを開いた。だが目は文字を追うが、文章は頭に残らず、主人公の気持に感情移入することは出来なかった。

だがその代わり頭に浮かんだのは、道明寺司のことだ。
愛という言葉を知らなかったという男の姿。弄んで捨てることを目的に近づいたことを認めた男は、殊勝な反省心を示し、真摯な態度で接してきた。

だが、心の中に引かれた線から向うへ足を踏み出だそうとは思わなかった。
だからといっていつまでも黙りこくっていても物事が前に進むはずもなく、冷淡な気持ちで愛について自分の考えを言った。
だが気持ちが千々に乱れていたのは否めなかった。

今まで人生の大切なことを決めるとき、考え過ぎる余り事態は思っていたこととは全く別の方へ向かっていったことがあった。
だから道明寺司とのことは、そうならないように正直に自分の思いを告げた。
その思いは夏の花火のように一度大きく花を咲かせると思ったが、それもなく終わった。
だが恋が駄目になったからといって人生が駄目になった訳ではない。
それに失恋したからといって自分を卑下する必要はない。


つくしは、手にしていた本を置き、コーヒーを淹れようと立ち上がった。
そのときインターフォンが来客を告げた。
モニターを見て息を飲んだ。そこに映し出されていたのは白石美奈。
彼女から衝撃の事実を訊かされたのが丁度一週間前の日曜の午後だったが、あれから一週間たち再び現れた道明寺司の姪は真っ直ぐな視線でこちらを見つめていた。

つくしは受話器を取るかどうか迷っていたが、小さなモニターの中の女性は、堂々とした姿で映っていて、とても二十歳には見えなかった。
すると美奈は再びボタンを押し、つくしが答えるのを待っていた。

それにしても一体何の用があって訪ねてきたのか。
居留守を使うことも出来るが、そうしたところで無駄なような気がしていた。
何しろ彼女は1億の小切手を手に、夫と別れて欲しいと会社まで会いに来た女性だ。
それに道明寺司と同じで、どんな用だか知らないが、いつかまた会わなければならないなら、早いに越したことはない。早々に会うことで、これ以上煩わされることがないなら会おうと思い受話器を取った。



「はい」

『美奈です。白石…..美奈です。牧野さん。お話したいことがあります。少しだけ時間を頂けませんか?』

その声は1週間前とは違い落ち着いた声で口調は丁寧だった。
そしてモニターから細かい表情までは分からなかったが、落ち着いているように見えた。

会おうと思い受話器を取ったが、やはり迷っていた。
話しがしたいと言われても、道明寺司の姪と何を話すというのだ。
それにあの時、彼女の叔父は言ったはずだ。牧野つくしは夫の浮気相手ではないと。
そして彼女も自分の夫の相手が誰であるか知ったと訊いた。つまり非難する根拠はなくなったのだから、話すことなどないはずだ。それに何か言われる筋合いもないはずだ。そんな思いからつくしは言った。

「あの。一体どういったご用件でしょうか?」

『牧野さん。お願いします。どうしても会って欲しいんです。今日はあなたにお詫びを申し上げるために来たのですから』





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コメント
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dot 2018.07.29 07:25 | 編集
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dot 2018.07.29 07:38 | 編集
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dot 2018.07.29 08:14 | 編集
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dot 2018.07.29 09:02 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
何となく上の空の日曜。
そうですねぇ。正確には失恋とは言えないのですが、司はお前のことが好きだといって近づいてきたのですから、それは偽りだったと分かったことで裏切られたような気持でいることは確かではないでしょうか。
さて美奈が来ました。
二人はどんな会話をするのでしょう。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.29 21:57 | 編集
つ***ぼ様
椿の娘であり司の姪。
謝りに来ましたがどんな話しをするのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.29 22:03 | 編集
ま**ん様
おはようございます^^
美奈。謝りに来ました。
夫の浮気に冷静さを失っていましたが、彼女は椿の娘です。
そんな美奈は叔父司の恋も知りました。
美奈、何かアクションを起こすのでしょうか?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.29 22:16 | 編集
H*様
おはようございます^^
本日も「金持ちの坊っちゃん」ではなく「嵐」でした(笑)
美奈、早く謝りに来いでしたか?遅れてすみません。
さて美奈はどんな風に謝ってくれるのか。ここは彼女なりの誠意を見せて欲しいものです。
明日は早番なんですね!お疲れ様です。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.29 22:24 | 編集
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