FC2ブログ
2018
07.25

出逢いは嵐のように 77

「それにしてもよく降る雨だな。けどこの雨が上がればそろそろ梅雨も明けるか?この蒸し暑さとお別れしてカラッとした暑さと夏空に会える日が楽しみだ。まあそうは言っても毎年代わり映えしない夏が来るってことか」

六本木にある昔馴染みのバーで飲んでいる二人の男のうちのひとりは、夏の到来を楽しみにしているが、もう一人の男は琥珀色の液体が入ったグラスの底を見つめながら訊ねた。

「あきら。お前この前ここで飲んだ時、俺が話したことを覚えてるか?」

「ああ。覚えてる。美奈ちゃんの話だったよな。美奈ちゃんの夫が浮気をしているって話。あれからどうなった?」

前回あきらが司とこの店で飲んだとき、妹たちの結婚についての話をした。
司からは姪の夫が浮気をしていると訊かされたが、あれからどうなったのかは知らなかった。

そしてあきらの問い掛けに少し間を置いた司は、今までの事をかいつまんで話した。
美奈の夫の浮気相手と言われていた女と男女の関係になり、その女が美奈の言う浮気相手ではないと知り、そして好きになった。だが美奈が恋は仕掛けられたもので偽りだと告げたため女は去り、美奈の夫の浮気相手は男だと夫本人の口から訊いた。そして昨日の夜、風邪をひいて会社を休んだ女に今の思いを伝えようとしたが会ってはもらえず、友人という女に本気なら誠意を見せろと言われ、あしらわれたと言った。

するとあきらは、あの時言った言葉を再び言った。

「俺言ったよな?極端な身内思いは、身贔屓が強すぎるのは先入観の元だって。結局美奈ちゃんの夫の浮気相手は男で、お前は美奈ちゃんの口から出た女が浮気相手だと信じてその女を抱いてみれば間違いだったってことか?」

「ああ、そうだ。間違いだった」

司はそのことを改めて口にしてみれば、姪の言葉を安易に信じた自分の愚かさを悔いた。

「お前なぁ….簡単に間違いだったって言うが考えてみれば酷い話だぞ?
いいか。相手の女は恋を仕掛けられて捨てられる。いくらお前に抱かれていい思いをしたとしても、普通に別れるならまだしも手ひどく捨てられてみろ。傷つくぞ?けどお前は女を捨てるどころかその女に惚れた。だがお前の悪だくみ…..言葉は悪いがそれがバレてお前はその女にフラれたってことだろ?誰が悪いって言えば計画を立てた美奈ちゃんも悪いがその女が浮気相手だって言った美奈ちゃんの夫も悪い。けどな。実行犯はお前だろ?美奈ちゃんの願いを叶えようとしたお前が一番悪いんじゃないのか?そんなお前が相手の女に今更好きだって言ったところでフラれるのは当然だな」

あきらは呆れたように言って、グラスを口に運んだ。
以前ここで飲んだ時、あきらは親友から姪の夫が浮気をしている。姪から頼まれ相手の女を誘惑して弄んで捨てるという話を訊かされたとき、姪可愛さに話しを鵜呑みにする男にやんわりと釘をさした。だが司は訊き入れなかった。
そしてその結果が、あきらの目の前にいる男の姿に現れていた。
それは、あきらの顔を見た途端放たれた、「女に誠意を示すとすれば何が一番効果的か」の言葉が恋をしたことがない男が恋をしたことを物語っていた。

「それで?どうするんだ。その女のことは。お前好きなんだろ?」

だがあきらの問いに答えることなくカウンターの隣の席で落ち着き払った様子でバーボンのオンザロックを飲む男は、女の方から好きになられても、自分から好きになったことが無いのだから、初めて味わう人を好きになるという感覚に戸惑いもあるが、誠意を見せろと言われても何が誠意なのか分からないのだろう。

「おい司。確認させてもらうが、この件は言葉は悪いがお前と美奈ちゃんがその女にイチャモンをつけたってことだよな?言いがかりをつけたがそれが間違いでしたってことだな?」

「ああ。お前の言う通りだ」

そう答えた男は、一杯目を飲み干し二杯目をおかわりしたが一気に飲み干すと、三杯目を注文した。だが司は酒に浸るために飲むのではない。愚痴をこぼす助けに飲むのではない。
ただ喉を潤すために飲むのだが、気付けば幼馴染みであるあきらに相談していた。


「司。お前の考える誠意ってのはなんだ?女に金をかけてやることか?高い宝石を贈ることか?言っとくが女に金をかけてやることが誠意じゃない。誠意っては逃げないことだ。相手の言葉を真正面から受け止める。それは非があればそれを認めるってことだ。それに相手を尊重して裏切らない。隠し事はしない。それに理解してやることだ。自分の思いを殺しても相手を尊重してやること。だからって相手の言いなりになることじゃない。
つまり思いやる気持ちが恋愛に於いての誠意だ。間違っても宝石なんぞ贈って相手の気を引こうとするな。本気の女を物で釣るようなことはするな。馬鹿な女ならそれで機嫌を直すだろうが、しっかりと自分の意志を持つ女には、そんな小細工は通用しないはずだ。金で買える女じゃない。馬鹿にしないでくれって突き返されるのがオチだな」

牧野つくしのまったくの拒絶にあっている司は、あきらの話の中にまさに自分が行おうとしていたことを言われ、内心動揺していた。

「まあ、人妻相手の恋をしてきた俺に言わせれば、相手を立てることが誠意ってことになるがな。女の我儘も無理も叶えてやるのが俺の誠意ってことだが、誠意って言葉は難しいぞ。何しろ意味の幅が広い。それに相手の受け取り方次第でどうにでもなるからな」

そしてあきらはひとしきり喋ったあと、静かに司に言った。

「お前、その女にマジなんだな?お前が女に惚れたことは今までなかったが本気なんだな?お前の返答によって俺はお前の力になるかならないか考える。それで、どっちだ?」

本気の恋愛をしたことがない男が、女に対し自分の全てを開いてみせることが出来るのか?
道明寺司というプライドの高い男が誠心誠意女に尽くすことが出来るのか?

「あきら。俺は本気だ。あいつのことが、牧野つくしのことが好きだ。惚れた。けどあいつは俺がそう言っても信じようとしない」

「ああ。そうだな。ショックな話を訊かされたばかりでそう直ぐに騙した男の話を信じるほど女もバカじゃないはずだ。これから先は粘り強く行くしかない。それからその女の友達って女。お前に誠意を見せろって言った女。その女のことを教えろ。おまえの会社の社員だろ?女ってのは女同士しか分からん緊密な繋がりってのがある。うちの妹たちにしてもそうだが、女は感情的な生き物だ。相手に同意してもらうことで安心感を得る。だからお前のことで耳に入れてもらいたいことは親しい友人から語られる方がいい。本人が話すより断然いいはずだ」

あきらは隣に座る男がじっと真正面を向き、酒の瓶が並んだ棚を見つめている様子を見ていたが、今まで女のことで罪悪感を味わったことがない男が罪の意識にさいなまれているのを感じていた。
だがどんな男も恋をすればそうなる。
そして恋をしたことがなかった男が恋をした相手がどんな女か見てみたいという気になっていた。道明寺司という男の謝罪を一切受け付けず突っぱねた女は一体どんな女なのか。

「司。愛ってのは頭で考えても分からないものだ。だからって口に出してみれば分るというものでもない。どんなに偉い人間でも恋をすればタダの人になる。つまりお前もタダの男になったってことだ。ま、初めて恋をしたお前の為に俺が力になれることはしてやるよ」





にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.07.25 06:04 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.07.25 06:54 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.07.25 21:41 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
誠意とは。あきら司に話しました。
高価な物を贈ることを考えては駄目だと言われ、ドキッとしたことでしょう(笑)
「誠意」難しいですね。見せたい相手がそれを誠意と受け取ってくれるのかという問題もありますしねぇ...。
司には間違った誠意を見せないようにしてもらわなければいけません。
さあ、心を取り戻すことが出来るのでしょうか。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.25 21:44 | 編集
つ***ぼ様
謝罪に来ない面々。
事実が分かったのが日曜。
そしてこの日は火曜の夜。
まだ彼らはそれぞれに自分が置かれた立場で色々とあるのかもしれませんね。
その中で司はどうやって彼女に誠意を見せるのか。
そうです。あきらの言葉を訊いていたらこんなことにはならなかったのに....。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.25 21:58 | 編集
童*様
そうですよね。関係者それぞれつくしに謝りに来い!
それは美奈と自分には全く関係ない女の名前を口にした夫。
彼らのせいでつくしは悲しい思いをしています。
しかし美奈の母は椿です。常識のある彼女は娘の行動を許さないはずですよ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.25 22:09 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top