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2018
07.21

出逢いは嵐のように 74

「先輩大丈夫ですか?エアコンのかかった部屋で髪の毛乾かさずに寝るなんて、風邪をひいても仕方がないですよ。それにしても今回の風邪は質が悪そうですね?」

欠勤しますと会社に連絡をしてベッドに横たわると、ウトウトしながらひたすら水分を取っていたが、ちょうど昼休みに入った頃携帯に桜子からメールが届いた。そこには、ニューヨーク土産に渡したチョコの感想と共に、
『月曜出社。道明寺副社長と会いましたか?恋人になってから会社で顔を合わせるってどんな感じですか?』
と書かれていたが、風邪をひいて寝込んでいると返信をすると、『仕事終わったら行きますから』と返事が届くと夕方の早い時間に桜子はつくしのマンションを訪ねてきた。

「先輩大丈夫ですか?そんなんじゃ明日も会社は無理ですね?それに食事。してないでしょ?」

「うん….食欲なくてね。素麺でも茹でようかと思ったけど、昼は水とヨーグルトしか食べれなかったの」

トイレには何度か行ったが、動き回ると気分が悪くなり、台所に立つことも億劫で何かを作ろうといった気にはなれなかった。だが熱は38度から上がることはなく、薬のおかげか少しだけ下がっていた。

「そうですか。そうだと思いました。素麺もいいですけど栄養付けなきゃ駄目ですよ。風邪の時は身体に優しいタマゴ料理が一番です。卵とネギとしらすがたっぷり入ったお粥を作りますから先輩はゆっくりして下さい」

桜子はお粥を炊き、そこへ自らがスーパーで買ってきた食材を使い桜子特製という青ネギとしらすがたっぷり入った卵粥を作ってくれたが美味しかった。そしてこれも食べて下さいとプリンを差し出してきたが、口当たりがいいプリンはあっという間に胃の中へ消えていった。

「先輩たまにこうして風邪ひきますよね?でも今回の風邪はかなり重症ですね?それに夏風邪は長引きますから本当に気を付けないと身体が元通りになるには1ヶ月くらいかかりますからね?まずは水分を沢山とって、それから栄養のあるものを少しずつでも食べる。これしかないですからね?」

桜子は、佐々木純子と同じことを言ってつくしが食べた食器を洗い始めたが、対面式キッチンに立つ女は、昼間のメールの返事を訊くことにしたのか、

「ところで先輩。道明寺さんには連絡したんですよね?お忙しい方だと思いますけど、恋人が風邪をひいて苦しんでいるのを放っておくような人じゃないですよね?お見舞いに来られるんですよね?私もしかしてお邪魔ですか?」

と訊いたが、つくしは首を横に振った。

「うんうん。来ないわ」

その言葉に桜子は洗い物をする手を止め怪訝な顔をした。

「それ、どういう意味ですか?忙しくて無理だってことですか?それともまた出張に出られたんですか?」

いっそのことまた暫く出張に出てくれたらと思うがそうではない。

「うんうん。違うの。別れたの....恋は終わったの」

桜子は、流し台の前からつくしがいるダイニングテーブルに回って来ると、つくしの前に腰を降ろした。

「ちょっと先輩。それどういう意味ですか?だって付き合い始めたの、まだつい最近ですよ?それなのに別れた。終わったってどういう意味ですか?」

テーブルに前のめりの姿勢で訊ねる女は、怪訝だった顔が眉間に皺を寄せるような顔に変わっていて怖いほどに真剣だった。
何しろつい2日前ここで恋のスタートのお祝いだと言ってワインを開けパスタを食べたばかりだ。
それなのに何故こんな短期間で恋が終ったのかと考えるが、いくら桜子が頭の中で考えたところで、つくしの思考を読む事は出来ない。だから桜子は、口を開こうとしないつくしに再び訊いた。

「先輩。どうして道明寺さんと別れたなんて言うんですか?それ冗談か何かなら怒りますよ?」

「どうしてって…..別れたんだもの。それに冗談じゃなくて終わったとしか言えないんだもの」

仕掛けられた恋だった。関係を結び、弄んで捨てることを目的に近づいて来た。
そのことを昨日知った。

「終わったとしか言えないって…..先輩。それどういうことですか?ちゃんと説明して下さい。別れたなら別れた理由を教えて下さい」

そう言われても、心の中を言葉にするには、人に話すには少しの時間と勇気が必要だ。
ほんの短い間の恋が、いや恋と思っていた関係が偽りのもので、その全てが偽りであると知ったとき、自分がどんな顔をしていたか知らないが、白石美奈の言葉が頭の中に浸透するまでの数秒間さぞや間抜けな顔をしていたはずだ。

「先輩?」

「あのね、桜子。あの恋は嘘だったの」

つくしは言葉を捏ねることなく短く言った。

「嘘?……嘘ってどういう意味ですか?まさか道明寺副社長には先輩意外にも付き合っている人がいるとか、そういうことですか?まさか二股ですか?」

「うんうん。違うの…..そうじゃなくて、恋そのものが幻だったの」

「あの。先輩。もっと具体的に話して下さい。幻っていったい__?」

「….うん。私に夫と別れてくれって会社に1億の小切手を持って現れた女性の話をしたでしょ?覚えてる?」

受付けから来客だと言われロビーで待つ女性と会ったが、いきなり夫と別れてくれと言われ、手切れ金として1億の小切手を用意したと言われたことがつい先日のことのように思い出されていた。

「ええ。勿論覚えてます。若い女性でお金持ちのタイプって話でしたよね?その人が何か関係あるんですか?」

「うん….その女性が道明寺副社長の姪だったの。それで…..私が道明寺に出向になったのも、道明寺副社長の傍で働くようになったのも、ニューヨークへ出張したのも、その姪に頼まれたからなの」

事情が呑み込めない桜子は訝しげな表情を浮かべ、つくしが言葉を継ぐのを待っていた。

「あのね、副社長が私のことを好きだと言ったのは、姪の夫を奪った私に復讐することが目的だったの。夫から私を引き離すことが目的で近づいたの。だから本当の恋じゃなかったの。幻だったってわけ」

「え…でもそれって間違いですよね?先輩はそんな夫の存在は知らなかったんですし、あの頃その女性の勘違いで間違いだって話をしましたよね?それにそれっきりその女性は現れなかったし、間違いだって話でしたよね?」

間違いだ。勘違いだ。
それ以外思いもしなかった。だからあれ以来気に留めたことはなかった。

「うん。そう思ってた。でもそうじゃなかったの。その女性は叔父の道明寺副社長に夫の不倫相手を誘惑して弄んで捨てて欲しいって頼んだの」

まさか罠を仕掛けるではないが、夫の浮気相手と思われる女性にそんな仕打ちをしようと考えるとは思いもしなかった。

「それって、つまり、牧野先輩と道明寺副社長の恋は、姪の夫と不倫をしてる先輩を騙して捨てるつもりで始められたってことですか?」

「そう。そういうこと。だから恋はおしまい。だって彼は姪の頼みを訊き入れて目的を果たしたんだもの」

二人の関係の始まりは姪の頼みから始まったが、途中からはそうではなくなったと強く否定したが信じられなかった。
姪の結婚生活を守るためゲーム感覚で口説き落とすことを楽しんでいたはずだ。

「ちょっと待って下さい。....つまり恋がおしまいって…それって捨てられたってことですか?道明寺副社長が先輩を騙して捨てたってことですか?」

「うんうん。それは違うの。だってね、桜子。私あの人と恋をしたいと思ったから騙すことが目的で近づいて来たとしてもシンデレラの靴の気分は味わえたんだし、恋は自己責任だって言うでしょ?だから私からさよならしたの。恋は昨日で終わったの。もう忘れることにしたの」

そこまでの話を訊いた桜子は、

「先輩それって恋愛で騙された人がよく言うセリフです。自分が悪かった。恋は自己責任だって必ず言います。今の先輩はまさにそれです。それにしても道明寺副社長ってそんな人だったんですか?私見損ないました。いくらご自分の姪が可愛いからといって女性を騙して捨てるなんてことをしますか?自分を何様だと思ってるんですか?恋は対等にするものであって騙すとか罠にかけるとかするべきじゃないと思います」

と桜子は憤慨したが、自分の恋愛については、手練手管を駆使して目的を達成させるが、それとこれとは別のようだ。

「先輩。そんなことされて黙っていることないですよ。そんなこと許されません。道明寺副社長もですが姪にも呆れます。週刊誌でも何でもいいからこの状況を訴えたらいいんです!人の心を弄んで捨てるような男、週刊誌で叩かれればいいんです!
だいたい先輩は姪の夫となんの関係もないじゃないですか!よく調べもしないでどうしてそんなことが出来たんでしょうね?私幻滅しました。あの道明寺副社長がそんなことするなんて、お金持ちでカッコいいかもしれませんが人として最低です!」

と桜子は息巻くと、幾らか気持ちが落ち着いたのか、先輩食後のお薬飲んで下さいね。
お水汲んできますから。と言って椅子から立ち上った。

その時インターフォンが鳴り、誰かが訪ねて来たことを告げた。





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コメント
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dot 2018.07.21 05:16 | 編集
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dot 2018.07.21 09:02 | 編集
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dot 2018.07.21 09:41 | 編集
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dot 2018.07.21 17:40 | 編集
つ***ぼ様
美奈に謝罪をお求めですか?
二十歳の彼女は自分が犯した罪を理解しているはずですよ。
何しろ母は椿。人としてしなければならないことを娘に説いたはずです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.21 22:18 | 編集
と*****ン様
修羅場が訪れそうな予感ですか?( *´艸`)
やっちゃえ桜子!
やっちゃうのでしょうか?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.21 22:23 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
桜子が来てくれました。やはり桜子頼りになります。
お粥を炊いてくれました。プリンも買ってきてくれました。
そして桜子憤慨してますね(笑)
道明寺司を見損なった!と怒っていらっしゃいます。
二人の関係を週刊誌に売るとすればタイトルは....(≧▽≦)いいですね!文春でお願いします!
さて訪問者は誰なのでしょう?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.21 22:31 | 編集
H*様
こんにちは^^
頑張れ桜子!
桜子よく言った!(笑)
桜子からすれば、つくしはお人好し過ぎて心配なところもあることでしょう。
訪問者に対してガンガン行くのでしょうか?^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.21 22:36 | 編集
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