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2018
07.14

出逢いは嵐のように 68

『道明寺司は私の叔父様ですもの』


つくしは目の前でアイスコーヒーを飲む女性の言葉を反芻していたが、その言葉を解釈すれば、白石美奈と道明寺司は近い親族ということになる。
そして親族だということが頭を過ると、彼女に恋人との血の繋がりを、共通点を感じさせる何かを見つけ出そうとしていた。

背が高い女性の整った顔立ち。瞳は切れ長で冷たさが感じられる。
だがそれは単なる特徴で、先祖代々の遺伝的な要素ではあるが、必ずしも恋人と関係があるとは言えないはずだ。
そうだ。名の知れた人物というのは、本人が全く知らないところで、親戚だ、友人だと名乗る者がいるからだ。だから確固たる証拠がない限り簡単に信じるつもりはない。
それでも白石美奈の言葉を信じそうになるのは何故なのか。
もし二人が本当に叔父と姪の関係だとしても、何故目の前の女性がつくしにそんな話をするのか。

「牧野さん。頭の中でいくら考えても道明寺司と私は叔父と姪の間柄よ。私の母親は叔父様の姉ですもの。だから疑っているとしても本当よ。でも証拠が欲しいなら幾らでも見せてあげるわ」

美奈はそう言って手にしたハンドバッグの中から1枚の写真を取り出した。

「これは私の結婚式の写真よ。母と叔父様が写ってるわ」

テーブルの上に置かれた写真には、純白のウエディングドレスを着た女性が中央に、両隣にはドレスを着た彼女に似た背が高い女性と、タキシードで正装したつくしの恋人が微笑む姿があった。

「私の母は叔父様にとっては母親のような存在なの。何しろ母方のおばあ様は忙しい人で叔父様が幼い頃は殆ど家にいなかったの。だから私の母が叔父様の面倒を見ていたそうよ。つまり叔父様は今でも姉である母には頭が上がらないことがあるのよ」

恋人の生い立ちが今のつくしに何の関係があるのか。
それでも、美奈の話し方の中に感じられる優越感に満ちた訳知り顔といった話しぶりは、彼女だけに分かる何かを遠回しに言おうとしているのは感じられる。と、同時に胸騒ぎはかつて学生時代に付き合った三田健一がつくしに嘘をついた時と同じくらいつのっているが、それに輪をかけたように不安感もつのりはじめた。そして何か言おうと言葉を探したが口にすることが出来なかった。

「叔父様はあの通り素敵な人だから、どんな女性も叔父様の魅力には叶わないわ。それに本人が意図しなくても女性は叔父様に惹かれるの。分かるかしら?叔父様の足元にはどんな女性も身を投げ出すの。勝ち取る必要がないの。近づく必要もなければ声を出す必要もないの。だって叔父様の存在は、そこにいるだけで罪ですもの」

道明寺という財閥の家に生まれた男の前には大勢の女性がいて当然だ。つくしは、そのことは十分承知していた。それに美奈が口にしたその存在が罪だという言葉を否定するつもりはない。
もしかすると美奈が言おうとしているのは、あなたは私の叔父とは結婚出来ないということだろうか。

だがつくしは最初から結婚を見据えた付き合いではないと言われている。そしてつくし自身もそのつもりはないと答えた。恋を楽しみたいと言った。だが心の隅にあるのは、それとはまた別の思い。どんな女性も夢を見ることがある幸せの風景。
だがもしそうだとしても、本人に言うつもりはない。

そして今一番疑問なのは、何故美奈がつくしに叔父の話をしに来たのかということだが、それは自分の夫の浮気相手と信じて疑わない女が、今度は叔父と付き合い始めたことが許せないというのだろうか。だから自分の身内を守るため、つくしの前に現れたのか。
黙り込んでしまった訳ではないが考えていたつくしの耳に飛び込んで来たのは、優越感を通り越してバカにするような声だった。

「何?何か言いたいことがあれば言いなさいよ。それにしてもあなたまさか叔父様が本気であなたみたいな平凡な女を相手にすると思った?本気で恋人になれると思ったの?」

美奈はそこまで言うとクスッと笑った。
そしてストローに唇を近づけ氷が解け始めたアイスコーヒーを口にするとつくしに視線を合わせた。

「叔父様の演技がどんなものだったが見たい気もするけど、どちらにしても簡単だったはずね?私としてはもっと長い間あなたが騙されているのを見たい気もしたけど我慢が出来なくなったの。早くあなたが地獄に堕ちるのを見たかったから」

その口ぶりと顔はふざけているとか冗談といった顔ではない。
面白そうな、それでいてバカにしたような顔は明らかにつくしのことを笑っていた。

「……あの、それはどういう意味ですか?」

つくしはそこでやっとではないが、おもむろに口を開いた。

「やだ。まだ分からない?あなた余程鈍感なのね?いいわ。はっきり言ってあげる。叔父様はあなたのことは好きでも何でもないわ。私に頼まれたからあなたに近づいただけ。あなたとの関わりは仕組まれたものってこと。あなたが私の夫を取ろうとしたから、夫から引き離すために叔父様に頼んだの。牧野つくしを誘惑して弄んで捨てて欲しいってね」










店の中に誰かの足音が響いた。
それが誰の足音かは知らないが、頭の上から聞こえた声は男性のものだと分かった。
だが誰の声なのか。顔をあげれば、そこにいる男性が肩で息をしている姿があった。

男性の目がつくしに向けられているのは分かるが、何を言っているのか理解できなかった。
ただ白石美奈がその男性のことを叔父様と呼び、呼ばれた男が美奈と呼んでいることだけは理解出来た。





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コメント
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dot 2018.07.14 07:35 | 編集
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dot 2018.07.14 07:41 | 編集
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dot 2018.07.14 10:06 | 編集
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dot 2018.07.14 10:59 | 編集
と*****ン様
来た!(≧▽≦)
はい。来てしまいました!
さあどうする、司?
アタフタ祭り開催するのでしょうか?( *´艸`)
え?楽しみにしてる。それは確かにひどいかも?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.14 22:14 | 編集
ふ*******マ様
司。一足遅かった!
そして地獄への扉が開かれたのでしょうか。
つくしは、騙され続けるよりも、ここで真実が判って良かったのでしょうか。
さて、ここから先は司にタップリお仕置きでしょうか。
そして椿お姉さん。来る~きっと来る~♪の音楽に乗って現る日はいつでしょうね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.14 22:24 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
恋は仕掛けられたもの。
ついに美奈によって告げられてしまいました。
つくしは今何を思う?ショックでしょうね。
そして司は失った信用を取り戻すことは大変です。
さてここから先の司はどのような行動を取るのか。
そろそろ椿お姉さんがやって来るのか?
母であり姉であり、椿さん大変ですね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.14 22:46 | 編集
さ***ん様
はい。思い込みは恐ろしいです。
そして今の美奈はスッキリとした顔をしているでしょうね。
それに対し、つくしの頭の中は真っ白。
そんな所に現れた司!間に合いませんでした。
え?タイミング的にはばっちりですか?(笑)
さて、この後司はどうするのでしょう。
誠意を見せるしかないと思うのですが、受け入れてもらえるのか、それとも?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.07.14 23:04 | 編集
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