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2015
11.01

まだ見ぬ恋人16

つくしは疲れ果てていた。
部屋の隅に置かれたスーツケースの前で座り込んでいた。
まさかあと2週間も支社長と同じ部屋なの?
そんなわけがあるはずはない。
だって学会は長くても1週間くらいでしょ?
それが終わればきっとまた別の部屋に戻れるはずよね?
それに同じ部屋って言ってもこれだけ広いスイートルームのなかのひとつで
各部屋にシャワールームもあるんだし何か起こるかなんて私が気にし過ぎなの?

そのとき突然、部屋のドアが開きつくしは驚いた。
「いったい何をやってる?」
「何をってに、荷物の整理を・・」
「そんなこと後にしろ!明日から現地視察に入るがその前にやることはいくらでもあるぞ」
つくしは思った。
そうよ、支社長だってへ、変なことは考えてないわよ!
だってここへは仕事で来てるんだから!
「は、はいっ」つくしは同意を示し司に従い部屋をあとにすると広々としたリビンググルームへと足を踏み入れていた。
「すごいですね!」
つくしは感嘆の声をあげた。
司は室内を初めて見たように見回していた。
「そうか? メープルに比べたらランクは落ちるがこのあたりのホテルとしてはいいんじゃねぇの?」
こんなにも素敵な部屋なのに、どうしてそのことに気がつかないのか不思議だった。
日本とは異なり照明の明るさが暗い灯りの下で見る部屋はある意味排他的でもあった。
赤銅色と黄褐色で統一されたインテリアはまるでこの街の繁栄を支える鉱石の色を表しているようだ。
そしてこの地方独特の大地の色に合わせたようなベンガラ色のソファはゆったりと深く腰掛けることが出来そうで座り心地がよさそうだ。

支社長って財閥の跡取り息子だし、このクラスのホテルなんて普通なのかもね・・。
「こんなに素敵な部屋なのに・・」
つくしは思わず声に出していた。
「ホテル暮らしばかりしてきたらからよ、そんなこといちいち気になんてしてないからな」
その言葉を聞くか聞かないうちにつくしはリビングの中央を占めるソファに近づくとテーブルのうえに飾られている花を手にしていた。
「ゴールデンワトルですね」
「花の名前か?」
「はい、A国の国花です。アカシア科の花なんですよ?国の紋章にも使われてます」
「よく知ってるな?」
司は感心したように言った。
「あたりまえじゃないですか?わたしはA国大使館に勤務していたんですよ?
それにもう春ですしね、この花は春先から夏にかけてこんなふうにきれいな黄色い花を咲かせるんですよ?大使館にいた頃はよくこの花を目にしていました」
つくしは笑みを浮かべると懐かしそうに言った。
「支社長、この国のラグビーチームご存知ですよね?強いでしょ?ユニフォームの色もこの花に由来しているんですよ?」
「そうか・・」
つくしは先ほどまでの不安をよそにソファに腰かけて座り心地を確かめたり、テレビが備えつけられている背の高い収納棚へと歩いていくと、引き出しを開けて中を確かめたりし始めていた。
司はそんなつくしの様子を黙って眺めていた。
「あ!」
引き出しの中を覗いていたつくしは言った。
「なんだ?」
あわてて頭をあげると司がそばに来ていた。
「いえ、なんでもありません」
つくしは慌てて引き出しを閉めにかかった。
「どうした?なんだよ?」
司は好奇心から慌てて引き出しを閉めるつくしの動作を不思議に思った。
「すいません、明日の視察の為の準備でしたね」
無理矢理話しを変えようとするつくしをよそに司が覗いた引き出しの中にはホテルで上映されている映画の案内が入っていた。
「なんだよ、映画の上映表かよ」
司はその上映表を手にするとタイトルを読み始めていた。
「牧野何か見たい・・・・・なんだコレ?」
「し、支社長し、仕事しましょう!」
つくしは何か後ろめたさを覚えたように慌てて言った。
「なんだよ牧野おまえ・・・これ・・・見たいなら見るか?」
司はにやりと笑うと言った。
つくしはあごをつんと上げて言った。
「み、見たくなんてありませんからっ!」
「へぇー。そうか。牧野でもイヤラシイ映画が見たいんだ?」
司はつくしの言葉は聞いていないふうに言った。
「わたしがですかっ?」
つくしは冗談でしょとばかりに司を見た。
「だって今、熱心に上映表を見てただろ?」
「ち、違います!」
つくしは頭を振って否定をした。
「おまえ、そういう映画って見たことある?」
「あ・・あるわけないじゃないですか!」
つくしはつんとすまして言った。
「し、支社長こそ・・そんな映画をよく見るんですかっ?」
「あ?こんなもん大袈裟なだけでマジもんでもねぇのに何が見て楽しいんだか。
まあ、ガキの頃はダチが面白半分に見てたのを一緒に見たことはあるけどよ」
司はあんなもの小便くせぇガキの見るもんだと言うふうに言った。
「よし!」
司はおもむろにリモコンを掴むとテレビのスイッチを入れた。
「牧野、こんな間近で立って見るのか?まぁ、俺はそれでもいいけどせっかくなんだから
おまえが座り心地を確かめていたソファに座れよ?」
「や、やめて下さいっ!そんな映画なんて見たく・・」
司は外人のはどんだけか気になんねぇか?
まあ試しに見てみろと言い出した。
ああ、もう始まってるぞ?今からだと途中からだな。
そう言いながら司は成人映画を見るためのボタンを押していた。
そしてつくしは自分の道徳観が好奇心に負けそうになりながら司に促されるままぎくしゃくとした動きでソファに腰をおろしていた。





司は大画面に映し出された映像を見て大笑いを始めていた。
その大袈裟な痴態に笑いをこらえることが出来なかった。
そこには身もだえる男女のあられもない姿が画面いっぱいに映っていた。
金髪で裸の女が四つん這いになった後ろから男が激しく責めたてている。
そして呻き声と体がぶつかり合う音とあえぎ声が聞こえている。
暫くすると今度は男が別の女の両脚を掴むと大きく開きその間に顔を埋めた。
そうしながらも男の両手は女の胸を乱暴に揉みしだいている。
つくしは目を見開いたままで顔が真っ赤になるのを感じた。
唇が乾いて、胸の鼓動が激しくなっているのが分かった。
テレビからはあえいだり、うめいたりする嬌声が聞こえてくる。
目を閉じればいいのに、それも出来ずにひたすら画面を凝視して固まっていた。

司は画面に映し出されているものには全く関心がなかった。
そんなものにはとっくに飽きていた。
「どうだ?」
司は尋ねた。
そして司は笑いながらつくしの隣へ座った。
笑いながら目じりの涙をぬぐった。
司はつくしの顔を覗き込むようにして話しかけた。
「ま、まきの?」
こいつ固まってるぞ!
司は笑いが止まらなかった。
「お、おい?」
笑いが止まらない。
「話しのストーリーがわかるか?」
司は笑いながらもあえて聞いてみた。
こんな映画にストーリーなんてあるわけがない。
ヤルだけの映画だ。
「これはな?ひとりの男がふたりの女と・・」
司は笑いを噛み殺しながら説明を始めた。
つくしは隣にすわる男が目の前の画面ではなく自分のほうを見て話しかけて来ていることに気づいてうろたえた。
そしてその男の胸が揺れているのを見て自分を見て笑っていると気づくとますますうろたえた。


「こ、この変態っ!」
つくしはそう叫ぶと隣に座る司の胸を突き飛ばしリビングルームから走って逃げた。









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コメント
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dot 2015.11.01 07:30 | 編集
ゆ*ん様
拍手コメント有難うございます。
仰るとおり最低ですよね(笑)
初心者なので多分アプローチの仕方が解らないんだと思います。
西田さんにご指導頂かなくてはいけませんね。
早く帰って来てっ(;´Д`)
アカシアdot 2015.11.01 22:33 | 編集
た*き様
せっかく同じ部屋になったのにそのチャンスが活かせていません。
色々な意味でチャンスなのに勿体ないですよね?(笑)
初心な二人の今後は・・・
なかなか甘い雰囲気にならなくて申し訳ないです。
アカシアdot 2015.11.01 22:44 | 編集
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