つくしの人生の中ではじめての経験は、男性の全裸を見たことだ。
過去につき合った男性はいない。それに家族は決してそんな姿を見せようとはしなかった。
「そ、そんな事、言った覚えは・・・」
つくしは完全に目が泳いでいた。お願いだから何か着て!
そ、その彫刻のような見事なお身体を何かで隠して!
この憎たらしいほど魅力的になった道明寺と結婚してからというもの、つくしは自分を見失いそうになっていた。
「あるよな?」
道明寺も道明寺だ。
あたしとの結婚に腹を立てていた男だったはずだ。だから相手にされることなく、ほったらかしにされると思っていた。だがどんな理由からなのか、急に構われる羽目になっていた。
バスルームからローブを羽織ってきた道明寺。
その姿はあらぬ想像をかき立てる。
その広い胸を見つめてしまった。筋肉はあっても脂肪はない。
まさに理想の男性像だ。肌は、胸はどんな感触なんだろう。
髭が伸びかけたあの顎で肌をこすられたらどんな感触なんだろう。
それにあの口・・・
この男の危険なセックスアピールはとうてい無視できない。
そんなことを考えていたあたしは思わず呻き声を上げてしまったかもしれない。
「なんだよ?聞こえねぇなあ」
艶を含んだ視線を向けながら言葉を求める道明寺。
その微笑みは凶器だ。
こんな微笑みを向けられたら喜んでその身を差し出す女性が沢山いるはずだ。
凶器として届出をするべき男のほほ笑みだ。
「・・・言ったかもしれない」
つくしは思考の端くれを掴もうとしていた。
そうよ、言ったわよ。言いました。
「だよな?で、どうだ?」
道明寺はローブのベルトを締めるとベッドの中で固まっているあたしの前までやってきた。
「何がどう、どうしたのよ?」
動揺が隠せないあたしにその綺麗な顔を近づけてくる。
近い・・近すぎるのよ。
あ、あんた男のくせにその美しさはなに?
今の道明寺は高校時代より何倍も美しい。あの頃だってまともに視線を合わせることが出来なかった。それなのに、大人になった道明寺にはセックスアピールまで身に纏っていて、あの頃よりたちが悪い。
「おまえ、契約書読んだんだよな? アレになんて書いてあったか覚えてんだろ?」
近すぎて瞳の虹彩まではっきりと見えるくらいだ。
「・・・さ、さあ・・・ははは、何のこと?」
つくしは引き攣った頬に無理矢理笑顔を貼り付けていた。
それでも道明寺の言いたい事は理解出来た。
「なんて書いてあったか言ってやろうか?」
道明寺はおかしそうにニヤニヤと笑い
「妻は夫の求めに応じ、セックスの相手を務めるコト」
と、嬉しそうに言った。
つくしは司の顔を見つめないように努力したが無理だと思った。司の言った直接的な表現にどうしようもなく、顔が赤くなっていることが感じられた。
夫婦となった二人にとってのセックスが、大切なコミュニケーション手段のひとつだということは、もちろんわかる。
だがその直接的な表現に対してどうしようもなく顔が赤くなるのが分かった。
つくしは思わず言いたくなった。
もっと、こうお互いの心と身体を慈しむとかなんとか言い方があるでしょう?
「おまえなあ、そんな表現の仕方じゃあ歪曲し過ぎて意味わかんねぇ」
「え?なんで?」
きょとんとしたつくし。
恐らく心の叫びはダダ漏れだ。
「ってことでだから、これから俺とおまえで―――」
と、司はつくしの上掛けを剥がそうとする。
「だ、ダメダメ!無理、無理、無理だから!」
必死になって上掛けを掴むつくし。
「何で無理なんだ?」
「何でって無理なものは無理よ!」
司はわかっていてわざと言った。
俺も意地悪りぃよな。 司は確信していた。多分牧野はこんな経験なんてないはずで、いきなりってのは無理ってのは分かっているつもりだ。
だが、こんなにテンパってる牧野を見たらイジメてもみたくなるだろ?
「く・・くくく・・はっ・・」
オモシロ過ぎる。
「あんた!何がそんなにおかしいのよ!」
司の笑い声につくしの顔は真っ赤になっていた。
「まきの・・可笑し過ぎるだろ?おまえのその態度。俺だって何もおまえを手込めにしようなんて考えてねぇよ。こういうことは折を見てだな・・」
「な、何よ折を見てって・・・」
でっけえ目見開いて今にも泣きそうな顔している女。
そんなこんなで俺たちは上掛けを挟んだ攻防戦を繰り広げていたんだが
「まあ、そういう事だから、おまえも心の準備つぅもんが必要だろうし、俺もそんなに切羽詰まってる訳でもねえし、そのうちな・・」
司はつくしの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるようにし、ベッドルームを後にした。

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「そ、そんな事、言った覚えは・・・」
つくしは完全に目が泳いでいた。お願いだから何か着て!
そ、その彫刻のような見事なお身体を何かで隠して!
この憎たらしいほど魅力的になった道明寺と結婚してからというもの、つくしは自分を見失いそうになっていた。
「あるよな?」
道明寺も道明寺だ。
あたしとの結婚に腹を立てていた男だったはずだ。だから相手にされることなく、ほったらかしにされると思っていた。だがどんな理由からなのか、急に構われる羽目になっていた。
バスルームからローブを羽織ってきた道明寺。
その姿はあらぬ想像をかき立てる。
その広い胸を見つめてしまった。筋肉はあっても脂肪はない。
まさに理想の男性像だ。肌は、胸はどんな感触なんだろう。
髭が伸びかけたあの顎で肌をこすられたらどんな感触なんだろう。
それにあの口・・・
この男の危険なセックスアピールはとうてい無視できない。
そんなことを考えていたあたしは思わず呻き声を上げてしまったかもしれない。
「なんだよ?聞こえねぇなあ」
艶を含んだ視線を向けながら言葉を求める道明寺。
その微笑みは凶器だ。
こんな微笑みを向けられたら喜んでその身を差し出す女性が沢山いるはずだ。
凶器として届出をするべき男のほほ笑みだ。
「・・・言ったかもしれない」
つくしは思考の端くれを掴もうとしていた。
そうよ、言ったわよ。言いました。
「だよな?で、どうだ?」
道明寺はローブのベルトを締めるとベッドの中で固まっているあたしの前までやってきた。
「何がどう、どうしたのよ?」
動揺が隠せないあたしにその綺麗な顔を近づけてくる。
近い・・近すぎるのよ。
あ、あんた男のくせにその美しさはなに?
今の道明寺は高校時代より何倍も美しい。あの頃だってまともに視線を合わせることが出来なかった。それなのに、大人になった道明寺にはセックスアピールまで身に纏っていて、あの頃よりたちが悪い。
「おまえ、契約書読んだんだよな? アレになんて書いてあったか覚えてんだろ?」
近すぎて瞳の虹彩まではっきりと見えるくらいだ。
「・・・さ、さあ・・・ははは、何のこと?」
つくしは引き攣った頬に無理矢理笑顔を貼り付けていた。
それでも道明寺の言いたい事は理解出来た。
「なんて書いてあったか言ってやろうか?」
道明寺はおかしそうにニヤニヤと笑い
「妻は夫の求めに応じ、セックスの相手を務めるコト」
と、嬉しそうに言った。
つくしは司の顔を見つめないように努力したが無理だと思った。司の言った直接的な表現にどうしようもなく、顔が赤くなっていることが感じられた。
夫婦となった二人にとってのセックスが、大切なコミュニケーション手段のひとつだということは、もちろんわかる。
だがその直接的な表現に対してどうしようもなく顔が赤くなるのが分かった。
つくしは思わず言いたくなった。
もっと、こうお互いの心と身体を慈しむとかなんとか言い方があるでしょう?
「おまえなあ、そんな表現の仕方じゃあ歪曲し過ぎて意味わかんねぇ」
「え?なんで?」
きょとんとしたつくし。
恐らく心の叫びはダダ漏れだ。
「ってことでだから、これから俺とおまえで―――」
と、司はつくしの上掛けを剥がそうとする。
「だ、ダメダメ!無理、無理、無理だから!」
必死になって上掛けを掴むつくし。
「何で無理なんだ?」
「何でって無理なものは無理よ!」
司はわかっていてわざと言った。
俺も意地悪りぃよな。 司は確信していた。多分牧野はこんな経験なんてないはずで、いきなりってのは無理ってのは分かっているつもりだ。
だが、こんなにテンパってる牧野を見たらイジメてもみたくなるだろ?
「く・・くくく・・はっ・・」
オモシロ過ぎる。
「あんた!何がそんなにおかしいのよ!」
司の笑い声につくしの顔は真っ赤になっていた。
「まきの・・可笑し過ぎるだろ?おまえのその態度。俺だって何もおまえを手込めにしようなんて考えてねぇよ。こういうことは折を見てだな・・」
「な、何よ折を見てって・・・」
でっけえ目見開いて今にも泣きそうな顔している女。
そんなこんなで俺たちは上掛けを挟んだ攻防戦を繰り広げていたんだが
「まあ、そういう事だから、おまえも心の準備つぅもんが必要だろうし、俺もそんなに切羽詰まってる訳でもねえし、そのうちな・・」
司はつくしの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるようにし、ベッドルームを後にした。

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