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2015
10.28

まだ見ぬ恋人13

司はパソコンの画面から視線をあげ、つくしに話しかけた。
「なあ、今まで俺についての話しを聞いたことがあったか?」
司は純粋な好奇心から聞いてみた。
「いいえ支社長。初めてお会いしたときお寺の方かと思ったくらいなので」
そう言ってつくしはほほ笑んだ。
俺はそのほほ笑みから目がそらせなかった。
あのとき、地下鉄の駅でたった5分足らずの出会いのときに彼女が見せたほほ笑みだったから。
俺がこいつに聞きたかったのは俺の過去の悪行のコト。
そしてありもしない女性関係のゴシップだ。
俺は真面目な顔をして言った。
「いいか、牧野。俺について三流週刊誌に記事が載ってたとしてもデタラメだからな」
司は断言した。
「シェールガスだかオイルだかうちじゃ扱ってないのにどっかの商社みてぇにまるでうちが大損出したような書き方するような奴らだからな!ま、あの商社は資源バブルに踊らされたようなもんだけどな!」
司は辛辣な口調で言い切った。

「どうしたんですか支社長?私は支社長の下で働いているんですよ?そんな三流週刊誌に書かれるような根も葉もないような話しなんて信じていませんから。だってこんなに毎日朝早くから遅くまで仕事をされているのにね」
つくしはそう言って笑ってみせた。

俺の下?
俺はその言葉によからぬ妄想が頭をよぎっていた。
今こいつ俺の下って言ったよな?
オレの下・・・
オレの・・・・
やめてくれ・・
これまでに俺のハートをわしづかみにしたのは牧野つくしだけだ。
たぶん俺は牧野がなにを言っても気になるんだろうな。

俺は人が口から言うことは信じない。
まずは相手の表情を見る。
そして目の動き。目は口ほどに物を言うと言うからな。
言い方も重要だ。日本語の場合もったいぶったような物言いは最後の最後まで話しを聞かないことには結論は出せない。
身体の動きも重要だ。相手が緊張しているか、嘘をついているかその動きで分かる。
貧乏ゆすりをする野郎なんてのはサイアクだな。
それなりに観察していれば大体のことはわかるものだ。

けどこいつが言うことは文字通り信じるぞ。
でもよ、でけぇ瞳をしたこいつは表面上は大人の女なんだろうが、男のことについては何も知らねぇんじゃねぇか?
無邪気なのか、無神経なのか、無頓着なのかこいつの無意識のうちの意識ってのが恐ろしいんだ。
俺に興味がないのか、それとも興味を持ちたくないのか?
牧野のさっきの言葉で俺の冷静さは窓から飛び出して地上に落下したぞ!




だから戦略をたてることにした。
俺は西田が力説していた孫子の兵法を読んでみた。
そこに書かれていたこと・・・
『 勝ち易きに勝つ 』
勝利が得にくいときに勝ちを得ようとするよりも、勝利しやすいときにしっかり準備して大きく勝利することか。
今はまだ無理すんなってことか?
よし、これで行くぞ!
けどよ?そりゃそれにこしたことはないが牧野が俺のことをどう考えているのかそこからだ。
素直な気持ちで話しをする・・・・
いや、だめだ。
こいつ真面目だからな・・
俺の気持ちをまともに告げたらこいつどうする?

俺は昔ケンカして肋骨を折るような重傷を負ったけどすぐに回復した。
その時に犬なみの回復力だって言ったやつがいたな。
犬は縄張り意識が強い動物なんだろ?
やつらは散歩に行くたびにあちこちに小便かけまくるんだろ?
それは自分の縄張りを示しているんだよな?
だからよ、俺もまずは自分の縄張りを示しにかかるつもりだ。
類なんかに俺の縄張りを荒らさせるわけにはいかないからな。
類との戦いか・・
そして俺は牧野の不用意なひとことに一喜一憂してるわけだな。


*****


「よう!司、久しぶりじゃねえか?」
司は総二郎とあきらが飲んでいたテーブルまでやってくると二人の前に腰かけた。
「司、ここんところ随分とご無沙汰だったな?」
「ああ、A国の件で立て込んでてよ」
司は煙草を取り出すと口にくわえた。
「おい、それはそうと司、おまえ類に宣戦布告したらしいな」
「宣戦布告?なんだよそりゃ?おまえら何いってんだ。日本の大戦はとっくに終わってんぞ!それともあれか?TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉決裂か?」
司は眉をひそめ火をつけようとした煙草を口から離していた。

「で、なんだ?交渉決裂で宣戦布告っつうことは、赤札で召集かけんのかよ?」
司はじっと推し量るように真面目な顔をして聞いた。
「あほか、それを言うなら赤紙だ!」
あきらが声を張り上げた。
「赤札はおまえが貼りまくってたやつだ!」
総二郎が言った。
「司の言ってることマジで意味不明な時があるよな?」
総二郎の隣に座るあきらはそう言うと琥珀色の液体が入ったグラスを司に差し出した。

「でもよ、いや、マジで驚いた」と総二郎は2回も言った。
「類が言ってたけど、紳士協定がどうのこうのってなんだよそれ?」
「フン、あいつの言ってることなんざ知らねぇな」
司はさきほどの吸いかけた煙草を口元へと戻すと火をつけた。
「どっちにしろ、おまえも類もあの牧野つくしに本気ってことか?」
「二人ともどちらが牧野を落とすとかのゲームをしてるとか、遊びってわけじゃないんだよな?」
総二郎が声を落として聞いてきた。
「ああ、マジだ。俺はあいつと結婚してもいいと思ってる」
司は静かに答えた。
「け・・結婚っておまえ、まだ手も握ってないんだよな?」
「いや、それ以前の問題なんだけどよ・・」
司はつぶやいた。
「おい司、おまえは危険な領域に踏み込んでるぞ!」
「そうだよ、俺達はあっちには行かないって話していたじゃないか!」
「あっちってなんだよ?」
司が言った。
「だから!あっちだよ!静が踏み込んだ領域だよ!」
「静を覚えてるよな?昔、類が好きだった静だよ!」
二人の男が鋭く言ってきた。
「あ?静がどうしたんだ?」
「だから、結婚だよ!」
「司、おまえ本当にそれでいいのか?本気か?」
司は挑戦的に唇を引き結んだあと言った。
「当然だろ?牧野とだったらあっちでもこっちでも行くぞ?」
そして司は咳払いをして決意の表情を浮かべていた。
「司、おまえ牧野つくしが初恋の相手だからって何も結婚までしなくてもいいんだぞ?」
「そうだよ、司。言っとくが牧野つくしは間違いなくバージンだぞ?」
二人はなだめすかすように言った。
「それにあの歳でバージンだなんて絶対なにかあるぞ?」
「いや、まてよ総二郎。司だってひとつしか歳がかわんねぇのにチェリーだぞ?」

司はにやりとした。
そしてソファのアームに肘をのせると口を開いた。
「あきら、サクランボが歳に関係あるのかよ?」
答えになっていない答えが返ってきた。









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コメント
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dot 2015.10.29 22:55 | 編集
さと**ん様
今夜は再びコメントを拝読しました。
いつも有難うございます。
笑えました?(笑)
さくらんぼ・・その一般的な形態を想像して何かを考えているのでは?
などと考えたわたくしの方がおかしいのでしょうか(笑)
深夜になると妄想が広がるので怖いですね(笑)
大変失礼致しました(^^)

アカシアdot 2015.10.30 00:15 | 編集
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