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2018
03.08

愛を描いて~今日のこの日を 番外編~ <前編>

「ちょっと司。また買って来たの?あの子まだ赤ちゃんよ?おもちゃばっかりそんなに要らないわよ?」

「別にいいじゃねぇか。いずれは使うんだ。今から用意したとして何が悪い?」

「別に悪いとは言わないけど航の家にもおもちゃくらいあるから日本から持って行く必要はないでしょ?」

「いいや。日本の玩具は最高だって言われてる。だから持ってく」

「もう・・信じられない。こんなに沢山のおもちゃ。ジェットの中おもちゃだらけになるわよ?」



世間からライオンだの黒豹だの呼ばれる司は、孫が生まれおじいちゃんと呼ばれる立場になった。

そんな男は近々NYへの出張が決まっているが、いつものように仕事から戻ると、東の角部屋の隣の部屋に足を踏み入れていた。
そして初めて会う孫のために、土産として持参するおもちゃの品定めをしているのだが、数が多いと妻に文句を言われていた。



航の子供であり、54歳の司にとっては初孫の「翔・エリック・道明寺」は3500グラムで誕生した。
航は二人にとって初めての子供で、司がつくしの記憶を失っている間に、彼女がひとりで産み育てた子供だ。そしてその航は、NYの大学へ進学し、祖母の楓の元、道明寺HDの仕事を学んだ。そして今では、NY本社で副社長として働き、アメリカで3本の指に入ると言われる資産家の娘と結婚した。

ごく普通の母親と、道明寺HDの社長との間に生まれた航は、いたって普通に育てられ、自分の父親が司だと知ったのは高校生の頃。そして事故に遭い、集中治療室のベッドに横たわっていた航の姿に、司は遠い過去の忘れられた記憶を取り戻した。

航は自分が道明寺司の息子であり、父親の跡を継ぐと決めた時から、自分のバックグラウンドに興味を持たない女性を伴侶にしたいと思っていた。
だがそう簡単にはいかなかった。

何しろ、司そっくりの外見に、頭脳はつくし。
そんな航を鉄の女と言われた祖母である楓が大層気に入り、NYの街を彼を連れ散歩する姿が見られた。
そしていつだったか、楓が自分の親友から頼まれた娘を紹介して来たことがあった。
だが航は、父親と同じ運命の女性が現れる時を待つことに決めた。だから両親も早く結婚しろと言わなかった。
だがそんな両親は、航が結婚したい女性がいると話したとき、何故かホッと胸を撫で下ろした様子が見て取れた。

二人が知り合ったのは、女性が道明寺NY本社の顧問弁護士のひとりとして働いていたことからであり、そこから交際が始まったという。
そして彼女は資産家の娘だが、自立心が旺盛で、親の財産や名誉といったものには興味がないという女性。それはまるで自分の母親の姿勢と同じで、航にとっては、どこか母親の匂いがするということだ。だから彼女が守らなければならない女性と彼の目には映った。

何しろ航は、司が父親として現れるまで、親子二人で苦労をして育った。
だが司が父親である名乗りを上げたとき、航はひと目で司が自分に代わって母を守ってくれる人間だと認め、父と子の立場を逆転させ、NYの楓の元で大学に通いながら道明寺の仕事を学ぶことに決めた。

そんな航は、司にとって我が子というよりも、つくしを取り合うライバルのように感じたこともあった。
優秀な息子の外見は司だが、中身は別人であり、かつて楓に、航の性格は自分に似ていると言われたことがあった。それは航の半分は司で、その半分、つまり4分の1は楓であるのだから言われてみればそうだ。

それに考えてみれば、航に困らされたことは一度もなく、共に暮らし始めた頃、親である司の方が息子に妻との接し方を教えられたくらいだ。
だがそんな航が親になったのだから、司が祖父と呼ばれる立場になるのは当然だ。





司は、自分が子供だった頃、おもちゃを手に遊んだ記憶がない。
だが邸の部屋の中には、膨大なおもちゃが収められていた。
しかし、そういったものに一切興味を示さなかったのが司だ。
だが今は、まるでおもちゃに憑りつかれたように熱心に見ていた。

「おい。これサイレンが鳴るぞ?見ろ。凄いもんだな」

ウーウーとパトカーのサイレンが鳴ることがそんなに珍しいはずもないのだが、幼い頃、そういったものを手に遊んだことがない男は、まるで童心に返ったように次々とおもちゃを手に取っていた。

だが我が子である圭や蓮が幼かった頃も、そういったおもちゃは存在していたはずで、改めてまじまじと見る男は、我が子ではなく、孫に対しておじいちゃんとしての接し方を考えているのだろう。

司は、子供たちの成長と共に父親として出来上がったが、孫は未知の存在だ。
おじいちゃんとして孫に受け入れてもらえるようにするには、何をどうすればいいのか考えているのかもしれない。

「おい。これも凄いぞ?この望遠鏡。これなら土星もだが、NYから東京の俺たちの顔も見ることが出来るぞ」

と言って高性能の望遠鏡をのぞいているが、道明寺HDの社長ともあろう男が何をバカなことを言っているのか。
仮に地球上に障害物がひとつも無かったとしても、地球は丸いのだから見えるはずがない。
だがそんな常識さえ失わせるのが孫という存在だ。

それは親バカならぬ孫バカとでもいうのだろうか?
実際執務室のデスクには、生まれたばかりの孫の写真が飾られていた。
そしてそれをぼんやりと眺めているとすれば、司は孫のどこが自分に似ているのかを探そうとしているのかもしれない。

「なあ、つくし。翔は俺に似てると思うか?」

「そうねぇ・・・。あの写真じゃまだ何とも言えないわね?それにお嫁さんはスウェーデン系アメリカ人だから航の血とママの血のどちらが強く出るかまだ分からないわよ?」

妻は、床一面に置かれたおもちゃの中から、ウサギのぬいぐるみを抱え上げ、自分の目の高さに合わせ、じっと見つめると言った。

「ねえ。このウサギ!司がお母様から頂いたウサギみたいね?」

司は、妻の言うウサギが今でも二人のベッドルームに飾られているのを微笑ましく思う。
かつてそのウサギは、自分の母親である楓が幼い司に贈ったもので、それから後、妻が航に与えたものだ。そして今は世田谷の邸にいるが、妻はそのウサギのぬいぐるみによく似たぬいぐるみを孫のために持参しようとしていると思った。





孫の母親は背が高く、色白で、髪の毛は金色。
そして瞳はブルー。
果たして道明寺司の孫として彼の特徴をどれくらい受け継いでいるのか。
孫の遺伝子は、東洋と北欧のどちらが勝っているのか。
とにかく司は、孫に会えることが楽しみでならなかった。




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コメント
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dot 2018.03.08 07:52 | 編集
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dot 2018.03.08 15:42 | 編集
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dot 2018.03.08 18:32 | 編集
司*****E様
「いつか晴れた日に」の航は結婚し、子供が産まれました。
司の誕生日の話で子供が産まれそうと書きましたので、誕生させました(笑)
他の弟妹と違い、航と一緒に暮らした時間は短かったですが、親子の絆は間違いなく強いはずです。
NYへ初孫に会いに行く男。楽しみでしょうねぇ(笑)
そしてプレゼントは色々と悩んでいるようです(笑)
何でも手に入れることが出来る男は、常識的に子供が喜びそうなものを選んでいるようですが、ジェット一杯に詰め込んで行くつもりなのでしょうか?(笑)
我が子は可愛いですが、孫はもっと可愛いということですね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.03.08 22:26 | 編集
さ***ん様
司、じいさんになる(笑)
どんなじいさんになるのか?(笑)
長男の航の子供は初孫。そんな孫に会いに行くようですが、おもちゃ選びに余念がない。
そして常識を超える存在の孫。
さてその孫はどんな孫なのか?そして司はどのような行動を取るのか?
こちら「いつか晴れた日に」続編ですが、晴れるといいですねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.03.08 22:42 | 編集
a***a様
こんにちは^^
「恋に落ちる確率」の番外編ですか?
先輩秘書からの視点と西田秘書と野上秘書が交際に至った経緯が気になる!( ..)φ
西田秘書!どんな付き合いをしているのか、確かに気になりますね?
そうですねぇ・・・いつの日か、そういったお話しが書ければと思います^^
西田さん、降りて来て!(笑)
コメント有難うございました^^

アカシアdot 2018.03.08 22:51 | 編集
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