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2018
03.06

Two Hearts ~今日のこの日を 続編~ <前編>

こちらは大人仕様のお話です。
そういったお話が苦手、またはお嫌いな方はお控え下さい。
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司は何でも思い通りに運ぶのに慣れた男で、人に譲らないと言われるが、今では頭髪には白いものが混じり、目じりの皺は年相応のものがあった。
だが眼光の鋭さは若い頃と変わらず、目を閉じていても開けば獰猛な獣が牙を剥く姿に変わると言われていた。

そんな男の執務室に足を踏み入れる者は、ライオンの巣に入って行くような気持にさせられるが、声は人を惹き付け従わせる響きがあり、誰もが彼の言葉に耳を傾け尊敬する。
そして道明寺司という男は、ビジネスに於いては獲物を狩るライオンそのもので、その姿に怖れを抱く者が多い。
だが、そんな男も家族の元へ帰れば一変する。

夜遅くに帰宅した夫をエントランスで出迎えた妻にただいま、とキスをする姿は邸の誰もが認める夫婦の日常。そして夫が無意識のうちに妻の手を取るのは、いつも彼女が傍にいて欲しいから。遠い昔掴めなかった手を再び失うことを恐れているから。
そして、手をつなぎ共に東の角部屋へと向かう後ろ姿に感じるのは、まるで結婚したばかりの妻を迎えた時と同じ彼女を守るからといった姿勢。

時に遅くなり過ぎた男が、そっと部屋に入れば、ソファという船の中で帰れない男を待つ姿があるが、そんな眠りについた妻の姿は安らかで安堵を覚える。そして起こすことなく小さな身体を抱きかかえベッドまで運んでいく。

そして司は10代の頃と同じ、はにかみを見せる妻に深い愛情を示そうとするが、それは愛し合う行為。
だが妻はお腹が平らじゃないから、というが彼には関係なかった。
たとえ腹が出ようと尻が大きくなろうと、どんな姿になろうと関係ない。
たった一人の男しか知らない女のその身体が愛おしかった。
その身体が彼の全てを受け入れてくれることが嬉しかった。
彼の子供を産んでくれたことが誇りだった。
肉体が滅びても、遺伝子は延々と子孫へ受け継がれていくことが嬉しいと思った。

だがそれは道明寺という家のためではない。
二人の遺伝子が二人の愛を受け継いでいくことが、親としての歓び。
そして原始的本能で女を求めるのが男の本能なら、司は死ぬまで妻を求めるはずだ。
自分の「生」より、彼女の「生」の方が大切。
彼にとって彼女は女神であり天使。
彼の初めての女性で最後の女性。
彼女が死んだら自分も生きていけないと思うほど彼女がすべて。
彼女の黒い瞳が永遠に閉じられることになれば、きっと後を追うはずだ。

だからそんな男の妻を愛する姿は、女なら誰もが求める理想の夫の姿。
そして、それは今では邸の誰もが知る道明寺司の家庭での姿だ。






「なあ。あいつら今頃何してんだろうな?」

「う~ん、みんなそれぞれ楽しんでると思うわよ?」

「そうか?」

司が脱いだスーツの上着を受け取った妻はいつもと変わらない様子で言ったが、司はそんな妻とは正反対で、この日が早く来ないかと待ち焦がれていた。

二人の間には息子が三人と娘がひとりいる。そのうちの三人が一緒に暮らしていて、大学3年の圭は友人達とスイスへスキー旅行に出かけ、高校3年の蓮は卒業旅行でオーストラリア。そして末っ子の彩はカナダの別荘へ行った。
つまり世田谷の邸に子供達はおらず、今日から最低でも10日間は夫婦水入らずという状況だ。

「なあ。俺たち結婚してから初めてだな?」

「何が?」

「子供たちがいないのが」

「そう言えばそうよね?あたし達結婚したときは航がいたし、それから子供達が生まれてからは二人だけになることなんてなかったものね?」

二人が結婚したのは、長男の航が高校生の頃。
それからすぐに次男の圭が産まれると、三男の蓮、一人娘の彩が産まれ広い邸に二人だけの時間といったものは無かった。
だがそれが不満だというのではない。
むしろ家族が増えることが嬉しかった。
寝室に賑やかな子供の声が響くのが楽しかった。
足元やベッドの上に転がったおもちゃを片付けることも苦にはならなかった。

そしていつもなら司が帰宅すれば、パパお帰りと言って顔を覗かせてくれる末娘がいないのは寂しいが、夫婦二人っきりで過ごせる夜が待ち遠しく感じていたのが正直なところで、今夜は仕事を早めに切り上げての帰宅となっていた。
だから司は、秘書にこれから10日間は絶対に夜の会食はしないと言い、仕事も早々に切り上げるつもりだと伝えた。もちろん人の倍以上働いての上だ。
そしてこの10日の間に甘い愛の香りを楽しみたいと思っている。
だからその思いを告げた。

「なあ。今夜からあいつら居ねぇんだし風呂。一緒に入んねぇか?」

「は?」

「だから風呂だ」

「・・・・・・」

「・・何だよ?その目は?いいじゃねぇか。夫婦が一緒に風呂に入るのに何が不満だって?」

「だ、だって一緒にお風呂なんて暫く一緒に入ってないじゃない。ど、どうしてそんな急に」

「だからあいつらが居ねぇんだからいいだろ?」

年齢から来る顔や身体の衰えを感じさせない男。
強靭といわれた身体は、今もその肉体の素晴らしさを保っていた。そして声だけで女を誘惑出来る、虜にすると言われている男は、いつも寝ぼけまなこの妻がパジャマ姿でいるところを襲う羽目になるが、せっかく早く帰宅出来たのだから、妻と一緒に風呂に入りたいと考えていた。

30代になってから結婚した二人の夜の営みは、司の肉体で翻弄することが殆どで、二人が入るには十分な大きさの浴槽の中で、妻の身体を後ろから抱きかかえ、乳首をいじり乳房を弄び、大きな手が湯の中で内股へと移って行くと、恥ずかしいと逃げようとする身体を後ろからさらに抱きしめ、理性を失わせさせる行為を繰り返す。
そして上り詰めさせ、湯の中から引き上げてタオルに包み、まるで処女の花嫁を抱くようにベッドルームまで運ぶことが当たり前だった。
だが最近はそれもご無沙汰だ。

だが妻の方から求めて欲しい時もある。
子どもたちがいない夜に何がしたいかと問われれば、まずこう答える。
愛し合いたいと。

それはバスルームでの行為でもベッドルームの行為でもいいのだが、いつも彼ばかりが欲しがるのは不公平というものだ。
だから司は妻の手を自分の唇にあて、
「俺を愛してくれ」
と言った。




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コメント
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dot 2018.03.06 07:18 | 編集
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dot 2018.03.06 12:45 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
「いつか晴れた日に」の番外編の続編です。
子供たちも大きくなり、親にべったりと甘えてくることも無くなり、二人だけの時間を過ごすなかでの秘め事。
末娘の彩はSもMも知らない箱入り娘ですから、パパとママが何をしているか知りません(笑)
子供たちがいなければ、絶対に邪魔は入りません(笑)
夫婦水入らずな夜。司のこれから10日間はパラダイス?(笑)
「時の轍」で二人亡くなってしまいましたので、こちらは生きた二人のお話しです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.03.06 23:14 | 編集
さ***ん様
先生止めて下さい(笑)
さて「時の轍」
どこかで一緒になれなかったのか。
そうですねぇ・・。人生の歯車がどこかで合わなかったのかもしれません。

そして、生きている二人の話。
処〇でコメントひっかかりましたか?(笑)
たとえ子供を産んでいても、結婚当初は、処〇の花嫁のような扱いをしていたはずです!
幾つになっても、嫁は可愛いんでしょうね?(笑)
子供よりも、やはり一番大切なのは、嫁!
ふたりはこれからどんな時間を過ごすのか?
夫婦で仲良くしていただければ、それで良しですね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.03.06 23:31 | 編集
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