牧野つくしのことが満ち潮のように俺の頭のなかを満たす。
彼女を見つけるまで1ヵ月かかった。
ビザの更新が完了するまでの1ヵ月の間になんとか彼女と接点を持ちたい。
A国か・・・
大使主催のイベントでもあったか?
今の俺にとってのパーティーはA国大使公邸で行われるもの以外はつゆほどにも興味が無かった。
だがパーティーにひとりで参加することは出来ないな。
ウザイ女どもが寄ってくるのは勘弁だ。
パートナーがいるな。それも変に誤解をしないヤツ・・・
あいつは俺の見合い相手のなかで唯一ボコらなかった女だ。
あいつ、サルだったからな。
「つかさーっ。久しぶりっ!元気にしてた?」
滋は元気いっぱいという様子で司の元へ駆け寄ってきた。
「よう、滋。今日は悪りぃな」
司が言った。
「えー?ホントに悪いって思ってる?今日のパーティーに参加する為に滋ちゃん友達との夕食を断ったんだからね!」
滋は真面目な顔をして言った。
「なんだよ、じゃそのダチも呼べばよかったじゃねぇか。どうせ女だろ?」
司はたいして気にもとめていないように言った。
「あんた相変らず失礼な男ね。まあ、そうなんだけどね」
滋は小さな声で呟いていた。
「でも彼女ここで働いているからそう言うわけにもいかないし・・」
司は唇がピクッと動いた。
「滋、おまえのダチってここって・・大使館で働いてるのかよ?」
「うん、そうだよ!大学のときに・・ち、ちょっと!司ったら痛いってば!」
司は滋の両肩を掴んでいた。
「滋、おまえのダチの名前って?」
「ちょっと個性的な名前なんだけどつくしって言うの。牧野つくしちゃん!」
滋が言った。
「おま・・なんでもっと早く言わねえんだよ!」
あまりにも力のこもった口調で言われて滋は驚いていた。
「え?なんでって?司、つくしの事しってるの?」
「クソッ!」
こんなパーティーくそくらえだ!
司はいましがた来た道を引き返そうとしていた。
「ねえ、司どこ行くの?パーティーに行くんじゃなかったの?」
司は口を開いて、また閉じて慌てて滋のところへ戻って来た。
「おい滋、そのダチっておまえにドタキャンされて何するって言ってた?」
「うーん、なんか音楽でも聴きに行くって・・」
「滋、それどこだよ!」
司は再び滋の肩をつかんで聞いていた。
「え?大使館の近くのコンサートホールだって言ってたよ?」
司は頷くと踵を返していた。
「ちょっと!司ったら!もうっ。いっつもこうなんだからっ!」
滋は去っていく司の後ろから叫んでいた。
「この埋め合わせは大きいからねーっ!」
******
「お客様、困ります。もう演奏が始まっていますので途中入場は出来ません。
只今演奏中の楽曲が終わりましたらご案内を致しますので。お客さまのチケットを拝見できますか?」
と丁寧な口調で言われほほ笑みを返された。
「あ?道明寺だ!うちはここにボックス席を持っている!」
司はお前らの都合なんてどうでもいいんだと言わんばかりに言った。
「そうおっしゃられましても演奏途中はどなた様も入退場は出来ませんので」
「おい、おまえ館長を呼べ!」
司は躊躇なく言った。
「お客様、どうぞお静かにお願いいたします」
係の男はためらいを見せながらも丁寧な口調で言った。
司が男と押し問答しているうちにホールのドアが開かれ、中から人々が出て来た。
幕間に入り沢山の人間が出てくる中に司は見知った人物を見つけた。
「あれ?司じゃない?どうしたの?」
類が言った。
「おい類か?久しぶりだな。悪りぃ。今ちょっと人を探して・・」
言いかけた司は類の後ろに若い女性が歩み寄ってくると驚いたように口をつぐんだ。
「花沢さん?」
つくしが類の背後で声をかけた。
司は類が彼女のほうへと振り向いたとき、さりげない様子でつくしを見た。
「あ、あなた・・お寺の?」
つくしは驚いたように言った。
「あれ?牧野さん、司と知り合い?」
類はさりげない調子で聞いている。
「え?あ・・この前大使館にビザの申請で・・」
つくしは説明していた。
「へぇー司が自らビザの申請に?西田さんに頼めばいいのにおまえわざわざ行ったんだ」
類は司に何かを問いかけるように言った。
「あの、花沢さん・・・?」
つくしは戸惑ったように聞いた。
「あ、牧野さん悪いんだけど先に行っててくれる?花沢物産の名前でラウンジが用意してあるから」
類は口調をやわらげて言った。
「あの・・じゃあお先に行ってますね」
類が若い女性が消えたほうを見た。
「ああ、彼女のこと?」
類は口元に笑みを浮かべた。
「彼女、A国の大使館に勤めていてね、あ、司もビザの申請に行ったから知ってるんだったよね?俺も花沢の仕事でA国に行ってたんだけどその時に色々とお世話になったんだ」
類は曲目が書かれたパンフレットを司に見せた。
「前々からそのお礼にと思って今日のコンサートに誘ってたんだけど、ダメだって断られてたんだけど・・・」
一瞬の沈黙のあと、類が言った。
「どうしたの司?」
「いや・・・」
司はためらったあげく、話すことをやめた。
「ところで司、今日は誰と来たの?正装してるけどなんかの帰り?」
「ああ、A国の大使公邸でパーティーがあってよ、退屈で抜けてきた」
司が説明した。
「そうなんだ。なんかすごい偶然だね、司はA国のパーティーで俺はA国大使館職員の彼女と一緒だなんてね」
類は友人をみつめ、相手の反応を観察するようにゆっくりと言った。
「・・・そうだな」
司は無表情に答えると言葉をしめくくっていた。

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だがパーティーにひとりで参加することは出来ないな。
ウザイ女どもが寄ってくるのは勘弁だ。
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あいつは俺の見合い相手のなかで唯一ボコらなかった女だ。
あいつ、サルだったからな。
「つかさーっ。久しぶりっ!元気にしてた?」
滋は元気いっぱいという様子で司の元へ駆け寄ってきた。
「よう、滋。今日は悪りぃな」
司が言った。
「えー?ホントに悪いって思ってる?今日のパーティーに参加する為に滋ちゃん友達との夕食を断ったんだからね!」
滋は真面目な顔をして言った。
「なんだよ、じゃそのダチも呼べばよかったじゃねぇか。どうせ女だろ?」
司はたいして気にもとめていないように言った。
「あんた相変らず失礼な男ね。まあ、そうなんだけどね」
滋は小さな声で呟いていた。
「でも彼女ここで働いているからそう言うわけにもいかないし・・」
司は唇がピクッと動いた。
「滋、おまえのダチってここって・・大使館で働いてるのかよ?」
「うん、そうだよ!大学のときに・・ち、ちょっと!司ったら痛いってば!」
司は滋の両肩を掴んでいた。
「滋、おまえのダチの名前って?」
「ちょっと個性的な名前なんだけどつくしって言うの。牧野つくしちゃん!」
滋が言った。
「おま・・なんでもっと早く言わねえんだよ!」
あまりにも力のこもった口調で言われて滋は驚いていた。
「え?なんでって?司、つくしの事しってるの?」
「クソッ!」
こんなパーティーくそくらえだ!
司はいましがた来た道を引き返そうとしていた。
「ねえ、司どこ行くの?パーティーに行くんじゃなかったの?」
司は口を開いて、また閉じて慌てて滋のところへ戻って来た。
「おい滋、そのダチっておまえにドタキャンされて何するって言ってた?」
「うーん、なんか音楽でも聴きに行くって・・」
「滋、それどこだよ!」
司は再び滋の肩をつかんで聞いていた。
「え?大使館の近くのコンサートホールだって言ってたよ?」
司は頷くと踵を返していた。
「ちょっと!司ったら!もうっ。いっつもこうなんだからっ!」
滋は去っていく司の後ろから叫んでいた。
「この埋め合わせは大きいからねーっ!」
******
「お客様、困ります。もう演奏が始まっていますので途中入場は出来ません。
只今演奏中の楽曲が終わりましたらご案内を致しますので。お客さまのチケットを拝見できますか?」
と丁寧な口調で言われほほ笑みを返された。
「あ?道明寺だ!うちはここにボックス席を持っている!」
司はお前らの都合なんてどうでもいいんだと言わんばかりに言った。
「そうおっしゃられましても演奏途中はどなた様も入退場は出来ませんので」
「おい、おまえ館長を呼べ!」
司は躊躇なく言った。
「お客様、どうぞお静かにお願いいたします」
係の男はためらいを見せながらも丁寧な口調で言った。
司が男と押し問答しているうちにホールのドアが開かれ、中から人々が出て来た。
幕間に入り沢山の人間が出てくる中に司は見知った人物を見つけた。
「あれ?司じゃない?どうしたの?」
類が言った。
「おい類か?久しぶりだな。悪りぃ。今ちょっと人を探して・・」
言いかけた司は類の後ろに若い女性が歩み寄ってくると驚いたように口をつぐんだ。
「花沢さん?」
つくしが類の背後で声をかけた。
司は類が彼女のほうへと振り向いたとき、さりげない様子でつくしを見た。
「あ、あなた・・お寺の?」
つくしは驚いたように言った。
「あれ?牧野さん、司と知り合い?」
類はさりげない調子で聞いている。
「え?あ・・この前大使館にビザの申請で・・」
つくしは説明していた。
「へぇー司が自らビザの申請に?西田さんに頼めばいいのにおまえわざわざ行ったんだ」
類は司に何かを問いかけるように言った。
「あの、花沢さん・・・?」
つくしは戸惑ったように聞いた。
「あ、牧野さん悪いんだけど先に行っててくれる?花沢物産の名前でラウンジが用意してあるから」
類は口調をやわらげて言った。
「あの・・じゃあお先に行ってますね」
類が若い女性が消えたほうを見た。
「ああ、彼女のこと?」
類は口元に笑みを浮かべた。
「彼女、A国の大使館に勤めていてね、あ、司もビザの申請に行ったから知ってるんだったよね?俺も花沢の仕事でA国に行ってたんだけどその時に色々とお世話になったんだ」
類は曲目が書かれたパンフレットを司に見せた。
「前々からそのお礼にと思って今日のコンサートに誘ってたんだけど、ダメだって断られてたんだけど・・・」
一瞬の沈黙のあと、類が言った。
「どうしたの司?」
「いや・・・」
司はためらったあげく、話すことをやめた。
「ところで司、今日は誰と来たの?正装してるけどなんかの帰り?」
「ああ、A国の大使公邸でパーティーがあってよ、退屈で抜けてきた」
司が説明した。
「そうなんだ。なんかすごい偶然だね、司はA国のパーティーで俺はA国大使館職員の彼女と一緒だなんてね」
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「・・・そうだな」
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Comment:10
コメント
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ka**i様
> お約束のように類に先越されてるし
そうですよ~お約束です。
司、どうするのでしょうね。
ほんとに応援してあげないと類くん本気モードかもしれません。
ファイト!つかさ!のご声援を有難うございます。
> お約束のように類に先越されてるし
そうですよ~お約束です。
司、どうするのでしょうね。
ほんとに応援してあげないと類くん本気モードかもしれません。
ファイト!つかさ!のご声援を有難うございます。
アカシア
2015.10.21 21:13 | 編集

N*様
拍手コメント有難うございます。
キャーな展開?(笑)
嬉しいです、有難うございます。
でも、この先は・・・?
(゚Д゚;)←こんなことにならないようにしなくてはいけませんね。
どうも切なくもっていく傾向にあります(笑)
司へのご声援有難うございます!(^^)
拍手コメント有難うございます。
キャーな展開?(笑)
嬉しいです、有難うございます。
でも、この先は・・・?
(゚Д゚;)←こんなことにならないようにしなくてはいけませんね。
どうも切なくもっていく傾向にあります(笑)
司へのご声援有難うございます!(^^)
アカシア
2015.10.21 21:24 | 編集

あ**う様
>あちゃ~~な展開(笑)
を拝見して私もあちゃ~と(笑)
本当に嬉しいコメントを有難うございます。
でもちょっとプレッシャーが・・
応援有難うございます♪
>あちゃ~~な展開(笑)
を拝見して私もあちゃ~と(笑)
本当に嬉しいコメントを有難うございます。
でもちょっとプレッシャーが・・
応援有難うございます♪
アカシア
2015.10.21 21:30 | 編集

さと**ん様
はじめまして。
コメント有難うございます。
司をお寺の人と勘違い・・
気に入って頂けて嬉しいです。
でも司の名字をいじると言うことが禁忌を犯していないかと少し心配です(笑)
明日がちょっと心配・・・|д゚)
はじめまして。
コメント有難うございます。
司をお寺の人と勘違い・・
気に入って頂けて嬉しいです。
でも司の名字をいじると言うことが禁忌を犯していないかと少し心配です(笑)
明日がちょっと心配・・・|д゚)
アカシア
2015.10.21 21:43 | 編集

サ*ラ様
>良い男限定(笑)
はい!司坊ちゃんみたいないい男になら追われたいですよね?
グイグイ行きたいのですが、類くんが・・・(笑)
今回は二人の出会いは社会人になってからですので
まだまだ手探りで行くと思います。
楽しみに待っていて下さって有難うございます(^^)
>良い男限定(笑)
はい!司坊ちゃんみたいないい男になら追われたいですよね?
グイグイ行きたいのですが、類くんが・・・(笑)
今回は二人の出会いは社会人になってからですので
まだまだ手探りで行くと思います。
楽しみに待っていて下さって有難うございます(^^)
アカシア
2015.10.21 21:51 | 編集

ゆ*ん様
拍手コメント有難うございます。
いつも坊ちゃんの気持ちに寄り添って頂き有難うございます。
え?類くんのことあきらくんから聞いてますか?
私はなにも聞いてないのですが・・(笑)
拍手コメント有難うございます。
いつも坊ちゃんの気持ちに寄り添って頂き有難うございます。
え?類くんのことあきらくんから聞いてますか?
私はなにも聞いてないのですが・・(笑)
アカシア
2015.10.21 22:01 | 編集
