お茶でも飲みましょう、とマリアは言ったが、つくしが連れてこられたのは気どったウェイターと白い皿とワイングラスがテーブルの上に並んでいる店だった。
「どうしたの?ミスマキノ。本当にお茶だけだと思ったの?でもいいでしょ?もうすぐお昼ですもの。それにここのレストランはとても美味しいって有名なの。私はドイツに来るたびここに立ち寄って昼食を頂くの。だからお味は保証するわ。もちろん日本人のあなたがドイツの食事が口に合わないというなら別のお店でもいいわよ?なんなら日本料理の店でもいいわ。何しろデュッセルドルフは日本人も多いから日本料理の店も沢山あるのよ」
つくしは城の中にあるカフェテリアでお茶だけのつもりでいただけに、連れてこられた場所に戸惑った。
マリアにとても素敵なお店があるの、と車に乗せられ連れてこられたのは、ライン川の畔にある趣のある古い建物。
だがそれ以前に彼女の車に乗るには躊躇いがあった。
はっきり言って彼女は全く知らない人間であり、マリアを信用するに値する何かが欠けていた。だが大丈夫よ。別にあなたに何かしようなんて考えてないもの。ただ話がしたいだけよ。それに私のような立場の人間が罪を犯すと思う?私にも立場というものがあるわ。と言われ車に乗った。
そしてここはドイツ料理のレストランだ。だが周りに客はおらず、まるで二人だけといった雰囲気だ。
ドイツと言えば思い浮かぶのはウィンナーとザワークラウト(キャベツの漬物)といった程度であまり詳しくはない。
だがどこの国にでもその土地ならではの美味しい食べ物がある。以前出張で何度も訪れた東南アジアの国々でも、その土地独特の料理といったものを味わった。だから現地の料理を拒むつもりはない。けれど正直なところ、マリアと食事をして食べ物が美味しく感じられるのかと考えたとき、そうではないはずだ。
「私ね。あなたと話がしたいと思ったの。昨日は久し振りにツカサに会って懐かしさでついドイツ語で話し込んでしまって・・。後で考えて見ればあなたをのけ者にしてしまった。大変失礼なことをしてしまったと思ったの。だから今度あなたに会えたらちゃんと英語で話をしようと思ったのよ?だからこうしてまたすぐに会えて本当に嬉しいわ。私たち同じ男性を好きになった女同士ですもの。話は弾むはずよ?」
マリアはそう言ってウェイターに目配せした。するとソムリエがワインリストを見せに来てマリアはその中から何か選んだようだが、ドイツ語での会話はつくしには理解出来なかった。
そしてマリアは二人だけになると、緑の瞳でつくしの目をじっと見つめた。
だがその目つきは親しげに話す言葉とは裏腹にどこか小馬鹿にした目つきだと感じていた。
副社長がかつて付き合っていたマリアから声をかけられ、有無を言わせぬ口調でお茶に誘われたが、マリアの放った言葉に興味がなければ彼女の誘いには乗らなかった。
何故なら、好きになった人のことに興味を持たない女はいないはずだ。
それに彼女は昔の恋人である道明寺司にやり直しましょうといった言葉を放った女性だ。
それも、つくしがいる前で言ったというのだからある意味喧嘩を売られたようなものだ。
それに副社長がマリアを迷惑な女と考えているのなら、彼女を彼の傍に寄せ付けることがないように防波堤の役割をすることが秘書としての役割だ。
だから今のつくしは、はっきり言って、私生活と仕事の両方が同時に頭の上に降りかかって来たようなものだ。
だがそれならそれで別に構わなかった。
つくしは小さい時から依存心というものがなく、自立した人生を送って来た人間だ。
それは両親が頼りないこともあったからだが、大人になってからもその傾向は変わらず、もしかすると、自分が以前付き合った男性と上手くいかなかったのは、その自立心が旺盛だったことも関係あったのかもしれない。何しろ自分でも相手に甘える、頼るということが下手だということは性格上仕方がないのかもしれないが、こうしてマリアの誘いを受けたのは、自立心の旺盛さがそうさせたのだと感じていた。
いくら副社長と付き合うことに決めたからといって、あの人に頼った女でいるつもりはない。それに海外では大人しいと思われる日本人女性だが、だてに海外出張をこなして来た女じゃない。そんな思いが今のつくしの心の中に湧き上がっていた。
それに、マリアの話す言葉は、言葉としては普通に聞こえるが、その響きの中には傲慢さが含まれている。
だがマリアがどうしても話がしたいというのなら、食事をすることなど大した苦痛ではないはずだ。
しかしこれから交わす会話は、決して当たり障りのないものだとは考えてはいない。
だがだからと言って目の前の女性が何かするとは思っていない。せいぜい言葉での応酬といったことになるはずだ。
マリアが注文したのは、赤ワイン。
それは彼女の生家のワイナリーで作られたワインだと言われた。
そしてマリアは肉料理を食べながら自分の家の話を始めたが、オーストリアの侯爵家は先祖から受け継がれた広大な敷地を持ち、ワイナリーの経営からホテルといった観光事業を手広く手掛けているといった話をされた。
所謂それは、生家の自慢と世間話といった類のものだが、そんな話を訊きながらつくしは、出されたワインを口にしていたが、お酒があまり得意ではない女が大量に飲めるはずもなく、グラスの中身はなかなか減らない。
するとマリアはうちのワインはお口に合わないかしら?とつくしに向かって片眉を上げたが、その表情は明らかに気に入らないといった顔だ。
そしてこの調子では、長い食事のあいだでマリアが本題に入るまでどのくらいかかるのかといった思いがしていたが、生家のワインに自信を持つ女は、すでに何杯も飲み干し顔を赤くしていたが、ウエィターが空になったワイングラスに更にワインを注ぐと突然本題とも思われる話を始めた。
「ねえ。ミスマキノ。あなたツカサと結婚する気?」
何の脈絡も言われたその言葉につくしはどう答えればいいのか分からなかった。
するとマリアは、つくしがイエスともノーとも言わないことに緑の瞳を細め、言葉を継いだ。
「ねえ?あなたツカサがひとりの女に落ち着くと本気で思ってるの?彼のような男がひとりの女の傍で過ごせる男だと本気で思ってるの?それにあなた生活の為に働いているただの秘書でしょう?どう考えてもツカサや私とは住む世界が違うわよね?そんな女がツカサと付き合っているなんて過去にも聞いたことがないわ。それにあなたの家柄はごく普通の庶民だそうね?あら、驚いた?私は直ぐにあなたのことを調べたの。日本にもそれなりの家柄っていうのがあるでしょうけど、あなたは何もない家の娘で財産もないのね?でも私の家は何世紀も続いた一族で、あなたには想像もできないような大きなお城も持ってるわ。だから私のような女の方がツカサには相応しいのよ?それにあなたにはあなたに相応しい身分の男がいるはずよ?だからツカサは私に返してちょうだい。私は彼が欲しいのよ。どうしてもね」
とマリアは笑ったが、赤い顔は明らかに酔いが回っていた。
「それにね?ツカサが女性にモテるのはお金持ちで、あのルックスでセックスも上手いからよ?彼は女性を引き付けるものを全て持ってるの。だから女性が放っておかないの。あなたもその口なんでしょ?」
道明寺司が女性にモテるのは、そういったことが全てじゃないとつくしは思った。
だから反論しようとした。だが再びマリアが話し始めた。
「ねえ?あなたツカサとセックスしたんでしょ?彼、凄いでしょ?だってツカサはひと晩中だって出来る男だもの。それに彼とっても激しいから大変よね?」
と、笑いながらあっけらかんと言われたが、まだそういった関係ではない女の顔をマリアは目ざとく見ていた。
「まさか。あなたまだツカサと寝てないの?嘘でしょ?だって私は彼と出会ったその日にはもうベッドの中にいたわ。それから眠らせてもらえなかったわよ?それなのにあなた_」
マリアはそこで口を閉じた。
そしてどこか考えるような顔になりつくしには理解の出来ないドイツ語で何かを言ったが、その口調は美しく洗練された女性の口から出るに相応しいとは思えなかった。
だから言葉の意味は分からなくても、彼女が何かに酷く腹を立てていることだけは感じられた。
そして「あの男。そういうつもりなのね?」と小さく呟かれた言葉は英語だった。
つくしはマリアが口を閉ざしたのを見て取ると彼女に向かって言った。
「マリアさん。あなたの話から大きな歴史的価値のあるお城で育つ人は凡人には分からない暮らしをしていることは分かります。自分の出自に誇りを持っていることも分かります。
それからあなたは彼を返して欲しいとおっしゃいましたが、彼は物ではありません。返すも何もありません。それに返して欲しいならその理由はなんですか?今のあなたの話の中には何故彼を返して欲しいかといった言葉はありませんでした。それにあなたは彼に何を求めているのですか?お金やルックス・・性的なことだけが目的ならそれは人間として見るべきことではないと思います。私はそんなことで彼を見てはいませんから」
つくしはそこまで言うと、ちょっと失礼しますと言って席を立ち化粧室へと向かったが、今のような会話を交わした相手の車に再び乗ろうとは思わなかった。
それに姿は見えないが、ボディガードがついていることを思えば、帰りは心配していなかった。だからマリアからの誘いを受け入れたのも、見守られているといった安心感があり、いざとなれば何とかしてもらえる。そんな思いがあったからだ。
だからテーブルへ戻ったらデザートまで待たず店を出ようと思っていた。
それに、マリアに向かって言った言葉は彼女を怒らせてしまったはずだ。だが彼女も言いたい放題言ったのだから、つくしの言葉はマリアに比べれば控えめなはずだ。
だいたいマリアのように人を外見やお金といったものを基準に考えることがおかしいのだ。
人は人であり自分の目的を果たす為のモノではない。そんな思いから口をついて出たのは、批判的な言葉だったが、ふと、副社長の顔が浮かび、もし彼がここにいたとして今の場面を見てどう思うだろう。そんなことが頭の中を過っていた。
このレストランは古い趣のある建物だが、化粧室へ向かう廊下の壁に掛けられていた案内によれば、ここは昔、城だったと書かれていた。その古い建物を生かしたということなのか、化粧室は曲がりくねった廊下を進んだ遥か先にあることが分かり、急ぎ足で向かった。そして用を済ませ廊下を歩き出したところで、突然後ろから腕を掴まれた。

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つくしは城の中にあるカフェテリアでお茶だけのつもりでいただけに、連れてこられた場所に戸惑った。
マリアにとても素敵なお店があるの、と車に乗せられ連れてこられたのは、ライン川の畔にある趣のある古い建物。
だがそれ以前に彼女の車に乗るには躊躇いがあった。
はっきり言って彼女は全く知らない人間であり、マリアを信用するに値する何かが欠けていた。だが大丈夫よ。別にあなたに何かしようなんて考えてないもの。ただ話がしたいだけよ。それに私のような立場の人間が罪を犯すと思う?私にも立場というものがあるわ。と言われ車に乗った。
そしてここはドイツ料理のレストランだ。だが周りに客はおらず、まるで二人だけといった雰囲気だ。
ドイツと言えば思い浮かぶのはウィンナーとザワークラウト(キャベツの漬物)といった程度であまり詳しくはない。
だがどこの国にでもその土地ならではの美味しい食べ物がある。以前出張で何度も訪れた東南アジアの国々でも、その土地独特の料理といったものを味わった。だから現地の料理を拒むつもりはない。けれど正直なところ、マリアと食事をして食べ物が美味しく感じられるのかと考えたとき、そうではないはずだ。
「私ね。あなたと話がしたいと思ったの。昨日は久し振りにツカサに会って懐かしさでついドイツ語で話し込んでしまって・・。後で考えて見ればあなたをのけ者にしてしまった。大変失礼なことをしてしまったと思ったの。だから今度あなたに会えたらちゃんと英語で話をしようと思ったのよ?だからこうしてまたすぐに会えて本当に嬉しいわ。私たち同じ男性を好きになった女同士ですもの。話は弾むはずよ?」
マリアはそう言ってウェイターに目配せした。するとソムリエがワインリストを見せに来てマリアはその中から何か選んだようだが、ドイツ語での会話はつくしには理解出来なかった。
そしてマリアは二人だけになると、緑の瞳でつくしの目をじっと見つめた。
だがその目つきは親しげに話す言葉とは裏腹にどこか小馬鹿にした目つきだと感じていた。
副社長がかつて付き合っていたマリアから声をかけられ、有無を言わせぬ口調でお茶に誘われたが、マリアの放った言葉に興味がなければ彼女の誘いには乗らなかった。
何故なら、好きになった人のことに興味を持たない女はいないはずだ。
それに彼女は昔の恋人である道明寺司にやり直しましょうといった言葉を放った女性だ。
それも、つくしがいる前で言ったというのだからある意味喧嘩を売られたようなものだ。
それに副社長がマリアを迷惑な女と考えているのなら、彼女を彼の傍に寄せ付けることがないように防波堤の役割をすることが秘書としての役割だ。
だから今のつくしは、はっきり言って、私生活と仕事の両方が同時に頭の上に降りかかって来たようなものだ。
だがそれならそれで別に構わなかった。
つくしは小さい時から依存心というものがなく、自立した人生を送って来た人間だ。
それは両親が頼りないこともあったからだが、大人になってからもその傾向は変わらず、もしかすると、自分が以前付き合った男性と上手くいかなかったのは、その自立心が旺盛だったことも関係あったのかもしれない。何しろ自分でも相手に甘える、頼るということが下手だということは性格上仕方がないのかもしれないが、こうしてマリアの誘いを受けたのは、自立心の旺盛さがそうさせたのだと感じていた。
いくら副社長と付き合うことに決めたからといって、あの人に頼った女でいるつもりはない。それに海外では大人しいと思われる日本人女性だが、だてに海外出張をこなして来た女じゃない。そんな思いが今のつくしの心の中に湧き上がっていた。
それに、マリアの話す言葉は、言葉としては普通に聞こえるが、その響きの中には傲慢さが含まれている。
だがマリアがどうしても話がしたいというのなら、食事をすることなど大した苦痛ではないはずだ。
しかしこれから交わす会話は、決して当たり障りのないものだとは考えてはいない。
だがだからと言って目の前の女性が何かするとは思っていない。せいぜい言葉での応酬といったことになるはずだ。
マリアが注文したのは、赤ワイン。
それは彼女の生家のワイナリーで作られたワインだと言われた。
そしてマリアは肉料理を食べながら自分の家の話を始めたが、オーストリアの侯爵家は先祖から受け継がれた広大な敷地を持ち、ワイナリーの経営からホテルといった観光事業を手広く手掛けているといった話をされた。
所謂それは、生家の自慢と世間話といった類のものだが、そんな話を訊きながらつくしは、出されたワインを口にしていたが、お酒があまり得意ではない女が大量に飲めるはずもなく、グラスの中身はなかなか減らない。
するとマリアはうちのワインはお口に合わないかしら?とつくしに向かって片眉を上げたが、その表情は明らかに気に入らないといった顔だ。
そしてこの調子では、長い食事のあいだでマリアが本題に入るまでどのくらいかかるのかといった思いがしていたが、生家のワインに自信を持つ女は、すでに何杯も飲み干し顔を赤くしていたが、ウエィターが空になったワイングラスに更にワインを注ぐと突然本題とも思われる話を始めた。
「ねえ。ミスマキノ。あなたツカサと結婚する気?」
何の脈絡も言われたその言葉につくしはどう答えればいいのか分からなかった。
するとマリアは、つくしがイエスともノーとも言わないことに緑の瞳を細め、言葉を継いだ。
「ねえ?あなたツカサがひとりの女に落ち着くと本気で思ってるの?彼のような男がひとりの女の傍で過ごせる男だと本気で思ってるの?それにあなた生活の為に働いているただの秘書でしょう?どう考えてもツカサや私とは住む世界が違うわよね?そんな女がツカサと付き合っているなんて過去にも聞いたことがないわ。それにあなたの家柄はごく普通の庶民だそうね?あら、驚いた?私は直ぐにあなたのことを調べたの。日本にもそれなりの家柄っていうのがあるでしょうけど、あなたは何もない家の娘で財産もないのね?でも私の家は何世紀も続いた一族で、あなたには想像もできないような大きなお城も持ってるわ。だから私のような女の方がツカサには相応しいのよ?それにあなたにはあなたに相応しい身分の男がいるはずよ?だからツカサは私に返してちょうだい。私は彼が欲しいのよ。どうしてもね」
とマリアは笑ったが、赤い顔は明らかに酔いが回っていた。
「それにね?ツカサが女性にモテるのはお金持ちで、あのルックスでセックスも上手いからよ?彼は女性を引き付けるものを全て持ってるの。だから女性が放っておかないの。あなたもその口なんでしょ?」
道明寺司が女性にモテるのは、そういったことが全てじゃないとつくしは思った。
だから反論しようとした。だが再びマリアが話し始めた。
「ねえ?あなたツカサとセックスしたんでしょ?彼、凄いでしょ?だってツカサはひと晩中だって出来る男だもの。それに彼とっても激しいから大変よね?」
と、笑いながらあっけらかんと言われたが、まだそういった関係ではない女の顔をマリアは目ざとく見ていた。
「まさか。あなたまだツカサと寝てないの?嘘でしょ?だって私は彼と出会ったその日にはもうベッドの中にいたわ。それから眠らせてもらえなかったわよ?それなのにあなた_」
マリアはそこで口を閉じた。
そしてどこか考えるような顔になりつくしには理解の出来ないドイツ語で何かを言ったが、その口調は美しく洗練された女性の口から出るに相応しいとは思えなかった。
だから言葉の意味は分からなくても、彼女が何かに酷く腹を立てていることだけは感じられた。
そして「あの男。そういうつもりなのね?」と小さく呟かれた言葉は英語だった。
つくしはマリアが口を閉ざしたのを見て取ると彼女に向かって言った。
「マリアさん。あなたの話から大きな歴史的価値のあるお城で育つ人は凡人には分からない暮らしをしていることは分かります。自分の出自に誇りを持っていることも分かります。
それからあなたは彼を返して欲しいとおっしゃいましたが、彼は物ではありません。返すも何もありません。それに返して欲しいならその理由はなんですか?今のあなたの話の中には何故彼を返して欲しいかといった言葉はありませんでした。それにあなたは彼に何を求めているのですか?お金やルックス・・性的なことだけが目的ならそれは人間として見るべきことではないと思います。私はそんなことで彼を見てはいませんから」
つくしはそこまで言うと、ちょっと失礼しますと言って席を立ち化粧室へと向かったが、今のような会話を交わした相手の車に再び乗ろうとは思わなかった。
それに姿は見えないが、ボディガードがついていることを思えば、帰りは心配していなかった。だからマリアからの誘いを受け入れたのも、見守られているといった安心感があり、いざとなれば何とかしてもらえる。そんな思いがあったからだ。
だからテーブルへ戻ったらデザートまで待たず店を出ようと思っていた。
それに、マリアに向かって言った言葉は彼女を怒らせてしまったはずだ。だが彼女も言いたい放題言ったのだから、つくしの言葉はマリアに比べれば控えめなはずだ。
だいたいマリアのように人を外見やお金といったものを基準に考えることがおかしいのだ。
人は人であり自分の目的を果たす為のモノではない。そんな思いから口をついて出たのは、批判的な言葉だったが、ふと、副社長の顔が浮かび、もし彼がここにいたとして今の場面を見てどう思うだろう。そんなことが頭の中を過っていた。
このレストランは古い趣のある建物だが、化粧室へ向かう廊下の壁に掛けられていた案内によれば、ここは昔、城だったと書かれていた。その古い建物を生かしたということなのか、化粧室は曲がりくねった廊下を進んだ遥か先にあることが分かり、急ぎ足で向かった。そして用を済ませ廊下を歩き出したところで、突然後ろから腕を掴まれた。

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司*****E様
おはようございます^^
マリアと話をするつくし。
傲慢、高飛車な女マリア。そんな彼女はどうしてそこまで司に執着するのでしょうねぇ。
プライドが高い女は自分が否定されることは耐えられないのでしょうか?
そして化粧室から出て来たつくしの腕を掴んだのは誰?
そうです。お察しの通りです(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
マリアと話をするつくし。
傲慢、高飛車な女マリア。そんな彼女はどうしてそこまで司に執着するのでしょうねぇ。
プライドが高い女は自分が否定されることは耐えられないのでしょうか?
そして化粧室から出て来たつくしの腕を掴んだのは誰?
そうです。お察しの通りです(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.02.05 23:16 | 編集
