司がスイスへ出発した夜。
つくしは自分の気持に思いをめぐらせ眠れなかった。
今まで気持が高ぶって眠れないことなど無かったが、それは恋が始まったことに興奮していると分かっていた。
そしてもし副社長が出張しなければ、今頃二人はどうなっていたかということを考えていた。コネクティングルームの扉の先には、つくしがいいと言わない限り足を踏み入れないと約束していた。しかしあの時、その扉を開け放ったままでもいいと思う女がいた。
だがそう思った途端、羞恥に囚われた。
女性が自分の部屋へ男性を招き入れるということは、二人の関係を進めたいということだ。
だが不器用な恋しか経験のない女に恋のシナリオを描くことは出来ない。
関係の進め方と言えば、まず頭に浮かぶのはビジネスの進め方であり、男と女の関係の進め方については分からなかった。
それなら相手に任せるしかない、ということになるのだが、そうなると問題がある。
それは、つくしはいい年をして経験がないということだ。
だが二人の関係は大人の男と女の恋だ。それに相手は道明寺司だ。
男としての本能なら問題ないと言われる男だ。そんな男との恋はどのくらいのスピードで始まるのか。不安がないと言えば嘘になる。
始まった途端、一気に加速して最高速度まで達するのか。それとも、ゆっくりとした速さで始まるのか。そしてそんなことを思う女は、一気に加速しそうな気がしていた。
何故なら、つくしには当然経験があると思っているはずだ。
だからそのことについて話しをした方がいいのか。それとも言わず、その時がくれば流れに身を任せればいいのか。
だがキスだけでのぼせる自分が愚かな小娘のように感じられ、もしかすると相手が幻滅するのではないかといった思いがある。
しかし、経験がないことを焦ってもどうしようもない。
つくしは、秘書の仕事についたばかりの頃、司のペントハウスで裸・・いやバスローブ姿の司を見ているが、あの頃は自分の未経験が気になることはなく、ましてや副社長のことを恋の対象に考えることすらなかった。
それでも、クールでセクシーな甘さといったものを纏った男の姿に目を奪われ、頬が赤らんだ。
それにしてもあの黒い瞳は罪だ。
たとえ世界で一番硬いと言われる鎧を身に付けていても、あの黒い眼差しでじっと見つめられれば溶けてしまうはずだ。それに、映画スターよりハンサムで、神よりも金を持つという男は自分の魅力を理解している。だからあんなことが言えるのだ。
『これから手順を踏んだいい恋愛をすればいい』
そう言われ優しくキスをされた。
それなら次は、ということになるのだが、それを思うと脈が速くなり、鼓動が高まったが、本物の恋人になるということは、身体を求められるということだ。互いに服を脱いで愛し合うことだ。
だが無理矢理襲いかかるといったことはないはずだ。
あのとき、唇を少し開いて見上げたときの自分は、さぞや間抜けな顔をしていたに違いない。
そしてそれは無防備で大胆だったはずだ。
そんな言葉が今のつくしの中にあるが、それは今目の前にその人がいないからだ。もし、目の前にいれば、自分が大胆だとは思いもしないはずだ。
それに、秘書でありながら恋人であるという立場になれば、秘書を辞めた方がいいのか。
だがつくしは、せっかく慣れて来た仕事を辞めたいとは思わない。それなら、仕事中は秘書に徹し仕事と私生活はきっちりと分けた方がいいはずだ。
そして久美子が知れば言うはずだ。
『ロマンスの神様がつくしのロマンスを連れて来たわ!あとは二人で遊園地に行けば結婚出来るわよ!』
だがつくしは『ロマンスの神様』という歌の歌詞の中にある、『土曜日に遊園地に行き、一年経ったらハネムーン』その歌詞が本当になる・・とは信じてはいない。
それに、付き合ったからといって結婚するとは限らないのだから、今は先々のことを考えても仕方がないといった思いから、とりあえず今日のことを考えることに決めた。
秘書である自分がスイスに同行しなくてもいいと言われたのは、何故かと考えても仕方がない。必要ないと言われればそれまでであり、今日一日は休めと言われ、今朝はゆっくりと目覚めた。
それならせっかくだから、と街を散策しようと思っていた。
だがまったく見知らぬ街で目的もなく一人というのは不安がある。だが、道明寺司と付き合うということは、警護対象者としてボディガードが付くが、そのことが逆に有難いと思えた。
そして行ってみたい場所があった。
それは、お城見学だ。真冬のドイツにお城見学など、寒さに凍えてしまうと言われるかもしれないが、たまたま時間が空いたこともだが、せっかくドイツに来たのだからひとつくらいお城の見学に行きたい。そんな思いから小さな城を訪れることに決めた。
つくしは、城全体が見える場所で立ち止まり、仕事用にいつも持ち歩いているデジカメで何枚か写真を撮った。
数日前に降ったという雪が残るこの場所は、デュッセルドルフ郊外にある城だ。
そして、ライン川が近くに流れていることから川の水が引き込まれている水城は、ガイドブックによると、日本ではメジャーではないが広大な庭園を備えており、市民の憩いの場所と言われている。だが今は寒々とした冬景色が広がり人は少なかった。
それでも、美しいピンク色をした建物は珍しく、もっと撮影ようとした。と、そのとき、ファインダーの中にブロンドの背の高い女性の姿が入り込んだ。

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つくしは自分の気持に思いをめぐらせ眠れなかった。
今まで気持が高ぶって眠れないことなど無かったが、それは恋が始まったことに興奮していると分かっていた。
そしてもし副社長が出張しなければ、今頃二人はどうなっていたかということを考えていた。コネクティングルームの扉の先には、つくしがいいと言わない限り足を踏み入れないと約束していた。しかしあの時、その扉を開け放ったままでもいいと思う女がいた。
だがそう思った途端、羞恥に囚われた。
女性が自分の部屋へ男性を招き入れるということは、二人の関係を進めたいということだ。
だが不器用な恋しか経験のない女に恋のシナリオを描くことは出来ない。
関係の進め方と言えば、まず頭に浮かぶのはビジネスの進め方であり、男と女の関係の進め方については分からなかった。
それなら相手に任せるしかない、ということになるのだが、そうなると問題がある。
それは、つくしはいい年をして経験がないということだ。
だが二人の関係は大人の男と女の恋だ。それに相手は道明寺司だ。
男としての本能なら問題ないと言われる男だ。そんな男との恋はどのくらいのスピードで始まるのか。不安がないと言えば嘘になる。
始まった途端、一気に加速して最高速度まで達するのか。それとも、ゆっくりとした速さで始まるのか。そしてそんなことを思う女は、一気に加速しそうな気がしていた。
何故なら、つくしには当然経験があると思っているはずだ。
だからそのことについて話しをした方がいいのか。それとも言わず、その時がくれば流れに身を任せればいいのか。
だがキスだけでのぼせる自分が愚かな小娘のように感じられ、もしかすると相手が幻滅するのではないかといった思いがある。
しかし、経験がないことを焦ってもどうしようもない。
つくしは、秘書の仕事についたばかりの頃、司のペントハウスで裸・・いやバスローブ姿の司を見ているが、あの頃は自分の未経験が気になることはなく、ましてや副社長のことを恋の対象に考えることすらなかった。
それでも、クールでセクシーな甘さといったものを纏った男の姿に目を奪われ、頬が赤らんだ。
それにしてもあの黒い瞳は罪だ。
たとえ世界で一番硬いと言われる鎧を身に付けていても、あの黒い眼差しでじっと見つめられれば溶けてしまうはずだ。それに、映画スターよりハンサムで、神よりも金を持つという男は自分の魅力を理解している。だからあんなことが言えるのだ。
『これから手順を踏んだいい恋愛をすればいい』
そう言われ優しくキスをされた。
それなら次は、ということになるのだが、それを思うと脈が速くなり、鼓動が高まったが、本物の恋人になるということは、身体を求められるということだ。互いに服を脱いで愛し合うことだ。
だが無理矢理襲いかかるといったことはないはずだ。
あのとき、唇を少し開いて見上げたときの自分は、さぞや間抜けな顔をしていたに違いない。
そしてそれは無防備で大胆だったはずだ。
そんな言葉が今のつくしの中にあるが、それは今目の前にその人がいないからだ。もし、目の前にいれば、自分が大胆だとは思いもしないはずだ。
それに、秘書でありながら恋人であるという立場になれば、秘書を辞めた方がいいのか。
だがつくしは、せっかく慣れて来た仕事を辞めたいとは思わない。それなら、仕事中は秘書に徹し仕事と私生活はきっちりと分けた方がいいはずだ。
そして久美子が知れば言うはずだ。
『ロマンスの神様がつくしのロマンスを連れて来たわ!あとは二人で遊園地に行けば結婚出来るわよ!』
だがつくしは『ロマンスの神様』という歌の歌詞の中にある、『土曜日に遊園地に行き、一年経ったらハネムーン』その歌詞が本当になる・・とは信じてはいない。
それに、付き合ったからといって結婚するとは限らないのだから、今は先々のことを考えても仕方がないといった思いから、とりあえず今日のことを考えることに決めた。
秘書である自分がスイスに同行しなくてもいいと言われたのは、何故かと考えても仕方がない。必要ないと言われればそれまでであり、今日一日は休めと言われ、今朝はゆっくりと目覚めた。
それならせっかくだから、と街を散策しようと思っていた。
だがまったく見知らぬ街で目的もなく一人というのは不安がある。だが、道明寺司と付き合うということは、警護対象者としてボディガードが付くが、そのことが逆に有難いと思えた。
そして行ってみたい場所があった。
それは、お城見学だ。真冬のドイツにお城見学など、寒さに凍えてしまうと言われるかもしれないが、たまたま時間が空いたこともだが、せっかくドイツに来たのだからひとつくらいお城の見学に行きたい。そんな思いから小さな城を訪れることに決めた。
つくしは、城全体が見える場所で立ち止まり、仕事用にいつも持ち歩いているデジカメで何枚か写真を撮った。
数日前に降ったという雪が残るこの場所は、デュッセルドルフ郊外にある城だ。
そして、ライン川が近くに流れていることから川の水が引き込まれている水城は、ガイドブックによると、日本ではメジャーではないが広大な庭園を備えており、市民の憩いの場所と言われている。だが今は寒々とした冬景色が広がり人は少なかった。
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司*****E様
おはようございます^^
つくし、観光に出かけてある人と出会いました。
良からぬことが起こる!(笑)つくしは、そういったことに自ら飛び込んで行く傾向があるのかもしれませんね?
司はスイス。そこで楓と会っていることでしょう。
でも何故呼ばれたのでしょうね?
お誕生日。そうだったんですね?
アカシアも楽しい時間が過ごせるお手伝いが出来てよかったです。
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
つくし、観光に出かけてある人と出会いました。
良からぬことが起こる!(笑)つくしは、そういったことに自ら飛び込んで行く傾向があるのかもしれませんね?
司はスイス。そこで楓と会っていることでしょう。
でも何故呼ばれたのでしょうね?
お誕生日。そうだったんですね?
アカシアも楽しい時間が過ごせるお手伝いが出来てよかったです。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.02.01 23:59 | 編集

と*****ン様
早速ブロンドの背の高い女が視界に!
つくしにも雪の嵐が接近中!
雪。あまり積もらないといいですねぇ。
司がドイツ、今はスイスですが、日本に居ませんので寒さも倍増かもしれません(笑)
コメント有難うございました^^
早速ブロンドの背の高い女が視界に!
つくしにも雪の嵐が接近中!
雪。あまり積もらないといいですねぇ。
司がドイツ、今はスイスですが、日本に居ませんので寒さも倍増かもしれません(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.02.02 00:02 | 編集

さ***ん様
【手順を踏んだいい恋愛をすればいい。】
司が言ういい恋愛とはどんな恋愛なのでしょうね?(笑)
しかしどんな恋愛も、一気に加速しては、つくしはついてこれないと思いますので、普通列車で行きましょう(笑)
でも副社長。そんなことを考えている場合ではありません。
お城見学に出掛けた彼女の前に現れた女が!
逃げることが出来るか、つくし!
コメント有難うございました^^
【手順を踏んだいい恋愛をすればいい。】
司が言ういい恋愛とはどんな恋愛なのでしょうね?(笑)
しかしどんな恋愛も、一気に加速しては、つくしはついてこれないと思いますので、普通列車で行きましょう(笑)
でも副社長。そんなことを考えている場合ではありません。
お城見学に出掛けた彼女の前に現れた女が!
逃げることが出来るか、つくし!
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.02.02 00:08 | 編集

ふ*******マ様
出た!(笑)
そうなんですねぇ。なにやら不穏な動きが。
え?(笑)災難に遭うことは確定ですか?
そしてつくしは、逃げることが出来るのか?
そんな災難に自ら飛び込んで行くことはないと思いたいですね?(笑)
拍手コメント有難うございました^^
出た!(笑)
そうなんですねぇ。なにやら不穏な動きが。
え?(笑)災難に遭うことは確定ですか?
そしてつくしは、逃げることが出来るのか?
そんな災難に自ら飛び込んで行くことはないと思いたいですね?(笑)
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2018.02.02 00:13 | 編集
