『美味しいを分け合いたい。お袋ならそう言うだろうな。あの人は食べものを美味しく食べることが出来ればそれでいい人だから。けど、親父は食べ物に対してお袋とは比べものにならないほど興味がない。それに親父の場合食事は生きる為に仕方なく食べてる人だから自分の妻が作る料理以外はどうでもいい。世間でどんなに美味いと言われている食べ物にも興味は示さない。だから食べ物は止めたほうがいい。
それにその日のお袋は親父の好きな卵焼きとか、えのきのベーコン巻きだとかを作るに決まってる。だからお前たちは食べ物以外の何か別のものを考えた方がいいぞ?』
NYの航はそう言って一番上の弟である圭からの電話に応えた。
「・・・じゃあ何にしたらいいんだよ。毎年考えるともう思いつかなくなるんだよ。ネタ切れだよ。兄さん何かアイデアくれよ?」
『そうだな・・・。親父の喜びそうなものか・・。だけど俺は親父と暮らした時間は短いからな。正直親父が何を喜ぶかってことは分からないんだ』
航は高校生になってから自分の父親が道明寺司だと知り、それから世田谷の邸で暮らしたが、その期間は短く高校を卒業すると大学はNY。そして卒業後は道明寺NY本社の仕事を始めたこともあり、父親と暮らしたのは2年間。だから父親の細かい好みは知らなかった。
『まあ、間違いなく言えるのは、親父が喜ぶっていったらお袋絡みのこと以外ないからな。お袋が喜べば自分も嬉しい。それが親父だ。親父の幸せの基準はお袋だからお袋が幸せならそれでいいって人だ』
圭は航の話に頷いた。
彼が知る家での道明寺司は、書斎で仕事をする時以外、いつも母親の姿を目で追っているからだ。
そして偉そうに何か言うが、後でこっそりそのことの言い訳をしていることも知っている。
そして圭が今よりも幼かった頃こんな話があった。
母親が銀座のデパートのバーゲンセールに行くと言えば、反対した父親。
だが顔を曇らせた母親を見た父親は態度を変え、お前がどうしても行きたいならと言い、それから俺も一緒に行くと言った。
だがあの道明寺司がリムジンにボディガードを引き連れて行くものだから、デパート側は厳戒態勢を取らざるを得なくなり、客は入口で入店を規制される状態が発生。
そんな店内は、客がおらずガラガラで開店休業状態。
そしてそんな状況に、
「これじゃあ人混みに揉まれて掘り出し物を探す楽しみがない」
と言った母親。
「それならデパートごと買ってやる。そこで掘り出しものを探せばいい。ただし人混みは駄目だ。女はいいが男がお前の身体に触れるかもしれねぇから」
と言う父親。
そして呆れる母親という構図があった。
圭はそんな会話をする中年夫婦を見ながら成長した。
つまり圭たちの父親は誰よりも何よりも妻が大切。
そしてつまりそれは、妻は子供たちよりも上の存在。
だから父親が母親のことを愛し過ぎておかしくなったのかと思ったことがあった。
それはある日父親が呟いた言葉だ。
「俺は妖精に見放された・・」
小さなその呟きに一体父親に何が起きたのかと思ったが、丁度その日母親は、亡くなった父方の祖父の法事で北陸へ泊りで行っていた。そんな状況の中、まさか父親の口から妖精というまったく似つかわしくない言葉が出るとは思いもしなかったが、寂しそうな背中に妖精は母親のことであり、聞き間違いではなかったのだと確信した。なぜなら、翌日、妖精に見放されたと言った父親は、母親が戻って来た途端、暗い淵の底から這い上がってきたターミネーターのような不死身の男になっていたからだ。
その瞬間、父親にとって母親はかわいい妖精で、父親は自分だけの妖精を守る不死身の男だったのだと確信した。
だがだからこそ、航の言った親父はお袋が幸せならそれが幸せ、という言葉が信じられるのだが、今では人工衛星すら持つ父親。もしかすると空の上から母親を見ているかもしれない。
いや。かもではない。
断定していいはずだ。
絶対にやっているはずだ。
確実にやっているはずだ。
何しろ自分達の父親は、あの道明寺司なのだから。
だからこそ、そんな父親の誕生日に何をプレゼントすれば喜ばれるのか悩んだ。
だが圭はようやく考えが纏まった。
そしてこれなら父親が喜んでくれることは間違いないという自信を持ち、弟と妹を部屋に呼んだ。
「ねえ。圭お兄ちゃん。それでパパの誕生日のプレゼント、決まったの?」
「ああ。決まった。けどそのプレゼントは彩の協力が必要だ。それに蓮も」
「俺も?」
「ああ。これは俺たち三人で父さんに贈るプレゼントだ。だから当然三人が力を合わせる必要がある。それにこれは今の俺たちじゃなきゃ出来ない贈り物だ」
圭はそう言って弟と妹と頭を寄せ合った。

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それにその日のお袋は親父の好きな卵焼きとか、えのきのベーコン巻きだとかを作るに決まってる。だからお前たちは食べ物以外の何か別のものを考えた方がいいぞ?』
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「・・・じゃあ何にしたらいいんだよ。毎年考えるともう思いつかなくなるんだよ。ネタ切れだよ。兄さん何かアイデアくれよ?」
『そうだな・・・。親父の喜びそうなものか・・。だけど俺は親父と暮らした時間は短いからな。正直親父が何を喜ぶかってことは分からないんだ』
航は高校生になってから自分の父親が道明寺司だと知り、それから世田谷の邸で暮らしたが、その期間は短く高校を卒業すると大学はNY。そして卒業後は道明寺NY本社の仕事を始めたこともあり、父親と暮らしたのは2年間。だから父親の細かい好みは知らなかった。
『まあ、間違いなく言えるのは、親父が喜ぶっていったらお袋絡みのこと以外ないからな。お袋が喜べば自分も嬉しい。それが親父だ。親父の幸せの基準はお袋だからお袋が幸せならそれでいいって人だ』
圭は航の話に頷いた。
彼が知る家での道明寺司は、書斎で仕事をする時以外、いつも母親の姿を目で追っているからだ。
そして偉そうに何か言うが、後でこっそりそのことの言い訳をしていることも知っている。
そして圭が今よりも幼かった頃こんな話があった。
母親が銀座のデパートのバーゲンセールに行くと言えば、反対した父親。
だが顔を曇らせた母親を見た父親は態度を変え、お前がどうしても行きたいならと言い、それから俺も一緒に行くと言った。
だがあの道明寺司がリムジンにボディガードを引き連れて行くものだから、デパート側は厳戒態勢を取らざるを得なくなり、客は入口で入店を規制される状態が発生。
そんな店内は、客がおらずガラガラで開店休業状態。
そしてそんな状況に、
「これじゃあ人混みに揉まれて掘り出し物を探す楽しみがない」
と言った母親。
「それならデパートごと買ってやる。そこで掘り出しものを探せばいい。ただし人混みは駄目だ。女はいいが男がお前の身体に触れるかもしれねぇから」
と言う父親。
そして呆れる母親という構図があった。
圭はそんな会話をする中年夫婦を見ながら成長した。
つまり圭たちの父親は誰よりも何よりも妻が大切。
そしてつまりそれは、妻は子供たちよりも上の存在。
だから父親が母親のことを愛し過ぎておかしくなったのかと思ったことがあった。
それはある日父親が呟いた言葉だ。
「俺は妖精に見放された・・」
小さなその呟きに一体父親に何が起きたのかと思ったが、丁度その日母親は、亡くなった父方の祖父の法事で北陸へ泊りで行っていた。そんな状況の中、まさか父親の口から妖精というまったく似つかわしくない言葉が出るとは思いもしなかったが、寂しそうな背中に妖精は母親のことであり、聞き間違いではなかったのだと確信した。なぜなら、翌日、妖精に見放されたと言った父親は、母親が戻って来た途端、暗い淵の底から這い上がってきたターミネーターのような不死身の男になっていたからだ。
その瞬間、父親にとって母親はかわいい妖精で、父親は自分だけの妖精を守る不死身の男だったのだと確信した。
だがだからこそ、航の言った親父はお袋が幸せならそれが幸せ、という言葉が信じられるのだが、今では人工衛星すら持つ父親。もしかすると空の上から母親を見ているかもしれない。
いや。かもではない。
断定していいはずだ。
絶対にやっているはずだ。
確実にやっているはずだ。
何しろ自分達の父親は、あの道明寺司なのだから。
だからこそ、そんな父親の誕生日に何をプレゼントすれば喜ばれるのか悩んだ。
だが圭はようやく考えが纏まった。
そしてこれなら父親が喜んでくれることは間違いないという自信を持ち、弟と妹を部屋に呼んだ。
「ねえ。圭お兄ちゃん。それでパパの誕生日のプレゼント、決まったの?」
「ああ。決まった。けどそのプレゼントは彩の協力が必要だ。それに蓮も」
「俺も?」
「ああ。これは俺たち三人で父さんに贈るプレゼントだ。だから当然三人が力を合わせる必要がある。それにこれは今の俺たちじゃなきゃ出来ない贈り物だ」
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司*****E様
おはようございます^^
航くん。両親を親父とお袋と呼ぶようになっていましたね?
彼はNYで生活していて、父親である司とは父と子というよりも、それこそ年の離れた兄弟のような関係かもしれません。
さて司の誕生日。何をプレゼントすることに決まったのでしょう。きっと、な~んだ!と思われるはずです^^
それにしても、司の口から妖精という言葉が出るとは!(笑)
まさかあの父親の口から!?圭君耳を疑ったことでしょうねぇ(笑)
そんな言葉を知っていたのか!(笑)確かにそうですよね?
司。妻を溺愛するあまり、息子におかしくなったと思われたんですから、相当な愛妻家であることは間違いありませんね?(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
航くん。両親を親父とお袋と呼ぶようになっていましたね?
彼はNYで生活していて、父親である司とは父と子というよりも、それこそ年の離れた兄弟のような関係かもしれません。
さて司の誕生日。何をプレゼントすることに決まったのでしょう。きっと、な~んだ!と思われるはずです^^
それにしても、司の口から妖精という言葉が出るとは!(笑)
まさかあの父親の口から!?圭君耳を疑ったことでしょうねぇ(笑)
そんな言葉を知っていたのか!(笑)確かにそうですよね?
司。妻を溺愛するあまり、息子におかしくなったと思われたんですから、相当な愛妻家であることは間違いありませんね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.01.30 23:47 | 編集

ふ******マ様
プレゼント!(笑)な~んだ!って思われるはずです^^
頭が硬くなる。アカシアも硬くなってます!(笑)
記憶力も低下中(笑)あれ?どこに置いたっけ?ということもしばしばです。
拍手コメント有難うございました^^
プレゼント!(笑)な~んだ!って思われるはずです^^
頭が硬くなる。アカシアも硬くなってます!(笑)
記憶力も低下中(笑)あれ?どこに置いたっけ?ということもしばしばです。
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2018.01.30 23:53 | 編集

さ***ん様
妖精に見放された男、道明寺司。
でもターミネーター司。
そんな男は人工衛星も持ってます!(笑)
宇宙事業にも乗り出した道明寺HDです!
子供たちが考えたプレゼント・・。
合体券♡(笑)いいですねぇ。でも司のことですから、そんな券はなくとも・・。
いや。教育上よろしくありませんよね?(笑)
それは、東の角部屋でどうぞ!
コメント有難うございました^^
妖精に見放された男、道明寺司。
でもターミネーター司。
そんな男は人工衛星も持ってます!(笑)
宇宙事業にも乗り出した道明寺HDです!
子供たちが考えたプレゼント・・。
合体券♡(笑)いいですねぇ。でも司のことですから、そんな券はなくとも・・。
いや。教育上よろしくありませんよね?(笑)
それは、東の角部屋でどうぞ!
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.01.31 00:04 | 編集

あ*ま様
はじめまして。こんにちは^^
こちらのお話。「いつか晴れた日に」の司ファミリーのその後となっておりますが、楽しんでいただければ幸いです。
そしていつもお読みいただき、ありがとうございます。
短編や「金持ちの御曹司」はそれぞれにまた違う司がおり、「秋日の午後」は驚かれたかもしれませんが、再読ありがとうございます。どんな結末になるのか・・時にそのようなお話もありますが、司とつくしが離れることがないように。と思っています^^あの司は60代。彼女のお迎えに喜んで旅立ちましたが、家族もそれをやっぱりね。父さんは母さんと一緒じゃなきゃ駄目なんだ。と思ったことでしょう。それは「いつか晴れた日に」の司も同じはずです^^
二人の愛は永遠ですから。^^
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
コメント有難うございました^^
はじめまして。こんにちは^^
こちらのお話。「いつか晴れた日に」の司ファミリーのその後となっておりますが、楽しんでいただければ幸いです。
そしていつもお読みいただき、ありがとうございます。
短編や「金持ちの御曹司」はそれぞれにまた違う司がおり、「秋日の午後」は驚かれたかもしれませんが、再読ありがとうございます。どんな結末になるのか・・時にそのようなお話もありますが、司とつくしが離れることがないように。と思っています^^あの司は60代。彼女のお迎えに喜んで旅立ちましたが、家族もそれをやっぱりね。父さんは母さんと一緒じゃなきゃ駄目なんだ。と思ったことでしょう。それは「いつか晴れた日に」の司も同じはずです^^
二人の愛は永遠ですから。^^
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.01.31 00:25 | 編集

と*****ン様
プレゼント!なんだ!やっぱりそうだったのか!(笑)
そんなプレゼントです(笑)
でも子供たちは考えたんだと思って下さい^^
コメント有難うございました^^
プレゼント!なんだ!やっぱりそうだったのか!(笑)
そんなプレゼントです(笑)
でも子供たちは考えたんだと思って下さい^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.01.31 00:28 | 編集
