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2017
12.22

追憶のクリスマス ~空からの手紙~ 前編

Christmas Story 2017
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『あなたはお伽話を信じますか?』

そう聞かれたとき、あなたは信じますと答えますか?

それがもし我が子からの質問だとすれば、あなたは何と答えますか?

東京の夜空にそびえ立つ高いタワーの色が変わる頃、あなたは何をしていますか?

世界中の恋人たちが肩を寄せ合い楽しそうに歩く姿に何を思いますか?

クリスマスの過ごし方といった本があるとすれば、あなたはその本を買いますか?








あなたはクリスマスの日、何をしていますか?











冬の夜空に冷たい風が吹き、街に赤や緑が目立つようになり、クリスマスツリーが飾られる頃になるといつも聞かれることがある。

「ねえ、ママ。サンタさんて本当にいるの?」

「うん。いるわよ」

「ホント?本当にいるの?」」

「本当にいるの。でもね、遅くまで起きてる子と悪い子の所には来ないの。だから駿が早く寝ていい子にしてたら来てくれるわよ?」

「そっか。じゃあ僕が早く寝ていい子にしてたら絶対に来てくれるんだよね?」

「そうよ?駿はいい子だもの。きっとサンタさんは来てくれるわ」

「本当?じゃあ僕が欲しいものを持って来てくれるかな?」

「大丈夫。だってサンタさんは早く寝ていい子の願いは絶対に聞いてくれるもの」

「そうだよね?僕、今年もいい子だったよね?だから大丈夫だよね?サンタさん絶対に家にも来てくれるよね?」

「うん。絶対大丈夫よ!サンタさん、駿のこと忘れる訳ないじゃない。だからね、もう寝なさい」


街がクリスマスイルミネーションに彩られるようになった頃から何度も繰り返される言葉。

『サンタさん本当にいるの?』

だが母であるつくしは、早く寝ていい子だったら必ず来てくれるとしか言えなかった。






つくしは笑顔を作ると、眠りについた我が子の髪をそっと撫でた。
ここのところ息子の顔を見るたび感じることがある。
よく似ているのだ。癖のある髪も、細い眉も、黒く長い睫毛も、そして切れ長の瞳も。
眠っている顔も、笑っている顔も、怒った顔も、くしゃみをした顔も。
どんな表情をしても似ているのだ。
移り行く季節と共に成長していく息子の顔立ちは、父親譲りの綺麗な顔立ちをしていた。
そしていつも思う。自分がお腹を痛め産んだ子なのにどうして母親である自分に似たところはないのかと。
そしてまるであの人のミニチュアのような我が子は、まだ幼いせいか母親の言うことを素直に信じる。だが果たしてそれがいつまで続くのかと思う。


『サンタさん。絶対に来てくれるよね?』

『大丈夫。きっと来てくれるわ』

つくしもその言葉を信じていた。
言葉は口をついた途端、魂を持つ。
だからその言葉通りきっと来てくれる。
だが息子とはまた別の意味で『来てくれる』という言葉を信じていた。
何年経ってもいい。必ず戻って来るはずだと信じていた。
いや信じたかった。
だがそれは『いつかまた逢える』と言った方が正しいのかもしれない。


人は縁がない人とは一生出会うことはない。
逆にどんなに抗ったとしても、縁があれば出会ってしまう。
だからどんなに住む世界が違っていた人だとしても、縁があるから出会ったのだ。
そしてその縁というのは、何かが始まるきっかけになるはずだ。
それは一生切れない何かを生み出していくものだと知った。
だが息子の父親は、自分の子供が存在することを知らない。


あれは冬だった。
今夜のように寒い冬の夜。
吐く息が白く、指の先が凍りそうになるほどの冷たさを感じる夜。
仕事を終えた二人はサンタクロースの格好をした人間が溢れる街の中にある公園で待ち合わせをした。

彼は普段から海外と日本を行き来する生活が続いていた。だからあの日は久し振りに会える日だった。
だが1時間ほど待ったが彼はこなかった。手にした携帯電話が鳴ることもなかった。
自分からかけることは躊躇われた。もし、仕事中なら迷惑になると思ったからだ。
それにこんなことはいつものことだと慣れていた。今までだってそうだった。だから落胆はしなかった。それでもあと30分待とうと思った。そして待った。だが彼は来なかった。

それから暫くしてベンチから立ち上がり歩き出したが立ち止まった。そして顔を上げ真正面に見える高層ビルの窓の灯りの場所を確かめたかったが、不規則に並んだ窓の灯りはどの場所が彼のいる部屋か分からなかった。だが知ったところでどうなるというものでもない。
ただ、あの窓のひとつに彼がいる。それだけは間違いがないのだから。
そうだ。別に今日会えなくてもいい。何も今日でなくてもいい。
だが会いたいと言ったのは彼のほうだ。それでも腹を立てるつもりはない。
会えない日がまた再び始まるとしても。



つくしは気を取り直すと再び足を踏み出した。
ちょうどその時、手にしていた携帯電話が鳴った。
相手は彼の秘書だ。今まで秘書が電話をして来たことはない。
だから何かあったのだといった思いが頭を過った。
そしてその思いは当たっていた。
彼が交通事故にあった。その言葉が一瞬理解出来ずにいた。

「こ、交通事故?」

「はい。牧野様、今すぐ病院へ来て下さい。病院は__」


それからはよく覚えていなかった。
すぐに走り出し、大通りに出るとタクシーを拾った。そして秘書から教えられた病院の名前を告げるとシートにもたれかかり目を閉じた。そして祈った。どうぞ無事でいて下さいと。それと同時に高校生だった頃のことが甦った。彼が刺された日の事が。
そして病院に駆け付けたとき、目にしたのはあの時と同じ沢山のチューブに繋がれた身体だった。
そこで隣に立った秘書から聞かされた言葉。
事故に遭ったのは横断歩道を渡ろうとしたとき、信号無視をした車にはねられたと訊いた。
運転手はまだ免許を取ったばかりの大学生の若者。ぼんやりとしていたのか信号を見ていなかったと言う。

そういえばあのとき、救急車のサイレンの音が響いていた。
そしてそこは、つくしが待っていた公園の入口。
彼女が座っていたベンチまで僅かな距離を残しての場所だった。




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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2017.12.22 06:36 | 編集
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dot 2017.12.22 20:46 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
クリスマスのお話。え?嫌な予感がする?
これは・・もしかして・・。
今、司はどんな状態でいるのでしょうか。
そして幸せを掴むことが出来るのか・・。
書き上がっているお話です。結末は早いです。

お姉ちゃん!「私、サンタさんに会った」なんと機転の利くお嬢様なのでしょう!
そして諭す様に話す。素晴らしいです。
なるほど。サンタさんの活動もあと1年なのですね?(笑)
今年の任務が無事終ることをお祈りしております!(*^^*)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.12.22 21:58 | 編集
か**り様
不穏な出だし・・。
大丈夫です‼(笑)
すぐに終わりますからね?(笑)
しかし、どうしても・・という場合一気読みという手もあります。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.12.22 22:01 | 編集
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