「副社長。菱信興産の新堂専務がお見えになりました」
西田が司に声をかけると、司はわかった今いく。と返事をして顔を上げた。
そして手にしていたどうでもいい書類をデスクに置き、煙草を灰皿に擦りつけ立ち上がった。
55階、役員フロアにある役員専用会議室は、広いスペースがとられ、楕円形の大きなマホガニーのテーブルが置かれ、中央には花が飾られていた。そして椅子が24脚はあろうかといったところだ。
これからそのテーブルを挟み、道明寺HDと菱信興産の業務提携契約を結ぶ署名をするが、現れたのは司が思っていた通り新堂巧だった。
「道明寺さん。先日の会食は大変有意義な時間が過ごせたと感謝しております。それから父へのお気遣いもありがとうございました。本来ならこの席で父がお礼を申し上げるべきなのですが、どうも回復が思わしくなく大事をとり、本日の調印式は専務である私が代理を務めさせていただきます。本当に申し訳ございません。父もこのような大切な日にこの場にいないことを大変残念に思っております」
新堂巧がこの調印式に現れたのは、父親である健一郎が先日ひいた風邪をこじらせ、体調の回復が思わしくないため大事をとったという理由だったが、調べさせた結果、言葉の先にあったのは、病院の特別室に入院しているということだった。
そして殆どの企業は、社長が入院したということが外部に分かれば、株価に影響することもあり、菱信興産も社長の入院は隠しているようだ。
司は調印式の相手が専務だろうが社長だろうが構わなかった。
ただ今は目の前いる男の全身を眺めていた。
あの時はさして気に留めなかったが、あきらが言った通り女の視線を集めることが出来る男だと感じた。
それは司が持つ人を惹き付けると言われるオーラとはまた別の雰囲気といったものがある。
背が高く、足が長い。そしてその体躯に似合うスーツはオーダーメイドなのは当然だが、袖口から覗く腕時計は、見る者が見れば分る最高級品と呼ばれるものだ。
だが気取ったところなど感じさせないのは、真面目な印象を受けるその顔立ちのせいなのかもしれない。
幼稚舎から大学の付属に通っていた典型的なおぼっちゃんと呼ばれる男はいやみがない。
育ちがいいのは勿論わかる。そして頭がいいのも知っている。
都内の国立大学理学部を卒業し、菱信興産へ入社。そしてアメリカの大学院でMBA(経営管理学修士)を取得。
そんな男の趣味は料理という意外性のあるものだ。だがその趣味が高じてパリにある一流の料理人を育てるという料理専門学校である『ル・コルドン・ブルー』で料理を学んだこともあるというのだから、よほど料理が好きなのだろう。
そして社長の息子といった立場に奢ることなく、いやそんな立場がなくても、社内の出世コースを歩むことが出来る男だ。
司は業務提携契約書にサインをするとその男と握手をした。
それから調印した二人の男の写真が撮られた。
「新堂さん。社長のお加減はいかがですか?」
たとえ相手の事情を知っていたとしても聞くのが礼儀のひとつだ。
「はい。風邪は万病の元と言いますから大事をとらせて頂いておりますが、本当にこの調印式には出たいといった思いでおりましたので本人も大変に残念にといいますか、心苦しい思いをしております」
そしてビジネスとは、本音と建て前を上手く組み合わせ会話を成立させることも重要だ。
「いえ。そんなにお気になさらないで下さい。何事も健康があってのことですから」
写真撮影が終わり会議室から応接室に移った二人の男は、互いの顔を見つめていた。
本来なら調印を済ませれば和やかな雰囲気といったものが感じられてもいいはずだが、男二人の間にあるのは違っていた。それは重苦しく意味の分からない空気といった感じだ。
何故なら先日の会食の事が頭の中にあるからだ。
「あの道明寺さん。先日は突然あのようなことを申し上げまして、大変失礼いたしました」
新堂巧が言いたいのは牧野つくしのことだ。
「あの。ところで牧野さんは・・先ほどはお見かけしませんでしたが今日はお休みでしょうか?」
彼女に一目惚れをしたと言った男は、ここに来れば彼女と会えることを期待していた。
だが調印式で契約書類を交わしたとき、司の傍にいたのは第一秘書の西田だ。
そして巧という男がはっきりと口にした思いを牧野つくしは知らない。
それを知るのは司だけ。だが何のために司に自分の思いを伝えたのか。
やがて扉をノックする音がしてコーヒーを手にした女が入ってきた。
司は視線を向けなかったが、巧はまるで大切なものを見つけたような目を彼女に向けた。
それは殆どの女なら黙殺するにはもったいないと思える視線。だが女は冷静な顔つきでコーヒーの入ったカップを巧の前に置いた。そして次に司の前へもうひとつのカップを置き出て行こうとしたが、そんな女に巧は真っ直ぐな視線を向けた。
「牧野さんでしたよね?私のことを覚えていらっしゃいますか?」
つくしははい、といい秘書として適切な言葉を選択するまでもなく、覚えていますと答えていた。
「牧野さん。御社と我社はこの度業務提携を結びました。これからはお邪魔することもあると思いますのでよろしくお願いいたします。それからこれは道明寺さんにもお話したのですが、私は先日あなたに会って一目惚れをしました。あなたのことが好きになりました」
突然の愛の告白といったものを、それも業務提携先企業となった会社の秘書にいきなり告白する勇気。
男の正面に座る司も驚いたが、言われた当の本人はもっと驚いていた。
つくしと新堂巧が顔を合わせたのは、会食の夜のたった数分間のこと。
それなのにいったいつくしのどこが好きになったのか。
そして新堂巧の冗談とも本気ともつかない言葉に、なんと答えればいいのか。驚いた顔で見返すつくしは「あの・・」と、言いかけたが、その言葉は司に遮られた。
「新堂さん。ここはあなたが私の秘書に愛の告白をする相応しい場所とは思えませんが、いったいどういうおつもりでしょうか?」
その声は冷やかだ。
司は他人の会社。そしてその会社の副社長である司の前で、その秘書に告白をするという態度に、目の前の男は何を考えているのかといった気にさせられた。
「いや。これは申し訳ない。つい口をついてしまいました。しかし私は今ここで牧野さんの上司であるあなたにも聞いて欲しいと思ったんです。何しろ牧野さんは道明寺HD副社長であるあなたの秘書ですから、私と付き合うことに躊躇いを覚えると思います」
大企業の経営に関わる人間の秘書ともなれば、重要な案件にも携わる。そして重要書類、機密文書にも目を通すことになり、産業スパイの的になりやすい。
つまりハニートラップ。男なら女からの甘い罠といったものを仕掛けられることがある。
そして女も同じようなことがある。
だから役員秘書といった立場になれば、付き合う相手の職業も気にするのが当然だ。
もしかすると、自分自身が欲しいのではなく、情報が欲しいから近づいて来たのではないかと考えるからだ。
そんなことから新堂巧は先手を打つではないが、司の前で堂々と交際を申し込み、女が自分と付き合うことに躊躇いを持つことがないようにしたいと考えたということか?
「道明寺さん。私が牧野さんとお付き合いすることを認めてくれませんか?」
そう言った巧の口調は、本人の意思など全く無視といった状況で好きな人の親に交際の許しを得るような口ぶりだがそれに一番驚いたのはつくしだ。
「あの!新堂さん。いえ新堂専務。ま、待って下さい!私たち一度お会いしていますが、それは会ったとはいえません。私たちは今初めて会ったといってもいい状況です。そんな状況でお付き合いって・・ちょっと違うような気がするんですが?」
応接セットのテーブルの脇に立つつくしは、この状況をどうすればいいのか考えた。
仕事で一度顔を合わせただけの見ず知らず男性からの愛の告白と交際の申し込み。
そして副社長である男の、この場所は愛の告白をするに相応しい場所ではないといった言葉は、もっともな言い分であり正しい。
それにここは役員専用応接室。そんな場所で業務提携先となった企業の専務と、この会社の副社長に挟まれ、ここで今何が起きているのか。
右側には日本を代表すると言われる大手総合化学メーカー菱信興産専務、新堂巧。
そして左側には世界的企業と言われる道明寺HD副社長、道明寺司。
この状況を同期の原田久美子が見れば歓喜の声を上げるはずだ。
「牧野さん。私は一目惚れって信じるかと言われれば、今までそんなものは信じていませんでした。でも感じたんです。あなたのその真っ直ぐな黒い瞳に見つめられた瞬間。恋におちました。私は物事には正直でありたいと思う人間です。ですからこうして道明寺さんにもお話をしたんです。いや、実はあの日もお話しました」
新堂巧は一旦言葉を切った。
そして真剣な眼差しに力を込め司を見た。
「それにもし二人が付き合うことになったとしても、決してあなたの会社の情報が欲しいから付き合うといった訳ではないと道明寺さんにも知っておいて欲しかったんです」
巧の声は低く真剣だ。
「あの新堂さん、いきなりそんなこと言われても困ります」
つくしは当惑しながらもはっきりと言葉を返した。
「ええ。分かっています。一度会っただけで言葉も交わしたことがない人間にいきなりこんなことを言われても困りますよね?でも私は思い違いをして頂きたくはないといった思いから、道明寺さんを前にこうしてお話をしています。私はあなたと付き合うにあたってこちらの会社の情報が欲しい、知りたいといった思いで付き合おうとしているのではないということをお伝えしたかったんです。勿論、今すぐに返事が欲しいという訳ではありません。それに付き合って欲しいと言いましたが、まずお友達からで結構です。私のことを知って欲しい。そう考えています」
新堂巧は、おしつけるような言い方ではないが、さりげなく、けれど語尾を強めてはっきりと言う。そしてこの世の一番の望みは、女の黒い大きな瞳の中に吸い込まれることだとでもいうようだ。
今、司の前で自分の思いを述べる新堂は、恋をする男。
そしてその態度は今まで司の周りの男たちにはなかった態度。
いたく真剣で恋におちた男というのは、ひと前でも平気でこうした行動を取ることが出来るのかと知った。
そしてその態度が司には何故か眩しく見えた。

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そして手にしていたどうでもいい書類をデスクに置き、煙草を灰皿に擦りつけ立ち上がった。
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これからそのテーブルを挟み、道明寺HDと菱信興産の業務提携契約を結ぶ署名をするが、現れたのは司が思っていた通り新堂巧だった。
「道明寺さん。先日の会食は大変有意義な時間が過ごせたと感謝しております。それから父へのお気遣いもありがとうございました。本来ならこの席で父がお礼を申し上げるべきなのですが、どうも回復が思わしくなく大事をとり、本日の調印式は専務である私が代理を務めさせていただきます。本当に申し訳ございません。父もこのような大切な日にこの場にいないことを大変残念に思っております」
新堂巧がこの調印式に現れたのは、父親である健一郎が先日ひいた風邪をこじらせ、体調の回復が思わしくないため大事をとったという理由だったが、調べさせた結果、言葉の先にあったのは、病院の特別室に入院しているということだった。
そして殆どの企業は、社長が入院したということが外部に分かれば、株価に影響することもあり、菱信興産も社長の入院は隠しているようだ。
司は調印式の相手が専務だろうが社長だろうが構わなかった。
ただ今は目の前いる男の全身を眺めていた。
あの時はさして気に留めなかったが、あきらが言った通り女の視線を集めることが出来る男だと感じた。
それは司が持つ人を惹き付けると言われるオーラとはまた別の雰囲気といったものがある。
背が高く、足が長い。そしてその体躯に似合うスーツはオーダーメイドなのは当然だが、袖口から覗く腕時計は、見る者が見れば分る最高級品と呼ばれるものだ。
だが気取ったところなど感じさせないのは、真面目な印象を受けるその顔立ちのせいなのかもしれない。
幼稚舎から大学の付属に通っていた典型的なおぼっちゃんと呼ばれる男はいやみがない。
育ちがいいのは勿論わかる。そして頭がいいのも知っている。
都内の国立大学理学部を卒業し、菱信興産へ入社。そしてアメリカの大学院でMBA(経営管理学修士)を取得。
そんな男の趣味は料理という意外性のあるものだ。だがその趣味が高じてパリにある一流の料理人を育てるという料理専門学校である『ル・コルドン・ブルー』で料理を学んだこともあるというのだから、よほど料理が好きなのだろう。
そして社長の息子といった立場に奢ることなく、いやそんな立場がなくても、社内の出世コースを歩むことが出来る男だ。
司は業務提携契約書にサインをするとその男と握手をした。
それから調印した二人の男の写真が撮られた。
「新堂さん。社長のお加減はいかがですか?」
たとえ相手の事情を知っていたとしても聞くのが礼儀のひとつだ。
「はい。風邪は万病の元と言いますから大事をとらせて頂いておりますが、本当にこの調印式には出たいといった思いでおりましたので本人も大変に残念にといいますか、心苦しい思いをしております」
そしてビジネスとは、本音と建て前を上手く組み合わせ会話を成立させることも重要だ。
「いえ。そんなにお気になさらないで下さい。何事も健康があってのことですから」
写真撮影が終わり会議室から応接室に移った二人の男は、互いの顔を見つめていた。
本来なら調印を済ませれば和やかな雰囲気といったものが感じられてもいいはずだが、男二人の間にあるのは違っていた。それは重苦しく意味の分からない空気といった感じだ。
何故なら先日の会食の事が頭の中にあるからだ。
「あの道明寺さん。先日は突然あのようなことを申し上げまして、大変失礼いたしました」
新堂巧が言いたいのは牧野つくしのことだ。
「あの。ところで牧野さんは・・先ほどはお見かけしませんでしたが今日はお休みでしょうか?」
彼女に一目惚れをしたと言った男は、ここに来れば彼女と会えることを期待していた。
だが調印式で契約書類を交わしたとき、司の傍にいたのは第一秘書の西田だ。
そして巧という男がはっきりと口にした思いを牧野つくしは知らない。
それを知るのは司だけ。だが何のために司に自分の思いを伝えたのか。
やがて扉をノックする音がしてコーヒーを手にした女が入ってきた。
司は視線を向けなかったが、巧はまるで大切なものを見つけたような目を彼女に向けた。
それは殆どの女なら黙殺するにはもったいないと思える視線。だが女は冷静な顔つきでコーヒーの入ったカップを巧の前に置いた。そして次に司の前へもうひとつのカップを置き出て行こうとしたが、そんな女に巧は真っ直ぐな視線を向けた。
「牧野さんでしたよね?私のことを覚えていらっしゃいますか?」
つくしははい、といい秘書として適切な言葉を選択するまでもなく、覚えていますと答えていた。
「牧野さん。御社と我社はこの度業務提携を結びました。これからはお邪魔することもあると思いますのでよろしくお願いいたします。それからこれは道明寺さんにもお話したのですが、私は先日あなたに会って一目惚れをしました。あなたのことが好きになりました」
突然の愛の告白といったものを、それも業務提携先企業となった会社の秘書にいきなり告白する勇気。
男の正面に座る司も驚いたが、言われた当の本人はもっと驚いていた。
つくしと新堂巧が顔を合わせたのは、会食の夜のたった数分間のこと。
それなのにいったいつくしのどこが好きになったのか。
そして新堂巧の冗談とも本気ともつかない言葉に、なんと答えればいいのか。驚いた顔で見返すつくしは「あの・・」と、言いかけたが、その言葉は司に遮られた。
「新堂さん。ここはあなたが私の秘書に愛の告白をする相応しい場所とは思えませんが、いったいどういうおつもりでしょうか?」
その声は冷やかだ。
司は他人の会社。そしてその会社の副社長である司の前で、その秘書に告白をするという態度に、目の前の男は何を考えているのかといった気にさせられた。
「いや。これは申し訳ない。つい口をついてしまいました。しかし私は今ここで牧野さんの上司であるあなたにも聞いて欲しいと思ったんです。何しろ牧野さんは道明寺HD副社長であるあなたの秘書ですから、私と付き合うことに躊躇いを覚えると思います」
大企業の経営に関わる人間の秘書ともなれば、重要な案件にも携わる。そして重要書類、機密文書にも目を通すことになり、産業スパイの的になりやすい。
つまりハニートラップ。男なら女からの甘い罠といったものを仕掛けられることがある。
そして女も同じようなことがある。
だから役員秘書といった立場になれば、付き合う相手の職業も気にするのが当然だ。
もしかすると、自分自身が欲しいのではなく、情報が欲しいから近づいて来たのではないかと考えるからだ。
そんなことから新堂巧は先手を打つではないが、司の前で堂々と交際を申し込み、女が自分と付き合うことに躊躇いを持つことがないようにしたいと考えたということか?
「道明寺さん。私が牧野さんとお付き合いすることを認めてくれませんか?」
そう言った巧の口調は、本人の意思など全く無視といった状況で好きな人の親に交際の許しを得るような口ぶりだがそれに一番驚いたのはつくしだ。
「あの!新堂さん。いえ新堂専務。ま、待って下さい!私たち一度お会いしていますが、それは会ったとはいえません。私たちは今初めて会ったといってもいい状況です。そんな状況でお付き合いって・・ちょっと違うような気がするんですが?」
応接セットのテーブルの脇に立つつくしは、この状況をどうすればいいのか考えた。
仕事で一度顔を合わせただけの見ず知らず男性からの愛の告白と交際の申し込み。
そして副社長である男の、この場所は愛の告白をするに相応しい場所ではないといった言葉は、もっともな言い分であり正しい。
それにここは役員専用応接室。そんな場所で業務提携先となった企業の専務と、この会社の副社長に挟まれ、ここで今何が起きているのか。
右側には日本を代表すると言われる大手総合化学メーカー菱信興産専務、新堂巧。
そして左側には世界的企業と言われる道明寺HD副社長、道明寺司。
この状況を同期の原田久美子が見れば歓喜の声を上げるはずだ。
「牧野さん。私は一目惚れって信じるかと言われれば、今までそんなものは信じていませんでした。でも感じたんです。あなたのその真っ直ぐな黒い瞳に見つめられた瞬間。恋におちました。私は物事には正直でありたいと思う人間です。ですからこうして道明寺さんにもお話をしたんです。いや、実はあの日もお話しました」
新堂巧は一旦言葉を切った。
そして真剣な眼差しに力を込め司を見た。
「それにもし二人が付き合うことになったとしても、決してあなたの会社の情報が欲しいから付き合うといった訳ではないと道明寺さんにも知っておいて欲しかったんです」
巧の声は低く真剣だ。
「あの新堂さん、いきなりそんなこと言われても困ります」
つくしは当惑しながらもはっきりと言葉を返した。
「ええ。分かっています。一度会っただけで言葉も交わしたことがない人間にいきなりこんなことを言われても困りますよね?でも私は思い違いをして頂きたくはないといった思いから、道明寺さんを前にこうしてお話をしています。私はあなたと付き合うにあたってこちらの会社の情報が欲しい、知りたいといった思いで付き合おうとしているのではないということをお伝えしたかったんです。勿論、今すぐに返事が欲しいという訳ではありません。それに付き合って欲しいと言いましたが、まずお友達からで結構です。私のことを知って欲しい。そう考えています」
新堂巧は、おしつけるような言い方ではないが、さりげなく、けれど語尾を強めてはっきりと言う。そしてこの世の一番の望みは、女の黒い大きな瞳の中に吸い込まれることだとでもいうようだ。
今、司の前で自分の思いを述べる新堂は、恋をする男。
そしてその態度は今まで司の周りの男たちにはなかった態度。
いたく真剣で恋におちた男というのは、ひと前でも平気でこうした行動を取ることが出来るのかと知った。
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H*様
おはようございます^^
ライバル出現(笑)
司、自分の気持ちに気付くのか?
気付いて頂かなくては困ります!(笑)
更新ですが、師走ということで、難しい時もあると思いますが、また覗いてみて下さいませ。
拍手コメント有難うございました^^
おはようございます^^
ライバル出現(笑)
司、自分の気持ちに気付くのか?
気付いて頂かなくては困ります!(笑)
更新ですが、師走ということで、難しい時もあると思いますが、また覗いてみて下さいませ。
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2017.12.03 21:46 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
調印式に現れた新堂巧。もちろん、つくしに会いたいからですね?(笑)
堂々としたその態度はあっぱれですね?(笑)
そして、恋をしたことがない男は、その様子が眩しく見えた!(≧▽≦)
そうです!司。そんな悠長なことを考えている場合ではありません!
今まで真剣に恋をしたことがない男には、分からないんですね?
気になる癖に、それが恋だとは分からない。気づかない。
自分の気持ちを早く自覚して欲しいものです(笑)
え?3分で買えた?
例年はそうではないんですよね?今年はどうしたんでしょうか?
確かに今までと余りにも異なった状況では、何かあったのか?と思いますよね?
でも無事に任務完了でよかったですね?^^
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
調印式に現れた新堂巧。もちろん、つくしに会いたいからですね?(笑)
堂々としたその態度はあっぱれですね?(笑)
そして、恋をしたことがない男は、その様子が眩しく見えた!(≧▽≦)
そうです!司。そんな悠長なことを考えている場合ではありません!
今まで真剣に恋をしたことがない男には、分からないんですね?
気になる癖に、それが恋だとは分からない。気づかない。
自分の気持ちを早く自覚して欲しいものです(笑)
え?3分で買えた?
例年はそうではないんですよね?今年はどうしたんでしょうか?
確かに今までと余りにも異なった状況では、何かあったのか?と思いますよね?
でも無事に任務完了でよかったですね?^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2017.12.03 21:55 | 編集

さ***ん様
料亭で一目惚れ宣言をした男、新堂巧。
そんな男は、正当な手段で道明寺HDへ乗り込み、つくしに告白!
やりますね、この男。
日本を代表する大手総合化学メーカー菱信興産、専務、新堂巧。←長い!(笑)
そして世界的企業、道明寺HD 副社長、道明寺司!
これを息継ぎなしで言えたらいいことがある!(≧▽≦)
そうかもしれません(笑)
虎と龍とコーヒーにうるさい女(≧▽≦)
そして虎は龍の眩しさにやられている!
いや、本当にやられている場合ではありませんよね?
『しっかりしてくれ副社長!』伝えておきます。
コメント有難うございました^^
料亭で一目惚れ宣言をした男、新堂巧。
そんな男は、正当な手段で道明寺HDへ乗り込み、つくしに告白!
やりますね、この男。
日本を代表する大手総合化学メーカー菱信興産、専務、新堂巧。←長い!(笑)
そして世界的企業、道明寺HD 副社長、道明寺司!
これを息継ぎなしで言えたらいいことがある!(≧▽≦)
そうかもしれません(笑)
虎と龍とコーヒーにうるさい女(≧▽≦)
そして虎は龍の眩しさにやられている!
いや、本当にやられている場合ではありませんよね?
『しっかりしてくれ副社長!』伝えておきます。
コメント有難うございました^^
アカシア
2017.12.03 22:03 | 編集
