指にはめたブリリアントカットのダイヤモンドに反射した光が車のダッシュボードに光のプリズムを映し出していた。
つくしは行き先もわからないまま彼の運転する車の助手席にいた。
思えばなにもかもがあまりにも急だった。
道明寺が私の家族の前でプロポーズをしてすぐに結婚式の予定が組まれた。
以前私に公言していたとおり、ど派手な式をあげると言ってきた。
私は自分が踏み出した第一歩の大きさに戸惑いを覚えていた。
一度踏み出せばもう後戻りは出来ない。
そしてもう中途半端な答えなんて出来ないと思った。
でも彼がそばにいてくれればそれでいい。
彼は物思いにふけるつくしに腕を伸ばしてきた。
力強い手でしっかりとつかまれた指に彼の温もりを感じている。
「ねえ、運転中なのよ」
車のエンジンは回転速度をあげ彼は別の車線へと素早くハンドルを切る。
「心配すんな。俺の運転はF1ドライバーなみだからよ」
だからと言って高速道路での運転にF1ドライバーの技術が必要だとは思わないけど。
それでも彼は模範的なドライバーでつくしを乗せ自らが運転するときは制限速度を超えることはめったにない。
自分の反射神経のよさと車の性能に感謝して馬力のある車をスムーズに走らせ向かった先、
彼は田舎道を曲がり赤や黄色の紅葉が広がる美しい山道をのぼって行った。
車がしばらく坂道をのぼると、ようやく開けた場所が前方に見えて来た。
そしてアスファルトの舗装が途切れ広大な草地が広がる場所へとたどり着いた。
「ここは?」
断崖のうえ、風がそこに生えている丈の長い草を揺らしている。
つくしは秋の陽射しを浴びながら岩に打ち付ける波の音を聞いていた。
「ここに俺達の家を建てようと思ってる」
「ここに?」
つくしは言った。
「ああ、家と言っても別荘だな。俺もおまえも仕事があるからな。都内へ通うにはここは無理だろ?」
彼はそう言うとつくしの手を取り海が臨める場所まで足を踏み入れた。
「世田谷の邸には二人じゃ使い切れないほど部屋がある」
そこから見える景色につくしは息を詰めていた。
海は秋の陽を受けてきらきらと輝いて見えた。
そして目を伏せると岩にあたっては砕ける波の音と、頬をなぞる風を感じていた。
「俺はあんなだだっ広い家じゃなくて、おまえと二人で身体を寄せ合って過ごせるような家が欲しい」
彼は言った。
「いいわね」
つくしは目を伏せたまま答えた。
「身体を寄せ合うって言うのは色んな意味があるけどな」
つくしはその言葉の意味を考えてみた。
「おまえ約束したよな?」
そう言われどの約束のことを言っているのかと考えた。
「なにを?」
つくしは目を開くと彼の顔を仰ぎ見た。
「俺の指輪をはめたら一週間ぶっ通しでベッドで過ごすってことだ」
つくしの黒い瞳が大きく見開かれた。
「まさか、あれって本気だったの?」
つくしは探るような眼差しで彼を見上げている。
「一週間無制限のセックス。いつ何時であろうと、どんな方法でも。・・・お、そうだな別にベッドじゃなくてもいいよな?」
つくしはちょっと待ってよと言う仕草を見せる。
「ど、どんな場所でもってこと・・?」
その声はまるで消え入るような声だった。
「あ?こんな大事なことで嘘なんかついてられっかよ!」
彼の口調はいつもと変わらなかったが、そこには油断ならない好奇心が浮かんでいる。
つくしは正直なところを言えば道明寺とセックスすると、くたくたになる。
彼はまるで欲望を制御すると言うことを知らないようだった。
そしてこれ以上に正しいことは無いとばかり毎晩だ。
つくしが手の届く範囲にいる限り我慢が出来ないと言うふうに襲いかかってくる。
そして今やつくしも彼の行動を止めるなんてことは出来なかった。
彼女がどんな行動をとろうと、結果は目に見えていたから。
人は恋人の匂いに反応するらしい。
別れて何年たとうが相手の匂いを嗅げば反応するらしい。
つくしは確かにそれは言えると思っていた。
彼と再会し懐かしい香りを感じたとき、なんとも言えない感情がよみがえったから。
きっと道明寺も同じなんだろうと思った。
だけどパブロフの犬じゃあるまいし私の匂いがするからと言っていちいち反応されたら身体が持たない!
あ、道明寺って犬だった?
彼はにやりと微笑むと手を差し出した。
つくしはいつしか彼の腕の中に抱き寄せられていた。
そして彼女が癖のある黒い髪を引き寄せると彼の黒い瞳が見開かれた。
つくしはその瞳を見つめながら思った。
結局支配権はどちらが握ろうと結果は同じだったかもしれないと。
彼はつくしの視線をとらえたまま愛してるとひと言だけ言った。
「わたしも愛してる」とつくしもささやくとそのまま彼を引き寄せ唇を重ねていた。
そしてそのキスはかつての少女が夢見たようなキスではなかった。
それは女が男に自分の欲望を伝えるキスだった。
あなたが欲しいと・・・・
完

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応援有難うございます。
「キスミーエンジェル」にお付き合い頂き有難うございました。
本日で完結となります。
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そしてもう中途半端な答えなんて出来ないと思った。
でも彼がそばにいてくれればそれでいい。
彼は物思いにふけるつくしに腕を伸ばしてきた。
力強い手でしっかりとつかまれた指に彼の温もりを感じている。
「ねえ、運転中なのよ」
車のエンジンは回転速度をあげ彼は別の車線へと素早くハンドルを切る。
「心配すんな。俺の運転はF1ドライバーなみだからよ」
だからと言って高速道路での運転にF1ドライバーの技術が必要だとは思わないけど。
それでも彼は模範的なドライバーでつくしを乗せ自らが運転するときは制限速度を超えることはめったにない。
自分の反射神経のよさと車の性能に感謝して馬力のある車をスムーズに走らせ向かった先、
彼は田舎道を曲がり赤や黄色の紅葉が広がる美しい山道をのぼって行った。
車がしばらく坂道をのぼると、ようやく開けた場所が前方に見えて来た。
そしてアスファルトの舗装が途切れ広大な草地が広がる場所へとたどり着いた。
「ここは?」
断崖のうえ、風がそこに生えている丈の長い草を揺らしている。
つくしは秋の陽射しを浴びながら岩に打ち付ける波の音を聞いていた。
「ここに俺達の家を建てようと思ってる」
「ここに?」
つくしは言った。
「ああ、家と言っても別荘だな。俺もおまえも仕事があるからな。都内へ通うにはここは無理だろ?」
彼はそう言うとつくしの手を取り海が臨める場所まで足を踏み入れた。
「世田谷の邸には二人じゃ使い切れないほど部屋がある」
そこから見える景色につくしは息を詰めていた。
海は秋の陽を受けてきらきらと輝いて見えた。
そして目を伏せると岩にあたっては砕ける波の音と、頬をなぞる風を感じていた。
「俺はあんなだだっ広い家じゃなくて、おまえと二人で身体を寄せ合って過ごせるような家が欲しい」
彼は言った。
「いいわね」
つくしは目を伏せたまま答えた。
「身体を寄せ合うって言うのは色んな意味があるけどな」
つくしはその言葉の意味を考えてみた。
「おまえ約束したよな?」
そう言われどの約束のことを言っているのかと考えた。
「なにを?」
つくしは目を開くと彼の顔を仰ぎ見た。
「俺の指輪をはめたら一週間ぶっ通しでベッドで過ごすってことだ」
つくしの黒い瞳が大きく見開かれた。
「まさか、あれって本気だったの?」
つくしは探るような眼差しで彼を見上げている。
「一週間無制限のセックス。いつ何時であろうと、どんな方法でも。・・・お、そうだな別にベッドじゃなくてもいいよな?」
つくしはちょっと待ってよと言う仕草を見せる。
「ど、どんな場所でもってこと・・?」
その声はまるで消え入るような声だった。
「あ?こんな大事なことで嘘なんかついてられっかよ!」
彼の口調はいつもと変わらなかったが、そこには油断ならない好奇心が浮かんでいる。
つくしは正直なところを言えば道明寺とセックスすると、くたくたになる。
彼はまるで欲望を制御すると言うことを知らないようだった。
そしてこれ以上に正しいことは無いとばかり毎晩だ。
つくしが手の届く範囲にいる限り我慢が出来ないと言うふうに襲いかかってくる。
そして今やつくしも彼の行動を止めるなんてことは出来なかった。
彼女がどんな行動をとろうと、結果は目に見えていたから。
人は恋人の匂いに反応するらしい。
別れて何年たとうが相手の匂いを嗅げば反応するらしい。
つくしは確かにそれは言えると思っていた。
彼と再会し懐かしい香りを感じたとき、なんとも言えない感情がよみがえったから。
きっと道明寺も同じなんだろうと思った。
だけどパブロフの犬じゃあるまいし私の匂いがするからと言っていちいち反応されたら身体が持たない!
あ、道明寺って犬だった?
彼はにやりと微笑むと手を差し出した。
つくしはいつしか彼の腕の中に抱き寄せられていた。
そして彼女が癖のある黒い髪を引き寄せると彼の黒い瞳が見開かれた。
つくしはその瞳を見つめながら思った。
結局支配権はどちらが握ろうと結果は同じだったかもしれないと。
彼はつくしの視線をとらえたまま愛してるとひと言だけ言った。
「わたしも愛してる」とつくしもささやくとそのまま彼を引き寄せ唇を重ねていた。
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クリ****ーデン様
はじめまして。
コメント有難うございます。
こちらこそ読んで頂いたうえ、ご丁寧なご感想をお寄せ頂き有難うございました。
少し大人になった二人でキャラが変わってしまったかもしれませんが
こんな司がいてもいいかなと・・・。
魅力的に感じて頂けてよかったです。
また近日中に新しいお話を書きたいと思っておりますので
覗いてみて下さいませ。
はじめまして。
コメント有難うございます。
こちらこそ読んで頂いたうえ、ご丁寧なご感想をお寄せ頂き有難うございました。
少し大人になった二人でキャラが変わってしまったかもしれませんが
こんな司がいてもいいかなと・・・。
魅力的に感じて頂けてよかったです。
また近日中に新しいお話を書きたいと思っておりますので
覗いてみて下さいませ。
アカシア
2015.10.12 23:07 | 編集

あーちゃん様
拍手コメント有難うございます。
早朝からお読み頂き有難うございました。
幸せな気持ちで終わって頂けてよかったです。
近日中に新しお話をと思っていますのでまた5時に
お目覚めでしたら覗いて見て下さいね。
拍手コメント有難うございます。
早朝からお読み頂き有難うございました。
幸せな気持ちで終わって頂けてよかったです。
近日中に新しお話をと思っていますのでまた5時に
お目覚めでしたら覗いて見て下さいね。
アカシア
2015.10.12 23:14 | 編集

う*ちゃん様
ご、ごめんなさい。
終わってしまいました。
新作書きますので許して・・・
笑い事ではなく大問題?
そんな大袈裟な(笑)
でも楽しんで頂けるかどうか、ちょっと心配です。
ご、ごめんなさい。
終わってしまいました。
新作書きますので許して・・・
笑い事ではなく大問題?
そんな大袈裟な(笑)
でも楽しんで頂けるかどうか、ちょっと心配です。
アカシア
2015.10.12 23:21 | 編集

ひ**く様
はじめまして。
ご要望の件ですが、わたくしの勉強不足でご要望頂いた
表示方法に変更出来るのかどうか不明ですので
対処ができるようでしたら、そのようにしたいと思います。
が、大変申し訳ございませんが変更出来ていなければ
対処が出来なかったと言うことでご理解を頂けたらと思います。
ご指摘の件、わたくしも確かに不便に感じておりました。
ですので勉強したいと思います。
ご不便をおかけ致しますがどうぞご理解の程、宜しくお願い致します。
お申し出有難うございました。
はじめまして。
ご要望の件ですが、わたくしの勉強不足でご要望頂いた
表示方法に変更出来るのかどうか不明ですので
対処ができるようでしたら、そのようにしたいと思います。
が、大変申し訳ございませんが変更出来ていなければ
対処が出来なかったと言うことでご理解を頂けたらと思います。
ご指摘の件、わたくしも確かに不便に感じておりました。
ですので勉強したいと思います。
ご不便をおかけ致しますがどうぞご理解の程、宜しくお願い致します。
お申し出有難うございました。
アカシア
2015.10.12 23:40 | 編集

た*き様
いつもコメントをお寄せ頂き有難うございます。
毎朝5時に!有難うございました。
見ました!歌唱力のある彼女の伸びのある歌声であの歌詞!
た*き様の書いて下さった歌詞の部分も素敵です。
つくしちゃんの思いがそのままですね。
その後の「いい男になってね 時間をかけて」
「いい男になってね 私の隣で」
この部分もぐっと来ますね。
このイメージを次回作につなげていきたいと思います。
この歌、とても参考になりました。有難うございました。
いつもコメントをお寄せ頂き有難うございます。
毎朝5時に!有難うございました。
見ました!歌唱力のある彼女の伸びのある歌声であの歌詞!
た*き様の書いて下さった歌詞の部分も素敵です。
つくしちゃんの思いがそのままですね。
その後の「いい男になってね 時間をかけて」
「いい男になってね 私の隣で」
この部分もぐっと来ますね。
このイメージを次回作につなげていきたいと思います。
この歌、とても参考になりました。有難うございました。
アカシア
2015.10.13 00:06 | 編集

こ*子様
うわーん(´Д⊂ヽ コメント有難うございました!
次回作も楽しみだなんて勿体ない言葉を有難うございます。
こんな拙家でもご訪問頂ける方がいらっしゃるのが有難いくらいです。
わたくしもこ*子様にエールとご挨拶をお送り致します。
益々のご活躍を楽しみにしております。
ダイナミックでアグレッシブな司くんをお願い致します!
いちファンより(笑)←?
うわーん(´Д⊂ヽ コメント有難うございました!
次回作も楽しみだなんて勿体ない言葉を有難うございます。
こんな拙家でもご訪問頂ける方がいらっしゃるのが有難いくらいです。
わたくしもこ*子様にエールとご挨拶をお送り致します。
益々のご活躍を楽しみにしております。
ダイナミックでアグレッシブな司くんをお願い致します!
いちファンより(笑)←?
アカシア
2015.10.13 00:23 | 編集

yu**y**i様
初めまして。
労いのコメントを有難うございます。
ご堪能頂き有難うございました。
次回作ですね?
近日公開予定ですのでまた覗いて見て下さいね。
きっとまた大人テイストです(笑)
初めまして。
労いのコメントを有難うございます。
ご堪能頂き有難うございました。
次回作ですね?
近日公開予定ですのでまた覗いて見て下さいね。
きっとまた大人テイストです(笑)
アカシア
2015.10.13 00:30 | 編集

このコメントは管理人のみ閲覧できます

た*き様
再び見てきました。二番の歌詞も素敵ですね。
この歌が使用されたCMなんとなく記憶にあります。
宝飾品の方は23時台のCM枠で見たような記憶がありますが・・?
F4の中の派手な二人のどちらかにピッタリとのご意見に賛同します。
ええ、そうですね。1小節目は総二郎のことみたいですね(笑)
この曲はバブル時代のシュチュエーションを描いてみせる曲ですね。
久しぶりに彼女の歌を聴くチャンスを有難うございました。
再び見てきました。二番の歌詞も素敵ですね。
この歌が使用されたCMなんとなく記憶にあります。
宝飾品の方は23時台のCM枠で見たような記憶がありますが・・?
F4の中の派手な二人のどちらかにピッタリとのご意見に賛同します。
ええ、そうですね。1小節目は総二郎のことみたいですね(笑)
この曲はバブル時代のシュチュエーションを描いてみせる曲ですね。
久しぶりに彼女の歌を聴くチャンスを有難うございました。
アカシア
2015.10.17 23:44 | 編集

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よ**ま様
はじめまして^^
書き始めて間もない頃のお話に感動して頂けたなんて、嬉しいです。
どうもありがとうございますm(__)m
なんだかまとまりのない文章でいつか加筆修正したいくらいなんですよ・・(笑)
こんな感じの拙宅ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
コメント有難うございました(^^)
はじめまして^^
書き始めて間もない頃のお話に感動して頂けたなんて、嬉しいです。
どうもありがとうございますm(__)m
なんだかまとまりのない文章でいつか加筆修正したいくらいなんですよ・・(笑)
こんな感じの拙宅ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2016.06.13 23:46 | 編集

マ*ナ様
再びありがとうございます。
書き始めて間もない駄作でございます。
もう恥ずかしくて読めません(笑)
加筆修正したいお話です。そんなお話にこうしてコメントを下さって大変ありがとうございます(低頭)
拍手コメント有難うございました^^
再びありがとうございます。
書き始めて間もない駄作でございます。
もう恥ずかしくて読めません(笑)
加筆修正したいお話です。そんなお話にこうしてコメントを下さって大変ありがとうございます(低頭)
拍手コメント有難うございました^^
アカシア
2016.11.08 23:21 | 編集
