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2017
11.08

恋におちる確率 1

日本を代表する会社、いや世界的企業といった会社がある。
世界68か国・地域に192の拠点を持ち、資源開発、インフラ事業、金融事業、また機械、金属、化学といった分野での輸出入の取引を展開する会社。
そんな会社の副社長は、午前中の退屈な会議を終えると早々に執務室に足を向けた。

2年前に建て替わったこのビルも、この会社も彼の所有物であり、最上階のフロアにいる全ての人間が彼を見れば、直立不動の姿勢で挨拶をする。
そんな男は、視線が合えば長い睫毛に囲まれた漆黒の瞳で射すくめるように見るが、顔のパーツの配置もバランスも完璧な左右対称の美しさは、まさに神の美の采配と言える。
そして、そこにゴージャスとセクシーという言葉が加わるのだから、神はそこいらの男へ配分する美はなかったはずで、不公平としか言いようがないが、男と目が合った人間は伸びた背筋が一層伸びる。

そして人並み外れた高い身長とスタイルを持ち、歩く姿は颯爽としており、使い古された言葉で言えばモデル並、いやモデル以上の美貌を持つと言われ、芸能人なら女性週刊誌によく見られる『抱かれたい男』の上位に入る男とまで言われていた。そして当然だが、同年代の男性の中に彼以上の男を探すことは難しいと言われていた。

決して着飾るといった訳ではないが、身に纏うスーツが高級なのは当たり前なのだが、ネクタイも腕時計も一流のものが彼に似合うのは当然であり、まさに生まれた時からそういったものを身に付けていたといってもおかしくはない男。靴はイタリア製のハンドメイドであり、踵が減ることはないと言われる。そして隠された身体には、程よく筋肉がついているのが分る。

まさに見る者はうっとりといった眼差しを向ける男。
だがそんな男は笑わない。形のいい唇を持つ男だが、その唇が笑った形を作ったところを見た事がないと言われていた。
事実、形のいい眉を吊り上げることはあっても、口元が綻ぶところは見たことがない。
だがもしそんな姿をカメラに収めることが出来るなら、その写真は間違いなく高値が付くはずだ。
しかし、彼は写真を撮られることを嫌う。その為新聞に載る写真といったものは、口元を硬く引き結んだものばかりだった。


彼は笑わない男。
けれど、彼がその気になって微笑めば、棺桶に横たわった女性も飛び起きて来るのではないかと言われている。だが思いがけず目と目が合ったとしても、ひたと相手を見据えるだけで感情が動かされることはない。

そんな男は、このビルが建て替わった2年前NYから帰国した。
初めの頃、女性の秘書が帰国した男の目に止まろうとしたが、何も起きなかった。
そしてその女性は、昼間から夢想に耽るといった理由で別の部署に異動になり、彼の秘書は少し遅れてNYから来た銀縁眼鏡の男に落ち着いた。



秘書の男は、一緒に乗り込んだエレベーターの中、階数ボタンの前に立ち、一番上を押すと、じっと前を見つめていた。
NY時代から長年仕えた自分の上司は、頭のいい男で教養も学歴も家柄も申し分のないのだが笑わない。

少しは笑えばいいものをと思うのだが、口角がほほ笑みの形に上がることを見ることはなかった。だがそれは少年時代からそうであったことを思えば、それも仕方がないのかと思う。
しかし、数少ない笑った顔の中、唇から覗いた歯の並びは綺麗なアーチを描いていた。

そして欧米では美しい歯はステイタスシンボルのひとつだが、その歯は不自然さの目立つ白さといった訳ではない。
開いた口から覗く白い歯は、完璧な噛み合わせと美しさを持ち、男の切れ長の瞳が鋭い刃物のようだというのなら、その歯はその刃物と双璧をなすやはり切れ味の鋭い刃物。
そしてその歯になら咀嚼され食い殺されてもいいと思う女性も多い。だからこそ、その歯の美しさが感じられる微笑みを見たいと思うのだが、何しろひと前で笑うことがなく、眉を動かしただけで反応が掴めないことさえある。

秘書は少年時代の男を知っているが、あの頃も笑うことがなかったと記憶していた。
それは、家庭環境といったものがそうさせたのだろうと思うが、あの頃の男は自ら進んで虚無の世界に身を置き、完璧と言われた手で拳を作り、誰彼構わず殴り倒していたことがあった。


そしてそんな男に恋人はいない。
だからといって女と付き合ったことがない訳ではない。ただ、仕事以上に夢中になれる女性がいないだけだ。
そして世間は、彼の女性に対する基準といったものが厳しいからだと思っている。
それならそのレベルがどれくらいのものなのか。
それは2年前、NYを去るとき別れたと言われる女性を基準に考えれば分るはずだ。

モデルのように美しい男に寄り添うのは、やはりモデルのような美人。
だがモデルではない。どこかの企業のご令嬢。
そして頭のいい男はその女性と結婚することはなかった。それは女に縛られることがまっぴらだからだ。そして彼は、男なら誰もが必要とする範囲以上の付き合いを求められると別れを告げる。
だがそれは、付き合いを始める段階で女性も承知していたはず。しかし付き合いを始めるとどうしても彼の魅力に囚われてしまう。
そして出来ることなら、彼の吐き出した息でもいいから持ち帰りたいと思う。

そんな危うい思いを女にさせる魅力を持つと言われる男。
だが女に無関心な視線さえ投げかけることがない男。
彼の名前は道明寺司。道明寺ホールディングス副社長。35歳。

大きな背中と広い肩を持つ男は、最上階でエレベーターのドアが開くと、癖のある前髪をかきあげた。





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新連載を始めましたので、よろしければお付き合い下さいませ。
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コメント
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dot 2017.11.08 06:42 | 編集
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dot 2017.11.08 10:08 | 編集
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dot 2017.11.08 12:21 | 編集
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dot 2017.11.08 16:50 | 編集
司×**OVE様
おはようございます^^
新連載始めました(笑)
え~どんな司か。
徐々に明らかになればと思います。
色気のある司でしたか?(笑)嬉しいコメントを有難うございます。
大人ですからね。カッコイイ男でいて欲しいと思いますが、果たして?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:21 | 編集
m様
楽しんで頂けるように頑張ります‼
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:23 | 編集
ふぁ***~んママ様
おはようございます^^
相手が司なら、恋に落ちる確率100%なんですね?
ええ、アカシアも坊ちゃんと恋してみたいです。
あ、でももう遅い?(笑)
そうですよね~。男の人の笑い皺って素敵ですよね?
司の笑顔を引き出すのは誰?(笑)
もちろんあの人です!
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:25 | 編集
とん**コーン様
はい。つくしとまだ出会ってない設定です。
大人の坊ちゃん。恋におちて下さい!
相手は勿論あの人です。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:27 | 編集
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dot 2017.11.08 22:28 | 編集
s**p様
坊ちゃんのかっこよさの為に何文字書いたか?(笑)
え~分かりません(笑)ただひたすら大人のいい男を表現しようと思いました。
そしてこんな寸分の隙もない司が恋におちる。その相手はもちろんあの人です。
いいな、羨ましい・・・。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:30 | 編集
H*様
こんにちは^^
35歳、男盛りの司。
恋におちる確率は何%でしょう。
でも坊ちゃん、運命の人は決まっています。
そうです、あの人です。あの人と恋におちて下さいね^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:35 | 編集
か**り様
え?アカシアの顔が緩んでる?(笑)
いや。そんなことは無いと思いますが、傍から見れば緩んでいるかもしれませんね(笑)
そして坊ちゃん、いい男なんですから、素敵な恋におちて下さい!(笑)
前作がシリアステイストでしたので、今回は楽しくなればと思っています。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:38 | 編集
vi**o様
どんな展開で、どんな風に二人が恋におちるのか。
その確率はいったいどれ位なんでしょうねぇ(笑)
楽しんでいただけるように頑張ります!
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:41 | 編集
チ**ム様
こんばんは^^お久ぶりです。
いつもお読み頂き、有難うございます。
さて、カッコいい大人の男。それなりの人生を歩んで来ました。
しかし、最終的に恋におちる相手はあの人です。
あの人以外と恋におちては困ります(笑)
そして、あの人も司以外の男性と恋におちては困ります。
運命は決まってますからねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.11.08 22:50 | 編集
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