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2015
10.10

キスミーエンジェル40

俺は牧野にロマンティックなプロポーズをする方法を必死で考えた。
二人は恋人同士になったが、肝心の指輪がまだ渡せてなかった。
ロマンティックなことを考えるのは得意分野ではなかった。

牧野のことだ、指輪は大きければ大きい方がいいと言う俺自身の哲学は理解しないだろう。
きっと控えめなものがいいと言うに決まってる。
俺の好みから言えば未来の妻にはめてやる指輪は大仰にしたいくらいだ。
だが身に付けるのは牧野だからあいつの意志を尊重してやらないわけにはいかない。
指輪を渡されてあいつは涙ぐむだろうか?




彼はポケットの中の緑がかったような明るい青色の小さな箱を指で触った。
彼女のためにオーダーしニューヨークから取り寄せた。
そしてテーブル越しに牧野を見つめながら思った。

こいつが俺の人生にとってどれだけ大切な存在かと気づいた瞬間から俺の人生は変わった。
牧野と過ごしていると人生は仕事ではなく暮らしになった。

そして俺はこいつの家族が好きになった。
俺と牧野はマンションでこいつの家族と食事をしていた。
そこには彼が子供の頃に憧れた強い絆で結ばれた家族の姿があった。
決して豊かとは言えない経済状況のなか、子供たちのためには努力を惜しまなかった両親。
いい歳になっても姉と弟と言う関係は幼い頃に築かれた力関係をそのまま反映しているようでやたらと世話を妬きたがる牧野。弟は牧野にとってペットのような存在なのかもしれない。
牧野の家族とこうして会ってその絆の深さとどれだけ家族を大切にしているかを目にした俺はこいつを必ず幸せにしてやろうと心に決めた。

彼には珍しく緊張した面持ちで言った。
「お父さん、お母さん、弟・・・」
「進です。道明寺さん」
彼は頷くとひと呼吸した。
これから俺とって人生で一番大事な時間だ。
過去に色々とあっただけに牧野の家族が俺の話を聞いて了承してくれるかどうか不安だった。

「今日はこうして牧野の、いえ、つくしさんのご家族にお集まりいただいて感謝しています。
そして昔、私の母がみなさんに大変ご無礼な振る舞いをしたことを許して頂いて感謝しています」
彼は真剣な面持ちで言った。
「私は不運にもつくしさんのご家族のような家庭には恵まれませんでした。彼女がこうして素敵な女性へと成長できたのもご両親のおかげです。さぞ誇らしいお気持ちでしょう」
彼はつくしの方を見ると話を続けた。
「牧野、おまえと再会してからもう8ヶ月がたった。あのときから俺の人生はまた色づきはじめた。本当は8年前に言いたかったけど、あのときは何も出来ないままで俺がニューヨークに行っちまったからな・・・」
彼はつくしから視線を外すと彼女の両親へと目を向けた。
「お父さん、お母さん、つくしさんと結婚することをお許し下さい」


驚きに沈黙の時が流れた。
テーブルを囲んでいたつくしの家族は身動きもしないでいた。


「いま、なんて・・・?」
「この子と結婚ですか?」
「お姉ちゃんと・・?」
つくしの家族はゆっくりと我に戻ると三人三様に声をあげていた。


一番最初に口を開いていた母親が言った。
「この子・・そんなことはひと言も・・・」
つくしの顔は真っ赤になっていた。
「パパ、ママ・・ごめん・・なかなか言い出せなくて・・」
つくしは鼻の奥がツンとして涙がこみ上げてくるのを感じた。

そのとき、つくしの父親が口を開いた。
「いいんだよ、つくし。色々と考えることもあったんだろ?」
つくしの父親は自責の念に駆られたように話した。
「世間並の生活をさせてやれず、つくしには色々と苦労をさせたね。道明寺さんとのことだって・・・うちがもっとちゃんとした家庭だったらあのとき、あんなふうに・・」
「パパ、いいの。あの時はああなる運命だったのよ?」
つくしは陽気な口調で言った。
「でもね、今はこうして彼と一緒にいれるだけで幸せなんだから」
頬を染めたままでつくしはほほ笑みを浮かべた。


彼女の父親は彼をじっと見つめながら言った。
「道明寺さん、どうかつくしのことをよろしくお願いいたします」
彼は彼女の父親の言葉の意味を瞬時に理解していた。

「こちらこそよろしくお願いいたします。お父さん、お母さん、進くん」
彼は力をこめてそう答えるとつくしの家族にむかって親しげな笑みを浮かべた。

今度こそ、もうあとがないのよね?
つくしはそう思いながら彼を見つめていた。
「ねえ道明寺、わたしに指輪をはめてくれるのよね?」
「ああ」
そう言って彼はポケットに手を入れると彼女の前に小さな箱を置いた。
「いつも持ち歩いていた」
彼は照れくさそうにほほ笑んだ。
「はめてくれないの?」
彼はつくしのその言葉を聞くと嬉しそうに微笑み彼女の左手を取ると自分の大きな手で包みこんでいた。
そしてつくしは彼の手に自分の右手を重ねていた。













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コメント
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dot 2015.10.10 05:47 | 編集
う*ちゃん様
コメント有難うございます。
やっとここまできたっ?(笑)
ここまでお付き合いを頂き有難うございます。
実は・・・。
い、今は何も言えませんがまたお待ちしています!
アカシアdot 2015.10.10 23:10 | 編集
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