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2017
08.19

時の撚り糸 23

雨に濡れながら大人になった夜があった。
あの日から随分と時間が経ち、二人は別れたがこうして再会した。
時が移ろいはしたが、心は移ろうことはなかった。
そしてほんの何気ない晴れた午後、海辺で思い出された彼女にとっては辛い過去。
だがそれは、司にとっても辛い知らせだった。



嫌いだから別れた二人ではない。好きだからこそ別れを選んだ。
つくしは司の将来のため、そして自分自身が感じる辛さから別れを決めた。
だが司は、つくしが法律上妻のいる自分と付き合い続けることへ罪の意識を感じ、深く心を痛めるといった犠牲を伴わせながらも、彼女と離れることが出来ずにいた。道徳心の強い彼女に、過ぎた要求をしたことは分かっていた。だから、4年で終止符を打つことに同意した。しかし本音を言えば、別れたくはなかった。だがそれは司の身勝手だと言われればそれまでだ。

しかし今、つくしは司の腕の中に確かに存在している。
髪に触れ、頬に触れ、そして唇にも触れた。
9年間会う事もなければ、触れることもなかった恋人は、哀しみを抱え司の元へ戻って来た。

ほっそりとした身体は、二人が分け与えた命を宿したが、産まれることがなかったと聞き、今でも哀しみに暮れるつくしに、激しい愛おしさを感じた司は決意を新たにした。
もう一度彼女とやり直したい。そして幸せにしてやりたい。


今、二人の間にあるのは、失ってしまった命に対しての想い。
だが二人が同じ哀しみを抱えていても、素直な夜が二人を連れて行くべき場所へと運んでくれるはずだ。そして、若かった二人が持っていた輝きを、遠ざかってしまったあの頃の光りを呼び戻すことが出来るはずだ。



腕に抱き上げられたつくしは驚いたがすぐに司の肩へ縋りついた。
それは、はじめての時を彷彿とさせた。NYで大学生活を送りながら社業を学ぶ司を訪ね、はじめて結ばれた二人。1万キロ以上の距離と13時間の時を超え、やっと会えた二人が相手の全てが欲しいと願うのは当然だと躊躇うことなく結ばれた。あの時、まだ若かった二人は情熱が抑えられなくなり、一晩中離れることなく抱き合っていた。
1歳の年齢差に関係なく対等だった二人。恋の習熟度合いは、共に同じで二人ともはじめてだった。そしてその日を境に、未熟だと言われた二人は大人へと成長した。


あれから随分と経ったが、まるであの時と同じで司はつくしを抱き上げ、ベッドへ寝かせた。
だがあの頃と違うこともある。あの時の二人はただ相手が傍にいて欲しくて、相手を自分の傍に引き寄せたくて離したくないといった思いが強かった。しかし今の司の表情に感じられるのは切ない想い。そしてその切なさとは、子供を失ってしまったつくしが、心にぽっかりと開いた穴を、誰の支えもなく、ひとりで自分の精神を立て直す方法を考えたことにある。
どうやってその哀しみを克服しようとしたのか。強引に心の隙間を埋めるようなことをしたのか。だが彼女は他の男と付き合わずにいた。その言葉の意味を考えたとき、心が変わることなく、ずっと自分を想っていた。そう想うことは、間違いではないはずだ。



司は、ベッドに乗り上げつくしの揃えられた脚を跨ぎ、両手を顔の脇へ着き、覆いかぶさるようにつくしを見た。

「...嫌なら言ってくれ」

今の司はただつくしを抱きたいといった想いではない。
だが自分からこれから彼女に対し行いたい行為を止めることは出来そうにない。しかし、嫌だと言えば止めなければならない。だが返された言葉は肯定的な言葉。

「嫌じゃない....」

つくしも、司の意図は分かっていた。
昔と同じように愛されたいといった想いが湧き上がり、自分の心に嘘をつくことは出来ないと感じていた。子供を失ったとき、愛する人が傍にいてくれたらといった想いはあった。
そして、大きな掌の温もりを感じたい。失ってしまった小さな鼓動の代わりに、力強い鼓動に守られたいと切望した。

「俺たち、なんで離れちまったんだ?あんなに愛し合ってたのにな」

離れたくはなかった。だが離れなければならなかった。
あの時、そう決断したのだ。
だがこれから二人は、本当ならあの時そうすべきだったことをしようというのだ。
別れる前の4年間、二人の関係は間違っている。こんなことしちゃいけないといった想いが彼女の心の片隅を占めていた。それでも別れることが出来ずにいた二人。
過去を変えることは出来ないが、記憶を塗り替えることなら出来るはずだ。







司は背中に手を回し身体を持ち上げ、背中のファスナーを下ろし、ワンピースを頭から脱がせた。下着姿になったつくしは、自分で脱ごうとしたが、司の手に阻まれた。
そして、司の手は大切な贈り物を開くようにブラジャーとパンティを取り去ると、床に落ちたワンピースの上に落とし、自らの服を脱ぎ、ベッドの上へと乗り上げた。

そして、つくしのきっちりと閉じられた腿を割り、その間にひざまずいた。
昔からそうだったが、つくしを愛するとき、徹底的に愛する男は、いつも時間をかけ、執拗なほど彼女を愛していた。だが9年ぶりに愛し合う行為は、子供を失い哀しむつくしを慈しむための行為だ。しかしそう想いながらも、一糸纏わぬ姿のつくしを前に、反面では彼女を貪欲に求めたい気持ちもあった。実際理性的に愛することなど出来るはずもなく、ましてや論理的に考えるなど出来るはずがない。



「....あんまりじろじろ見ないでくれる?」

司を見上げるつくしの姿は、9年経ってもあの頃のままだ。

「9年ぶりだってのにじろじろ見なくてどうすんだよ?」

ニヤッと笑った口角は不適な笑いを含んでいた。

「だ、だって恥ずかしいわよ・・あたし、もう若くないのよ?あの頃と違うわ」

「違わねぇ。おまえのどこが違う?俺にとっておまえはあの頃と同じだ。逆にどこか変わったことがあるなら教えてくれ」

司にすれば、つくしの身体に変わったところなど無く、白い肌も、細い腰も小さいが形のいい胸もあの頃と変わっていなかった。だがもし子供が生まれていれば、その胸の形も変わったのだろうか。小さな我が子に乳を与える姿を想像するのは簡単だった。その想いが司の中で大きくなると思わず口にしていた。

「なあ、赤ん坊はどっちに似てたんだろうな」

そんなことを言えばつくしの目に涙が滲むのは分かっていたが、思わず口をついて出た言葉。すると、やはりようやく止まったと思っていた涙が零れた。

「いいんだ。泣けばいい。こうして思い出してやることが、供養になるはずだ」

司は、零れた涙を舌先で掬い、唇を重ね押し開け、舌を挿し入れた。
それは軽いキスなどではなく、愛し合う行為の始まり。あの頃、互いの想いが募ればいつもこうして唇を重ねていた。そして一秒でも離れたくないと抱き合った。

だが今ははやる気持ちを抑えなければという思いがあるが、愛情表現が苦手とされていたつくしが、司の肩から首の後ろへと手を回し引き寄せれば、思いは同じだと知った。
昔からそうだったが、最初は躊躇いながら、やがて思いが募れば身体がひとつになる喜びに翻弄されていた。そして濡れた黒曜石の瞳は、司の知らなかった9年間の想いを伝えたがっていた。


司は首から胸へとキスを繰り返しながら、両手で胸のふくらみを包み、真ん中へと寄せた。
そして固く尖った頂きを交互に口に含み、甘噛みし、刺激を与えた。
唇から漏れた声と、のけ反るような身体が喜びを伝え、もっと声を上げさせたいと舌を使い刺激を与え続けた。

「....あっ!」

9年ぶりに聞くその声に思わぬ興奮を感じ、司ははやる気持ちを抑えきれなくなっていた。
声として戻ってくる反応と、目に映る反応は、どちらも二人が愛し合っていた時と同じだ。
そして、欲望はやがて大きな渦となり二人を呑み込んでいくことは分かっていたが、それは二人の間に愛が存在するからだ。愛のないセックスを平気でする人間もいるが、司には考えられないことだ。

「俺は今でもおまえを愛してる。この想いは何度でも言える」

司は平らなお腹に手を当てた。
自分の遺伝子を受けた子供がここにいたのだ。子供を身ごもったとき、この場所が少しずつ膨らんでいく様子につくしは喜んでくれた。そして司の手にすっぽりと収まる形のいい胸も、少しずつ大きくなったはずだ。

司は短く目を閉じ、その様子を思い浮べた。
二人の分身といえる赤ん坊は、二人の血と骨とを合わせ持ち、つくしのお腹の中でその命を成長させようとしていた。司の頭に過るのは、やはり自分が傍にいてやることが出来なかったことだ。だがこれからはずっと傍にいると決めた。


司はつくしの脚の根元の熱く濡れた場所を手で触れ、優しく指を動かした。

「....ん、ああっ..」

何度も指を出し入れし、身悶えする姿を愛で、それからたくましい身体の下に両脚を折り曲げた格好をさせ、男が女を愛する行為の中で一番親密だと言われる口づけを繰り返し、じわじわと懐かしい温もりの中へ身体を埋めていた。そしてその行為に愛してるの言葉を重ね、身体の先端が9年ぶりに感じる愛しい人の中で、最良の時間を長引かせようとしているのを感じていた。

何度も奥深くまで入り込み、二人同時にのぼりつめることを望み、時に込み上げる絶頂感を堪え、つくしの口から泣き声に似た叫び声が上がるまで愛し続けた。そして好きだ。愛してるの言葉を繰り返し、18歳の頃のからすでに倍以上生きた男であっても、おまえを想う気持はあの頃と変わらないと何度も伝えていた。

「...俺はおまえ以外の女は愛せない男だ..おまえ以外の女なんて俺は欲しくねぇ!」

激しく突き上げるたび、硬いものの周りに感じられる収縮はのぼりつめた証拠。
そして、つくしの唇の動きが、司と同じ言葉を繰り返したとき、長い間心の中に溜めていた想いが一気に溢れ出し、それと同時に腰から腹部にかけ溢れ出した9年分の想いを彼女の中に放っていた。

やがて感じられた充足感は、つくしだから感じられるもの。
そんな彼女の小さく開いた唇からありがとう、と呟かれ、規則正しい息が漏れ始めたとき、司は改めてつくしを抱きしめ、その頬に唇を寄せていた。




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コメント
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dot 2017.08.19 09:33 | 編集
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dot 2017.08.20 00:00 | 編集
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dot 2017.08.20 00:17 | 編集
司×**OVE様
おはようございます^^
時は過ぎましたが、再会したことにより、新たな時間がスタートした。そんな夜ですね?(笑)
愛する人と哀しみを分かち合う。とても大切なことだと思います。
さて、ここまではさほど時間もかからずたどり着けたようです。
残りの時間はどうするんでしょうねぇ^^
司のことだから毎晩?(//▽//)と言うより、ずっとベッドで過ごしたいと思うでしょうねぇ(笑)
そして滋は二人の復縁を喜ぶこと間違いないでしょう。

限定モノGET!おめでとうございます!
>1日の仕事を終えたような気分
朝から大変お疲れ様でした!凄い行列だったんでしょうねぇ・・
最近は映画館へ足を運ぶことがなくなりましたが、やはり映画は映画館で見ると迫力がありますね?
今は公開日が待ち遠しくて仕方がないといった心境ですね?^^
またよろしければ、ご感想などお待ちしております。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.08.20 22:09 | 編集
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dot 2017.08.20 22:23 | 編集
pi**mix様
二人、ちゃんと愛し合えました。
良かった(泣)
つくしちゃんはご無沙汰です(笑)え?司?9年間おひとり様だったと思います。
男としての色々はまあ、その、ねぇ(笑)浴室とかで・・・(≧▽≦)
だからつくしちゃん、大変だったと思います(笑)え?何が?

「あんなに愛し合ってたのにな」の「な」ですね?(笑)自問自答してますね?
あれは司の心の声だったのかもしれません。
目覚めたらどんな会話?う~ん・・少々お待ち下さいませ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.08.20 22:37 | 編集
チ**ム様
こんばんは^^
こちらこそ、ご無沙汰しております。
お盆は終わりましたが、夏休みは継続中でしたね(笑)
暑い夏の夜、色々思い出すと言えば・・怪談?(笑)

司とつくしは9年ぶりの愛を確かめ合っているようです。
彼らも色々と思い出していることでしょう。
大人の二人の恋。さて、どちらが大人なんでしょうねぇ(笑)
色々な思いを乗り越え、幸せになって欲しい。それだけを願いたいと思います。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.08.20 22:51 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
9年越しに結ばれた二人。
9年前の哀しみを乗り越え、幸せになって欲しい二人。
この司は御曹司に豹変していなかったと思います‼
カリブベビー?(笑)
>9年分が溜まってる←(≧▽≦)
確かに司なら「俺の9年間分を受け取れ」言いそうです!(笑)
問題は、つくしがその激しさに付いて行くことができるかどうか・・。

そしてマ**チ様、本当です、今日は早いです!(゚Д゚)ノ?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.08.20 23:06 | 編集
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dot 2017.08.21 15:07 | 編集
さと**ん様
「9年ぶりだってのに、じろじろ見なくてどうすんだよ」
え?そこですか?(笑)
しかし、どうしてこんなセリフを吐いたのか不思議です(笑)

はい。命を失った哀しみは、言葉では埋めきれません。
言葉も大切ですが、抱きしめて愛を伝えることも必要です。
愛おしい人は全身全霊で愛するべき。
司はそんな熱い男はずです。
そしてつくしの言った「ありがとう」の言葉。
この言葉の中には沢山の意味が込められていたはずです。
意地を張るのを止めた素直な彼女の気持ちではないでしょうか。
幾つになっても素直が一番です、つくしちゃん^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.08.21 22:49 | 編集
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