「ひとりで出来るから!もうほっといてよ!」
廊下の一番奥の部屋から聞こえてきた大きな声。
つくしに用意された部屋は最上階の特別室だった。
右腕を縫ってから数日たってもつくしはこの部屋にいた。
そう言われた道明寺は一歩さがってつくしが上着の袖に腕を通そうとするのを見ていた。
「ちょっと、な、なに見てんのよ」
その時の俺は牧野の裸を思い出しながら、淫らな妄想に耽っていた。
この前牧野と愛し合った俺は次に愛し合う時にはこいつにしてやりたい事を色々と思いついていた。腕の傷がよくなったらあんなことや、こんなことをして俺が絶頂に達するときはもちろんこいつも一緒だ。
「じろじろ見ないでくれる? それに腕を縫っただけで重病患者じゃあるまいし、なんでこんな・・こんな部屋に・・」
つくしは特別室の一室でソファに腰をおろすととても病院の一室とは思えない贅沢な作りと豪華さに今更ながら目を見張っていた。
道明寺は出て行くどころか自分の支配する世界で満足そうにつくしを見ている。
つくしは選択肢を間違えたと思った。
二者択一を迫られたとき、どちらも選択しないと言う考えが思いもつかなかった。
色んな意味で逆境には耐えられると思っていた私もあの時は傷を負ったばかりで、弱気になっていた。
「ねえ、もうひとりで大丈夫だし、うちに帰るから。それにもう仕事に戻れるから」
つくしは道明寺の親切の押し売りとも言える行為に窒息しそうになっていた。
「おまえ、忘れたのか? 穴に落ちて気を失って腕を縫ったんだぞ?」
きつい口調で言われた。
「ちょっと縫っただけじゃない」
「あほか、10針も縫っといて何がちょっとだ!おまえ女だそ?」
つくしの怪我を心配した道明寺は仕事が終わると真っ先に病室へとやってきては
彼女の世話をやきたがった。
そんな行動は彼には似合わないことだが、毎日のようにやってくる。
つくしの今までの人生でこんなふうに甘やかされたことなんて無かった。
彼女の育った家庭は貧しく、両親はいつも忙しく働いていたから自分のことは自分でしなくてはならないと言う思いが強く、他人に頼ると言うことが出来ないでいる。
そんな環境で育ったつくしにとって道明寺の気持ち悪いほどの優しさがある意味怖かった。
怪我をして弱気になっている自分の気持ちが彼に絡めとられていくように感じられた。
こうして毎日7時になると病室に現れる道明寺と夕食。
外傷患者が何を食べようと関係ないだろうとばかりに病院食ではない食事が運ばれてくる。
病室を出て廊下を歩けばなにか不都合はないかと看護師が飛んでくるし、担当医は私の傷を見てはこの縫合はとても美しいですなど訳の分からない言葉が返ってくる。
まるで海外の高名な医者が超VIP患者に対しておこなうような扱いだ。
道明寺の病院だから彼に関わる人間に対しての気遣いは分かるけど、その凄さに辟易してしまいそうだ。
そしてあいつは私が仕事に戻ると言いうと、あろうことかその事に対して口出しをしてきた。そして言うに事欠いて、俺と結婚するんだから仕事なんてやめろとまで言い出した。
「誰が誰と結婚をするんだか知らないけれど、私はすぐに仕事に戻るつもり」
「おまえはまだ顔色が悪い」
「顔が悪いって言われなくてよかったわ」
つくしはしかめっ面をして彼を見上げた。
そして大きく深呼吸をした。
「・・・・道明寺、前にも言ったけど私は恋もしないし結婚もしない。そして人の命令は受けない。明日にはマンションに戻るから・・色々とありがとう。ご迷惑をおかけしました」
つくしは頭を下げ自分の膝に視線を落とした。
「牧野・・・おまえ妊娠はしてないのか?」
緊張した口調だった。
道明寺のその言葉に沈黙が重く垂れこめる。
つくしは顔をあげ、静に立ち尽くす彼を見つめた。
そしてそう問う彼の目は不思議なくらい優しい目をしていた。
私はその質問に戸惑った。
「・・いいえ。それに色々と検査をしたんだからそんなことは無いって知ってるんでしょ?」
あの時は自分でも気を失ったって聞いてその可能性がないと言えなかった。
「・・それに独身のあんたに子供が出来たなんて知れたら・・・」
ましてや私との間に子供が出来たなんてあんたの母親が知ったらどんな手に出るか・・・
私は彼の口からどんな言葉が返されるのかを待った。
「おまえとの子供なら欲しかったさ」
彼はそう呟くと黙ったまま自分の前にいるつくしの顔を見つめていた。

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廊下の一番奥の部屋から聞こえてきた大きな声。
つくしに用意された部屋は最上階の特別室だった。
右腕を縫ってから数日たってもつくしはこの部屋にいた。
そう言われた道明寺は一歩さがってつくしが上着の袖に腕を通そうとするのを見ていた。
「ちょっと、な、なに見てんのよ」
その時の俺は牧野の裸を思い出しながら、淫らな妄想に耽っていた。
この前牧野と愛し合った俺は次に愛し合う時にはこいつにしてやりたい事を色々と思いついていた。腕の傷がよくなったらあんなことや、こんなことをして俺が絶頂に達するときはもちろんこいつも一緒だ。
「じろじろ見ないでくれる? それに腕を縫っただけで重病患者じゃあるまいし、なんでこんな・・こんな部屋に・・」
つくしは特別室の一室でソファに腰をおろすととても病院の一室とは思えない贅沢な作りと豪華さに今更ながら目を見張っていた。
道明寺は出て行くどころか自分の支配する世界で満足そうにつくしを見ている。
つくしは選択肢を間違えたと思った。
二者択一を迫られたとき、どちらも選択しないと言う考えが思いもつかなかった。
色んな意味で逆境には耐えられると思っていた私もあの時は傷を負ったばかりで、弱気になっていた。
「ねえ、もうひとりで大丈夫だし、うちに帰るから。それにもう仕事に戻れるから」
つくしは道明寺の親切の押し売りとも言える行為に窒息しそうになっていた。
「おまえ、忘れたのか? 穴に落ちて気を失って腕を縫ったんだぞ?」
きつい口調で言われた。
「ちょっと縫っただけじゃない」
「あほか、10針も縫っといて何がちょっとだ!おまえ女だそ?」
つくしの怪我を心配した道明寺は仕事が終わると真っ先に病室へとやってきては
彼女の世話をやきたがった。
そんな行動は彼には似合わないことだが、毎日のようにやってくる。
つくしの今までの人生でこんなふうに甘やかされたことなんて無かった。
彼女の育った家庭は貧しく、両親はいつも忙しく働いていたから自分のことは自分でしなくてはならないと言う思いが強く、他人に頼ると言うことが出来ないでいる。
そんな環境で育ったつくしにとって道明寺の気持ち悪いほどの優しさがある意味怖かった。
怪我をして弱気になっている自分の気持ちが彼に絡めとられていくように感じられた。
こうして毎日7時になると病室に現れる道明寺と夕食。
外傷患者が何を食べようと関係ないだろうとばかりに病院食ではない食事が運ばれてくる。
病室を出て廊下を歩けばなにか不都合はないかと看護師が飛んでくるし、担当医は私の傷を見てはこの縫合はとても美しいですなど訳の分からない言葉が返ってくる。
まるで海外の高名な医者が超VIP患者に対しておこなうような扱いだ。
道明寺の病院だから彼に関わる人間に対しての気遣いは分かるけど、その凄さに辟易してしまいそうだ。
そしてあいつは私が仕事に戻ると言いうと、あろうことかその事に対して口出しをしてきた。そして言うに事欠いて、俺と結婚するんだから仕事なんてやめろとまで言い出した。
「誰が誰と結婚をするんだか知らないけれど、私はすぐに仕事に戻るつもり」
「おまえはまだ顔色が悪い」
「顔が悪いって言われなくてよかったわ」
つくしはしかめっ面をして彼を見上げた。
そして大きく深呼吸をした。
「・・・・道明寺、前にも言ったけど私は恋もしないし結婚もしない。そして人の命令は受けない。明日にはマンションに戻るから・・色々とありがとう。ご迷惑をおかけしました」
つくしは頭を下げ自分の膝に視線を落とした。
「牧野・・・おまえ妊娠はしてないのか?」
緊張した口調だった。
道明寺のその言葉に沈黙が重く垂れこめる。
つくしは顔をあげ、静に立ち尽くす彼を見つめた。
そしてそう問う彼の目は不思議なくらい優しい目をしていた。
私はその質問に戸惑った。
「・・いいえ。それに色々と検査をしたんだからそんなことは無いって知ってるんでしょ?」
あの時は自分でも気を失ったって聞いてその可能性がないと言えなかった。
「・・それに独身のあんたに子供が出来たなんて知れたら・・・」
ましてや私との間に子供が出来たなんてあんたの母親が知ったらどんな手に出るか・・・
私は彼の口からどんな言葉が返されるのかを待った。
「おまえとの子供なら欲しかったさ」
彼はそう呟くと黙ったまま自分の前にいるつくしの顔を見つめていた。

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Comment:2
コメント
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た*き様
楽しみにして頂いて有難うございます!
そしていつもコメントを有難うございます。
はい、2人とも考える余裕がなかったんだと思います。
司には確信犯的なところもあったのかもしれません。
が、そこまで気が回ってなかったと言うところが正直なところでしょうか。
シリアスに走りがちのお話で申し訳ないです。
2人の立ち位置はこんな感じで良いでしょうか?
楽しみにして頂いて有難うございます!
そしていつもコメントを有難うございます。
はい、2人とも考える余裕がなかったんだと思います。
司には確信犯的なところもあったのかもしれません。
が、そこまで気が回ってなかったと言うところが正直なところでしょうか。
シリアスに走りがちのお話で申し訳ないです。
2人の立ち位置はこんな感じで良いでしょうか?
アカシア
2015.10.03 23:29 | 編集
