FC2ブログ
2015
09.30

キスミーエンジェル30

つくしがぼんやりと目を覚ました先は白い天井と白い壁に囲まれ消毒薬の臭いがしていた。

「痛っ・・」
右腕の痛みに気づいて見ると白い包帯が巻かれていた。

その時カーテンで仕切られていた向こう側で耳慣れない女性の声が聞こえて来た。
「牧野さん?気がつきましたか?開けますよ?」
つくしはなんとか身体を起こすと小さな声で答えた。
「・・・・はい、どうぞ」

仕切られていたカーテンが開かれ白衣を着た年配の女性が現れた。
「牧野さん、ご気分はどうですか?」
彼女はやさしく微笑みかけてきた。
「あの、私は・・・?ここは病院ですか?」
「ええ。病院ですよ。牧野さんは3メートルほどの深さの穴に落ちたんですよ。
それでその時に地中から出ていた鉄筋で腕に怪我をされて運ばれてきたんですよ」
「鉄筋ですか?」不思議そうに聞いた。
「ええ、牧野さんが落ちた穴には運悪く以前の建物の古い鉄筋が残っていたとかで
それで腕を切ってしまったようです。古い鉄筋からはかなり錆も出ていたでしょうから外傷後の破傷風予防のワクチンも注射しました。腕の傷の方は・・・数針縫いましたのでしばらくは安静にして下さいね。」
「そうなんですか・・」
つくしの力のない口調に女性医師は説明をつづけている。
「出血がかなりありましたが、傷口はそんなに深くはないので大丈夫、傷痕が残ることは無いと思いますよ」
青ざめていたつくしの顔がより一層血の気を失ってきたようになってくる。
そしてそんな話しを聞いていると急に目の前が暗くなってきた。

「牧野さん、大丈夫ですか?ゆっくり横になって下さい」
つくしはなんとか横になると静かに目を閉じた。
「牧野さん、どなたかご家族の方でお迎えをお願いできる方はいますか?」
女性医師はそんなつくしの様子をみて穏やかに訪ねてきた。
つくしは横になったまま目だけを開けた。
「・・いえ。でも大丈夫ですから」



私は会社の人間がロッカーから持ってきてくれていた洋服に着替えると会計を済ませて帰宅することにした。
作業着の右腕の部分は切り取られていた。
厚みのある生地で作られていた作業着を切り裂くくらいの鉄筋って?
後でそう考えるとぞっとしてきた。
そして会社には迷惑をかけてしまったという思いが残った。


タクシーがマンションの前で止まりつくしはほっと安堵のため息をもらした。
ぎこちない動きで車から降りるとゆっくりとした足取りで建物の中へと入っていった。
エレベーターで5階まであがると部屋の前で左手に持っていた鞄を降ろす。
右手が思うように使えずに左手だけで鍵を取り出すと3度も鍵を落としながらなんとか部屋の中へと入った。
当然ながら部屋は今朝外出した時のままの状態だった。
開け放たれたカーテンの外はきれいな夕焼け空が見える。
縫われたばかりの腕はじんじんとして熱を持っていて痛かった。
まいったな・・・こんな状態じゃすぐには車の運転は無理よね。

でも痛み止めはもらった。
包帯は決して濡らさないように。
そしてこまめに交換すること。
で、2週間後に抜糸か・・・・・


そんな今の私に必要なのは睡眠だ。
もらった痛み止めを水で流し込むと開け放たれていたカーテンを閉めた。
そしてベッドへと横になるとすぐに眠ってしまった。









人気ブログランキングへ

応援有難うございます。
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2015.09.30 09:22 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2015.09.30 20:47 | 編集
た*き様
はい、勿論です。
つくしを放ったらかしになんて出来ないです。
えっ、また明日?←確定されてしまいました。(笑)
了解です。
早朝ですが、こっそり、ひっそり明日も5時です。
心は少年のままなのですが、見た目は大人の男。
そんなアンバランスなところも魅力。
そして彼をそんなふうにさせる事が出来るのは彼女だけではないでしょうか?
世の男性達もいつまでたっても子供っぽいところがあるのではないでしょうか?(笑)
アカシアdot 2015.09.30 23:15 | 編集
Re**o様
はじめまして。
コメント有難うございます。
もうこの時間なので申し上げます。
無いです!(笑)
ここでそのような事態になると、お話しがどんどん長くなりそうで大変です。←アカシアが(笑)
つくしちゃん、現場に出るときは「ご安全に」と復唱していきましょうね。
アカシアdot 2015.09.30 23:29 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top