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2017
05.27

Collector 64

Category: Collector(完)
母親との確執がないとは言えないが、現在進行形の敵意が存在するのは父親だ。
過去は忘れ前を向く。それを優先するなら、母親は今の状況に感謝するべきだ。
本来なら母親の戯言など、穴に向かって言えとでも言ってやりたいほどだが、初めてあの女の言葉に耳を傾けた。

にわかには信じ難い母親の言葉。

牧野つくしと一緒にパーティーに出ろ。


道明寺貴は、長年日本経済の発展に貢献した労により、叙勲にて旭日大綬章が贈られているが、楓は、その授章を祝ったパーティーにつくしを同伴し、父親に会わせなさいと言った。

貴が受賞した勲章は、経済人が貰えるとすれば最高位の勲章だ。
叙勲の受賞年齢は、70歳以上が対象とされているが、貴の場合まだその年齢に達してない。
だが最近では70歳に拘らなくてもいいのではないか?そんな声もある。
そして危険性の高い職務や精神的、肉体的に苦労の多い職務は55歳以上が対象となっているが、貴の仕事は55歳以上が対象になる職業ではない。それだけに60代での受賞は、異例ともいえる若さでのことだ。

貴はつい最近まで道明寺財閥の会長だった男だ。そして過去に経団連会長などを務めた人物だけあって、出席者は、一部上場企業の社長クラスから、政界のお歴々がごろごろいるようなパーティーになるはずだ。そんなところに牧野つくしを同伴すれば、それはまさに司の花嫁候補かと言われるはずだ。

『 道明寺財閥後継者、女性を伴い父親の叙勲祝賀パーティーに出席 』

『 道明寺司氏の婚約者か?いよいよ結婚か? 』

そんな見出しが新聞各紙を飾ってもいいということか?
そして、大きく取り上げられることは、父親に対しての牽制ともなるはずだ。







メープルの最上階にあるバーは、夜も遅い時間のせいか、混んでなかった。
男たちがいるのは一番奥のテーブルだ。他の席からは隔離されたスペースとなっていたが、3人は着いたばかりで、テーブルの上には一杯目のグラスが置かれていた。

「しかし司のおふくろさんはいったい何を考えてるんだ?」

あきらがスーツのポケットから取り出した封筒は、道明寺HDの社章が透かし模様となった封筒。中には、貴の叙勲祝賀パーティーへの招待状が入っていた。
会場はメープルでも一番大きな宴会場となっており、その規模から察すると、かなりの人数が集まるパーティーであること分かるが、道明寺楓はそんな場所につくしを同伴しろと言った。

「・・その封筒俺んちにも来てたな。・・あれだろ?牧野を会わせてあいつの良さを理解させようとしてんじゃねぇのか?」

海外から帰国したばかりの総二郎は生あくび混じりに、あきらが手にしていた封筒を受け取って、中から招待状を取り出した。

「でもな、あいつの良さっても司のおふくろさん自体が分かってねぇんじゃねぇの?だってまともに話なんてしたことねぇだろ?それになんで急に牧野と司との関係を認めようとするんだ?」

あきらはテーブルに置かれた薄めのウィスキーの水割りを口に運び、総二郎を見やった。
すると総二郎もそうだな。なんかおかしいよな。と納得し頷いていた。
気性の激しい男が好きになった女は、鉄の女からは蔑まれていた。二人の仲を応援したのは男の親友たちだけで、他に誰も味方になる者などいなかった。結果として別れる羽目になったのだが、二人に残酷な別れを用意したのは、男の親だった。

明日も仕事だとあきらは気を遣い、深酒をすることを控えているが、ある意味自由人の総二郎は、明日は関係ないと濃い水割りを口にした。

「いや。財閥の将来が不安なんだろ?親父さんが自らじゃねぇにしても、銃ぶっ放すようじゃ、どうにかしてるしな。流石に司のかーちゃんも人殺しの手伝いまでは出来ねぇってことだろ?つまりだ、司のかーちゃんの倫理基準ってのは、まともだったってことだ。・・それにしても疑惑の銃弾じゃねぇが、司の親父さんは、いくら牧野が自分の基準に合わねぇからってあそこまでするってのは異常だろ。司のかーちゃんはそれを正したいって思ったんじゃねぇの?」

「だから直接会わせて牧野の良さを理解させるってことか・・」

そんな簡単にことが済むとは考えられないのだが、それならいったい何を考えてあの父親とつくしを会わせようとしているのか。あきらも総二郎も鉄の女が何を考えているのか、と思えど分からなかった。

「それにしても鉄の女は自分の夫より、息子の方を選んだか。家も大事だが、その前に息子がおかしくなったらヤバイもんな」

「そりゃあそうだろ。夫婦ってのは結婚しても所詮赤の他人だ。子供を通して繋がってるようなもんだ。夫婦は離婚すればそれこそ即他人だけど子供は違うからな。でもあの鉄の女がいったい何がどうして息子の不幸が見てられねぇなんて言葉を吐いた?」

楓の口から出たその言葉は、司にしてもいったい何が言いたいのかと考えずにはいられなかった。元はと言えば司の不幸の始まりは、あの両親の元、道明寺の家に生まれたことから始まるが、それでもその人生の中で、一瞬の輝きとも言える牧野つくしという少女に出会ったことは、彼にとっての幸福のひとコマだった。だがその幸せを真っ先に壊そうとしたのは、母親の楓だ。

「司、おまえ、それでそのパーティーに牧野を連れて行くのか?」

バーに集まった男たちは、司の返事を待った。

「ああ、連れて行く。堂々とあの男の前にあいつと出てやる。流石に大勢の人間がいる前で何かしようってことはねぇだろ?はっきりと言ってやるつもりだ。俺は好きな女と一緒にいることを選ぶってな。それに何かするつもりなら、その場でUSBの中身を公開してやるよ」

父親を会長職から追いやり、つくしに何かすればUSBの中身を公開する。
もし仮に、政界のお歴々が溢れるパーティー会場でそんなことをすれば、貴の面目など丸潰れだ。まるで祝賀会に泥を塗るかの行為。それに祝賀どころではない。政治家官僚たちを巻き込んだ一大スキャンダルとなり、新聞紙面を飾るはずだ。それに、取り上げられることはないにしろ、やんわりと受賞を辞退しろ、返却しろと言われるはずだ。そして政治家からはそっぽを向かれ、財界の出席者もいい顔はしないはずだ。何しろどの面子も、表向きクリーンを装っている手前、非難こそすれ、同情などしないだろう。そして、これ幸いと財閥潰にかかる輩がいてもおかしくない。何しろ前例は山ほどある。どんな大きな企業だろうと、不祥事に歯止めが効かなくなることもあるからだ。そしてそこを起点に次から次へと、探られたくもない腹を探られることにもなりかねない。

「・・そうか。流石にパーティー会場で何かするってこともねぇだろうし、いいかもな。・・だけど牧野は大丈夫なのか?もしかすると両親の事故はおまえの父親が仕組んだことかもしれねぇんだぞ?」

牧野つくしの両親の事故。USBメモリを巡っての疑惑。
限りなく黒いに近い事案だ。

「・・それから狙撃の件もある・・おまえ本当に牧野を連れて親父さんの前に出る気か?」

あきらはつくしの精神を慮った。いくら過去は気にしないと言った女だとしても、自分を殺せと狙わせた男に会うことに、躊躇いがあるはずだ。

「でも考えようによれば、和解もあり得るってことだろ?意外と会ってみれば、気が合うかもしれねぇぞ?何しろ司の父親は牧野のことはよく知らねぇ訳で、ある意味食わず嫌いだろ?あいつの良さってのを知らないわけだから、おまえが分からせればいいってことだ。聞いた話だが、牧野は仕事も出来る女だったらしいぞ。それになかなか可愛いいところもある。今はあの頃のような勇ましさはねぇけど、それは逆に女らしくなったってことだろ?それにしても、よく類が手ぇ出さなかったよな?」

総二郎は軽口を叩いたつもりだが、類の名前に司の表情が変わり、口が滑ったとばかりの顔をした。

「しかし、皮肉な話だよな。最初は敵だって思ってたおふくろさんが、何を思ったのか司の味方みてぇな形でおまえが牧野を同伴してパーティーに出ろなんて何を考えてるんだか。なんか裏があるみてぇで恐ろしいな?」

あきらの言葉に頷く総二郎。
だが司は違った。

「裏があろうがなかろうが、そんなことはどうでもいい。逆にこんなチャンスを貰ったことを感謝してぇくらいだ。あの男と正面切ってケリをつけてやるよ。大勢の招待客がいるんだ。何かしようだなんて、そんな気は起こらねぇはずだ。勲章だかなんだか知らねぇが、金はあの世まで持って行けねぇけど、名誉なら抱えていけるんだからいいんじゃねぇの?さぞあの男も満足だろうよ」





牧野つくしとの未来を考えたとき、乗り越えなければならないのは、己の父親だ。
それは、破滅的な人生を歩んでいた己を解放するため、どうしても乗り越えなければならなかった。
そうしなければ、未来はないと司は思えた。
そしてそれは、つくしの為でもあった。





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コメント
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dot 2017.05.27 08:47 | 編集
司×**OVE様
おはようございます^^
あきらくん、総二郎くん、お久しぶりです(笑)
楓さんの提案を深読みする二人。
確かに色々と疑いたくもなると思います。しかし司はこの機会をチャンスと捉えたようです。
「昨日の敵は今日の友」という言葉もあります。そしてこちらは母親です。
司は、お腹を痛めて産んだ子です。父親の貴さんとは、考えることが違うのではないでしょうか?
再読、アカシアも時に再読してます(笑)アレ?どうだったかしら?と思うこともあります(笑)
二人の幸せを祈ってやって下さい(低頭)再読、連載が終る前には追いつきそうですか?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.05.27 22:37 | 編集
H*様
こんにちは^^
>お話しがとーても恐ろしい方向に・・
えっ?そ、そんな気がしますか?
はい。頼りになるのは、司の揺るぎない愛だけだと思います。
守るべき人はただ一人。
過去は過去。これからは未来だけを見据えて生きたいと思う二人です。
そんな二人には、大きな山を乗り越えて欲しいものです。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.05.27 22:47 | 編集
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dot 2017.05.28 01:06 | 編集
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dot 2017.05.28 03:07 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
楓さんの事は信じきれていませんが、それでも司はケリをつけようとしています。
自分の為でもあり、つくしの為でもあります。司パパは、つくしにとっては怖い相手ですが、そこは司が守ってくれるはずです。

・・猫ちゃん。
どんな出会いだとしても、別れは淋しいものです。そして哀しいです。
ママになってあげたマ**チ様、みんなありがとうと言っていると思います。
アカシアも以前野良猫の飼い主となった方とお話しをしたことがあるのですが、出会いがとても素敵なお話でした。動物は言葉を話さなくても、気持ちは通じるものですよね。
本当に家族同然です。
Her storyまたお待ちしております^^
そして、明日から月末最終週です‼気合いを入れて頑張りましょう‼←自らに言い聞かせています(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.05.28 20:32 | 編集
pi**mix様
貴!手紙を貰うとき「道明寺貴様」!!(≧▽≦)
もうねぇ・・笑いました、「貴様!!」司パパ、なんだか笑えますね?
楓フォローはどんな気まぐれなのか・・
でもチャンスです。坊っちゃんここで一発ガツンとお願いしたいですね?
つくしちゃん、パーティー苦手(笑)確かにそうですが、今は大人です。
芯の強い女性ですから、腹を括ったとき、強くなれるはずです。
あきらと総二郎の二人は、どこか傍観者のような口ぶりながら、やはり心配しています。
彼らは司の親友として、つくしちゃんをサポートしてくれるはずです。
確かにこちらのお話しは、二人がしばしば登場してきますね?
あきらは嫌味のない人格ですから、つくしちゃんの傍にいても、司が目くじらを立てることもないと思います。保護者的な人ですから、存在としては有難いでしょうねぇ。坊っちゃんも類がいるより、あきらの方がいいと思っているはずです(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.05.28 20:43 | 編集
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