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2015
09.27

キスミーエンジェル27

『 手放すつもりはない。すべてが俺のものだ 』

道明寺はあれからニューヨーク本社への出張のため日本を離れている。
そしてニューヨークにはあいつの母親がいる。
鉄の女と言われる道明寺楓。
彼女とも8年前以来会ってはいなかった。

思いはぐるぐる頭を駆け巡っていた。
『 まだ話は終わったわけじゃない 』
帰国したら話をしようと言われている。
何を?あいつと寝たから私が賭けに負けたと思っているの?


私が今実行することは理性を保って行動することだ。
道明寺との一夜は犬に噛まれたと思って…
違う。そうじゃない。
自分の気持ちに悩むべきではない。自分の気持ちなんて完全否認でいけばいい。
身体の関係が出来たからと言ってくよくよ考えたりしなければいつか…
いつかこの思いは消えてくれる。 消えてくれないかもしれないけれど。



理性を取り戻そうと顔を洗った私はこれからのことを考えていた。
あれほど道明寺との関係に対して慎重に行動していたのに、自分の持っていた大切な何かを彼に捧げてしまった。決して身体のことを言っているんじゃない。
鏡の中の自分の顔をまじまじと見つめながら自分の起こした行動を振り返ってみた。

あの時は道明寺が私の為にくれる時間と思い出が欲しかった。
8年前、あんなふうに私のことを置き去りにして行った彼のことが許せなかった自分。
でも・・・・つくしは思わず洗面台を握りしめていた。
そうして鏡の中の自分に問いかけた。私は彼に何を捧げてしまったの?
自らの顔を見つめながら答えを探した。



心の奥底では道明寺に再会することを何度も夢に見ていた。
心のどこかにはもうこのまま会うこともなく過ごしてしまいたいという思いもあった。

でも・・・・ずっと好きだった。


これじゃあまりにも痛々しい。
馬鹿みたい・・・・
鏡の中にはまた彼に恋をしてしまった愚かな自分がいた。





*****





ひと雨きそうな気がして走り出していた。
が、雨はぽつぽつと落ちるだけですぐに止んだ。
つくしは歩みをゆるめてまたゆっくりとした足取りで歩きだした。
あの夜から3週間が過ぎていた。

どうでもいいじゃない。
『 一度は私のことを忘れたでしょ?またきっと出来るわよ 』
私はそう言った。道明寺はその通りにしたってことでしょ?
この3週間はそんな事実をつくしの前に突き付けてきた。


最終電車に間に合うように会社を出て来たけど、今日は何故かまっすぐ家に帰りたくなかった。
ちょうど今日もあの夜と同じ金曜日だ。
通りかかったビルの1階には証券会社の電光掲示板が今日の終値を表示したままだ。
道明寺の会社の株価は・・そんなことをふと思った。
あった! 相変らず株価は高い。
到底私がすんなりと買える値段じゃなかった。
今の私には自社株を積み立てるくらいしかできない。
そう言えばあのとき話をしていたE社の件もニュースになっていた。
その件でニューヨークに行っているんだろうか・・・
昔、いつかあいつの会社の株式を購入して株主総会でも乗り込んで行ってなま卵でも投げつけてやろうか。なんて考えたこともあったっけ。
そんなことを思い出していた。



いつの間にかつくしの回りには傘の花が咲き始めていた。
そして足早に走り去る人々・・・
先ほどぽつぽつと降って止んだ雨はやはり降ることに決めたようだった。
やっぱり帰ろう・・・
走れば最終電車にはまだ間に合いそうだ。
つくしは足早に駅に向かった。










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