無くしたものは何だったのか。
そして置き去りにしてきたものは何だったのか。
生きていく意味を教えてくれたのは誰か。
その答えはすべて牧野つくしだ。
世間の目に道明寺司という人間はどう見えているのか。
冷酷非道なビジネススタイルは父親譲りで容赦ない。いや今ではそれ以上だと言われていた。そして父親の遺伝子配列をそのまま写したに違いないと言われる外見。
同じ遺伝子を持つ男は、息子を自分の思い通りになる男に育てようとした。
今ではあの男の種から産まれたことを、鏡を見るたび認識させられる自分の外見が嫌になっていた。だがそれはあの男にしてみれば、嬉しいことだろう。自分によく似た息子が、道明寺の繁栄を引き継いでいくことが、まるで自らが権勢を欲しいままにすることと同じだと感じられるからだ。
一度権力を手にした人間は、その権力をどんな手段を使っても維持しようとする。
それは国家権力にしても同じこと。
あの男は道明寺という王朝を、そして財閥を揺るぎないものとするため、自分に似た息子が道明寺家をさらに大きくすることを望んでいた。
傍若無人だった息子のその行く末を案じることなく、むしろ男はそのくらいがいいと宣う男は、子供の頃から息子を自分の思い通りに動かすことを考えていた。
そして牧野つくしが現れてから、あの男はそれまで思い描いていた計画を実行することに決めたのだろう。息子が初めて恋をした相手に手ひどく裏切られ、心に傷を負い、人間不信となったとき、親である自分の言うことだけを聞けばいい。おまえの生きる道にあの女は必要ないと。道明寺という名が次の代へと引き継がれて行く手段として、牧野つくしは必要ないと。
そうやって、見事に息子の恋心を踏みにじった。
だが、仮に他の女を好きになったとしても、結果としては同じことだったはずだ。あの男が認めた女でなければ、相手が誰であろうと同じ結果になっていたはずだ。
母親の行動ばかりが目についていたが、二人にとって本当の脅威だったのは、母親ではなくあの男。父親の方だったということだ。
あの頃、なんの力もない少女は勇気だけは持っていた。
そして勇敢だった。だがそれだけでは家族は救えなかった。
仕方のない選択。
少女が選ばざるを得なかった道は別れること。
何しろ、ぶつかっても弾き返される大きな壁がそこにあったはずだ。
司は総二郎から少し休憩して来いと言われ、屋上に上がったが、牧野つくしの意識はまだ戻ってはいない。手術は成功したが、人間の身体は医師でも分からないことがあると言うが、その答えは正しい。身体は精神にも通じている。己が目覚めを拒んでいる場合、意識の回復が遅れる場合もある。
ICUから特別室へ移ったが、司は手術が終わっても邸に帰ることなく病院に詰めていた。
仕事は院内で済ませることが出来るよう秘書に手配させた。
出来ることは何でもしてやりたい。
そんな思いが司の心に湧き上がれば、全てを投げ出しても彼女の傍に居たかった。
司はつくしの意識が戻るとき、傍に居たかった。
自分を見て、そして微笑んで欲しいと望んだ。
「牧野は強い人間だ。きっと目を覚ます」
「そうだぞ?今は少し辛い目にあって疲れているだけだ。大丈夫だ」
あきらも総二郎もつくしを気にかけていた。
二人は他人ではない。司にとって兄弟のような関係。そんな彼らは悲しみを共有する家族となり、司の気持ちに寄り添おうとしていた。そして司が今も昔と変わらぬ思いを抱き、つくしを愛してることを知れば、彼女に対しての罪業は、あの頃と変わりのない熱い思いの裏返しだと知った。
屋上にはベンチがあり、天気がいい日なら患者が太陽の温もりを求め上って来ることもある。だが今日の天気は曇りだ。空はどんよりとして、大きな灰色の雲が陽射しを遮り肌寒く、その場所には、患者はもとより誰もいなかった。
司はベンチに腰を降ろし、煙草を取り出し火をつけ、深々と吸って煙を細く吐き出した。
そしてぼんやりと虚空を見つめた。
風向きは西風。煙は司の左手へと流れて行く。
煙草を持つ手は大きく、男らしく骨ばり、長い指は指先まで美しい。
司は煙草を持つ自分の指先を見た。そして8日前のことを思い出していた。
あの時、爪の間にまで赤い色が滲んでいた。
牧野つくしが流した血が。
他人の血が爪の間にまで入る。
一般的な観点から言えば、その血の持ち主の病歴を気にする必要がある。だが、彼女の血なら、彼女の身体から出される物なら、どんなものでも愛おしいと思えた。あの日、つくしの血で染まったシャツとスーツは二度と着ることはなくとも、捨てることなど考えてもない。
狩りに出かけたとき、動物の屍を見たことがあった。
まだ幼かったあの頃、血を見るのが苦手だった。だがやがて成長し、学園で人間を狩るような遊びを始めれば、血を見ることは苦痛でも何でもなくなっていた。
だが自らの手を血に染めることは無く、周りの人間が代わりに狩っていた。
バカな遊びをしたものだと今さらながら思う。
だが、この手を染めたつくしの血の色は、決して忘れることはない。
あの頃、誰かに愛されたいなど考えたことはなく、大切なものなどなかった。
振り返ってみれば、あの当時の自分は何のために生きているのか分からなかった。
自分の人生は自分の物ではなく、道明寺家のためにあるとされていたのだから、生きる目標などあるはずもなく、ただ漠然と生かされていたとしか言いようがない。
「俺の人生か・・あいつがいねぇと生きる意味なんてねぇな・・」
と、呟く男は風で流れる煙を目で追った。
その時、屋上に繋がる非常扉の開く音がした。
そして後ろから足音がすると、隣に男がゆっくりと腰を降ろす。
「・・司。病院で煙草なんて吸うなよ?」
類はまだ少し腫れの残る司の左頬を見た。
「フン。別にいいだろうが。俺の病院だ。それにここは屋上だ。誰に迷惑をかける訳でもねぇだろうが」
「俺が迷惑だ。俺は煙草を止めたからね?」
煙草の煙は司の左に座る類の方に流れたが、彼はそのままそこにいた。
やや強くなった風は髪を乱れさせ、煙の流れも速くした。それでも二人の男はただ黙って屋上からの景色を眺めていた。
二人の心の中にあるのは牧野つくしのことだ。そしてどちらの男も互いの思いを知っている。
過去、二人が彼女を巡って争ったこともあった。だが、類は二人の恋を見守ることを選んだ。
だから二人が別れてしまっても、つくしを恋人にしようなど考えもしなかった。
心を惹かれたことがあったとしても、それは恋ではなかったから。
沈黙が流れるとき、類は口を開くと言った。
「あきらから色々聞いた。あいつが・・牧野が撃たれたときの状況を。・・あいつ飛び出して来たらしいな。おまえに向かって走って来たって聞いた」
つくしにしても、何故警護の男たちがそこにいるのか理解していたはずだ。
自分が何らかの危険に巻き込まれていると気づいていたはずだ。だが、そこにいた誰もが驚くような行動を取った。そしてこればかりは、いくら警護側が気をつけていたとしても、対象者の思いもよらぬ行動を防ぐのは難しい。
「司。この10年淋しかったんだろ?俺は淋しいって感覚が分かんないけど、おまえは淋しがり屋だからな。牧野がいなかったから淋しくて死にそうだったんじゃない?」
類の言葉は幼い頃から一緒に育った男の哀しみを知っている。
大勢の使用人にかしずかれていたが、心を許せる人間は老婆がひとり。
子供に何があろうが、ビジネス第一の両親はいつも不在。子供心にも自分が置かれた生活環境が、普通の家庭とは異なることを知る為の時間は、さしてかからなかった。
「・・・バカなことを言うな。おまえは誰に向かってそんなこと_」
「まあいいよ。牧野は・・10年前からおまえの・・おまえだけのものだったんだ。・・だけどあいつだって色々考えることがあったってことは、もう分かってるだろ?」
色々考える事の中にはもちろん家族のことが入っている。
亡くなった両親のことが。
「司。牧野は両親が亡くなったあの事故のことだけど、単なる事故だって考えてるから。・・おまえの父親が関係してるだなんてことは考えてもいないはずだ」
あの頃、まさか自分の命が狙われているとは考えてもいない。
司と付き合い、それが発端でつくしの父親が派遣ドライバーとはいえ就職した証券会社で道明寺HDの情報を掴んだ。そんなことが自分の人生に関係しているなど考えもしなかったはずだ。
「・・おい類、ちょっと聞くが牧野は、あいつは大切な物とか、どっかに纏めて置く女か?」
つくしのアパートから運び出した荷物の中には、司が探している目的のものは見当たらず、それが実際あるものかどうか。それさえまだ不確定だが、それでも司は気になっていた。
もしかしたら類なら知っているかもしれない・・何しろ長い間一緒に暮らしていたのだから。
「大切なものか・・・」
「ああ・・牧野の父親があいつに残した遺品っていうか、そんな物はなかったか?」
「・・遺品?」
「ああそうだ。けど、金じゃねぇぞ?あれだ・・USBとかSDカードの類の記憶媒体だ。あいつの、牧野の父親は大日証券の支店長付運転手だったが、そのとき、恐らくうちの、道明寺のヤバイ情報を掴んだ気がする。恐らくだがその情報を使って親父に何か言ったはずだ。・・だから親父に・・」
事故を装って殺されたとは言えない。それに確証はない。
だがもしそれが本当ならつくしになんと言えばいいのか分からなかった。
「・・大切なものか・・。それなら銀行の貸金庫かも?」
「貸金庫って・・牧野は貸金庫を借りてたのか?」
「うん。牧野がアパートで一人暮らしするって決めたとき、無くしたくないものがあるからって言ってたから紹介した。貴重品とか大切な物があればそこに預けろってね。賃料が年間1万5千円かかるって知ったとき、少し悩んだみたいだけど、貸金庫なら何があっても大丈夫だって言ったけど、実際預けたかどうかわかんないけどね?」
風の強い日は人生が変わる。
風が司の知らなかった何かを運んでくるのではないか。
そんな気がしていた。

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生きていく意味を教えてくれたのは誰か。
その答えはすべて牧野つくしだ。
世間の目に道明寺司という人間はどう見えているのか。
冷酷非道なビジネススタイルは父親譲りで容赦ない。いや今ではそれ以上だと言われていた。そして父親の遺伝子配列をそのまま写したに違いないと言われる外見。
同じ遺伝子を持つ男は、息子を自分の思い通りになる男に育てようとした。
今ではあの男の種から産まれたことを、鏡を見るたび認識させられる自分の外見が嫌になっていた。だがそれはあの男にしてみれば、嬉しいことだろう。自分によく似た息子が、道明寺の繁栄を引き継いでいくことが、まるで自らが権勢を欲しいままにすることと同じだと感じられるからだ。
一度権力を手にした人間は、その権力をどんな手段を使っても維持しようとする。
それは国家権力にしても同じこと。
あの男は道明寺という王朝を、そして財閥を揺るぎないものとするため、自分に似た息子が道明寺家をさらに大きくすることを望んでいた。
傍若無人だった息子のその行く末を案じることなく、むしろ男はそのくらいがいいと宣う男は、子供の頃から息子を自分の思い通りに動かすことを考えていた。
そして牧野つくしが現れてから、あの男はそれまで思い描いていた計画を実行することに決めたのだろう。息子が初めて恋をした相手に手ひどく裏切られ、心に傷を負い、人間不信となったとき、親である自分の言うことだけを聞けばいい。おまえの生きる道にあの女は必要ないと。道明寺という名が次の代へと引き継がれて行く手段として、牧野つくしは必要ないと。
そうやって、見事に息子の恋心を踏みにじった。
だが、仮に他の女を好きになったとしても、結果としては同じことだったはずだ。あの男が認めた女でなければ、相手が誰であろうと同じ結果になっていたはずだ。
母親の行動ばかりが目についていたが、二人にとって本当の脅威だったのは、母親ではなくあの男。父親の方だったということだ。
あの頃、なんの力もない少女は勇気だけは持っていた。
そして勇敢だった。だがそれだけでは家族は救えなかった。
仕方のない選択。
少女が選ばざるを得なかった道は別れること。
何しろ、ぶつかっても弾き返される大きな壁がそこにあったはずだ。
司は総二郎から少し休憩して来いと言われ、屋上に上がったが、牧野つくしの意識はまだ戻ってはいない。手術は成功したが、人間の身体は医師でも分からないことがあると言うが、その答えは正しい。身体は精神にも通じている。己が目覚めを拒んでいる場合、意識の回復が遅れる場合もある。
ICUから特別室へ移ったが、司は手術が終わっても邸に帰ることなく病院に詰めていた。
仕事は院内で済ませることが出来るよう秘書に手配させた。
出来ることは何でもしてやりたい。
そんな思いが司の心に湧き上がれば、全てを投げ出しても彼女の傍に居たかった。
司はつくしの意識が戻るとき、傍に居たかった。
自分を見て、そして微笑んで欲しいと望んだ。
「牧野は強い人間だ。きっと目を覚ます」
「そうだぞ?今は少し辛い目にあって疲れているだけだ。大丈夫だ」
あきらも総二郎もつくしを気にかけていた。
二人は他人ではない。司にとって兄弟のような関係。そんな彼らは悲しみを共有する家族となり、司の気持ちに寄り添おうとしていた。そして司が今も昔と変わらぬ思いを抱き、つくしを愛してることを知れば、彼女に対しての罪業は、あの頃と変わりのない熱い思いの裏返しだと知った。
屋上にはベンチがあり、天気がいい日なら患者が太陽の温もりを求め上って来ることもある。だが今日の天気は曇りだ。空はどんよりとして、大きな灰色の雲が陽射しを遮り肌寒く、その場所には、患者はもとより誰もいなかった。
司はベンチに腰を降ろし、煙草を取り出し火をつけ、深々と吸って煙を細く吐き出した。
そしてぼんやりと虚空を見つめた。
風向きは西風。煙は司の左手へと流れて行く。
煙草を持つ手は大きく、男らしく骨ばり、長い指は指先まで美しい。
司は煙草を持つ自分の指先を見た。そして8日前のことを思い出していた。
あの時、爪の間にまで赤い色が滲んでいた。
牧野つくしが流した血が。
他人の血が爪の間にまで入る。
一般的な観点から言えば、その血の持ち主の病歴を気にする必要がある。だが、彼女の血なら、彼女の身体から出される物なら、どんなものでも愛おしいと思えた。あの日、つくしの血で染まったシャツとスーツは二度と着ることはなくとも、捨てることなど考えてもない。
狩りに出かけたとき、動物の屍を見たことがあった。
まだ幼かったあの頃、血を見るのが苦手だった。だがやがて成長し、学園で人間を狩るような遊びを始めれば、血を見ることは苦痛でも何でもなくなっていた。
だが自らの手を血に染めることは無く、周りの人間が代わりに狩っていた。
バカな遊びをしたものだと今さらながら思う。
だが、この手を染めたつくしの血の色は、決して忘れることはない。
あの頃、誰かに愛されたいなど考えたことはなく、大切なものなどなかった。
振り返ってみれば、あの当時の自分は何のために生きているのか分からなかった。
自分の人生は自分の物ではなく、道明寺家のためにあるとされていたのだから、生きる目標などあるはずもなく、ただ漠然と生かされていたとしか言いようがない。
「俺の人生か・・あいつがいねぇと生きる意味なんてねぇな・・」
と、呟く男は風で流れる煙を目で追った。
その時、屋上に繋がる非常扉の開く音がした。
そして後ろから足音がすると、隣に男がゆっくりと腰を降ろす。
「・・司。病院で煙草なんて吸うなよ?」
類はまだ少し腫れの残る司の左頬を見た。
「フン。別にいいだろうが。俺の病院だ。それにここは屋上だ。誰に迷惑をかける訳でもねぇだろうが」
「俺が迷惑だ。俺は煙草を止めたからね?」
煙草の煙は司の左に座る類の方に流れたが、彼はそのままそこにいた。
やや強くなった風は髪を乱れさせ、煙の流れも速くした。それでも二人の男はただ黙って屋上からの景色を眺めていた。
二人の心の中にあるのは牧野つくしのことだ。そしてどちらの男も互いの思いを知っている。
過去、二人が彼女を巡って争ったこともあった。だが、類は二人の恋を見守ることを選んだ。
だから二人が別れてしまっても、つくしを恋人にしようなど考えもしなかった。
心を惹かれたことがあったとしても、それは恋ではなかったから。
沈黙が流れるとき、類は口を開くと言った。
「あきらから色々聞いた。あいつが・・牧野が撃たれたときの状況を。・・あいつ飛び出して来たらしいな。おまえに向かって走って来たって聞いた」
つくしにしても、何故警護の男たちがそこにいるのか理解していたはずだ。
自分が何らかの危険に巻き込まれていると気づいていたはずだ。だが、そこにいた誰もが驚くような行動を取った。そしてこればかりは、いくら警護側が気をつけていたとしても、対象者の思いもよらぬ行動を防ぐのは難しい。
「司。この10年淋しかったんだろ?俺は淋しいって感覚が分かんないけど、おまえは淋しがり屋だからな。牧野がいなかったから淋しくて死にそうだったんじゃない?」
類の言葉は幼い頃から一緒に育った男の哀しみを知っている。
大勢の使用人にかしずかれていたが、心を許せる人間は老婆がひとり。
子供に何があろうが、ビジネス第一の両親はいつも不在。子供心にも自分が置かれた生活環境が、普通の家庭とは異なることを知る為の時間は、さしてかからなかった。
「・・・バカなことを言うな。おまえは誰に向かってそんなこと_」
「まあいいよ。牧野は・・10年前からおまえの・・おまえだけのものだったんだ。・・だけどあいつだって色々考えることがあったってことは、もう分かってるだろ?」
色々考える事の中にはもちろん家族のことが入っている。
亡くなった両親のことが。
「司。牧野は両親が亡くなったあの事故のことだけど、単なる事故だって考えてるから。・・おまえの父親が関係してるだなんてことは考えてもいないはずだ」
あの頃、まさか自分の命が狙われているとは考えてもいない。
司と付き合い、それが発端でつくしの父親が派遣ドライバーとはいえ就職した証券会社で道明寺HDの情報を掴んだ。そんなことが自分の人生に関係しているなど考えもしなかったはずだ。
「・・おい類、ちょっと聞くが牧野は、あいつは大切な物とか、どっかに纏めて置く女か?」
つくしのアパートから運び出した荷物の中には、司が探している目的のものは見当たらず、それが実際あるものかどうか。それさえまだ不確定だが、それでも司は気になっていた。
もしかしたら類なら知っているかもしれない・・何しろ長い間一緒に暮らしていたのだから。
「大切なものか・・・」
「ああ・・牧野の父親があいつに残した遺品っていうか、そんな物はなかったか?」
「・・遺品?」
「ああそうだ。けど、金じゃねぇぞ?あれだ・・USBとかSDカードの類の記憶媒体だ。あいつの、牧野の父親は大日証券の支店長付運転手だったが、そのとき、恐らくうちの、道明寺のヤバイ情報を掴んだ気がする。恐らくだがその情報を使って親父に何か言ったはずだ。・・だから親父に・・」
事故を装って殺されたとは言えない。それに確証はない。
だがもしそれが本当ならつくしになんと言えばいいのか分からなかった。
「・・大切なものか・・。それなら銀行の貸金庫かも?」
「貸金庫って・・牧野は貸金庫を借りてたのか?」
「うん。牧野がアパートで一人暮らしするって決めたとき、無くしたくないものがあるからって言ってたから紹介した。貴重品とか大切な物があればそこに預けろってね。賃料が年間1万5千円かかるって知ったとき、少し悩んだみたいだけど、貸金庫なら何があっても大丈夫だって言ったけど、実際預けたかどうかわかんないけどね?」
風の強い日は人生が変わる。
風が司の知らなかった何かを運んでくるのではないか。
そんな気がしていた。

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司×**OVE様
おはようございます。そしてお疲れさまです^^
あきら君。類君たちに話しをしてくれたようですね?
さすがあきら君ですね?(笑)
そして類から貸金庫の話を聞いた司です。これから行動に移すようです。
風の強い日には人生が変わるかもしれない。運命の大きな風車が回り始めたのかもしれません。
司と類が二人で語るシーン。互いに思う人は同じですが、思い方が違います。
いざとなれば類くんは協力を惜しみません。
今年は第二の我が家にいる時間が長い(笑)お疲れを出しませんように。
コメント有難うございました^^
おはようございます。そしてお疲れさまです^^
あきら君。類君たちに話しをしてくれたようですね?
さすがあきら君ですね?(笑)
そして類から貸金庫の話を聞いた司です。これから行動に移すようです。
風の強い日には人生が変わるかもしれない。運命の大きな風車が回り始めたのかもしれません。
司と類が二人で語るシーン。互いに思う人は同じですが、思い方が違います。
いざとなれば類くんは協力を惜しみません。
今年は第二の我が家にいる時間が長い(笑)お疲れを出しませんように。
コメント有難うございました^^
アカシア
2017.04.14 00:16 | 編集

とん**コーン様
核心と言えるかどうか(笑)少しずつ近づいています。
傷が早く良くなるといいですね。お大事になさって下さいね。
褒めて頂くと嬉しいのですが、照れます(/ω\)
いつも有難うございます^^
そしてコメント有難うございました^^
核心と言えるかどうか(笑)少しずつ近づいています。
傷が早く良くなるといいですね。お大事になさって下さいね。
褒めて頂くと嬉しいのですが、照れます(/ω\)
いつも有難うございます^^
そしてコメント有難うございました^^
アカシア
2017.04.14 00:18 | 編集

pi**mix様
何故忘れたか思い出せない・・記憶媒体が壊れたかもしれない(笑)
脳内の媒体がどこかへお出かけしていたのかもしれませんね?(笑)
覚えていらっしゃいましたか!そうなんです、司が無理矢理・・のとき、つくしちゃんのそんな発言がありましたねぇ(笑)
そしてつくしちゃん、まだ覚醒しません。皆心配しています。
早く目覚めて!と祈りたいです。坊っちゃん酷く心配しています。
「坊っちゃん、次は貸金庫だってよ」(笑)そんな映画のタイトルだとすれば、坊っちゃん貸金庫で何をするんでしょうか!
そんな彼に風が吹いて後押ししてくれるでしょうか・・
コメント有難うございました^^
何故忘れたか思い出せない・・記憶媒体が壊れたかもしれない(笑)
脳内の媒体がどこかへお出かけしていたのかもしれませんね?(笑)
覚えていらっしゃいましたか!そうなんです、司が無理矢理・・のとき、つくしちゃんのそんな発言がありましたねぇ(笑)
そしてつくしちゃん、まだ覚醒しません。皆心配しています。
早く目覚めて!と祈りたいです。坊っちゃん酷く心配しています。
「坊っちゃん、次は貸金庫だってよ」(笑)そんな映画のタイトルだとすれば、坊っちゃん貸金庫で何をするんでしょうか!
そんな彼に風が吹いて後押ししてくれるでしょうか・・
コメント有難うございました^^
アカシア
2017.04.14 00:20 | 編集

さと**ん様
病院の屋上で煙草を吸う司。
その指先は美しくあって欲しいものです。
類と二人でつくしを思う二人の男性の姿は絵になりそうですね?
類は貸金庫を提案していたんです。
一人暮らし、何かと物騒だと思ったのかもしれません。
つくしは両親の死の真相は知らないのか、知っているのか・・・本当のところは?
どうなんでしょうか・・(笑)
コメント有難うございました^^
病院の屋上で煙草を吸う司。
その指先は美しくあって欲しいものです。
類と二人でつくしを思う二人の男性の姿は絵になりそうですね?
類は貸金庫を提案していたんです。
一人暮らし、何かと物騒だと思ったのかもしれません。
つくしは両親の死の真相は知らないのか、知っているのか・・・本当のところは?
どうなんでしょうか・・(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2017.04.14 00:22 | 編集
