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2017
04.06

Collector 35

Category: Collector(完)
金がない人間はそれを得るためなら何でもする。
金がある人間はそれを増やすためなら何でもする。
世の中の全ては金がある人間の意向で決まる。
だから人間は他人より多く金を持ちたがる。
多くの金を持つ人間はその富を受け継がせる人間を欲しがる。
その継がせる人間が欲しくないと言ったところで、どうにもならなかった。
それが司の人生だった。


戦わなければ未来はないとすれば戦うしかない。
例えそれが自分の父親だとしても。
真実が酷く厄介だとしても知りたい。
自分の父親と牧野一家の間に何があったのか。




司の薄い唇は一直線に結ばれていた。
探し物は見つからなかった。
記録媒体はUSBメモリ、そしてSDカードと言ったものを対象に探したが、見つけることは出来なかった。そもそもそうかもしれないと仮定しての話だ。もしかするとそんなものは初めから無いのかもしれない。

だが新たに目的とした物は見つかった。
それは牧野浩が持っていた情報ではなく、あきらの話にあった牧野つくしの日記と思われるノートだ。洋服が詰め込まれた最後の箱を開けたとき、服の間に挟まれている数冊のA4サイズのノートを見つけた。

そのノートは学生が授業で使うようなごく一般的なノートで、表紙に何か書いてある訳でもなく何の変哲もない。だがそのノートには厚みがあった。
その厚みを持たせているのは、恐らく中に挟まれている新聞の切り抜きや週刊誌の記事だろう。

類が偶然見たつくしの日記帳には、司に関する新聞の切り抜きや、週刊誌の記事が挟まれていた。今、司の手にあるノートは恐らくその当時のままの状態だと思われた。


荷物を箱に詰めた人間は、タンスの中にあったものをそのまま移動させたはずだ。
洋服はきちんと積み重ねられた姿で箱にあった。と、いうことは元々が洋服の間に隠すように置かれていたということになる。

日記というものは、他人に見られたくないものだ。
だから隠すように洋服の間に収めていたのか?
日記は心の中にある吐き出したい思いや、自分の考えを反芻するため書く。
それはストレスの解消を目的とする為でもあり、感情の整理をすることが目的で書いていることがある。

そんな日記を後で読み返せば、その頃の自分はこんなことを考えていたのかと振り返ることが出来る。だが他人の日記を読むという行為は、その人間の秘密を見ているような気になる。
そして親しい人間の日記を読むということは、もしかすると自分のことが書いてあるのではないかと考えるのが普通だ。司は自分のことが書かれているのは分かっているが、どんな言葉が綴られているのかが気になっていた。

司の知らなかった少女の思いとは_。

牧野つくしの自分に対する思いとは_。


表紙を開くのが怖かった。
二人の時間は短かったが、まるで夢を見ていたかのように思えた。
その短かった時間を彼女がどう感じていたのか。
そして牧野つくしの両親がどんな両親だったとしても、亡くなってしまったことはあの姉弟にとっては悲しいことだ。
あの家族を姉と弟だけにしてしまったのは、あの事故なのだが、そのきっかけを作ったのは自分ではないか。そんな加害者的な意識が頭を過った。

もし、自分が牧野つくしと付き合わなければ、父親もつくしの父親に会うことは無かった。
たまたま金持ちの家に生まれた男が貧しい少女に恋をしたばかりに、彼女が被ったのは普通の女子高生なら考えられないような事ばかりだったはずだ。


「なあ、司・・」

あきらは言いかけたが止めた。
司がそのノートを握りしめていたからだ。

「・・あきら、悪いが少し・・」

「ああ。わかった。俺はちょっとその辺で煙草でも吸ってくる。おまえはゆっくりしろ」

あきらはあっさり頷いた。
そして司の気持ちは理解出来るといった表情で部屋を出た。


司は埃よけのカバーが掛けられていた椅子にそのまま腰を降ろし、ノートを開くと読み始めた。
本当に必要とし探していたものとは別のものだったとしても、司はそれを見つけた。
牧野つくしの気持ちの一端を知ることが出来る文面を。

日記は毎日書かれたものではない。
その時々思うこと、感じることがあれば書き綴っていたようだ。
天気の話から弟が大学に合格した。・・類がああ言ったこう言ったそんなことが書かれたページもあった。

今開かれているページの書かれた日付は、つくしが二十歳を迎えた頃だ。
大人への仲間入りをすることになった女性が過行く青春時代を書こうと思ったのか。
だが司はそのページを読み進めていくうち、そうではないことを知った。
そこに綴られていたのは、司の対する思いだ。




わたしには忘れられない人がいる。
でもわたしはその人と別れた。
違う。わたしはその人のことを捨てた。
やさしい言葉をかけることなく、酷い言葉でその人のことを捨てた。
できるなら別れたくなかった。
でもそうしなければならなかった。

自分から別れを告げたというのに、辛くて自分でも情けないほど落ち込んだ。
関わっていた時間はほんの僅かだというのに、とても長い時間だったように感じられた。
恐らくそれは二人の間に余りにも多くの出来事があったから。

その人はまるで恋に穢れを知らないような人だった。
わたし達二人は恋愛感情について知らないことの方が多かった。
同級生の中には性について進んだ考え方をしていた人間も多かった。
でもわたし達はぎこちないキスをして一緒にいられるだけでよかった。

高校に入学した頃、ひとつ年上のその人とは関わりたくなかった。
学園の中でその人の存在は恐ろしいだけの人。
静かに高校生活をやり過ごすことを望んだわたしには関係ないと思っていた人だった。
でも気づけば二人は恋に落ちていた。

この恋は運命だとあの人は言った。
でも運命だとすればあんな別れをすることになったわたしが悪い。

でもきっと、どこかでまた会えることがあるはずだと思いたい。
そして会える日が来たら、何と言えばいいのだろう。

沢山の黒い服を着た人間に取り囲まれ歩くあの人の姿をテレビで見た。
そこに映っていたのは、大人びた眼差しで斜めに睨む姿のあの人がいた。
今のあの人はまばたきひとつせず、命令を下すような人になっている。
頭が冴えたあの人は、ビジネスに才覚を見出し、財閥の跡取りとして決められた道を進み始めていた。

あの人の周りには顔ぶれこそ変われ、常に女性の姿があると言われているが、長く続く人はおらず、特別深い関係になる女性もいないと言われ、一時的な関係で終わる女性ばかりだと聞いている。

そんな話しを聞きたくはなかった。
苦痛だった。でも聞かなければならなかった。
それはわたしが仕向けたようなものだったから。
そしてそれは純真無垢な高校時代はとっくに終わった。
そう告げられているように感じていた。

あらゆる贅沢を、あらゆる女性を気ままに求めることが出来るあの人は、既にわたしが知っていたあの人ではなかった。

そんな人になんと言えばいいのだろう。
道明寺・・・あの時はごめんなさい。そう言うしかない。
でもわたしの口から言えるだろうか。
そうしなければならなかったということを分かってもらえるだろうか?
あの頃、つかみどころがなかった二人の関係が、やっと本当のつき合いへと変わると思ったはずだ。
乱暴だと言われたあの人が、わたしだけに向ける慈しみを持った優しい眼差しがあった。
でもわたしはそれを踏みにじってしまった。

言ってもいいのだろうか。家族のためあの人を捨てたというのに。
本当にごめんなさい。
あの時はそうしなければならなかったの。

許してもらえるとは思ってない。

でもいつか会える日が来たら言いたい。

ごめん、と素直に。
そして・・愛してると。
今でも忘れたことはありません。
そしてあの時のネックレスはいつも一緒です。







司は一瞬、ぎゅうっと目をつぶった。
二人が別れたとき、既に忘れられたと思っていた。
あのとき、女の態度から忘れ去ろうとしていると感じていた。

そのページに挟まれていたのは、どこかのパーティーで女を連れている写真。
今はもう記憶の片隅にさえない名も無い女。
そんな女を連れホテルに行ったこともあった。
司の内では、既に無い等しいと言われていた道徳心が芽生え初めていた。
自分の行動は世界中に知られていることは分かっていたが、まさか、つくしが自分の記事を切り抜いては大切に保管していたとは、あきらの話を聞くまで考えもしなかったが本当だった。


司は腕時計を見た。
そして部屋を出ると走り出した。

「おいっ!司っ!?どこに行く?どうすんだよ、ここはもういいのか?」

回廊のような廊下の片隅で煙草をくゆらせていたあきらは、しなやかな身のこなしをする男が突然とった行動に慌て、煙草を揉み消し、司の後を追った。
過去、司が走るとすれば、牧野つくしに関してのこと以外無かったことから察しはつくが、今では何をするか先が読めない男に迷いはない姿が見て取れた。
断固たる意志を持ち、確固たる行動を取る。
いつも思いを口にすることが苦手だった男は、言葉の前に走り出していたことがあったが、今はまさにその状況だ。
そんな男の行動に慌てたのはあきらだけではない。司の後を前のめりになり慌てて追いかけてきた秘書は叫んだ。

「し、社長!?どちらへ行かれるんですか!?」

司の心の中にあったドロドロとしたものは、暗闇の中に射し込んだ一筋の光りによって溶かされていた。

「ヘリを用意しろ。山荘に向かう」





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コメント
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dot 2017.04.06 06:04 | 編集
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dot 2017.04.06 08:22 | 編集
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dot 2017.04.06 15:28 | 編集
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dot 2017.04.06 17:59 | 編集
す*ら様
おはようございます^^
暗闇に浮かぶ司。睨む眼と青い炎のイメージが取れて良かったです^^v
お絵かきできる才能は素晴らしいと思います。
そして楽しんで書かれることが何よりだと思います。
お酒を飲んでいる司もここのイメージなんですか?
なんだか嬉しいです。
お酒を飲むシーン、最近では「あの日、あの時」の冒頭で書きました(笑)
駄文ですが創作のお手伝いが出来て光栄です。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.04.06 23:03 | 編集
司×**OVE様
おはようございます^^
司はつくしの日記を読みながら何を思ったでしょうねぇ・・
自分の取った行動をどう考えているのでしょう・・
NY時代自暴自棄になり他の女性とそんな関係になったことは後悔しているはずです。
そうです。土星のネックレスは司が初めの頃、取り上げましたので今は彼の手元にあります。
魔の手が伸びていることを知らない司。
この先の展開は・・ご想像にお任せして・・・(笑)
本日お嬢様のハレの日だったのですね?おめでとうございます!^^V
長いお休みも終わり、ホッと出来る・・と言いたいところですが、そうはいきませんよね?
色々とお忙しい身。お身体にお気を付けてお過ごし下さいね^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.04.06 23:08 | 編集
さと**ん様
つくしの日記。思いが溢れていましたね。
他人の日記を見ることは、その人の心を覗き見るようなものです。
言葉は気持ちそのもの・・・。
司は自分のことを思うつくしの愛を確信しました。
そうですよね、パソコンの無い時代、雑誌を切り抜いては大切に保管していたものです(笑)
そして分からないことは、百科事典で引く。←もしかして、この言葉は死語でしょうか?
そして辞書を引く。引けば引くほど厚みを増す辞書・・そんな時代もありました(笑)
つくしは司のことを思い記事を切り抜き、ノートが膨らむほど貼り付けていたことでしょう。
でも、その司はかつて自分が好きだった男とは違う男へと変わって行く・・。

記憶媒体は見つかりませんでしたが、司にとっては自分の心を決める何かを見つけることが出来た・・と思いたいです。
山荘へ向かう司。そこで待つのは・・。
御曹司、召喚状を送りました。受け取り拒否は出来ません。
少々お待ち下さい^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.04.06 23:14 | 編集
pi**mix様
>「人生捨てたモンじゃない・・」
お若いのに人生を達観したような言葉が!(笑)
でも同じクラスになれて良かったですね!
学生時代の友人というのは、気取りがなく一生の友だちとしてお付き合いが出来ると思っています。
社会人となって知り合う友人より、学生時代、まだ自分を隠すことを知らない、本当の人となりを知ることが出来ると思います。
幸せ過ぎて怖い・・。確かにあります。
人生はバランスが一番だと思いますが、こちらの司とつくしのように思い通りにならない人生もあると思います。
いい事があれば悪いことがあるといいます。
二人もそうあって欲しいものですね!
えっ?鬼畜状態坊っちゃんの愛に溢れた日々・・そうですね、あの行為は怖かったと思います。
はい。司の記事をスクラップしながら、考えていたかもしれません。
「わたしがこんな男にしてしまったと・・」
さて、何か待ち受けていそうな山荘へ向かうことに決めた司。
雨雲は去り、空は晴れています。星の瞬きも感じられるようです。
え?ドクターヘリも飛ばすように坊っちゃんに伝えるんですか?(笑)
そしてあきら君。やはり安定のあきら君です。F4の中で空気を読める男は彼だけではないでしょうか?助演男優賞ノミネート有難うございます^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.04.06 23:21 | 編集
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dot 2017.04.07 01:20 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
あきらは空気が読めるいい人ですよね?
そして切ない日記にますます心が動いた司は山荘に向かいました。
木村さんが西部警察の渡哲也ばりにヘリからライフルを撃ちまくる!(笑)
大門軍団、カッコ良かったですよね?
武田鉄矢さんのように説教する!(笑)金八先生も好きでした。
金田一耕助のように謎解きをする!(笑)犬神家の一族。お気に入りです。
しかしどれもいいですね!久々にマ**チ様のお話しが読め、笑わせていただきました(≧▽≦)
北の国からの田中さんも見たいです(笑)確かに渡さん以外は戦力外ですね?
本編のお話しは・・・えっと・・・。どんどんシリアスに向かいそうな気がします。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.04.07 22:09 | 編集
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