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2017
02.13

エンドロールはあなたと 62

結婚したことにより、週末だけ一緒に過ごしていた生活が変わるのは当然だ。
それに、二人が同じ屋根の下で暮らすということは、同じ鍵を使うということだ。つくしは住まいを引き払い、司のマンションに移り住んだ。そんなとき、自分が住んでいたマンションはどうしたらいいのかと司に相談した。

会社員である自分がローンを組んで買ったマンション。
偶然にも同じ世田谷区内にあるその物件。司にどうしたいんだと聞かれ、ローンもあるし、もう住まないから売却したいと言ったつくし。司にすれば、ローンの残額など知れており、妻がそのマンションの一室を手放したくないと言えば、いっそのこと、そのマンションごと購入してもいいと考えていた。

だが、そんなことを言えば勿体ない。固定資産税がかかる。あたしのために無駄使いはしないでと言う。司はそんな女が、妻が本当にどうしようもなく可愛かった。
そう思っているのは司だけだろうが、どこの新婚家庭も大なり小なりそんなものだろう。

平日、誰もいない部屋へ戻ることを寂しく感じていたが結婚し、妻の持ち物が増えると部屋の中が明るく感じられるようになっていた。
結婚とは奇妙なものだな。
司はそんなことを感じながら広いクローゼットの中に隣同士に掛けられた妻の服に優しく触れた。そしてその中の幾つかを、自らの手で脱がす楽しみを知った。


人生で最も幸せな瞬間とも言える結婚。
この人となら、人生を共に過ごし、未来を思い描けると感じる。そんなことを思ったふたり。
司はつくしのことを能力のある女性だと思っている。つくしは司のことを頼りにし、信じている。互いに人生のパート―ナーとして共に歩みたいと考え結婚した。

そんな30代の二人が選んだ新しい人生のスタートは、入籍を済ませるというシンプルなもの。戦略的な結婚でもなく、短い期間で結婚を決めた二人には、古い常識といったものに気を取らわれるつもりはなかった。それに今の世の中、結婚式を挙げないカップルも多い。
だが式は挙げなくても仲間うちでのパーティーは開かれた。


大人になれば誰でも世の中を辛辣にとらえるようになっているはずだが、いい年をした男は親友の前ではどうやらそれは違うようだ。
司が親友たちを前に語ることといえば妻の話。どこをどうトチ狂ったかと思えるほど惚気ていた。それに世間から見ればそうは見えないのだが、昔の司を知る人間からすれば、恐ろしいほど妻には甘い男が出来上がっていた。
そんな男は妻の手を取っているが、その指には婚約指輪と結婚指輪の両方がはまっている。
そして勿論彼の左手にも揃いの指輪がはめられていた。


司は類が土産にくれたTシャツの話をしていた。
胸に卑猥なメッセージが書かれていたそれ。
そのTシャツを着て妻の前に現れたとき、受けた仕打ちを面白そうに話していた。
仕打ちだと大袈裟に言ったが、司が自慢げに着て見せると、ペーパーナプキンの塊が飛んできただけの話だ。そんなことさえ楽しいというのだから、周囲の人間は呆れていた。

司のそんな行動に、中年の変態行動には気を付けなきゃな。
そんな会話まで聞こえてくるほどだ。それはまさにその通りかもしれない。だが、中年の変態行動とまで言われた男は、その言葉に腹を立ててはいないようだ。むしろ男はみんな変態だとのたまった。
そして、悔しかったらおまえらも結婚してみろと言った。

「・・・なんだか司の話を聞いてると、皮を剥かれた玉ねぎを想像しちゃうよ」
「類。なんだよそれ?」
「・・うん。つくしさんってなんだかそんな感じがする・・」

司の惚気とも言える話しに、妻であるつくしが玉ねぎみたいだと言った類。

「ダメだ。こいつは宇宙人だから時々意味不明なことを言う」
「そうだ。確かに類の物の考え方は俺たちと違う」

あきらの言葉に総二郎は頷いたが桜子は反論した。

「あたし、花沢さんの仰る意味がわかります。先輩が玉ねぎだってこと。先輩は新玉ねぎなんです」

新玉ねぎ?
その言葉にその場にいた全員が怪訝な顔をして桜子を見た。

「普段一番よく見かける玉ねぎは茶色い皮がついてますけど、玉ねぎって元は白いんですよ。皮が茶色いのは玉ねぎを掘り起こして暫く置いて乾燥させた状態なんです。でも先輩にはその茶色い皮の部分がないんです」

桜子の話の振り幅は広い。
化粧品の話から、それぞれのワインに合うマリアージュはなにか、それから動物行動学、そして野菜ソムリエかと言った話しまで多岐にわたる。

そんな桜子だから幅広い付き合いも出来るのだろう。変な話だが、年配の男性への受けはいい。何しろ、毎朝経済新聞に目を通し、前日の株価のチェックも怠らず、時事にも詳しい。話題作りに事欠かないための知識なのかもしれないが、世情に詳しいということは、桜子の中では重要だ。ようは、物事を知っておくことが、彼女の武器にもなる。策略家と言うのは、そうでなければなれないからだ。

「新玉ねぎは乾燥させず出荷するので水分が多くて辛みを感じにくくて甘味を感じるんです。先輩ってそんな感じなんですよ。まさに道明寺さんに土の中から掘り起こされた状態なんです。だからみずみずしくって甘いんですよ。道明寺さんはそんな先輩が可愛くて仕方がないんだと思います。それにその白い玉ねぎを剥くのが楽しみなんですよね?道明寺さん?」

桜子は持論を展開した。
何しろ恋愛の研究をするのは好きだ。自称恋愛研究家と言っているほどだ。

「桜子。じゃああんたは長らく放置された茶色い皮の玉ねぎってことよね?辛みがあるから水に晒しても生で食べるにはあまり向いてないってことよね?」

滋は司とつくしが入籍をしたと聞き、急遽、滞在先のアメリカから帰国した。
何しろ紹介したのは自分だ。親友のつくしがやはり男だが友人である司と結婚したのだ。
こんなに嬉しいことはない。二人が真実の愛を見つけたと喜んでいた。

「ちょっと!滋さん!なんてこと言うんですか!まるでトウが立ったみたいなこと言わないで下さいよ!」

桜子は磨き上げられた自分の容姿に自信を持っているだけに滋の言葉にムッとしていた。
トウが立つとは野菜などの花茎が伸び、食用に適する時期を過ぎたことだ。それを人間の年にも当てはめ使われるようになっていた。

「でも桜子、自分からトウが立ったなんてあんたいいこと言うわね?食べ頃過ぎちゃってる自覚があるんだね?」
と、滋は笑った。
「そんなこと言ったら滋さんだってそうじゃないですか!」

「あのね、あたしは自覚してるからいいの。ふきのとうだろうが、菜の花だろうが、花は咲くでしょ?人生いつその花が咲くかなんてわかんないんだからいいのよ。トウが立ったって言われる女だって料理の仕方によっては美味しく食べられるんだからね?」

アメリカ在住のロシア人とつき合っている滋は、女は年を重ねるほど魅力的になると考えていた。

「だいだいあんたもいい加減誰か一人に決めなさい?つくしの部下にあんたと気が合う子がいるらしいじゃない?その子とかどうなのよ?」

滋はつくしから自分の部下が桜子と妙に気が合うと聞いていた。

「紺野くん?まさか!止めて下さいよ!あたしは年下の男の子なんて趣味じゃありませんから!それに今のわたしは男性とはつき合ってません。休憩中なんです!滋さんこそロシア人の男性とはどうなんです?もしその殿方と本気ならあたしのことなんてほっといてその方とさっさと結婚して下さい?」

「ちょっと、ふたりとも、待って」

ケンカになりそうな気配を察し、つくしは口を挟んだ。
桜子は滋を睨みつけ、滋はそんな桜子に声をあげて笑った。
もちろん桜子も滋もこんなやり取りでケンカになることはない。単なるたわいもないやり取りだ。

「それより、つくし、あんた司の会社で働くことになったのよね?」
滋はつくしに向き直って言った。
「え?・・うん」
「へぇ~。そうなんだ。なんだか楽しみね?」






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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2017.02.13 12:36 | 編集
司×**OVE様
司、デレデレののろけまくり。(笑)
いい年した大人ほど、普段クールな男ほど、そのギャップが見てみたいですねぇ(笑)
新玉ねぎだと言った類と桜子。
博識な桜子。類の言葉もピンときたようですね?(笑)
確かにまだ土の中から掘り起こしている最中かもしれませんね(笑)
そうですね、この類くん。つくしちゃんとは全くの他人です。
さすがに司の妻になったばかりの人を「牧野」とは呼べませんね。
道明寺HDに転籍したつくしちゃん。そして紺野くんはどうなる?(笑)
え?桜子と紺野くんが付き合う?桜子と紺野くん・・でも、紺野くんは支社長に憧れてますのでどうでしょうねぇ。
えっと、明日は・・・記念日のお話しです^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.02.13 21:41 | 編集
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