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2015
09.20

キスミーエンジェル20

結局その日の調査も悪天候で中止になった。

数時間後、つくしは新幹線の中で目を閉じていた。
手元には新作のミステリー小説があったが読む気にはなれなかった。

あのど厚かましい変態男は無邪気なのか、それともすべて計算のうえのことなのか。
いい年をした男が無邪気だなんてあるはずない。まさか道明寺が隣で寝ているなんて思いもしなかった。
それも裸で!
何かしようと思えば出来たはず・・?



******



俺は金曜日の朝から退屈な会議に出るはめになった。
参加者全員がまさに雁首揃えて俺の方に注目し会議が始まるのを待っている。
が、どうやらまだ来ていないヤツがいるらしい。
俺は腕時計をちらっと見た。
いい度胸してるヤツがいるもんだな。
進行役の男はそんな俺の態度に肝を冷やしているのか生唾を飲み込む音が聞こえそうな
くらいだ。

あの日、ほんの数時間前まで一緒のベッドで寝ていたと言うのに
何も起こらなかったような牧野の態度。
まあ、実際何も起こりはしなかったが、完全に無関心な態度に俺はひどく気分を害した。

女に無関心な態度を取られるのは慣れてない。
女の多くは金持ちを好む。
連れの男のステイタスを重んじブランドのバッグ、高級車、装飾品そして最後には左手に嵌まる大きな指輪を欲しがる。
中身のない女たちだ。
でも牧野は違う。中身がある。
牧野は俺の姉ちゃんを連想させる。
姉ちゃんは金持ちの家に育ちはしたがブランドや世間体を気にしていなかった。
そしてどちらも気が強い。
この俺がそんな牧野に指輪を嵌めてやりたいと望んでいるのに、当の本人は断りやがった。




「申し訳ございません、遅くなりました」

その声に入口へと目を向ければ、息を切らした牧野が駆け込んで来ていた。
手には牧野愛用のいつもの鞄が握られていた。
そしてその顔は・・・・ひどかった。
いつもはきちんと身だしなみを整え隙のない牧野だが、今日はどうも様子がおかしい。
どうやら牧野は調子がよくないようだ。顔色が悪いし髪の毛の扱いもぞんざいだ。
しかし、この会議に牧野が来るとは知らなかった。

牧野、大丈夫か?
俺はすぐにでも牧野の傍へ駆け寄りたかった。

「皆さん、遅くなり申し訳ございません」
そう言って頭を下げている牧野の声は少しかすれていた。

「気にするな、まき・・島田コンサルタントさん」



俺は誰かが報告書を読み上げている間も牧野から目が離せなかった。
そしてその誰かが牧野の提出した資料についての質問をしている。

「はい、その件については・・・・・・えっと・・・」
そう言いながらその資料の元になった何かを探しているようだ。
いつもの牧野なら決して言葉に詰まるような受け答えはしない。
やはり牧野は様子が変だ。

「 おい 」
俺の呼びかけに反応したのは牧野とその誰か。
「はい、なんでしょうか?」
そう答えたのは牧野。
「おい、そこの男、そんなくだらない質問なんてするな」
牧野を困らせるような男は必要ない。



会議が終わり皆が出ていく。
俺は牧野に歩み寄り声をかけた。
「牧野、大丈夫か?調子が悪いのか?」

牧野は自分が手にしている資料フォルダに目を落としている。
「さっきはありがとう」
「変態男だってたまにはいいことをするだろ?」
俺はほほ笑んでみせる。

牧野はこのまえ自分が俺に向かって言ったことを分かっている。
分かっているからこそなのか顔をあげようとしない。
どうした?
「まき・・」
「ごめんなさい・・今朝から・・調子が悪くてね。ちょっと風邪気味なのかな・・」
とつとつと話す牧野はやはり変だ。
「おい、おまえ熱があるんじゃないのか?」
「・・ん・・ちょっとね・・」

そう言って顔をあげてきた牧野のデカい瞳は潤んでいる。
俺は牧野と目を合わせた。熱のせいで潤んだ牧野の瞳。
そして俺は思わず牧野の額に手を添えてみた。


こいつやっぱり熱があるぞ。
「おまえ仕事なんてしてる場合じゃないだろ?」
「大丈夫だから」
「バカかおまえは!おい、すぐ帰るぞ。 北村すぐ車をまわせ!」









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