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2017
02.01

Midnight Dreams 後編 1/2

文句のつけようもない美しい男が、脚を優雅に組むさまは、どこか気だるげで何か誘うような雰囲気がある。
司はソファに腰かけ、妻を見た。

「命令したつもりだが?俺のいう事が聞けないのか?」

今夜は王になっていいと言われた俺。
そんな俺の言葉に妻の背筋がピッと伸びた。
おまえは子供か?と内心で笑いを堪えた。

望むことをしてあげるからと言ったこいつの顔は、いつもと少しだけ違っていた。
だが、恥かしい言葉を何度も囁かれ、言わされ、そんなとき浮かべる羞恥とも言えるその表情と同じで、頬が赤く染まっていた。
いい加減その恥ずかしがるってのを止めてくれねぇか?俺たち夫婦になって何年経つと思ってる?まあ、そんなこと言ったところでコイツの性格が変わるわけねぇか。

だが、俺が望むことならなんでもしてあげるといった妻。

その言葉に歓びを隠せない俺。
これが二人だけの甘いゲームだと分かっていても、顔に浮かぶのは歓びではなく、官能的とも言える表情。元来育ちがいい男には、エレガントな中に見え隠れする粗野な仕草がある。だがその仕草を見せるのは、妻となった女の前だけだ。決して普段は見せることのないその表情は、野性の動物が見せる狩をする直前の飢えた瞳のはずだ。

「どうした?下着を脱いで渡せと言ったが?」

今夜のドレスの胸元は、大きくV字にくれたカシュクール。フロントで交差する柔らかな布地と、裾がアシンメトリーとなったデザイン。身に纏ったその色はサーモンピンク。色白の女はどんな色を着てもよく似合う。
細い身体だが、胸元のドレープが小さな高まりを美しく演出し、歩くたび柔らかく揺れる裾から覗く綺麗な脚が、想像を掻き立てるが、褒める言葉を忘れることはない。
だが口をつくのは本心からで、決して世辞ではない。


そんなとき、いつも思うことがある。
妻と決して離れないようにと楔を打ち込みたい。
過去、一度離れ離れになった時があった。
それはNYで暮らした時。4年の約束が守られることがなく、結局6年となっていた。
だがその6年で10代の問題児だった男は大人になった。



ゆっくりと、たくし上げられるドレスの裾。
そこから覗く細く白い脚がある。だが、決してすべてを持ち上げようとはしない。
少し中途半端な姿勢ともいえる格好で、恥ずかしそうにドレスの奥で手を動かしている。

パーティードレスを身に纏うとき、今では必ずガーターストッキングを履いている。
だから、下着を脱げと言われても、簡単に脱げるはずだ。
ガーター姿のおまえが見たい、と言って以来、その望みを聞いてくれていた。それは脱がせる楽しみのためだけの装い。決して誰の目にも触れることのない場所だからこそ、身に着けさせた扇情的な下着と言ってもいいだろう。

昔のこの女なら考えられなかった。と笑みが漏れそうになる。

今の俺たちは、互いの服を脱がせ合うことがある。
そんなとき、やはり恥ずかしそうに頬を染める妻。そんな女の服を一枚脱がせるたび、露になっていく白い肌にキスを落し、肌がバラ色に染まるのを眺めるのが好きだ。
そして前の晩、バラ色の印をつけたその場所に、再びキスをし、永遠の印として残すことを忘れない。

目の前でじっと見つめる俺に視線を合わすことなく、恥ずかしそうに下着を下ろしたが、足を抜こうとしたとき、下着にヒールがひっかかり、転びそうになる寸前のところを立ち上がって慌てて受け止めた。

「・・あ、ありがとう・・」

もう少しで笑うところだ。
バカ正直な妻は一度約束をしたことはどんなことでも守ろうとする。
それも昔から変わらないコイツの愛すべき人間性。
けど、今夜は無理をするなとは言わない。
だって今夜は俺の誕生日だろ?
望みを聞いてやると言った妻。
それなら聞いてもらおう。




「あの・・これ・・」

慌てて抜き取ったシルクの下着は、俺が選んで身に纏わせたもの。
既に夫の全てを甘受することを待ちわびているかのように、湿り気を帯びていた。俺は受け取った小さな布切れを上着のポケットに押し込んだ。


引き寄せた細い身体は、パーティーで飲んだアルコールのぬくもりが身体中に染みわたり、熱を持っていた。頬は染まって、黒い瞳は未だに戸惑っているが、結婚してからも変わることのない妻の初心さが好きだ。

結婚していても近寄ってくる女はいる。一夜限りの関係でもいい。
その身体に抱かれたいと笑顔を浮かべ、品を作る女たち。当然そんな女たちに興味はない。俺が欲しいのは、昔も今も変わることはないひとりの女だけ。

そしてこれから先も。

少し力の抜けたこの小さな背中をベッドに横たえて愛したい。
柔らかな曲線を描くこの身体が欲しい。現実と想像との両方が頭の中で渦巻く今、ただひとつだけ言えるのは、妻が欲しくてたまらないと言う思い。

そうだ。いますぐ妻が欲しい。

いつにもまして。



司は身体を離し、タキシードの上着を脱ぎ、あいているソファに放り投げ、妻を見た。
そして、タイをむしり取り、シャツを脱ぐ。投げ落とされたシャツは、されるがまま床に広がった。見事に割れた腹筋をさらけ出し、ベルトのバックルを外しながら、片時も妻から目を離さかった。まだドレスを纏ったその姿に、これからそのドレスを脱がす歓びに、まるで自分の大切な持ち物を誰の目にも触れさせたくないと視線を外すことが出来そうにない。そして、妻の瞳に浮かぶ反応を楽し気に眺めていた。

司の瞳。それは獲物を狙うハンターの視線。
そして、微かに香る男の匂いと官能が、目の前に立つ女に与える影響を知っている。

香りとは、遠い記憶の扉を開く手助けとなるほど深く脳内に残るものだ。
昔と変わることのないこの香り。俺だけのために作られ、他の誰も持つことのないその芳香。
初めて会った時から身に纏い、初めて愛し合ったときも、結婚したときも常にあったこの香り。この香りを幸せな香りだと感じて欲しいといつも望んでいる。

俺の前にいるシェヘラザードは物語を語れない。
その代わり、望みのままにしてあげると言った。


テーブルに置かれたワインクーラーからワインを取り、栓を抜いた。
今夜のために用意されていたワイン。
フランス、ボルドーにあるシャトー・ラフィット・ロートシルトのビンテージ。
世界最高峰の赤ワインと呼ばれ、優雅な香りと奥深い味わいがあり、「王のワイン」と呼ばれている。黒い宝石が醸し出すアロマを感じさせ、まさに王にふさわしいワイン。
俺が生まれた年に作られ、俺と同じだけ年月を重ねてきたワイン。
そのワインを二人だけで楽しみたい思いがあった。

そしてその隣に置かれていた、黒いブドウの実。
シャンパンに添えられるのがイチゴとすれば、赤ワインのベストマリアージュは何か?
だが、そんなことは関係ないのかもしれない。
だから添えられたブドウの実を喜んで使うことに決めた。


グラスに注がれた赤ワイン。
ひとくち口に含み、無言で妻に差しだした。
そして、薄い唇の端に、官能的とも言えるものを張り付け、言った。

「物語を始めようか」








司は物語を語り始めた。

「むかし、ある王国にひとりの少女が住んでいた。その少女はブドウを育て生計を立てていた。だが、ある年、ブドウの木が病気にかかって実がつかないことがあった。その少女が育てたブドウは、葡萄酒として王様に献上される決まりになっていた。だがそれが出来ないことになり、怒った王様はそれなら別のものを差し出せと言って来た。だが少女は差し出すものなど何もなかった」

妻の手からグラスを取り上げ、テーブルに戻した。
そして右手を背中にまわし、ドレスのファスナーをゆっくりと下ろした。
望みのままにさせてやると言った以上、約束を果たすと決めたのか、妻はその場にじっとしている。だが、大きな瞳の中に見え隠れするのは、やはり恥じらいとも言える表情。
そして相変わらずの上目遣い。そんな顔で俺を見たらこの先どうなるかわかってんのか?

「差しだすものが無いなら、おまえ自身を差し出せばいいと王様は言った。その少女は王様のその言葉に、召使として下働きをするものだと思い荷物をまとめ、宮殿へと赴いた」

ファスナーを下までおろすと、ドレスは床に落ちた。
すると、ブラとガーターベルト、ストッキングとハイヒール姿の妻が現れたが、大切な部分を覆い隠すものが無いことが心もとないのか、両足をぎゅっとくっつけて、恥ずかしそうに俺を見つめている。そんな顔するからイジメたくなるんだ。

・・ったくこの女・・どうしてやろうか?
いつまでたっても俺を翻弄する女はやっぱりタチが悪い。
司は眉を上げ、話を継いだ。

「だが少女が案内されたのは召使の部屋ではなく、王様の寝所だった。そこで王様は言った。
おまえのことが気に入ったから俺のものにする。これから先ずっとこの宮殿で暮らすんだ。
告げられた少女は驚くしかなかったが、王様の命令は絶対だ。言う通りにするしかなかった」

司は妻の背中にあるブラのホックを器用にはずし、床に落とし、乳房をさらした。
そして、スラックスのジッパーを下げ、脱ぎ捨て、おまえのせいで俺はもうこんなになったと見せつけた。耐えがたいほどの高まった状態だった黒いシルクのボクサーブリーフからは、欲望の塊が首をもたげ、そわそわと欲求不満を訴えているが、もう我慢出来そうにねぇ。

「そして王様は言った。服を脱いでベッドに横になれ。これから俺がおまえのブドウの実を味わってやる。と」

ガーターストッキングだけを身に着けた白い身体を眩しく思いながら、細めた黒い瞳でじっと妻を見つめていた。目の前にある膨らみに見入り、まだ触れていないその感触を思い浮べたが、これからその頂きにある実を味わいたい。

自分だけの果実として。

妻の手をとり、指をすでに硬くなり極限まで張りつめた男としての証に触れさせながら、唇を近づけた。

「・・今夜は俺を楽しませてくれ・・」

ゆっくりと味わう唇。
キスをせず、唇を舌で舐め続け、丹精込めていたぶり、そして焦らしを与えた。
閉じられた瞳と、染まった頬。そして荒くなる息づかい。やがて女の睫毛が震え、柔らかな上唇が下唇と離れた。司はその間に舌を差し入れると、先ほどまでその口に含んでいたワインを味わった。

「・・・んっ・・」

と声が漏れ、その声に己の硬直したそれが硬さを増したのを感じていた。
頭をもたげ、優しく添えられた小さな手の中で早く解放してくれと訴えている。

いつもなら二人で楽しむキスという行為。だが今は妻に対する思慮も忘れ、ただ奪い尽くしたい思いがある。かつて、暗闇の堕天使だと言われた頃のように、自分を制御することなく奪ってしまいたい。内奥にある欲望にブレーキをかけることが出来るはずもなく、その身体を離すことなど永遠に出来ないはずだ。もし、善良な女が俺と一緒に地獄に落ちてくれるなら、すべてを投げ打ってもかまわないほど腕の中にいる女が欲しくてたまらない思いだ。



司はテーブルの上のブドウの実を取ると、言った。

「べッドに横になるんだ」





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コメント
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dot 2017.02.01 12:28 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2017.02.01 14:36 | 編集
さと**ん様
大人の司の誕生日、あと一話です。
「物語をはじめようか?」
クサイ台詞を吐く、相変わらずの司ですね(笑)
司は何を求めているのでしょうねぇ。(笑)
つくし以外欲しくはないと思いますので、おいしく召し上がって下さい。
『エロ美しい』新しい言葉ですね?(笑)
有難うございます。喜んで戴きます。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.02.02 00:48 | 編集
司×**OVE様
こんにちは^^
後編2分割。そうなんです。長くなりすぎていましたので、切りました。
つくしちゃんというプレゼントを食べるまであと少しです(笑)
なんだか、だらだらと長くなってしまいました。
アカシアのお話しの海外は、本人が訪れた事のある国が書かれていると思って下さい(笑)
お仕事は・・・ごにょごにょ(笑)
明日はどんなお話しなのでしょうねぇ(笑)
最終日も楽しんでいただけると幸いです^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.02.02 01:01 | 編集
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