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2017
01.27

エンドロールはあなたと 54

つくしの両親に会いたいと言った司に、うちの家族って最高なの。   
そう言ったつくしが紹介したのは両親と弟。
家族は彼女を入れ4人。その中でつくしだけが家を出てひとり暮らしをしていた。

母親は、娘は結婚しないのではないかと諦めていた、と目に涙をため、父親は呆然とした表情で司を見た。弟はめちゃくちゃ頭がいいの。と言って大学の研究室で働いている青年を紹介された。出されたコーヒーに手をつけたのは、その弟だけだ。


「あの、道明寺さん。大丈夫ですか?つくしは33歳ですよ?あなたみたいな人が何もうちの娘みたいな行き遅れを選ばなくても、他に若くて素敵なお嬢様がいらっしゃると思うんですが・・」
父親が真剣な表情で語りかけた。
そんな父親はごく普通の会社員。勿論国際的な経済人である道明寺司のことは知っている。

「いえ。結婚するのは彼女じゃないと困るんです」

つくしの父親が真剣なら司も真剣だ。
まるで、何か深刻な問題が持ち上がり、検討を重ねなければ大変なことになる、といった男の顔に父親は娘を見た。その目は本当にこの人と結婚するのか?と聞いていた。そんな父親に向かって黒い大きな瞳は頷いていた。

「道明寺さんがそれでいいならうちは一向に構いませんが、その・・でも何がそんなによかったんでしょうか?それにうちはご覧のとおり庶民的な家でして・・つくしもごく庶民としての考えしかないのですが・・」

やっぱり信じられないと半信半疑の顔で司を見る父親。
父親にしてみれば、まさに青天の霹靂ともいえることだろう。何しろあの道明寺財閥の後継者である男が、自分の娘と結婚したいと言って来たのだから。

娘は大学を卒業してからずっと一人暮らしだ。自力でマンションも買い、立派に自活していた。これからもずっと一人で生きて行くものだと思っていた。それが突然結婚したい人がいるから会って欲しいと連れてきた男性が道明寺司なのだから、驚くなという方が無理だ。
玄関先に黒塗りの車が横付けされ、磨き抜かれた革靴の男と共に降りて来た娘を見たとき、腰が抜けそうになっていた。

「彼女は運命の人ですから。それにもし女に若さを求めるようなら調達するのは簡単です。ですが、わたしはそんなものを求めてはいません。ましてや人生を粉飾するような女性はお断りです。人間には不器用さも必要ですから」
と、司は大真面目に言った。

調達だの粉飾だの企業家らしい言葉を返され、思わず苦笑しそうになった父親。
だがそのとき、娘の隣に座る男が、娘の手を取り、その手をそっと握った姿を見た。
その指には、結婚すると決めたとき受け取った指輪が嵌められている。そんな手を握る男の姿は、娘さんと結婚させて下さい、と言いに来た男の緊張の表れなのだろう。そしてそれは、どんなに立派な肩書を持つ男でも、こんな時はごく普通の男だということの表れだろう。そんな男の態度は、率直というのか、ブレがないというのか、とにかく娘に対しての気持ちは真剣で、自分たち両親に対しては真摯な態度で臨んでいると感じられた。

父親は娘の顔をじっと見た。
「つくし・・いいんだな?おまえがいいなら父さんも母さんも反対はしない」

反対はしないが、その代わり苦労することを心配した。
なにしろ生活のレベルが違い過ぎる。だが娘が自分で選んだ道なら反対する理由はない。
それならその道を進めばいい。だから幸せにしてもらえ、と言った。

父親は司へと視線を移した。

「道明寺さん・・どうぞ、娘を、つくしをよろしくお願いいたします」






つくしのことを不器用だと言った司の言葉。
上っ面を飾り立てるような人間はいらないと言った男が欲しかったのは、いっとき家庭や夫よりもキャリアを求めた女。それは今までまったく彼の周りにいなかった女だ。

係長に昇進してからも忙しくしていたが、担当していたクライアントが道明寺だっただけに、融通は利く。社内に打ち合わせにくれば、会えることもあった。
そして、この仕事が終れば司と結婚すると言ったつくし。

そんなつくしに声がかかるのは当然と言えば当然の話だろう。
未来の義母、道明寺楓がつくしの脳力に目をつけたのはあたり前だ。
仕事は能力があれば、どんな仕事でもすぐ覚えることが出来るわ、と言って道明寺に転職を勧めて来た。結婚しても働きたいならうちの会社で働きなさい。司はあなたの助けが必要になることがあるかもしれない。それにうちの事業を知っておくことも重要よ。
どんなに優秀な男でも、助けが必要になることが無いとは言い切れないわ。と言って。

この親子はその表情から、ビジネススタイルまで同じだが、そんな男の中身はかなり熱い。クールな外見に熱い中身という男は当然母親の提案に賛成した。

そこからの司の行動は早かった。




***




「愛し合う二人の行動は予測不可能なのよね」

コーヒーショップから広場を挟んで向かいにあるビルの入口で、車から降りてきた司が、女性と建物の中に入っていく姿を見かけた桜子と紺野。二人は偶然この場所で出会っていた。
そんな二人が見つめる先、大きな男が小さな女の後を追いかけている姿は微笑ましい。
でも営業から帰って来た女が、自分の彼氏が会社にいることを驚くのはあたり前だ。
恐らく昼メシでも喰いに行こうと誘いに来たのだろう。そしてその行動に慌てる女。
男の口が何を言って、女の口がどう返事をすのか容易に想像することが出来る。

「本当ですね・・三条さん。あの二人は予測不可能です」
紺野は小さくため息をついていた。
「なによ?紺野君?二人が幸せなことに不満があるの?言っておくけど、あたしこう見えてあの二人を応援してるの。だからそんなため息つかないでくれる?幸せが逃げるでしょ?」

「僕だってお二人が幸せになることは嬉しいです。それに牧野主任が係長に昇進したことは嬉しいんです。でも、うちの会社を辞めて道明寺に転職してしまうかもしれないんです」

紺野は寂しそうに言った。

「そんなのあたり前じゃない!あの道明寺さんがいつまでも自分の恋人を他人の会社に置いておくはずないでしょ?」

桜子の言い分は恐らくその通りだ。
司がいつまでも恋人を自分の管轄外に置いておくはずがない。

「他人の会社って・・そんな言い方しないで下さい。でも、ここだけの話ですが、もしかしたらうちの会社道明寺HDに買収されるかもしれないんです。ほら、道明寺グループの中には広告を扱うハウスエージェンシーがないんです。だから今まで外部発注だったんですけど、恋人が広告代理店に勤めてるなんてことになったら、会社ごと欲しくなったんでしょうね?それって係長へのプレゼントですかね?」

「道明寺さんのことだから、先輩のことを考えていらっしゃるのよ・・さずが道明寺さんだわ」

会社をまるごと買収して恋人に贈る男。
うっとりした桜子も熱弁をふるう紺野も妙に納得して頷き合っていた。

「でもお金って色んな使い方が出来ますけど、道明寺支社長の使いっぷりって本当に凄いですね?好きな人のために会社を買収しちゃうんですから。うわっ!でも本当にそうなったらうちの会社、道明寺グループの一員ですね?」

「何よ?紺野君はそんなに嬉しいわけ?」

何故か自分がのけ者にされたように感じた桜子の言葉には棘が感じられた。
あたしの方があの二人のことを詳しく知ってるわよ。と言いだけだ。

「あたり前じゃないですか!道明寺支社長は僕の憧れの人なんですから!牧野係長は僕の上司ですけど、道明寺支社長は僕のボスですから。僕、これからもお二人について行きます!」





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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2017.01.27 12:57 | 編集
司×**OVE様
こんにちは^^
つくしのお父さん。33歳はまだ行き遅れではありません(笑)
本当にそうですよね(笑)
司はつくしの会社を買いましたねぇ(笑)
さすが財力がある方は違いますね!紺野くんは今後どうなるんでしょうか・・
桜子とは気が合うようです。いいコンビですね?
司とつくしを一緒に仕事をさせると大変なことになりそうです(笑)
恐らく仕事にならない・・でも大人ですからねぇ。
無茶苦茶なことはしない・・とは断言できません(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.01.28 00:00 | 編集
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