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2017
01.18

エンドロールはあなたと 46

「ルビコン川か・・」

武装して渡ると宣戦布告になると言われていた川をジュリアス・シーザーは武装して渡り、宣戦布告をした。紺野が例えた川の話を気にしていないといえば、嘘になる。
始めからわかっていたこととは言え、二人の間には確かに見えない川が流れているはずだ。
格差社会と言われる現代においての頂点にいる男と付き合うことに、迷いがないかと言われれば嘘になる。道明寺から真剣だと言われれば、その先を考えるのはあたり前だ。
だが滋も桜子も気にするなと言う。しかしその根拠が一体何であるかは不明だ。愛に国境はないと言い切る滋は、今はアメリカに住むロシア人と交際していた。


鏡に映る女は平凡な黒い髪にこれと言って特徴のない顔。
でも道明寺はそんな顔を一晩中見ても飽きないと言った。
つくしは、ため息をつき、司からプレゼントされたサックスブルーのコートを着た。
誰が見ても高級だとわかる代物だ。だがコートの中身は至って普通のビジネススーツを着た女。世界的一流企業の御曹司とも言える男と、一介の会社員に過ぎない女が恋人同士でいることが不思議だと思う人間もいるかもしれない。

だが、今更つくしの会社が
「クライアントとの付き合いに感情を持ち込むな」
とは言わないが、道明寺側の態度は果たしてどうなのか?

つくしはビルの外壁へ取り付けられている大型ディスプレイを見つめていた。
視線は黒い髪を首の後ろで上品に纏められている女性の上で留った。そこに映し出されているのは道明寺楓だ。50代半ば過ぎのその女性に感じられるのは、冷たい印象だけが感じられた。

道明寺HDの社長であるその人は、断固とした決断力と商才を持ち、道明寺グループを牛耳ってきた。プライベートは無いといわれるほど仕事だけに生きて来たと言われている。つまり、ビジネスが生きがいだという女性だ。以前聞いた話だが、滋さんと道明寺との結婚を画策したのはこの人だと聞いている。

厳格な態度で目に見えない鎧を纏い、他人を寄せ付けないと言われる女性は、ビジネス界の魔女とまで言われている。そんな人がニューヨークから帰国するというのだから、自分の置かれている状況に、何かあるのではないかと感じていた。もし、会うことになるのなら気持ちをしっかり持とうと思っていた。


道明寺の彫の深さは母親似だろう。そして世間では道明寺司のビジネススタイルは母親にそっくりだと言われていた。つくしも初めはそう思っていた。だが最近は、つまり恋人同士になれば、仕事とプライべートは別だと知った。何しろ初めの頃は、徹底的な合理主義者だと言われていたが、つくしの前ではそうではなかったからだ。

紺野が言った意地悪な義母が出て来る映画は何があったかと頭を巡らせてみても、一向思いつかず、意地悪な継母ならシンデレラが思い浮かんだが、自分にはおとぎ話は似合いそうにない。まさか今更二人の関係がスキャンダルになるとは思えないが、何しろ相手は魔女だと言われているだけに、何が起こるか予測不可能だ。

恋愛心理学者とも言える紺野は苦痛が真の愛を育むと言うが、出来れば二人の間に苦痛を伴うことは避けたい思いがある。そんなことを思い急に不安でたまらなくなったのは、これからコマーシャル撮影が始まろうとしているからなのかもしれない。だから、今は目の前のことに集中しなければと気を引き締めた。


道明寺司によって絵コンテで示された内容が採用され、少し際どいとも思えるシーンも取り入れることになった。

後ろからコートを着せてもらうのを待っている女がいる。
その背後から男がコートの代わりだ、とばかりに自分の身体で女を包み込むように抱きしめる。そして男の手には深紅色のワインが注がれたグラスが握られている。

全てを飲み干されたワイングラスと飲みかけのグラスがベッドサイドのテーブルに置かれ、静まり返った寝室に人の姿はなく、奥からかすかな光が漏れている。
その光りと囁かれるように聞こえる声を追ってカメラが奥へと向かう。するとそこはバスルームだ。扉がゆっくりと開かれ、その先に映し出されるのは、男と女が身を寄せ合いジェットバスに入っている姿。胸から下はジェットバスが作る泡の中に隠れているとはいえ、こんなにセクシーなテレビCMを放送してもいいのだろうか?


正直言ってこの撮影シーンは刺激的な光景になるはずだ。
絵コンテからこの現状を再現させることにした司は、まるで自分の夢が現実化したかのように満足げだ。
司は担当者として当然だが現場に立ち合った。
「始めてくれ」
彼の言葉で監督の指示がとび、照明がつき、カメラが回り始めた。

思わずゴクリと唾を呑み込みそうになるほど、妖艶な男と女の姿がある。
軽くさりげない口調で話しかけようとするが無理だ。ごく最近、一緒に湯につかろうと誘われただけに、裸で一緒に風呂に入ることを想像することだけで頬が赤らんでしまう。

そんなとき、その手にするのは赤ワインではなく、シャンパンの入ったグラスになるのだろうが、ベッドの中でも恥ずかしいというのに、もしああしたら、こうしたらと想像せずにはいられない。
カメラはバスに浸かる男女を引きで撮っているが、肩を剥き出しで、ほんのりと頬を染めた女性と、その女性を背中から抱え込むような姿勢でいる男性に、見ている方が決まり悪さを感じるほどだ。

「なあ、まきの。俺とおまえがあんなふうに風呂に入ってたらあんなもんじゃ済まねぇぞ?」

「う、うるさいわね・・ちょっと静かにしてよ。今撮影中なんだから・・」

身じろぎもせず、撮影を見ている女は小さな声で返すも司は気にせず話かけてくる。

「なに恥ずかしがってんだ?俺たちならあんなふうに身体を寄せ合ってるだけじゃ済まねぇよな?」

面白そうににやりと笑う男は、隣でしかめっ面して鼻に皺を寄せる女が愛おしくてたまらないようだ。

「あとで俺が湯の下に隠れてる部分を使って教えてやるよ」

と、耳元で囁いた。
つくしの決まり悪さは今始まったものではないが、それでも顔が真っ赤になるのを抑えることが出来ずにいた。




***




道明寺楓は、ファッションセンス抜群の女性だ。いつでも経済雑誌の写真撮影に臨めるほどきちんとしている。実際に会ったことがある人間は彼女の存在感もだが、瞳の鋭さにも驚くことになる。まさに道明寺親子の証とも言える鋭い瞳は、相手を射抜くように見つめる。そんな女性は何かを感じたとしても、表情を変えることはない。社用機から降りて来たところで迎えの人間に聞いた。

「それで、司のおつき合いしている女性はどんな仕事をしているの?」

息子が最近女性とつき合いを始めた。そんな話が耳に入ったが息子もいい年だ。
親が干渉するようなことでもない。だが本気なのか?それとも遊びなのか?
確かめなければ。

「はい。牧野様と仰いまして広告代理店の営業です」
「そう。それで知り合ったのは仕事絡みかしら?」
「はい。ワインの広告の代理店としてお知り合いになられました。ですが、それと同時期に大河原様からもご紹介を受けたそうです」
「大河原滋さんから?」
「はい」
「・・そう」

相手を敵とみなせば、魔女はどうするのだろうか?

「その牧野さんって方。どんな女性なのかしら?お会いしたいわ」





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コメント
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dot 2017.01.18 15:05 | 編集
司×**OVE様
こんにちは^^
司は大人ですから、色々な意味で大丈夫です。
楓さん、帰国です。さて、これから何を話してくれるのでしょうか・・。
滋と桜子に報告!(笑)そうですよね。報告してないと桜子がうるさいですね。
まさにそんな状況が生まれそうです。
紺野くんと桜子の女子力UP対談!・・・どうでしょうか(笑)
あの二人が会うととんでもない会話になりそうです(笑)
でも、楽しそうですね。その様子が目に浮かびそうです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.01.18 22:26 | 編集
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dot 2017.01.18 23:42 | 編集
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dot 2017.01.19 00:18 | 編集
さと**ん様
あんなもんじゃ済まねぇ入浴シーン。
えっと、頭の中にはあります(笑)
湯の下に隠れている部分を使って教えて・・(笑)
こんな台詞を吐く司。さすがベテランです。
初心者つくしは大変です。
司によるプライベートレッスンはまた別の機会にと思っています(笑)
コメント有難うございました^^

アカシアdot 2017.01.19 00:31 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
セクシーなCMは司の望みが叶ったようです。
クライアント様の意向が大きく働きました。
紺野くんが立ち合っていたら大変なことになります‼
愛が見えてこない発言!( ゚Д゚)紺野くん、まだ諦めていないのですね!
楓さん、どう出るのでしょうか?
その前に・・あの人たちが騒いでいますので少しだけおつき合い下さい^^
同盟解散しませんね?(笑)良かったです。古いネタも大歓迎です(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.01.19 00:42 | 編集
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