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2016
12.27

エンドロールはあなたと 37

仕事ではどこか勝気な印象があった牧野。
だが司の予想通り、明らかにうろたえ、顔を赤く染めていた。
印象的な黒い瞳は大きく見開かれ、何か言いたげに司を見た。
だが司に握られていた手を引き抜くと、目を閉じ何か考えた末、また開いた。
司はそんな女をじっと見つめた。


・・バージンだと言ってしまった。

聞かれたとは言え、こんなことをこれからつき合う男性に言うことは利口なのだろうか?
もし、目を開いたとき、面白がっているような表情があれば、どうしようかと考えていた。
手を強く握られたが、道明寺司の表情は変わらない。何を考えているか分からないような表情でポーカーフェイスだ。

30歳をとっくに過ぎた女は、年季の入った壁の花のようだと思われているのではないか。 そんなふうに思っていたが、勇気を出して好きだと言えたのだ。恋に奥手だと開き直ったが、どこまで口にすればいいのかと考え、引き抜いた手を両膝につき、姿勢を正した。

「あの、その・・あなたには色々と面倒なことかもしれないんだけど・・その・・」
つくしは何故かはっきり言葉に出来ず、ぼそぼそと呟くように言った。
「それでも・・あたしとつき合いたいって思う?」

「冗談だろ?」

司の口から放たれた冗談だろ、の言葉につくしは軽くショックを受けた。
命がけとまでは言わないが、つくしは決死の思いで告白したというのに、初めての女の相手をするのは、やはり面倒だということなのだろうか。正直に告白したことに恥ずかしさが募った。もしかして嘘をついた方がよかったのだろうか?
手を両膝に置き、姿勢を正したままどう言葉を返したらいいのか考え、口を開いた。

「じょ、冗談って・・やっぱり・・そうよね?いい年した女が経験ないなんて、やっぱりどこかおかしと思うわよね?べ、別にかまわないのよ・・やっぱりそんな女は面倒だって思うなら、今の話はなかったことにして、聞かなかったことにしてくれたらいいから」

気にしないでいいからといった体で言ったが、男性と性的な話しをしていることに恥ずかしさが増すばかりだ。
それも相手は世界中のどんな美女でも、望みのままになるような男だというのに、あたしみたいな女が生意気な口を利くなと言われそうだ。

「経験のない女を相手にするのが嫌っていうのも仕方がない話しよね?いい年した女が経験がなくて、そんな女と・・その・・関係を持ったばっかりに責任を取れなんて言われたら困るものね・・お、重いわよね。そんな女なんて・・」

それ以上何を言ったらいいのか分からないつくしは黙った。
道明寺司みたいな男が何も好き好んで、セックスの楽しみ方も知らないような女を選ぶ必要なんてないもの。どう見ても男盛りの男だ。未経験者なんて物足りないはずだ。
つくしは自分の勇気もこれまでかと感じ、これ以上この場の空気が耐えられないものに変わる前に、なんとかしなければと考えた。礼儀正しく挨拶をして別れるか。それとも黙って席を立つか。

それとも――

「悪かった。俺の言い方がまずかったよな?冗談だろなんて言ったもんだから誤解させちまったけど、違うな。さっきの冗談だろってのは信じられねぇって意味だ」
つくしの言葉を司は否定した。
考え事をしていたつくしは慌てて我に返ったが、言葉に詰まった。
「ち、違うの?」
司がにやりとした。
「誰が初めての女が嫌だなんて結論を出した?おまえとセックスしたくない男がどこにいるって?俺はおまえと愛し合いたい。ただ俺は初めての女を相手にしたことはない。だからむしろおまえが初めてってのは嬉しい驚きだな」

つくしは予想外の言葉を言われ驚き、司をじっと見つめた。
男性と性的な会話をすること自体が初めてで、恥ずかしさばかりが先立つが、それでも大切なことだと思っていただけに気持ちが聞けて良かったと感じていた。

「そ、そう・・。道明寺・・さんがそれでいいなら」
「ああ。俺は問題なんて全くない。いや。ひとつ問題がある」
「な、なに?」
「俺を呼ぶとき道明寺さんってのはもう止めてくれ。俺の女になるってのに、いつまでも道明寺さんじゃおかしいだろ?」
「でも、あたしたちは仕事の関係で知り合って、それに実際一緒に仕事を始めてるんだし・・」
そこまで言ったところで、話を遮られた。
「なあ、牧野つくし」

道明寺司の持つ独特の低い声がゆったりと話しかけてきた。
ゆったりと椅子にもたれ、黒い瞳にどこか微笑みを浮かべ、余裕を感じさせる態度は彼らしいと思った。テーブルの向う側にいるとはいえ、その距離は殆どなく、手を伸ばせば触れられる距離だ。実際先ほどは手握られたほどだ。

「これから俺たちはつき合うことになった。それについて周りが色々と言ってくるかもしれないが、気にするな。おまえは自分の恋人が特別な誰かってことを考えるな。俺のことはどこにでもいる男だと思って欲しい。俺たちは互いに価値を認めあった人間としてつき合っていきたい」

ビジネスでは冷淡な眼差しを向けることが多いと言われる男からの優しい眼差し。

「それに俺は女に恥ずかしい思いをさせるのは嫌いだ。・・と、言っても俺が真剣につき合いたいって思えたのはおまえが初めてだ。だからおまえが俺と仕事をするにあたって何か言われるようなら、俺に言えばいい。公私混同なんて言ったが、おまえのことを、うちの会社の誰かが陰口を叩くなんてことはねぇ。それに、おまえを医務室まで抱えて運んだことが後を引くなんてことはしてねぇから心配するな」

司はひたすらつくしを見つめていた。
その視線はまさに、狙った獲物は逃さないと言っている。そして自分のものは大切に守るといった態度。つくしは椅子に座っていてよかったと思った。もしそうでなければ、その瞳の強さに目眩がしてしまうほどだ。

「とは言っても、さっきおまえの会社での俺の行為は、公然の事実だからな。今頃社内で広がってるんだろうよ。あの男、おまえの部下か?紺野ってやつ。あの男が呆然とした顔で俺たちを見送ったのが傑作だったけどな」

司は込み上げてくる笑いを押さえると、取り澄ましたような笑みを浮かべた。

そうだった!
つくしは司にエレベーターに連れ込まれる前に見た、紺野の顔を思い出していた。
今まで以上に色々と聞かれることは間違いない。

「・・それからおまえは心配しなくていい」

司の言葉はつくしの頭の中に入って来なかった。何しろこれから社に戻ってから繰り広げられるであろう事態を想像していた。社内でいきなりキスをされた女はどんな態度で戻ればいいのか。それに今頃社内は蜂の巣を突いたような騒ぎになっていることは確かだ。
いきなり現れた男とキスをした女は社内の風紀を乱したとして処罰の対象になるのだろうか。
つくしはテーブルの上の水を飲んだ。
もしかして減給される?それとも・・まさか退職に追い込まれる?

「俺がじっくり教えてやるから」

つくしは頭の中が会社のことで一杯だ。
だから男が何かを教えてやると言っていることに気づくと、真顔で司の目を見て聞いた。

「なにを?」

「俺と愛し合うこと。つまりセックス」

司は自分が牧野つくしをからかうのが好きに違いないと感じた。
なぜなら、牧野つくしが顔を真っ赤にしている姿が、なんとも言えず可愛らしく感じてしまうのだから。






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応援有難うございます。

昨日はある方の訃報に接し、大変驚きました。
恐らく坊っちゃんも、つくしちゃんも、聞いたことがあるクリスマスの定番ともいえる1曲「Last Christmas」を歌われた Wham!のGeorge Michaelさんが25日にお亡くなりになりました。53歳という若さと、25日のクリスマスが、彼にとって本当に最後のクリスマスとなってしまったことに、心よりお悔やみ申し上げます。  
R.I.P. George Michael  
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コメント
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dot 2016.12.27 08:24 | 編集
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dot 2016.12.27 10:45 | 編集
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dot 2016.12.27 13:36 | 編集
み*ちゃん様
おはようございます^^
やっとおつき合い出来るところまで来ました。
つくしちゃん、考え過ぎですね。
若い頃も色々と悩む人でしたので、大人になってもそのようですね?(笑)
大人の司に色々と教えてもらって下さい(笑)
ど~んと任せて・・(笑)坊っちゃん、どんなこと教えてくれるのでしょうか?(笑)
ワム!・・クリスマスの定番ソング。失恋の曲ですが、ジーンと来ますね。
1984年の曲です・・同世代の皆様には思い出がある曲ではないかと・・(笑)
歌は歌い継がれ永遠に残るでしょう・・本当に名曲ですよね?
来年もきっとまた耳にするはずです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.12.27 22:51 | 編集
na**ko様
こんにちは^^
こちらこそ、いつもお読みいただき、ありがとうございます。
二人、やっとおつき合い出来るようになりました(笑)
坊っちゃん、「俺がじっくり教えてやるよ」いったい何を教えてくれるのでしょうか・・
あの曲はクリスマスの定番ですよね?
本当にいい曲です。アカシアも大好きです。
毎年必ずどこかで耳にする曲です。来年も、きっとどこかで流れてくれるでしょう・・
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.12.27 23:02 | 編集
司×**OVE様
こんにちは^^
司の「冗談だろ」発言。
つくしちゃん、ショックでした・・やっぱりバージンなんて面倒なのね・・と。
司はつくしのバージンを面倒だと考えることはありませんよねぇ(笑)
まだ昼休みなので、いきなりは・・無理だと思います(笑)
それに紺野君が心配してます(笑)
ジョージ・マイケル・・まだ若いというのに・・
あの曲はいいですよね・・しかし、クリスマスソングの定番を作った方が、クリスマスに天に召されるとは・・
本当に凄い廻り合わせですよね・・クリスマスのお話を書いたばかりでしたので、彼の運命に驚きました。
来年のクリスマスにもきっと流れる曲でしょう・・
コメント有難うございました^^

ところで、司×**OVE様気になるニュースが!!真実は・・?
アカシアdot 2016.12.27 23:16 | 編集
m様
こんにちは^^
あの歌・・私も訃報に驚きました・・
歌い継がれ世に残ると曲だと思います。
そしてまた来年も耳にするはずです。
司もつくしもどこかでこの曲を耳にしているはずですね?
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.12.27 23:31 | 編集
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dot 2016.12.28 00:24 | 編集
ぴ*様
ジョージの訃報・・
大変驚きました。なぜこの季節に、それもクリスマス当日に・・。(泣)
本当ですよね、まだ若いのに・・・
坊っちゃんとつくしちゃんの今後は・・。
大人の坊っちゃんの腕の見せ所でしょうか?(笑)
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.12.28 00:45 | 編集
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dot 2016.12.28 00:46 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
西田さん、お久しぶりです。そして紺野君!支社長から個別指導を受けるんですね?(≧▽≦)
西田さんの司へのお仕置き・・紺野君を使ってそんなことを‼
「ハイクラスをフエルコース(増えるコース)」(笑)そして喜んでメープルへ向かい、扉を開けば・・

「キャー支社長!なかなかお見えにならないから僕心配したんです!でも嬉しいッ♡僕の気持ちわかってくれたんですね!」
「てめ!紺野!裸で近寄るんじゃねぇ!・・そ、それより牧野はどうしたんだよ!牧野は!」
「牧野主任?なんのことでしょうか?僕、西田さんに呼ばれて来たんですけど・・」
「西田の野郎・・あの男・・」
「支社長、電話なんかいいじゃないですか・・僕、支社長の事が好きなんです!だから抱い・・」

そんな会話があるんでしょうか・・。
紺野くん、恐らく生きていられないのでは・・
とりあえず西田さん、溜まった書類が片付いてよかったですね?(笑)
ジョージ・・マイケル・・本当に残念です。
あの頃、テープが擦り切れるくらい聞いていました。(ワムと言えばmaxellのテープ)
そうなんです。今年はデビット・ボウイもプリンスも亡くなりましたよね・・デビッド・ボウイのLPまだ持ってます。
ところで、紺野君どうなったんでしょうね?お話に復帰できるのでしょうか・・不安です(笑)
いつもながら楽しいお話をありがとうございました^^真夜中にお腹が痛いです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.12.28 01:19 | 編集
司×**OVE様
こんばんは^^
そうです!真実はご本人様しか分かりませんが、気になりますよねぇ・・
やはりドラマ繋がりのお二人がベストだと思っているだけに、ええっ!と思いました。
出来ればドラマの通りに・・と思っているんですが・・。
でも彼もいい大人の男ですものね?
明日発売・・あ、もう日付が変わってますね?
恐るべし、「センテンススプリング」
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.12.28 01:29 | 編集
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dot 2017.01.03 00:22 | 編集
さと**ん様
こんばんは^^
【俺がじっくり教えてやる】
わたしも教わりた----い(≧▽≦)
こんな台詞を吐く司。(笑)
欲しいですね。もっと色々言わせて・・
大人の司ならどんなことでも教えてくれそうな気がします(笑)
2017年、司がまたおかしな(?)台詞を吐くかもしれませんが、お目こぼしをお願いします(^^;
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2017.01.04 22:03 | 編集
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