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2015
09.14

キスミーエンジェル14

「では牧野さん、この件に関しては再考する必要があると思いますか?
環境保全についてのご意見をお聞かせ下さい」
道明寺はそう言うと椅子を斜め後ろへと引き足を組んでつくしの方を見た。

「はい。ここは以前流通関連の会社の倉庫が建っていた場所です。
調査しましたが、土壌汚染は見られませんでした。過去の地質文献や災害記録も見ましたが
大きな問題点は見られないと思います。地下水の汚染も認められませんでした。
ただ、多少の地盤沈下が認められました。今後の事を考えると十分な液状化対策も必要だと思われます」

「そうですか。牧野さんの専門は土壌と地下水の汚染調査だとお伺いしていますが?」
道明寺はつくしの報告を聞きながら足を組み換えている。

「ええ、ですので対象構造物についての回答は別の人間がご報告を差し上げるようになります」
「わかりました」
「土地のほうの資産価値は今後も変わりがないと思われますが、どんな建物を建てられるかによって土地の値段が高騰するかもしれませんね」
つくしは隣に座る道明寺にちらりと視線を投げかけた。

「そうですか。それは有難いな」



つくしはこれまで与えらえた問題に対し必ず答えを出してきた。
道明寺が賭けの対象に私が1年以内に彼の指輪をはめることを持ち出してきた時に
答えは決めてある。 
答えはノーだ。
その指輪を受け取ることはない。
勝負を受けて立つと決めたからには道明寺には負けない。


大人になった道明寺はどう見ても危険な男だ。
情け容赦なく相手を切り捨てる男だ。
もしかしたら計算高くて無情な人間なのかもしれない。
ビジネスの世界ではそう言う目で見られている。

仕事に対していの姿勢と私に対しての姿勢を公私混同はしないだろうが
この男は、道明寺は極端すぎる。


今の牧野が考えていることは何だ?
また俺が何かするんじゃないかと頭を巡らせているはずだ。

「支社長、用途地域変更の手続きをとれば大規模集客施設の誘致も可能かと」
牧野の右隣に座る男が声をあげていた。

「ああ、そうだな。 よし、今後の事は島田のボーリング調査の結果を待ってからだ」



******





「ねえ、牧野さん今日の会議は道明寺の日本支社であったんでしょ?支社長と会えて良かったわね」
経済誌の最初のページには道明寺ホールディングスの記事が出ていた。
道明寺の経営手腕をたたえる記事とともに、中部地方で建設された最新鋭の設備を備えた電子部品の製造工場についての記事だ。

「素敵よね。道明寺支社長って。ねえ、牧野さん彼って本当にこの写真のとおりハンサムなのよね?」
「どうでしょう・・・」
「どうでしょうって、牧野さん支社長と婚約してるんでしょ?」
「・・・私にはそんな風には思えません」
つくしは関心がないとばかりに休憩室を後にした。




******




雨が窓ガラスを叩いている。

どんよりとした空から落ちてくる雨の雫を見ながら思っていた。
部屋の中に牧野の気配を感じる。

道明寺は先ほどまでつくしが腰かけていた椅子へと座ると彼女の面影を感じながら一人目を閉じていた。










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支社長、頑張って!
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