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2016
10.24

恋人までのディスタンス 55

次の一週間、つくしはプロポーズのこと以外考えられなかった。
道明寺は誰かと結婚するということは、沢山の問題を抱えるということに気づいていないのだろうか。
あの日はこれから経験することばかりに気を取られ、何でもいいから質問しろと言われても思いつかずにいた。

つくしは今まで衝動的に人生を歩んで来たことはなかった。
何事も計画を立ててというわけではないが、それでも行き当たりばったりの人生ではない。
女性も30代で独身ともなれば、将来ひとりで生きていくことを考えるからだ。
だが恋だけは計画など立ててもその通りにいくはずなどなく、ままよ、という訳ではないが期待などしていなかった。

ただこれまでの自分が子供じみていたということだけは、わかっていた。
そんなつくしとの距離を根気よくつめてくれたのは道明寺司だ。
恋に臆病な女がその一歩を踏み出すことが出来なくても、待つと言ってくれた優しさは、つくしが耳にしたことがある道明寺司の態度とは違っていた。
そして、それが本来の男の姿だと知った。

悪い話しは悪ければ悪いほど他人は喜んで信じる。
それが本当か嘘かなど世間は確かめない。それにそのことを否定してこなかったことで、女性関係が派手だと言われていたが、これからは絶対にそんなことはないと強く否定していた。

あの夜は自分の口走った言葉が恥ずかしかった。
よく覚えていないが、恥ずかしいことを口にしたに違いないはずだ。
心臓が止まるほどのあの一瞬は、女性としての生まれ持った本能が解放された瞬間だった。
二人を隔てるものはなく、愛していると熱く訴える黒い瞳がつくしの戸惑いを断ち切ってくれた。体の隅から隅まで見られたという自覚があり、逃げることが出来ない視線に囚われたと感じていた。

今では司が近づくたびに、つくしの胸は激しく乱れていた。
いつも考え過ぎるなといわれるが、考えない方が無理だ。
何しろつくしがプロポーズされた相手は道明寺司なのだから。





***






目覚めたとき、黙って横になりながら隣で寝ている男の顔を眺めていた。
目の前にある顔は思わず手を伸ばして触れたくなるほどの美しさだ。薄闇の中で見ても分かるほどの美しい顔。そして他に類を見ないほどのステイタスを持つ男。そんな男が自分のような平凡な女を好きだと言ってくれた。そのことに驚くと同時に戸惑いを感じてはいたが、つくしは自分が完全に虜になったのだとわかっていた。

それと同時に相手を信じ、愛しているからこそ二人の関係が進んだのだということもわかっていた。

「どうした?」

つくしがぼんやりとしていると、目の前にある顔がほほ笑んだ。
知らぬまに目が覚めていたようだ。

「うん・・」

司は恥ずかしそうに顔を赤らめるつくしの髪に手を差し入れ、しっかり見つめ合えるようにと頭を支えた。

「体は大丈夫か?」

気遣う声はかすれていた。
あれから何度か結ばれたというのに、いつもつくしの体を気にするのは無理をさせているのではないかとの思いだ。恋人となった男はつくしの表情の変化を見逃さまいとしていた。

「また余計なこと考えてるだろ?」

あの朝、ベッドに横たわるつくしに向かって再度結婚の意志を確かめると、全ては俺に任せろとばかりに司は素早く行動を起こしていた。

「俺がおまえに夢中なのはわかってるだろ?それにあんなに大きな喜びを感じたことは今までなかった。いいか。おまえは俺が出会った女の中で一番魅力的な女だ。俺は初めて会ったときからおまえに惹かれてたんだと思う。あの日から色んなおまえを見て来たが今のおまえが一番魅力的だ」

その言葉は全ての女性が恋人から聞きたいと願う言葉だ。
つくしは生まれて初めての経験ではあったが、身も心も結ばれたと感じていた。

髪に差し入れた手はそのままにほほ笑む男は、ゆっくりと顔を近づけると額にキスをした。

「おまえが言葉だけじゃ不安だっていうなら何度でもこの体で示してやるが、どうする?」

返事がない女を独占するかの如く聞く男は、つくしの体に腰を押し付けていた。

その行動に驚きながらも、抵抗はしなかった。
女性として求められることが嬉しかったからだ。長い間恋人もなく、もしかしたらこのままずっと独身でいるのではないかとさえ思い始めた頃の出会い。もし押し返せば黙って引き下がるとわかっていた。司は決して自分の思いだけを押し付けるような男ではない。
そのことは初めての夜に知ったことだ。

だが決して嫌がることはしないとばかりに慈しむ姿が、逆につくしにいたずら心を呼び起こしていた。

「どうするって、断られたらどうするの?」

そう言って司の自制心を試す女は、目の前の男から愛されている自信があるからだ。
警戒心の塊のようだったハリネズミも、司の手の中では針をひそめて懐いていた。

「つくし、おまえ断るつもりか?」

何故かその顔は悲しげだ。
だが一転、ニヤリと笑うと嘘つくんじゃねぇよとばかりに顔をそらして笑い出した。

「俺の体を断るなんざ、おまえくらいだ。俺の体がいらねぇなんて言われたら男としての面目が丸潰れじゃねぇかよ?使えねぇってな?それにまさかおまえ週刊誌に売るなんてこと_」

司は真面目に驚いた表情を作ってみせた。

「な、なにバカなこと言ってるのよ!そんなことするわけないじゃない!」

からかわれているのは、わかっていた。

「へぇ。そうかよ?なら俺に喰われてくれ。おまえがもう許してくれって言うまで愛してやるよ」

司は腕の中から逃れようとしているつくしを引き寄せていた。
そして数分後には、再びベッドで愛を確かめ合った。互いの気持ちはいつまでも変わらないとばかりに慈しむ行為は、まだ慣れないつくしの為だということも充分承知していた。

そして互いの腕の中で再び眠りについていた。








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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.10.24 13:59 | 編集
司×**OVE様
こんにちは^^
大人の司もつくしの前では少年のようになっているのかもしれませんね?
『道明寺司、一般女性に関係を断られる!!』(笑)そんな記事が出たらどうでしょうか?(笑)
そんな彼も見たいですね?
楓さん・・彼女は山となって立ちはだかるのでしょうか?
「大人の恋~」再読ですか?有難うございます!(低頭)
あちらは司に恋してましたから、考え過ぎることはなかったようですが、こちらの彼女は考えますねぇ。
思えばつくしちゃん色々な動物に例えられていますね(笑)
今回はハリネズミですが、そのハリネズミも司の懐に飛び込んでくれて良かったと思います。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.10.25 00:48 | 編集
ち*こ様
このまま何事もなく結婚に突き進むのか否か。
大きな山を乗り越えて行くことも必要かと思います^^
大人の二人ですから、なんとかしてくれるのではないかと期待していますが・・・(笑)
拍手コメント有難うございました^^

アカシアdot 2016.10.25 00:54 | 編集
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