私はなんの話をしているのか分からなかった。
再会してからの事を言っているのか、それとも高校時代の事を言っているのか。
「い、いったいなんの話?」
「お前はいつも俺の話を聞かずに逃げ回っていた」
「当たり前じゃない! あ、あたしがどんな目に遭ったか・・・」
「俺はいつも・・・俺を知ってもらおうと・・・それなのにお前は逃げてばかりだった」
つくしは道明寺のネクタイの結び目に視線を定めていた。
「なあ 牧野」
道明寺はつくしの顎を持ち上げる。
「お前の人生に俺を受け入れてくれよ。言ったよな? 結婚してくれるなら
付き合ってもいいって。 だから付き合おうぜ、真面目に。
結婚を前提に付き合おうってことだから、それは婚約したも同然だろ?」
「な、なに言って・・」
「聞けよ。俺は欲しいと思ったものは自分でとりに行く。今までもそうしてきたし
そう言うやり方には慣れている。お前が与えてくれないなら自分からとりに行く。
・・・・俺はお前のすべてが欲しい」
「な、なに・・・」
「俺は遠慮なんてしないからな。俺は自分が望むものは分かっている」
つくしは道明寺の決意を感じ取った。
道明寺はもう昔の道明寺じゃない。
分かっているけど子供じゃないんだ・・・。
大人の男だ。
「牧野、心配するな。今ここでどうにかしようなんて思ってないさ」
つくしは息をのんだ。
道明寺がつくしの耳をかすめるように唇を落としてきた。
首に感じた痛みの意味を知ったのは自宅で鏡を見た時だった。
******
本当に道明寺は私が欲しいのだろうか。
日曜日の朝、つくしはコーヒーを片手に考えている。
就職してから暮らし始めたマンションの5階から見える外は澄み渡った空が広がっている。
いつもと変わらない気持ちで過ごそうと思っていた週末も道明寺の事を考えずには
いられなかった。
あの男の執拗さは今に始まったものじゃない。
昔からそうだった。
今までも道明寺のような男性には会ったことがない。
『 結婚するなら付き合ってもいい 』
あんなことを言ったけど、本当は気持ちのどこかでそう考えていたからこそ
出た言葉だったのかもしれない。
私が飲み終えたコーヒーカップをテーブルに置き一冊の雑誌を手にとったとき
誰かの訪問を告げるインターフォンが鳴った。
日曜のこんな早い時間にいったい誰が来たのか。
私は緊張感に包まれた。
「 ・・・はい 」
「 牧野、俺だ 」
道明寺?
つくしは気力を振り絞ってドアを開けていた。
そこにいたのは飢えた獣のような目をした道明寺だ。
彼はまるでファッション誌から出て来たような出で立ちで立っていた。
そんな道明寺は私の全身を眺めたかと思うと頬を緩めた。
「お前のそんな姿を見るのも何年ぶりかな」
私はごく普通のカジュアルな服装で過ごしていた。
道明寺も普段着のせいかこれまで目にした彼よりも若さが感じられる。
そしてその表情は主導権を握ったような余裕が感じられた。
「こんな早くからなんの用?」
「用がなきゃ来たらだめなのかよ?」
俺は積り積もった好奇心を満たしに来た。
自分の目で牧野がどんな暮らしをしているか知りたいと思った。
この男には常識とか通用しないんだった・・・・
「牧野、今夜俺と食事をしないか?」
「は?なに、あんたこんなに朝早く来て・・」
「いいな!」
言い終えると挑戦的な笑みを浮かべている。
「あんた私をからかってるの?」
「俺達結婚を前提に付き合うことになったんだ。婚約者を夕食に誘って何が悪いんだ?」
つくしは道明寺から視線をそらした。
「悪いんだけど、気が進まない」
「お前、気が進まないんじゃなくて怖いんだろ?」
「な、なにが怖いっていうのよ!」
「俺に誘惑されるのが・・・」
「バ、バカなこと言わないでよ。第一なんで私があんたの事を怖がらなきゃならないのよ!
それに、婚約なんてした覚えなんてないから!」
「そうかよ?」
「そうよ!そんな顔したって騙されないんだから」
「そんな顔ってどんな顔だ?」
「・・・また何か企んでるでしょ? その顔は絶対に何か企んでる!」
道明寺は笑っている。
「お前が警戒してるのは俺の顔じゃないだろ?」
つくしは自分の内心を読まれたと思った。
「あ、あんたの体なんてなんとも思ってないから!」
やだ、私ったらなに言ってんの!
「そうかよ?」
牧野は顔を赤らめている。
「7時だ。うちの運転手が迎えに来るから準備しておけよ。
それからドレスアップしてこいよ。後でお前宛てにドレスを届けさせるから」
「嫌よ。行かないって言ってるでしょ?」
「いいや、お前は絶対にくる」
「どうしてよ?」
「確かめずにはいられないからだ」
つくしは目を見開いて道明寺を見つめた。
そしてやっとの思いで声を出した。
「いったい何を確かめずにいられないっていうのよ!」
「牧野、お前の本当の気持ちだよ」

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応援有難うございます。
再会してからの事を言っているのか、それとも高校時代の事を言っているのか。
「い、いったいなんの話?」
「お前はいつも俺の話を聞かずに逃げ回っていた」
「当たり前じゃない! あ、あたしがどんな目に遭ったか・・・」
「俺はいつも・・・俺を知ってもらおうと・・・それなのにお前は逃げてばかりだった」
つくしは道明寺のネクタイの結び目に視線を定めていた。
「なあ 牧野」
道明寺はつくしの顎を持ち上げる。
「お前の人生に俺を受け入れてくれよ。言ったよな? 結婚してくれるなら
付き合ってもいいって。 だから付き合おうぜ、真面目に。
結婚を前提に付き合おうってことだから、それは婚約したも同然だろ?」
「な、なに言って・・」
「聞けよ。俺は欲しいと思ったものは自分でとりに行く。今までもそうしてきたし
そう言うやり方には慣れている。お前が与えてくれないなら自分からとりに行く。
・・・・俺はお前のすべてが欲しい」
「な、なに・・・」
「俺は遠慮なんてしないからな。俺は自分が望むものは分かっている」
つくしは道明寺の決意を感じ取った。
道明寺はもう昔の道明寺じゃない。
分かっているけど子供じゃないんだ・・・。
大人の男だ。
「牧野、心配するな。今ここでどうにかしようなんて思ってないさ」
つくしは息をのんだ。
道明寺がつくしの耳をかすめるように唇を落としてきた。
首に感じた痛みの意味を知ったのは自宅で鏡を見た時だった。
******
本当に道明寺は私が欲しいのだろうか。
日曜日の朝、つくしはコーヒーを片手に考えている。
就職してから暮らし始めたマンションの5階から見える外は澄み渡った空が広がっている。
いつもと変わらない気持ちで過ごそうと思っていた週末も道明寺の事を考えずには
いられなかった。
あの男の執拗さは今に始まったものじゃない。
昔からそうだった。
今までも道明寺のような男性には会ったことがない。
『 結婚するなら付き合ってもいい 』
あんなことを言ったけど、本当は気持ちのどこかでそう考えていたからこそ
出た言葉だったのかもしれない。
私が飲み終えたコーヒーカップをテーブルに置き一冊の雑誌を手にとったとき
誰かの訪問を告げるインターフォンが鳴った。
日曜のこんな早い時間にいったい誰が来たのか。
私は緊張感に包まれた。
「 ・・・はい 」
「 牧野、俺だ 」
道明寺?
つくしは気力を振り絞ってドアを開けていた。
そこにいたのは飢えた獣のような目をした道明寺だ。
彼はまるでファッション誌から出て来たような出で立ちで立っていた。
そんな道明寺は私の全身を眺めたかと思うと頬を緩めた。
「お前のそんな姿を見るのも何年ぶりかな」
私はごく普通のカジュアルな服装で過ごしていた。
道明寺も普段着のせいかこれまで目にした彼よりも若さが感じられる。
そしてその表情は主導権を握ったような余裕が感じられた。
「こんな早くからなんの用?」
「用がなきゃ来たらだめなのかよ?」
俺は積り積もった好奇心を満たしに来た。
自分の目で牧野がどんな暮らしをしているか知りたいと思った。
この男には常識とか通用しないんだった・・・・
「牧野、今夜俺と食事をしないか?」
「は?なに、あんたこんなに朝早く来て・・」
「いいな!」
言い終えると挑戦的な笑みを浮かべている。
「あんた私をからかってるの?」
「俺達結婚を前提に付き合うことになったんだ。婚約者を夕食に誘って何が悪いんだ?」
つくしは道明寺から視線をそらした。
「悪いんだけど、気が進まない」
「お前、気が進まないんじゃなくて怖いんだろ?」
「な、なにが怖いっていうのよ!」
「俺に誘惑されるのが・・・」
「バ、バカなこと言わないでよ。第一なんで私があんたの事を怖がらなきゃならないのよ!
それに、婚約なんてした覚えなんてないから!」
「そうかよ?」
「そうよ!そんな顔したって騙されないんだから」
「そんな顔ってどんな顔だ?」
「・・・また何か企んでるでしょ? その顔は絶対に何か企んでる!」
道明寺は笑っている。
「お前が警戒してるのは俺の顔じゃないだろ?」
つくしは自分の内心を読まれたと思った。
「あ、あんたの体なんてなんとも思ってないから!」
やだ、私ったらなに言ってんの!
「そうかよ?」
牧野は顔を赤らめている。
「7時だ。うちの運転手が迎えに来るから準備しておけよ。
それからドレスアップしてこいよ。後でお前宛てにドレスを届けさせるから」
「嫌よ。行かないって言ってるでしょ?」
「いいや、お前は絶対にくる」
「どうしてよ?」
「確かめずにはいられないからだ」
つくしは目を見開いて道明寺を見つめた。
そしてやっとの思いで声を出した。
「いったい何を確かめずにいられないっていうのよ!」
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コメント
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H*様
いつもご訪問、コメント有難うございます!
本当ですか?更新を楽しみにして頂いて嬉しいです!
え?押せ押せ俺様にクラクラ?
これまた嬉しいコメントを有難うございます(*´-`)
俺様、これからもっと色々頑張らないと我が家のつくしちゃんはかなり頑なになっているので大変です!(笑)
いつもご訪問、コメント有難うございます!
本当ですか?更新を楽しみにして頂いて嬉しいです!
え?押せ押せ俺様にクラクラ?
これまた嬉しいコメントを有難うございます(*´-`)
俺様、これからもっと色々頑張らないと我が家のつくしちゃんはかなり頑なになっているので大変です!(笑)
アカシア
2015.09.09 21:38 | 編集
