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2016
10.01

恋人までのディスタンス 40

二人は暫く見つめ合っていた。
司の腕の中にいる女は、自分の口から出た言葉に我に返るとはっとしていた。
だが、口をついて出た言葉の意味は充分理解しているはずだ。
今夜ここに泊まってもいい。
そんなセリフは今までの人生の中で一度も口にしたことは無かったはずだ。

「俺のことが好きだって言ってくれたのは嬉しいが、処女のくせに随分と大胆なセリフだな」

からかうような言葉につくしは赤くなり、うつむいた。

「なあ、牧野。おまえは俺との関係を真剣に考えてるのか?それとも俺のことを単なる遊び相手だなんて考えてるなら俺も考えなきゃなんねぇ」

司はわざとそう言って笑っていた。
そんなことを彼に言わせる女は牧野以外にいないということをわからせたかったからだ。
道明寺司が遊び相手にされるなんてことは世の中の誰も考えないことで、それだけおまえに本気だと言っているようなものだ。

「俺の恋人になるには、おまえも俺と同じだけそう望んでくれねぇとだめだ。後になってただ単にその場の雰囲気に流されたなんて言って後悔するんなら止めたほうがいい。それに俺はおまえが好きだから、いつまでも何もしないでいるのは正直無理だ。好きな女がいれば自分のものにしたいと思うのが男としての本能だ。俺はおまえに冒険しろと言ったが、もし今の俺に対するその気持ちが単なる冒険のつもりなら止めた方がいい。俺は白馬に乗った王子様じゃねぇ。おまえのことが好きな男だからな。それに男に友情を伴った愛情を求めようと思うならそれは出来ねぇ。男が好きな女に求めるのは友情なんかじゃねぇからな」

つくしは顔をあげると、そこでいとおしそうに自分を見つめる瞳に出会い、胸が苦しくなっていた。サロンの中での出来事には動揺を隠せなかったが、今の司の気持は嬉しかったはずだ。
彼がいつも自分の気持を正直に話すのに対し、なかなか自分の気持を表に出せなかったつくしは、今度こそはっきりと言い切った。

「あ、あたしは自分が何を求めているのかわかっているつもり・・。道明寺と出会ってからどこか少しずつだけど、自分の中に変化があったの。それに気づくのが遅かったんだけど、あたしも大人の女性として、道明寺が求めているものは分かってるつもり。相手のことが好きなら心と体は一緒だと思う」

心と体は一緒だと言う意味を履き違えていなければ、言いたいことは伝わったはずだろう。
好きな人に抱かれたい。決してそのことを急いでいるわけではなかったが、そんな気持ちが湧き上がっていたとしても嘘ではないはずだ。

「牧野、あんまり難しく考えるな。おまえはややこしく考え過ぎる癖がある。物事ってのは決められた流れに沿って流れていくようになっている」

流れに沿っていく。
一緒に過ごす時間が増えるにつれ確かにそう感じていたはずだ。
何かに引っぱられるように道明寺に惹かれていた。挑戦的なことばかり言っていたが、いつまでもそんなことでは前には進まない。

「おまえの気持が本当に俺と一緒にいたいって思うなら、俺は本気でおまえを求めるが、いいのかそれで?」

司を見上げながらつくしはコクンと小さく頷いていた。
このままいけば、どうなるかわかっているはずだ。
先ほどまでの戯れと言われた行為の先が知りたかった。
今こうして腕の中にいても脈打つ高まりは感じていた。
そしてそれがどう言った意味を持つのかもわかっていた。

「ひとつおまえに聞きたいことがある」

司はいたく真剣な表情のつくしに聞いた。

「俺の本当の恋人になったら別れるなんてことは出来なくなるが、それでもいいのか?」

「いいわ」

なんのためらいもなく、きっぱりとした返事だった。

「そうか」

つくしを見つめながら司は目を細めた。
このままいけば、どうなるのかはわかっていた。
こいつは絶対に無理をしている。男とつき合うこと自体が得意でない女の態度はまだどこか硬い。司の目を気丈に見返してはいるが緊張が感じられる。
舌で唇を湿らせているが、その行為は無意識なのだろうが司の興奮を煽っていた。

「牧野。おまえ相当無理してるだろ?まあ、おまえにそんなこと言わせたのは俺なんだろうが、今のおまえじゃ無理だ。とてもじゃねぇけど、男と取っ組み合いが出来るような気分じゃないはずだ。それに、今の俺はおまえに優しく出来るか正直自信がねぇ」

自ら危険地帯に踏み込むようなことをしておいての言い草に自嘲気味に笑った。

「牧野。いいか?俺はおまえが本当に俺を欲しいと思ったとき、おまえを抱きたい。だから無理しなくていいんだ」

「べ、別に無理なんてしてない・・」

「いいや。相当無理してるはずだ」

はじめての女は今日の日を覚悟していたのか、乗船したときからすでにぎこちなかった。
本人はそれを隠していたつもりかもしれないが、そうではなかった。
そのことに敢えて触れることはしなかったが、わかっていた。
だが少なくとも関心はあることは確かなようだ。
ただ、まだ心の準備が出来ていない。そう感じていた。

「なあ。牧野。そろそろ中に戻るか?・・そうだな・・今度はコーヒーでも飲むか?」

外の空気を吸うためにデッキに出て来た二人だったが、少し冷えて来ていた。
つくしを気遣って中へ入ろうと言ったようだ。

つくしの視線は司の顔から胸に向けられた。
そのあとは、ゆっくりと視線が下げられていた。触れ合っている司の下半身からは男としての欲望が感じられ、つくしはどぎまぎとしたままで身の置きどころがなかった。
視線が司に戻されると、それ以上視線をそらすまいとしていた。
その瞳はあたしはこれからどうすればいいの?そう訴えていた。

司の瞳に浮かんだのは、優しい微笑み。

魅惑的な低音で言った。

「気にしなくていい。これは男なら誰でもあることだ。だからと言っていちいち女に襲いかかってるようじゃ、それは単なる獣だからな」

口元は真剣だったが、目は笑いに揺れていた。

「男なんてのは好きな女を前にすれば簡単に反応するもんだ。だから気にすることはない。
それに自分を安売りする必要もねぇからな」

司の片方の口角には、どこか余裕を感じさせるようで、自信に満ちた微笑みが浮かんでいた。

「べ、別に安売りなんてするつもりはないわ。ただ・・道明寺のじ、自尊心のために・・」

「ああ。確かにおまえの刺激は気持ち良かったぜ。おまえの手の感触は当分忘れられそうにねぇな」

切れ長の黒い瞳に見つめられ、返答を考えているとき、ゆっくりと唇がおりて来た。
瞳は危険なほどの光りを湛えていた。

「若く見えるがおまえは充分大人の女だ。女として俺が欲しくなったらいつでも抱いてやるよ」








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コメント
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dot 2016.10.01 16:27 | 編集
子持**マ様
葛藤・・そうですねぇ。
司は欲求はある。でも・・と行動にストップをかけることが出来るだけの大人だということでしょうか(笑)
拍手コメント有難うございました^^

アカシアdot 2016.10.01 22:50 | 編集
司**LOVE様
こんにちは^^
司は理性を総動員(笑)本当にそうですね。
今、ここで行動を起こすことは止めました。
さずが大人坊っちゃん!(笑)
無理をしていると感じたのでしょう。
つくしは覚悟は出来たようですが・・(笑)このまま未来へgo!出来る?
コメント有難うございました^^

アカシアdot 2016.10.01 22:59 | 編集
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dot 2016.10.02 02:30 | 編集
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dot 2016.10.02 06:41 | 編集
チ**ム様
運動会はいかがでしたでしょうか?お天気には恵まれましたでしょうか?早朝からのお弁当作り、お疲れ様でした^^
秋晴れのもと、元気よく走り回るお子様を、応援していらっしゃるご家族の皆さんの光景が目に浮かぶようです。
堕落したんですか(笑)そんなことはないですよ。母様、頑張っていらっしゃるではないですか!(*^_^*)
えっ?司くん、つくしちゃんに甘いですか?(笑)無理してまでは推し進めないところが大人!でしょうか?(笑)
ええ。EDには無縁の様です(笑)
台風が来ますね、お気を付けて下さいね。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.10.02 22:27 | 編集
マ**チ様
レアなおはようございます!!←本当です。レアですね(笑)
この状況で我慢が出来る司。凄いですよね?男の品格とでもいいましょうか?え?品格ではない?(笑)
とにかく、グッと堪えたようです(笑)
でも最後の発言が問題発言です。「抱いてやるよ」に対し、抱いて下さい!!とお願いしても抱いてもらえそうにありませんが(笑)
脱、月末地獄!(笑)ありがとうございます(笑)
マ**チ様の温かい励ましとお言葉と、笑いに励まされています^^いつもありがとうございます。
はい。無理はしない程度でと思っています。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.10.02 22:38 | 編集
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