あれから私はどうやって会議室まで戻ってきたのかよく覚えていなかった。
『 結婚を前提に付き合ってくれ 』
道明寺はそう言った。
その言葉は本気なの?
あんなこと、言うんじゃなかった・・・
気軽に付き合えとか愛しているとか言う道明寺が信じられないから困らせてやろうと思って言った。
だけど、あいつは結婚を前提に付き合ってくれと言った。
「牧野さん、どうしたの?」
「 え? 」
「なんだか心ここにあらずって感じなんだけど?」
私は昼食をとる為に同僚の女子社員と会社の近くにあるカフェにいた。
「あ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていて・・」
「もしかして、この前バラの花を贈って来た崇拝者の人のことだったりして?」
つくしは図星をつかれて頬が赤くなっていた。
あの時、気付けば女性用化粧室の洗面台に背中を押し付けられたまま道明寺にキスをされていた。
道明寺は大きな手で私の頭を支えてくると唇を合わせてきた。
甘美で優しいキスだった。
そして彼は唇を離すとこう言った。
『 これは俺たちの婚約のしるしだ 』
私は道明寺に対してゲームを挑んだつもりだった。
それなのに・・・・・
私がゲームを挑んだ相手は・・・
それは私の心を盗んだあの男、道明寺だった。
道明寺に再会するまでの私は満足した人生を送っていた。
なのにあの再会で私の人生がまたあの男と交差してしまった。
どうしてよりによって道明寺なんだろう。
私がどんなに手を伸ばしても届かなかった男なのに。
どうして今になって私の前に現れたの?
******
道明寺は椅子に腰かけると革張りの背へと深くもたれた。
俺の判断は間違っていなかった!
8年前、牧野をほったらかしてニューヨークに行ってしまったが
あいつは俺のことを許してくれた!
俺には牧野が必要だ。
牧野の一番の魅力は予想も出来ないような事をやってのけるところだ。
今回のこともそうだ。
まさか牧野の口から結婚なんて言葉が聞けるとは思わなかった。
俺を引き付けて止まないその意外性。
そして自分の信念を貫き通す正義感の強さ。
俺は心のなかで思いっきり「 YES 」と叫んだ。
俺は牧野の注意を引くことに見事に成功したわけだ。
問題はあとどのくらいで本当の意味での牧野を手に入れるかだ。
俺の頭にある牧野つくし捕獲作戦はこれからがスタートだ。
俺の机の上にはたまっている仕事が山と積まれているがそんなことは今は問題にもならなかった。
******
私は判断を間違った!
オフィスへと足を踏み入れた私は状況を把握できなかった。
「牧野さん、おめでとう」
「 ? 」
「牧野さん道明寺支社長と婚約したんですって?」
「 は? 」
同僚の女子社員達がつくしの回りへと集まってきた。
「ほら、見てこれ」
私が見せられたのは週刊誌の見出しに踊る道明寺ホールディングス日本支社長の
婚約の文字とその下に書かれたお相手の女性Mさんについての記事。
『 お相手は都内在住会社員で高校時代の後輩女性 Mさん 』
写真は目の部分が隠れているが私だと分かる。
だってこの写真は社内報の中で使われていた写真だ!
ここ島田の社員ならすぐにでも分かる写真・・・。
婚約だなんていつの間にそんな話に?
待ってよ、確かに私は結婚するなら付き合ってあげると言った。
でも、それは本気じゃなかった。
道明寺を困らせてやろうと思って咄嗟の思いつきで言ってしまっただけなのに・・・・
いきなりこんなことになるなんて思いもしなかった!
それに結婚を前提にしたお付き合いって言ったら即婚約者なの?
それもどうしてこんなことになるの?
あの男が自らリークしたに違いない。
その週刊誌と共に手渡された経済新聞の「わたしの履歴書」の記事。
著名人本人への取材に基づき書かれたそのコラムの内容にも愕然とする。

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『 結婚を前提に付き合ってくれ 』
道明寺はそう言った。
その言葉は本気なの?
あんなこと、言うんじゃなかった・・・
気軽に付き合えとか愛しているとか言う道明寺が信じられないから困らせてやろうと思って言った。
だけど、あいつは結婚を前提に付き合ってくれと言った。
「牧野さん、どうしたの?」
「 え? 」
「なんだか心ここにあらずって感じなんだけど?」
私は昼食をとる為に同僚の女子社員と会社の近くにあるカフェにいた。
「あ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをしていて・・」
「もしかして、この前バラの花を贈って来た崇拝者の人のことだったりして?」
つくしは図星をつかれて頬が赤くなっていた。
あの時、気付けば女性用化粧室の洗面台に背中を押し付けられたまま道明寺にキスをされていた。
道明寺は大きな手で私の頭を支えてくると唇を合わせてきた。
甘美で優しいキスだった。
そして彼は唇を離すとこう言った。
『 これは俺たちの婚約のしるしだ 』
私は道明寺に対してゲームを挑んだつもりだった。
それなのに・・・・・
私がゲームを挑んだ相手は・・・
それは私の心を盗んだあの男、道明寺だった。
道明寺に再会するまでの私は満足した人生を送っていた。
なのにあの再会で私の人生がまたあの男と交差してしまった。
どうしてよりによって道明寺なんだろう。
私がどんなに手を伸ばしても届かなかった男なのに。
どうして今になって私の前に現れたの?
******
道明寺は椅子に腰かけると革張りの背へと深くもたれた。
俺の判断は間違っていなかった!
8年前、牧野をほったらかしてニューヨークに行ってしまったが
あいつは俺のことを許してくれた!
俺には牧野が必要だ。
牧野の一番の魅力は予想も出来ないような事をやってのけるところだ。
今回のこともそうだ。
まさか牧野の口から結婚なんて言葉が聞けるとは思わなかった。
俺を引き付けて止まないその意外性。
そして自分の信念を貫き通す正義感の強さ。
俺は心のなかで思いっきり「 YES 」と叫んだ。
俺は牧野の注意を引くことに見事に成功したわけだ。
問題はあとどのくらいで本当の意味での牧野を手に入れるかだ。
俺の頭にある牧野つくし捕獲作戦はこれからがスタートだ。
俺の机の上にはたまっている仕事が山と積まれているがそんなことは今は問題にもならなかった。
******
私は判断を間違った!
オフィスへと足を踏み入れた私は状況を把握できなかった。
「牧野さん、おめでとう」
「 ? 」
「牧野さん道明寺支社長と婚約したんですって?」
「 は? 」
同僚の女子社員達がつくしの回りへと集まってきた。
「ほら、見てこれ」
私が見せられたのは週刊誌の見出しに踊る道明寺ホールディングス日本支社長の
婚約の文字とその下に書かれたお相手の女性Mさんについての記事。
『 お相手は都内在住会社員で高校時代の後輩女性 Mさん 』
写真は目の部分が隠れているが私だと分かる。
だってこの写真は社内報の中で使われていた写真だ!
ここ島田の社員ならすぐにでも分かる写真・・・。
婚約だなんていつの間にそんな話に?
待ってよ、確かに私は結婚するなら付き合ってあげると言った。
でも、それは本気じゃなかった。
道明寺を困らせてやろうと思って咄嗟の思いつきで言ってしまっただけなのに・・・・
いきなりこんなことになるなんて思いもしなかった!
それに結婚を前提にしたお付き合いって言ったら即婚約者なの?
それもどうしてこんなことになるの?
あの男が自らリークしたに違いない。
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著名人本人への取材に基づき書かれたそのコラムの内容にも愕然とする。

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