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2016
09.17

恋人までのディスタンス 31

処女かと聞かれ、処女だと答える30過ぎの女が世の中のどこにいるというのだろう。
別にそのことを恥ずかしだなんて思ってもいないし、だからと言って堂々と認めることもどうかと思う。それにまさか食事中に道明寺からそんなことを聞かれるなんて思いもしなかった。

「で?どうなんだよ?牧野。」
正面に座る男はリラックスした表情でつくしを見ていた。

「ど、どうなんだって、何がどうなのよ?」
「だからおまえが男と・・」
「待って!も、もういいから!そ、それ以上言わなくていいから・・」

つくしは慌てて止めた。
考えもせずうっかり経験学習はまだなんてことを言ってしまった自分が悪いとわかっていたが、男の口から処女なんて言葉を必要以上に聞きたくはなかった。
さっきの言葉を撤回出来るものなら撤回したい。

「あの・・そんなこと知ってどうするのよ?そっ、それに関係ないでしょ?あなたには。」
「確かに俺がおまえの男性経験を知っても俺の生活は何も変わらねぇな。でもおまえの生活は変わるかもしれねぇ。」

司の目が挑戦的に光った。

「いったい何が変わるっていうのよ?」
「おまえは恋をしたことがあるのか?恋をするのに経験はいらないが冒険心は必要だ。おまえは冒険する気持ちはあるのか?そんなことよりも、そもそも冒険をしたことがあるのか?」

まるで過去を見て来たかのような話しっぷりにつくしは動揺した。
目の前の男が言う冒険がどんなものなのかはわからなかったが、石橋を叩いて渡るという性格のつくしは冒険などしたことがなかった。

「ちょっと待って。いったいなんの話しをしてるのよ?」
「だから俺と冒険するつもりはあるのかって聞いてるんだ。」

強烈な視線で見つめられると、つくしは落ち着きを失っていた。

「冒険もなにも・・あたしたちは・・その・・優紀の元彼を探すことが目的でしょ?」
「なんだよ。またその話に戻るのか?」
「その話に戻るって言ってもあたし達がこうして一緒にいるのはそれが本来の目的でしょ?」
「わかってる。それはあくまでも目的の一部にすぎねぇけどな。」
「も、目的の一部って・・な、なに・・」
「おまえ、俺と冒険してみろ。いきなり俺を好きになれとは言わねぇから人生をもう少し楽しむことをしたらどうだ?おまえは挑戦することは嫌いか?」

司はわざと声のトーンを一段落としていた。

「それともおまえは最初っから自分が敵う相手じゃないと思ったら尻尾を巻いて逃げるのか?」

逃げるのかと言われれば立ち向かってくる女だ。
そんな女は挑戦されて拒むことは出来ないはずだ。そうは言っても相変わらずの慎重さも感じられる。
まさかとは思ったが牧野つくしは男性経験ゼロとは思わなかった。
それに黙っているところを見れば新しいことに挑戦するのも悪くはないと考えているのは確かだ。それともこいつの頭の中じゃどうやったら俺の質問から上手く逃げれるのかと考えているのか?

「それで、牧野つくしはどんな冒険がしたいんだ?」

どうせなら俺を冒険の対象にしてくれてもいいが、それを言うにはまだ早すぎる。






冒険・・・

それはまるで心を躍らせるような言葉。

確かに今まで真面目にコツコツと生きてきた。
単調な毎日で職場と自宅との往復以外で立ち寄るところと言えば優紀の所ぐらいしかなく、休日は溜まっている家事を済ませることだけで終わっていた。
30歳を過ぎてからはその傾向が顕著に表れるようになり、どこかへ出かけようかと言う気がなくなって来たのも事実だった。

でも、あたしにどんな冒険が出来るの?

出来るとすれば長期休暇を取って海外旅行のパッケージツアーに申し込む・・そんなことしか思い浮かばなかった。
今までのあたしに足りないのは確かに冒険心かもしれない。
挑戦することは好きだが、それはあくまでも仕事に対してだけで、人生のアドベンチャーなんて経験したことがなかった。

そう言えば優紀に言われたことがある。
つくしはいつも男警戒モードでいるから男の人が近寄りがたいのよ。もっと気楽にしなきゃだめよ。そんなんじゃ誰からも声をかけられることなく、おばちゃんになってしまうわよ?
そんな優紀は道明寺司によく似た男に声をかけられてつき合った・・だけど上手くいかなかったじゃない?

「どうなんだ?牧野?」
「えっ?」
「えっじゃねえよ。おまえは俺と冒険する気があるのか?」

司の熱を持った視線がつくしを見つめた。


冒険・・

目の前の男はあたしを冒険に連れて行ってやると言っている。
オーダーメイドの高級スーツに上等の靴を履き、さりげなく優雅なスタイルで決めている男は欲しい物は手に入れるという男だ。そんな男が提案する冒険って・・

「ぼ、冒険って言っても・・いったい・・」
「おまえが思ってる冒険を言ってみろよ?チャレンジ精神が旺盛ならスポーツでもいいが、俺と一緒に海外旅行でもいいし、おまえがしたいことって何だよ?」
司の片方の口元が意味ありげに上がった。
「言ってみろよ?」

正直に言うべきか、それとも言わざるべきか。
つくしは軽く咳払いをしてみせた。
すると司はそんなつくしの様子がいつもと違うことに気づいた。
司と意見が合わないことの方が多い女が黙っているのだ。
それも落ち着かない様子で何か言いたそうだ。その態度は言いにくそうではあったが、今ここで言わせることが出来れば牧野つくしが足を踏み入れてみたいと考えている冒険を知ることが出来る。こいつはどんなことに興味を抱いているのか?
司は話しの糸口を与えることにした。

「こんなことはじめてだな。俺と意見が合わないのはあたり前になってるけど、黙っているところを見れば、おまえ何かやりたいことがあるんだろ?なんだよ?牧野。言ってみろよ?」

司はにやりとして、体を前に乗り出した。

「俺に出来ないことはまずない。遠慮することなんてない。言ってみろよ。おまえの思ってる冒険ってのを。」

道明寺司はじっと見つめて辛抱強く言葉を待っている。
言おうか言うまいか。
つくしは少しだけ躊躇していたが希望に満ちた顔で思い切って言った。

「だ、ダイビングがしてみたいの。」

「ダイビング?ダイビングってスキューバか?おまえ池にダイブしたばかりなのにまた水ん中に顔突っ込みたいのか?おまえよっぽど水ん中が好きなんだな?」

「ち、違うのよ・・」

つくしは顔を赤くしながら否定した。

「空よ。空。」

「空?なんだよ空って?」

「あ、あたし、スカイダイビングがしてみたいの。」








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コメント
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dot 2016.09.17 17:10 | 編集
子持**マ様
冒険してみたいですよね?冒険は人によって違うと思いますが、あれやこれや・・。希望は沢山ありますが司に聞かれて悩んで答えるつくしちゃん。偽者探しはどうするんでしょうね(笑)司に流されていくつくしちゃん・・(笑)
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.17 22:14 | 編集
ち*こ様
つくしちゃん、スカイダイビングがしたいそうです。
空高い所から降下したい・・何かを吹っ切りたいのでしょうか?拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.17 22:24 | 編集
司×**OVE様
司の言葉責め←(笑)別の方面を想像してしまいました(笑)
心が動く・・このつくしちゃんなかなかどうして頑固ですね。
頭がよい女性なので考え過ぎるんですね。グルグル思考です。
つくしの心を溶かすようなことがこの先あるといいのですが^^
そうなんです。スカイダイビングがしたいそうですよ?
飛ぶんです。つくしちゃん。何か想いがあるのでしょうか・・
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.17 22:38 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.09.17 23:47 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
なかなか司の手に堕ちてくれないつくし。そんなつくしに対しても余裕を窺わせる司(笑)大人ですねぇ。
スカイダイビングがしたい!つくしちゃん、どうしたんでしょうね?←え?
御曹司マ**チ様Ver.の司のおとぼけぶり最高ですよ?(≧▽≦)そんな司につき合うつくしちゃんがまた可愛いです!
そして司、振り向けばいつもつくしがいない・・(笑)彼は一生つくしを追いかけて過ごす運命なんですね(笑)やっぱり司はM気質でしょうか?干からびるし・・(笑)コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.18 21:00 | 編集
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