道明寺は会議室を出たつくしを追って廊下へと出て来た。
いた!
道明寺は急いでつくしの後を追いかけた。
が、あと一歩のところでつくしは女性用化粧室へと入って行った。
道明寺は何の迷いも躊躇もなくつくしの後から入って行く。
「ちょっと!なにしてんのよ、ここ女性用よ!」
「ここは俺の会社だ。俺がどこで何をしようと勝手だ」
「誰か入ってきたらどうするつもり?」
「入ってこないかもしれない」
入口を背に道明寺は立っている。
「いったいどう言うつもり?」
「お前は俺から逃げてばかりだ」
「そうよ、今も一人になりたいからここにいるのよ。だから出ていって」
「いったい俺がお前に何をしようとしてると思ってるんだ?」
「・・・最後に会った時にしようとしたこと・・・」
つくしは自分でそう言いながら頬が赤くなるのが感じられた。
道明寺との再会に戦々恐々としていたのにいざこうして再会してみるとどうしても
胸の鼓動が収まらない。
少女の頃の出会いからもう随分と経つのにそれでもなお私の胸の鼓動を高める彼。
こうして大人になった道明寺は他を圧倒するようなオーラがある。
彼が近寄ってくるとつくしは後ずさるしかなかったが、それでもスペースは限られている。
すぐに背中へと洗面台が当たるのが感じられた。
正面から向かってくる道明寺につくしは思わずのけぞるしかなかった。
「お前は俺を殺す気か?」
つくしは低いバリトンの声でそんな風に言われ恐ろしかった。
「 は? 」
「夜は眠れない、仕事は・・・手に付かずにこんな有様だ! おまけにお前は
俺の夢の中に出て来ては笑ってる。 俺はお前に言ったよな? 8年前に俺がお前をほったらかしてニューヨークに行ってしまって悪かったと」
つくしは言葉を挟もうとしたが、鋭い眼差しで一蹴されてしまった。
「俺は自分の馬鹿さ加減に呆れている・・・いいかげん・・許してくれよ」
つくしは驚いた。
まさか道明寺の口からそんな言葉が聞けるなんて信じられなかった。
「どうなんだよ、牧野」
「ゆ、許すもなにも・・前にも言ったわよね?私達は付き合うも何もそんな関係じゃ無かったんだから」
「牧野、じゃあこれから俺と付き合ってくれないか? 今、ここからスタートしてくれないか?」
道明寺の熱い眼差しが私に迫ってくる。
「・・・・いいわ。ただしひとつだけ条件がある」
ああ胃がキリキリしてきた。
「 私と結婚するなら付き合ってあげる! 」
つくしは女性用化粧室の洗面台に背中をあずけながら道明寺の表情を見守った。
そんなの返事は簡単だ。きっと道明寺はこう言うだろう。
『俺はそこまでは考えていない』とかなんとか。
彼にとっての私に対するこだわりは遠い昔、自分の思い通りにならなかった女に対していのこだわりなんだろう。
自分の思い通りにならなかった女に対しての・・
私に恋を仕掛けておいて、それも中途半端に終わった恋。
つくしは息を詰めて道明寺の表情を見つめている。
私が彼の表情に見て取れたのは激しい動揺のみだ。
その心の内までは分からない。
道明寺は口もきけずに茫然とつくしの顔を見つめた。
まさか牧野の口からそんな言葉が聞けるとは思いもしなかった。
「 結 婚 ? 」
喉の奥から絞り出すように繰り出された言葉は俺の口から出た言葉とは思えないほどにうわずってしまった。
「そうよ!」
私のことが好きだと言う道明寺の言葉が本当なら私と結婚する気くらいあるでしょ?
「お前、本気で言ってんのか?」
「もちろんよ」
何か文句ある?
道明寺の言う本気がどれくらいのことを指すのか知らないけれど、私は結婚もする気がない男性と軽い付き合いが出来るような女じゃない。
25歳になっても男性と付き合った経験がないからと言って、これから先もそうだとは限らないけど・・・。
「話は終わったわ。どいてよ」
つくしは道明寺の横をすり抜けようとするが目の前の男は微動だにせず、その場に留まったままだ。
「牧野、待てよ。お前その言葉に嘘はないよな?」
「ないわ。仕事に戻らないと」
どうせ言い訳じみたことを言うに決まってる。
再び道明寺の横をすり抜けようと試みた途端、腕を掴まれた。
そして私の身体を正面から見据えてこう言った。
「わかった。 牧野、俺と結婚を前提に付き合ってくれ」

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いた!
道明寺は急いでつくしの後を追いかけた。
が、あと一歩のところでつくしは女性用化粧室へと入って行った。
道明寺は何の迷いも躊躇もなくつくしの後から入って行く。
「ちょっと!なにしてんのよ、ここ女性用よ!」
「ここは俺の会社だ。俺がどこで何をしようと勝手だ」
「誰か入ってきたらどうするつもり?」
「入ってこないかもしれない」
入口を背に道明寺は立っている。
「いったいどう言うつもり?」
「お前は俺から逃げてばかりだ」
「そうよ、今も一人になりたいからここにいるのよ。だから出ていって」
「いったい俺がお前に何をしようとしてると思ってるんだ?」
「・・・最後に会った時にしようとしたこと・・・」
つくしは自分でそう言いながら頬が赤くなるのが感じられた。
道明寺との再会に戦々恐々としていたのにいざこうして再会してみるとどうしても
胸の鼓動が収まらない。
少女の頃の出会いからもう随分と経つのにそれでもなお私の胸の鼓動を高める彼。
こうして大人になった道明寺は他を圧倒するようなオーラがある。
彼が近寄ってくるとつくしは後ずさるしかなかったが、それでもスペースは限られている。
すぐに背中へと洗面台が当たるのが感じられた。
正面から向かってくる道明寺につくしは思わずのけぞるしかなかった。
「お前は俺を殺す気か?」
つくしは低いバリトンの声でそんな風に言われ恐ろしかった。
「 は? 」
「夜は眠れない、仕事は・・・手に付かずにこんな有様だ! おまけにお前は
俺の夢の中に出て来ては笑ってる。 俺はお前に言ったよな? 8年前に俺がお前をほったらかしてニューヨークに行ってしまって悪かったと」
つくしは言葉を挟もうとしたが、鋭い眼差しで一蹴されてしまった。
「俺は自分の馬鹿さ加減に呆れている・・・いいかげん・・許してくれよ」
つくしは驚いた。
まさか道明寺の口からそんな言葉が聞けるなんて信じられなかった。
「どうなんだよ、牧野」
「ゆ、許すもなにも・・前にも言ったわよね?私達は付き合うも何もそんな関係じゃ無かったんだから」
「牧野、じゃあこれから俺と付き合ってくれないか? 今、ここからスタートしてくれないか?」
道明寺の熱い眼差しが私に迫ってくる。
「・・・・いいわ。ただしひとつだけ条件がある」
ああ胃がキリキリしてきた。
「 私と結婚するなら付き合ってあげる! 」
つくしは女性用化粧室の洗面台に背中をあずけながら道明寺の表情を見守った。
そんなの返事は簡単だ。きっと道明寺はこう言うだろう。
『俺はそこまでは考えていない』とかなんとか。
彼にとっての私に対するこだわりは遠い昔、自分の思い通りにならなかった女に対していのこだわりなんだろう。
自分の思い通りにならなかった女に対しての・・
私に恋を仕掛けておいて、それも中途半端に終わった恋。
つくしは息を詰めて道明寺の表情を見つめている。
私が彼の表情に見て取れたのは激しい動揺のみだ。
その心の内までは分からない。
道明寺は口もきけずに茫然とつくしの顔を見つめた。
まさか牧野の口からそんな言葉が聞けるとは思いもしなかった。
「 結 婚 ? 」
喉の奥から絞り出すように繰り出された言葉は俺の口から出た言葉とは思えないほどにうわずってしまった。
「そうよ!」
私のことが好きだと言う道明寺の言葉が本当なら私と結婚する気くらいあるでしょ?
「お前、本気で言ってんのか?」
「もちろんよ」
何か文句ある?
道明寺の言う本気がどれくらいのことを指すのか知らないけれど、私は結婚もする気がない男性と軽い付き合いが出来るような女じゃない。
25歳になっても男性と付き合った経験がないからと言って、これから先もそうだとは限らないけど・・・。
「話は終わったわ。どいてよ」
つくしは道明寺の横をすり抜けようとするが目の前の男は微動だにせず、その場に留まったままだ。
「牧野、待てよ。お前その言葉に嘘はないよな?」
「ないわ。仕事に戻らないと」
どうせ言い訳じみたことを言うに決まってる。
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Comment:1
コメント
ピニ****ダ様
はじめまして。コメント拍手有難うございます。
面白いと言って頂いて嬉しいです!
更新を楽しみにして頂いているとの事でとても励みになります。
つくしちゃんトイレに逃げ込んでばかりでごめんなさいです。
司くんも追いかけて女性用の方に入ってしまい、これまたごめんなさいです。
こんな感じで緊張感もなくゆるい話ですが、お付き合い頂けて嬉しいです。
ご訪問有難うございました(´▽`*)
はじめまして。コメント拍手有難うございます。
面白いと言って頂いて嬉しいです!
更新を楽しみにして頂いているとの事でとても励みになります。
つくしちゃんトイレに逃げ込んでばかりでごめんなさいです。
司くんも追いかけて女性用の方に入ってしまい、これまたごめんなさいです。
こんな感じで緊張感もなくゆるい話ですが、お付き合い頂けて嬉しいです。
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アカシア
2015.09.06 22:09 | 編集
