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2016
09.06

恋人までのディスタンス 26

こんなのばかげてる。

売り言葉に買い言葉とはよく言ったもので、受けて立つかと言わんばかりの態度に思わず答えてしまっていた。
あの日の自分の反応に驚いていた。
つかの間だったが視線を受け止めたとき、あの男の瞳の中に見えたのは紛れもない男としての欲望だった。

道明寺司を知ることに同意してしまった。
ただし、それは偽者が見つかってからという約束ではあったけど・・・

つくしは考えをめぐらした。
人探しなんてそう簡単に出来るはずがないという思いと、道明寺司なら、あの男の言う通り簡単に探し出せるのではないかという思いだ。

つくしひとりがいくら計画を練ってたとしても大都会の中から一人の男を探すなんてことが簡単に出来るとは思ってはいない。
あの道明寺司が優紀の恋人ではなかったとわかった時点で正直どうやって目的の男を探せばいいのかわからなくなっていた。

人探しをするなら興信所とか探偵とか・・そう考えるのが一般的だろうが費用がかかる。
そんな時にあの男から俺と一緒に偽者を探せと言われ仕方がないという思いがあった。
あの時はあたしが人違いだと知らずに殴ってしまったことに対しての後悔がそうさせたんだと思っていた。
だが今にして思えば迂闊に返事をしたのは間違いだったのかもしれないと思うようになっていた。あの時、自分の否を詫びて一緒に偽者を探すことは断っておけばよかったのかもしれない。
ふたりの出会いは最悪で、どうしてこんなことになったのかと自問するしかなかった。

もう長い間、男性について頭を悩ませたことなどなかった。これから先は何かペットでも飼おうかと思いはじめていたほどだった。それなのに今は道明寺司と一緒にいることが避けられない事態になっていた。

これが賢明な方法なのかどうなのかわからないが、裕福で有力で影響力がある男というのは何でも自分の思い通りにことを運びたがるということを理解させられた。







そんな男は圧倒的な存在感でつくしの前にいた。

「牧野、おい?聞いてるのか?」
やけに楽しげな声がした。
「き、聞いてるわよ・・」
「俺の偽者はどうやらこのあたりに出没するらしい。いいか?これから俺とおまえとでその男を捕まえに行く。俺とおまえは人探しのチームになったんだ。チームメイトは一緒にいるべきだろ?」

つくしには男の言っている意味がわからなかった。
チームメイトとしていっしょに行動する?そんなことしなくても人探しの専門業者に頼むんじゃなかったの?この男の会社にはそんな調査をする部門もあるはずだ。
それにつくしは自分が今なんのためにここにいるのかさっぱりわからなかった。


どうして公園の池でボートに乗ってるわけ?

貸しボート屋でボート代を払い、つくしの手を引き自分と向かい合うようにつくしを座らせると道明寺司はオールを握ってボートを漕ぎ出していた。それも巧みなオールさばきで池の中央に向かってどんどん漕いでいた。

大企業の経営に関わる人間でもまるで周囲のことなど関係ない。
自分がやりたいことは、やりたいときにするということが身についている。いや身につき過ぎているとも言える行動だ。恐らくこれは衝動的な行動だろうがまったく意味不明の行動だ。

「ねえ、道明寺さん・・どうしてあたしたちはボートに乗ってるわけ?いくらあなたの偽者がこの公園に現れるからって、どうしてあたし達がボートに乗らなきゃならないの?それにその男がここに来るならボートなんか乗らずにどこかで見張っている方がいいに決まってるじゃない?」
「ニューヨーク時代。夏になるとセントラルパークの池には沢山のボートが浮かんでいた。」
司は唐突に語り始めた。

「そ、それがあたし達になんの関係があるのよ?」
「いいからちょっと黙って聞いてろ。ニューヨークには長くいたがボートに乗る機会は無かった。」
「だから、いったい何が言いたいんですか?」
「いちいち口を挟まず黙って聞いてろ」

そう言われたつくしは口をつぐんだ。
だが言い過ぎたと思ったのか悪いという言葉が聞きとれたが逃げ場のない状況で向かい合っている以上、黙る以外なかった。

道明寺司と目が合ったが、口調とはうらはらに表情はいたって普通のように見えた。
とは言っても普段のこの男を知っているわけではないので、なんとも言えないが大企業の跡継ぎで支社長ともなると言い方によっては人を黙らせるには十分な迫力がある。

だがスーツではなく、こうして普段着の姿を見ればこの男が企業経営者だとは誰も思わないかもしれない。今の姿はごく普通の30代前半の男に見えた。
つくしはじっと見つめられているのはわかってはいたが、池に浮かぶボートの上という逃げ場のない状況で相手の目を見つめるのが怖かった。

そこで道明寺司が語った言葉。

「興味をひかれたことは、じっくり観察することにしてる。ここならおまえも逃げれねぇだろ?」

逃げられなくするため、自分に注目させるためにボートを選んだとしたら頭のいい男だ。
いったいこれからどんな話しをされるのかと思うとつくしの心臓は早鐘を打っていた。







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コメント
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dot 2016.09.06 13:21 | 編集
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dot 2016.09.06 13:49 | 編集
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dot 2016.09.06 22:11 | 編集
子持**マ様
超イケメンとボートでデートですね(笑)
すんなりと行けば・・と思いますがどうでしょうか。
この司は大人ですからねぇ。何を考えているのでしょう^^
色々仕掛けてくるのかもしれませんね。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.06 23:41 | 編集
さと**ん様
水に囲まれた場所でハリネズミを捕獲。
とりあえず逃げられないようにしたのでしょうか・・。
さすがにお初がそこでは可哀想です(≧▽≦)
池の中心でエロを叫ぶのは御曹司。←そういったプレイをご希望なんですか?(笑)
チーム「俺様&ハリネズミ」いいですね。このチーム名。なんだかとてもしっくりきます。
さと**ん様流石です!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.06 23:53 | 編集
ま*ん様
はじめまして。ようこそお越し下さいました。
拙いお話ではございますが、楽しんで頂ければと思っております。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.06 23:57 | 編集
ち*こ様
どうなるんでしょうねぇ。この二人は。(笑)
ボートなんか乗ってデートですよね?
嬉しがってるのは司の方だけのような気がします。
つくしちゃんは迷惑です!という感じですねぇ(笑)
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.07 00:02 | 編集
司×**OVE様
こんばんは^^
ペットでも飼おうかな・・なんて思うつくし。独身でバリバリ働くわ!
と、いうところで出会った司でしょうね。
ハリネズミ女ですね。まだトゲトゲしいです(笑)
司のお仕事は・・恐らくつくしちゃんを自分の都合で動かしているのでしょう^^
司は高額物件のお客様ですからつくしの会社もつくしを人身御供のように差し出していると思われます(笑)
なかなかつくしちゃんが頑固者でして司に堕ちてくれません(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.07 00:13 | 編集
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