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2016
09.01

恋人までのディスタンス 22

つくしはきびきびとした足取りでオフィスに向かって歩いていた。
なんとか気持ちを平常心に戻して仕事に差しさわりのないようにしたい。

昨日のことを考えるのは避けていた。
レストランで食事の最中におまえに欲望を感じると言われてなんと答えればよかったのか・・
あの男の中では欲望イコール好きだってことはわかったけど、あの言葉で一気に気持ちを乱された。マンションで自らキスをしたことが思い出され、ふと自分の唇を指で触れていた。
そのとき感じたのはあの男の痛いほどの視線だった。

心にわだかまりがあるなら言ってくれと言われ正直な気持ちを話したが、遊びじゃなくて大人の男と女としてつき合わないかと言われ、言葉に詰まったあたしを意味ありげに見つめてくる瞳に動揺が隠せなかった。

そんなとき、ふと見せた表情に心を奪われていた。
破顔一笑して少年のような眼差しで見つめられ、はじめてまともな会話を交わしたような気がした。
あまりに温かみのあるほほ笑みに体の中が熱くなったと感じた。
信じられないような、嘘のような感覚だった。それまで緊張していたのに見つめているうちに一気に体中の血液が心臓に向かって流れていくような気がしていた。
そのせいか、鼓動が高まって、耳鳴りまでしているようだった。

『おまえに俺を知って欲しいと思ってる。』

そう言われてどう答えていいかわからなかった。
おまえの好きなことをしてくれたらいい。
本物のデートをして俺を知ってくれと言われたとき、熱い視線にとらえられて目をそらすことが出来なかった。


口論するのは大歓迎だった。
その方が緊張を隠せたからだ。大人と言われる年齢の女が実は男性経験がなくて、まともなつき合いをしたことがないなんてことを知られるのが嫌だったからだ。
優紀を騙した男を探す目的があったから一緒に行動するはめになったが、まさか自分があの男を、道明寺司を性的な目で見るようになるとは思わなかった。

思えばあのとき・・逃げるのか、と言われたとき何が悔しくてあの男にそんなことを言われなきゃならないのかと思ったが、意識し過ぎてあんなことをしたのかもしれない。

でもあの男はあたしにとっては謎の塊のような男だ。
どれが本当の道明寺司なのかわからない。
経済誌で見せる顔が本当なのか、それとも週刊誌に書かれるような男なのか。
それとももっと他の顔もあるのだろうか?
どちらにしてもレベルが高い男だということを今はわかっていた。

とにかく思わぬ告白に動揺してしまい、喉を潤そうと掴んだグラスの中身を飲み干してしまったのが悪かった。考えればあたしの水はあの男に飲み干されてしまっていて、他に残されていたのは白ワインが入ったグラスだけだった。

向かいの席で満面の笑みを浮かべていた男の顔が、やがて歪んで見え始めたとき、自分の体が揺れていると気づいた。

そして・・・





つくしは意識を目の前の扉に戻した。
気付けばオフィスに着いていた。

「戻りました」

そう言ってオフィスに戻ったつくしは驚いて足を止めた。

「ま、牧野さん?あなた宛てに花がいくつか届いているんだけど」

花?つくしの目の前には大量の花があった。
なにこれ?誰か花屋に発注ミスでもしたの?
それともこれをどこかのマンションにでも飾るの?
それとも来場客にプレゼントをする企画でもあった?

さっき、いくつかあたし宛てに花が届いたって言ったわよね?
何故か嫌な予感がした。
まさかここにある花が全部だなんて言わないわよね?

「信じられないわよね?これ全部牧野さん宛てなのよ?」

いたるところに置かれた花は赤いバラの花。
オフィスの床といい棚といい置けるスペース全てを埋め尽くす花、花、そして花。
つくしの机の上にも大きな花瓶に生けられた真っ赤なバラの花。
これだけの花をいくつかとは言わないはずだ。

いったい・・

つくしはこんなことが出来る人間はひとりしかいないと気づいた。
あの男だ。あの男しか考えられない。
だが念のため誰から贈られたものか確かめないわけにはいかなかった。
すると、贈り主は誰かと聞く前に答えがあった。

「凄いわ・・あなた道明寺さんとどういった関係なの?」
と感嘆の声。

やっぱりあの男か・・
どう言った関係か?

ただ、好きだって言われた・・・
それも欲望を感じるほど・・・

「そうそう。配達して来た人からカードを預かったから机のうえに置いておいたわ」

つくしは花に埋もれた自分の机まで行くとカードを掴んで封を切ろうとした。
だが中身を確認する間もなく声がかかった。

「牧野君、ちょっと」
花に埋もれた机の向うから課長の中村が顔を覗かせた。
「道明寺さんが買ったマンションのインテリアの件なんだが・・・」
「は?」
インテリア?
「だから道明寺さんから聞いてないのかね?君が責任をもって対応してくれなくては困るんだが?」
「い、いったいなんのお話でしょうか?」

聞いたというか、おまえならどうするかと聞かれたがまさか?

「なんの話しじゃないよ。しっかりしてくれなきゃ困るじゃないか。契約書を交わした時にあのマンションの内装、インテリアに至るまでうちの会社でお世話する契約になっているんだが知らなかったのか?」

そこで納得した。
まさかそんな契約がされてたなんて・・
だからあの男はあたしをあのマンションに連れて行ったのね。
あの男の大胆な行動に今さらだがしてやられた感がしたが契約されているなら仕方がない。
仕事は仕事だ。それはあの男だって同じ考えだろう。
例えこれからつき合うことになるとしても・・

つくしは改めてカードの封を破った。
まったくこんなに沢山の花をどうしたらいいのよ、そんなことを胸の内で呟いていたが、
メッセージが目に入った途端つくしは小さく呻いていた。




『 昨日は最高の夜だった 』

つくしは胃がぐっと締めつけられるのを感じていた。







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コメント
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dot 2016.09.01 08:11 | 編集
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dot 2016.09.01 15:11 | 編集
子持**マ様
この司は困った男です。
今の状態だと完全に猛獣ですね(笑)
でも可愛いところもあると思いますよ(笑)
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 00:07 | 編集
ち*こ様
食事のあと、何があったんでしょうねぇ。^^
大人の二人ですから色々あったのではないでしょうか?(笑)
色々です、色々。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 00:11 | 編集
ふ*様
つくし包囲網・・
恐らくじわじわと行くのだと・・^^
いきなり行くと逃げちゃいますのでねぇ(笑)
逃げ足は速そうです。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 00:15 | 編集
椿お**ん☆様
肩を両手で掴まれて揺さぶられてきました(笑)
寸止めならぬすっ飛ばしですね(*^_^*)
じっくりじわじわです。お姉さま。弟さんも大人になりましたので(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 00:22 | 編集
司×**OVE様
つくしちゃんは色々考えていますねぇ。ぐるぐる思考ですね。
考え過ぎるのが彼女の癖ですよねぇ。(笑)
鈍感女が果たして本能のまま行動出来るのでしょうか(笑)
「最高の夜だった」!致したかどうか・・うーん。どうなんでしょうね。
モヤモヤさせてしまってすみません(低頭)
まずは気持ちが大事ですから・・^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 00:29 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.09.02 00:38 | 編集
やせ**母様
やはりあのグループの名曲が頭を過りましたか(笑)
わかります。私も過りましたが違います(笑)
♪燃え上がれ~愛のレジ~スタ~ンス♪
懐かしいです!(笑)
こちらは恋人になるまでの二人の距離です。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 00:41 | 編集
マ**チ様
こんばんは^^
赤いバラに意味深なメッセージ。坊ちゃんなにを?したのかしなかったのか・・。
さりげなく登場する中村課長が気になりますか?(笑)恐らくただの中間管理職だと思われます。出世を狙っているのかどうか・・うーん。やはり道明寺財閥入りを狙っているのかもしれませんね!
おお!マ**チ様Ver.楽しみにお待ちしています^^。ですが調子が悪いとのこと。何しろ高額商品ですので買い替えとなると大変です。大昔は無料で配っていましたよね?(笑)その時代を知る者としては今のこの価格が信じられません。9月突入しました。山は越えた・・というか乗り越えたです(笑)そして私もこの時間です^^
コメント有難うございました^^

アカシアdot 2016.09.02 01:01 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2016.09.02 01:52 | 編集
瑛*様
こんばんは^^お久しぶりです。
18話の俺様っぷりがお好きですか(笑)強引な坊ちゃんですね。
「おまえ俺のこと好きなんだろ?」とか言ってますね(笑)
バラの花を沢山贈る坊ちゃん。金持ちの御曹司ですからやることが半端ないんです。
オフィスにいる人間はバラの香りにむせていることでしょうねぇ(笑)
前作は最後の方ではメロメロ坊ちゃんになり過ぎてましたか(笑)
今回の坊ちゃんはこの先どうなるのでしょうねぇ(笑)ハリネズミ化しているつくしちゃん、いつか坊ちゃんに懐くはずです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2016.09.02 22:03 | 編集
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